臨床心理学:理論と療法 (117)

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精神分析

精神分析とは、フロイト,S.が創始した学問体系のこと。概観すれば、①無意識を意識化し、探求する手段としての精神分析、②①に基づく心理療法の実践、③①②の集大成としての人間理解の理論にまとめられるのである。

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心的決定論

心的決定論とは、すべての精神現象や行動は、偶然起こるものはなく、一定の因果関係に基づいて先行する心的事件により決定される。これが心的決定論と呼ばれる精神分析の基本仮説である。失錯行為や夢の内容、神経症の症状などの精神現象は、一見明確な原因なしに起こるように見える。しかし、原因がないのではなく、その原因が無意識内に存在する為に、意識からは因果関係が判らないだけである。ゆえに精神分析では、意識に現れた事象を分析することで無意識にアクセスし、症状の原因を明確化することが治療機序となるのである。

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局所論

19世紀、心理学においては精神=意識であり、ヴント,W.の構成心理学をはじめとして、意識研究が主流であった。これに対してフロイト,S.は、精神は意識・前意識・無意識の3層で構成されると主張。これが局所論であり、特に無意識の存在は精神分析の基本概念である。

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無意識

自分の心の中に、直接アクセスすることも、コントロールすることもできない領域が存在し、にも関わらず自分の行動やパーソナリティに影響を与えている。この「無意識の存在」を前提とする局所論は、精神分析の基本的立脚点であり、思想としても革命的な影響を文学や哲学などの他分野にもたらしたのである。フロイト,S.が無意識の発見に至った過程には、催眠とヒステリーという19世紀の精神医学の特色があった。

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失錯行為

失錯行為とは、言い間違い・読み間違い・やり損ない・ど忘れなど、一見明確な理由のない過ちのこと。フロイト,S.は、精神分析理論において、これらは必ずしも偶然ではなく、無意識内の願望や本能的衝動と、それらへの抑圧・検閲との葛藤の結果、置き換えられた表現であると考えた。失錯行為を分析・解釈することで、どのような願望や衝動がその背景にあるのかを明らかにし、演繹的に無意識にアクセスすることが可能となる。夢の内容とともに、精神分析における「無意識への王道」である。

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構造論

精神はイド・自我・超自我の3層で構成され、それぞれ異なる機能を持つ。そして各層の相互作用が精神現象を作り出す、とフロイト,S.は主張した。これが精神分析における構造論である。

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イド

イドとは、精神領域で最も原始的な装置である。無意識的な本能エネルギー(リビドー)の源泉であり、純粋に快楽を求め不快を避ける働きを持つ。独語ではエスと言う。この語が意味するのは、自我意識の欠如である。

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自我

自我とは、現実適応の為の心的装置のこと。抑圧や防御機制により、人間の行動を外界現実の制約に適合させるように機能する。イドの本能的衝動と超自我の道徳的要求を、外界の現実的制約にあわせて調整し、よりよい適応を図る。自我は、イドの本能的衝動が発達するにつれて外界と接触していく過程で、分化・形成される。自我の作動原理は言語・論理性であり、無秩序・本能的である無意識=イドを対立する。

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超自我

超自我とは、いわゆる倫理や良心・道徳にあたる心的装置のこと。罪悪感や後悔といった感情として意識化され、イドの本能的衝動を禁止し、自我機能を道徳的な方向に誘導する機能を持つ。超自我は、幼児期における両親や周囲の大人からのしつけ・教育などの社会道徳を個人の中に内在化するものであり、自我から分化して形作られる。イドと同様に、外界への適応に反する命令を下し、自我としばしば葛藤を引き起こす。それゆえ精神分析療法では、神経症の治療過程における「超自我の緩和」が重要とされているのである。

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リビドー

リビドーとは、フロイト,S.があらゆる精神活動の根源となるエネルギーは性欲動であると主張し、そのエネルギーのことを指す。フロイトは、生物学的観点から、生物の行動原理の本質を「種の保存」と捉え、生殖こそが人間を含めた生物の究極的目標であるとし、性的ではない活動、たとえば知的活動といえども、社会に受け入れられる形に置き換えられたリビドーだと主張した。彼はまた、リビドーは出生直後から存在するとして、「小児性欲」を唱え、それらの解消される身体部位によって、口唇期・肛門期・男根期・潜伏期・性器期という発達段階を体系化したのである。

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備給

備給とは、人物や事物に性的な感情・興味・関心を向ける、すなわちリビドーを向けること。フロイト,S.は、幼児期におけるリビドーは、自己の身体に向けられるとし、その部位により心理性的発達段階を定めた。性欲動が沈静化している潜伏期である児童期を経て、リビドーは外界の対象に向けられる。一方これとは逆に、対象から今まで向けてきた興味・関心を切り離し、リビドーを引き上げることを逆備給と呼んでいる。これは臨死患者などがこの世への未練を断ち切って安らかな最期を迎える、いわゆる死の受容における重要なプロセスをされるのである。

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口唇期

口唇期とは、フロイト,S.が主張した、心理・性的発達段階における第一段階のこと。(生後18ヶ月位までの時期)乳児は、口唇や口腔周辺に快感を得、主に吸う/噛むことにより快楽を得るとされる。この時期の乳児は、授乳という行為を通じて外界との交流を行う。アブラハム,K.は、口唇期を、受動的に吸う活動が主要である吸いつき早期段階と、歯が生えてからの噛みつく/噛み取ることが重要な活動となる口唇サディズム期の2段階に区分したのである。

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肛門期

肛門期とは、フロイト,S.の心理・性的発達段階における第二段階のこと。(1歳後半から3~4歳位までの時期)この段階の幼児は、肛門領域に快感を得るとされている。この時期の幼児は、トイレット・トレーニングを経験し、親の叱責と賞賛を通して、自分で自分をコントロールできるという自信=自律性を身につける。こうして、外界に対する主張的で能動的姿勢、つまり自我が芽生える。ゆえにこの時期は、子供が独自性を主張し、何でも自分でやりたがる第一次反抗期でもある。

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男根期

男根期とは、フロイト,S.の心理・性的発達段階における第三段階のこと。(3~4歳から6歳位までの時期)エディプス期とも呼ばれる。この時期の幼児は、性器への関心が強まり性器から快感を得、性器の違いにより男女の差を自覚するとされている。また異性の親に性的欲求を向け、ライバルである同性の親を憎む。この結果生じる去勢不安を解消する為に、幼児は同性の親への同一視を行い、超自我及び性役割を獲得するのである。

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潜伏期

潜伏期とは、フロイト,S.の心理・性的発達段階における第四段階のこと。(5~6歳から11~12歳位までの時期=児童期)この時期には、男根期に獲得された超自我によりリビドーが抑圧される。ゆえに、それ以前のエディプス/エレクトラ・コンプレックスに代表される性的記憶・関心は忘れ去られるのである(幼児期健忘)。この児童期には、学業や友人関係にエネルギーが注がれ、自我機能のさらなる発達が促進される。次の性器期で再び出現するまで、リビドーは潜伏し安定状態におかれる。

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性器期

性器期とは、フロイト,S.の心理・性的発達段階における第五段階のこと。(11~12歳以降の時期)リビドー発達の最終段階。一般にいう思春期・青年期にあたる。それまでの自らの各身体部位に向けられていた部分的なリビドーが統合され、身体的成熟とともに性器性欲が出現。この解消は、自己身体ではなく対人関係の中に求められる。こうして、愛情対象の全人格を認めた異性愛が完成されると見なしたのである。

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固着

固着とは、リビドーが特定の発達段階に停滞し、その後のパーソナリティ形成に影響を与えることを指す。各段階でリビドーが十分に解消されなかったり、逆に過剰な満足が与えられることが原因とされている。口唇期に固着すると、依存的で愛情欲求が非常に強くなり、肛門期に固着すると、自己制御の過剰である几帳面・頑固・倹約といった強迫的な性格特徴が形成される。男根期に固着すると、自己顕示的で攻撃的なヒステリー性格になるとされる。

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退行

退行とは、以前の未熟な発達段階へと戻ることを指す。精神分析では、防衛規制のひとつとみなされている。治療場面で生じる感情転移も一種の退行であり、かつての対人関係の再現とされる。操作的な退行により、固着が存在する発達段階、あるいは心的外傷経験の時に戻り、葛藤やコンプレックスを解消させる治療的退行は、心理療法の技法として重要。また、フラストレーションに対する不適応的反応としても生じるものである(欲求不満退行仮説)。

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夢分析

夢分析とは、フロイト,S.は、夢は無意識的な願望充足であると考え、意識に向け入れられてきた夢の内容(顕在夢)から、夢の持つ隠された内容(潜在夢)を引き出そうとしたこと。無意識へのアクセス法のひとつでもある。一方、ユング,C.G.の夢分析では、夢は無意識からのメッセージであり、意識に欠けている要素を補償することが夢の機能であるとする。ゆえに夢の中のイメージを拡充していくことで無意識と意識の統合を図る。

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カタルシス

カタルシスとは、鬱積した感情や葛藤を、表現することにより発散すること。睡眠によるヒステリー治療の中で、ブロイエル,J.が発見し、その後フロイト,J.が精神分析の治療手法のひとつとして重要視したのである。激しい感情や罪悪感を伴う外傷体験は、症状化や身体化により不適応の原因となるが、それらを自由に表現させることにより、心的緊張を解放する方法。現在の精神分析では重要視されなくなったが、遊戯療法や芸術療法ではカタルシスによる治療効果が認められている。

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自由連想法

自由連想法とは、精神分析における無意識を意識化する技法のこと。フロイト,S.が神経症の治療に用いたもの。クライエントは静かな部屋で寝椅子に横になり、頭に浮かんだことは、どんなに馬鹿げたことに思えても、包み隠さず、全て分析家に話すことを要求される。こうして、無意識に抑圧された過去のトラウマ経験が認めがたい感情・欲望を少しずつ意識に浮上させ、治療効果をもたらすのである。

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徹底操作

徹底操作とは、精神分析において分析家がクライエントの無意識的な欲動を解釈し、クライエントに洞察が得られても、治療はそこで終わりではない。解釈に対する抵抗が反復して現れるので、完全な洞察に至る為には、解釈と洞察を徹底的に繰り返し、抵抗をひとつずつ排除していく過程が不可欠である。この過程を徹底操作を呼び、クライエント自身の自己分析が主体となる。

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コンプレックス

コンプレックスとは、心的複合体とも呼ばれるもので、ユング,C.G.が提唱した概念。ネガティブな感情に彩られた観念や記憶の集合体であり、いわば心の中の解消されないわだかまりのこと。しばしば無意識に抑圧される。ユングは、言語連想検査による研究を通じてコンプレックスの存在を提唱した。またアドラー,A.は、劣等感コンプレックスとそれに対する代償の働きにより、行動を説明した。よく知られているものに、エディプス・コンプレックス、去勢コンプレックスが挙げられる。

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エディプス・コンプレックス

エディプス・コンプレックスとは、幼児が3~5歳の男根期において、両親に対して抱く無意識的な愛憎の葛藤のこと。ギリシャ神話において、エディプス王が父親を殺し母親と結婚した伝説に基づき、フロイト,S.が命名。幼児は、異性の親に性的欲求を向け、ライバルである同性の親を憎む。このような近親相姦的感情は、去勢不安で終結し、潜伏期へと移行する。フロイトは、元々男児の心性としてこの語を用いたが、後に女児にも適用できると判断した。(エレクトラ・コンプレックス)

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エレクトラ・コンプレックス

エレクトラ・コンプレックスとは、エディプス・コンプレックスの女児版で、ギリシャ神話におけるアガメムノンの娘エレクトラにちなんで、ユング,C.G.により命名される。男根期(3~5歳)の女児が、父親に愛情を持ち、母親に対して敵意を持つことで生じる、無意識の葛藤のこと。しかし現在では、ホーナイ,Kをはじめとした、精神分析に対するフェミニズム的再考において、最も疑わしい概念とされているのである。

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阿闍世コンプレックス

阿闍世コンプレックスとは、母親が親であると同時に妻でもあり、自分の誕生の由来が母親の性の産物であることに対して、子供が持つ恨みを中心としたもの。日本の精神分析の第一人者である古沢平作が、仏教説話を下敷きに提唱した概念。子供が持つ母親との一体感、そしてそれが崩れた時に生じる母親への恨みと攻撃、母親の許しに伴う許され型/懺悔型の罪悪感、の3つが基本要素である。古沢は、父性中心主義的な欧米の精神分析に対し、母子関係を重視した日本特有の精神分析理論を発展させたのである。

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甘え理論

甘え理論とは、土居健郎が構築した、精神分析及び日本文化理論のこと。甘えとは、他者との分離の事実を否定し、分離の痛みを味わいたくない心理と定義されている。土居によると、この心理の起源は、日本文化特有の密着型母子関係にあり、発達後も対人関係における基本的態度であった。しかし、近代以後の欧米的個人主義文化の流入により、甘えが抑圧され、その葛藤が様々な神経症的不適応を引き起こしているとされている。阿闍世コンプレックスと並んで、日本における精神分析の重要概念である。

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新フロイト派

新フロイト派とは、精神分析学派の中で、フロイト直系の分析家達がリビドー発達という生物学的観点を重視したのに対し、パーソナリティ発達や神経症の発症に及ぼす社会的・文化的要因を重視した学派のこと。ホーナイ,K.は、神経症が文化的要因・人間関係により引き起こされるとし、フロム,E.は、資本主義経済が個人から自由を奪い人間の存在機能が阻止されるゆえに生じるとした。上記に挙げた人物に加え、サリヴァン,H.S.なども含め、アメリカを中心に活動した彼らは、文化学派とも呼ばれているのである。

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自我心理学

自我心理学とは、自我の主体的な役割を強調した精神分析の一派。フロイト,S.の精神分析が無意識の解明に重点を置いたのに対し、自我構造の解明を理論の中心に置く。神経症とは自我機能の機能不全であり、自我機能の異常さを除去し自我の本来の機能を回復することが、患者にとって重要である、とした。自我の防衛機制を体系化したフロイト,A.(フロイト,S.の末娘)や、自我の自律的・能動的側面を強調したハルトマン,H.らにより発展した。

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自我機能

フロイト,S.の古典的構造論では、自我の役割は、単なる調整役に過ぎない。自我心理学では、自我の能動的・積極的機能を重視した。特に、現実検討能力(外界を認識し現実的で妥当な判断を下す)、防衛規制(欲求や感情を制御する)、自我境界(自己の内界と外界の境界を識別し維持する)などの能動的自我機能に関する理論は、自我障害としての精神病や境界例の理解と治療に多大な影響を与えたのである。

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対象関係論

対象関係論とは、乳幼児期において、感情を向ける重要な他者(特に母親)との関係(対象関係)を重視し、子供が自ら内的世界に母親イメージを取り入れる過程と、そのイメージ(内的対象)との関係性という観点から、パーソナリティの理解や精神病理の治療の為に構築された理論のこと。クライン,M.により創始され、フェアバーン,W.R.D.やウィニコット,D.W.らにより発展した。個人の現実適応を重視したフロイト,A.らの自我心理学との論争は有名である。

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移行対象

移行対象とは、ウィニコット,D.W.が提唱した概念である。人形・ぬいぐるみ・毛布など、客観的に見るとただの物であるが、発達のある時期(乳幼児期)の子供にとってはかけがえのない愛着の対象となるような存在のこと。ウィニコットによると、乳児期の子供は、主観的な内的世界で錯覚(イリュージョン)に生きているが、成長につれて外部の現実世界へと移行していく(脱錯覚)。その移行の橋渡しの役目をするのが移行対象である。

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移行領域

移行領域とは、中間領域とも呼ばれるもので、ウィニコット,D.W.の理論における主観概念のこと。成長につれて、子供は主観的な内面世界から現実世界へと生活の場を移す(錯覚から脱錯覚へ)。これらの内界と外界の中間に位置するのが移行領域である。 移行領域は、ファンタジーと現実が共存できる世界であり、ここでは移行対象はただの物であると同時に母親と等価の愛着対象でもある。この領域で遊ぶ事で、子供は自らの内面と外界の折り合いをつけていくとされている。大人になっても移行領域は消えず、芸術や宗教の場となるのである。

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ホールディング

ホールディングとは、「抱えること」とも呼ばれるもので、ウィニコット,D.W.が提唱した、乳児の心身の発達を助ける環境としての母親の機能のひとつである。母親は、子供が自由に自分を表現し、安心して遊ぶことができるような心的空間を与えて支える。それゆえ子供は、主観的な内面世界から現実世界へと生活の場を移すことができる(錯覚から脱錯覚へ)。このような心的空間を、抱える環境と呼ぶ。この概念は心理療法にも応用されるようになり、クライエントをホールディングすることが、セラピストの機能として重要視されるのである。

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自己心理学

自己心理学とは、コフート,H.が創始した精神分析の一派のこと。精神分析や自我心理学が、心的装置のひとつに過ぎない自我を治療対象にしたのに対し、人間精神の全体である自己を治療対象にすべきであると主張した。自己及び自己愛の発達を理論の中心に置き、特に健全な自己愛の存在と、その延長としての他者(自己対象)の概念が重要視される。クライエントの自己対象としてセラピストが適切に機能し、クライエントがその機能を取り入れること(変容的内在化)で治療が行われるとされているのである。

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自己愛

自己愛とは、フロイト,S.は、自我に向けられたリビドーであり、幼児において見られるとしており、児童期以降は他者愛が正常な発達であるとみなした。しかし、コフート,H.は、自己愛はそれ自体独立したものであり、健全なもので成人後も残るとして おり、さらに他者愛の成立も、健全な自己愛の前提によると主張した。彼はまた、幼児期に満たされなかった自己愛の代償として、病的な自己愛が肥大した自己愛的性格(人格障害)に関する独創的な理論を展開したのである。

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分析心理学

分析心理学とは、ユング,C.G.が理論化した深層心理学の体系のこと。集合的無意識・元型・個性化などについて独創的に考察。フロイト,S.の精神分析との相違点は数多いが、あえて強調するならば、フロイトは乳幼児期を重要視する決定論・因果論的立場をとるのに対し、ユングは個性化を最終目標とする未来志向・目的論的な立場をとることが挙げられる。無意識及びリビドーの捉え方も、フロイトは精神分析は原始的・本能的な面を強調したが、ユングは無意識の創造性・相補性を強調した。

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相補性

ユング,C.G.の理論には、意識と無意識、内向と外向、男性性と女性性などの二元論的概念が多い。しかしこれらは対立するものではなく、お互いを補うよう動いて全体のバランスをとっているとされている。特に、個人のこころの中で意識の一面性を補う形で無意識が働く事を相補性と呼んでいる。分析心理学においては、夢や神経症は精神全体のバランスを保つ為に無意識が送ってくるメッセージである。無意識の補償機能とも呼ばれる。

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個性化

個性化とは、分析心理学における最終目標で、人間がそれ以上分割できない統合体・心の全体性を獲得すること。ユング,C.G.が提唱。人生の初期においては、現実に適応するために、自分の持つ無数の可能性を取捨選択して自我を形成していく。しかし選択されず無意識のうちに抑圧されたものであっても、それは個人に内在する可能性であり、心の全体である自己の一部である。自らの内の無意識と対決し統合していくことで、心の全体性を回復しようとする努力が、個性化の過程となるのである。

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集合的無意識

集合的無意識とは、普遍的無意識とも呼ばれるもので、ユング,C.G.が提唱。無意識を、個人的無意識と集合的無意識の2つに区分した。個人的無意識は、フロイト,S.の無意識の概念にほぼ等しいが、集合的無意識は、人類が共通して持つより深い層にある無意識のことである。生物進化の過程で消えた器官が、痕跡として身体に残る(尾骨や虫垂など)のように、今まで存在した全ての人間が積み重ねてきた経験が、個人の精神の奥に痕跡として蓄積されているとユングは主張した。

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元型

元型とは、無意識の内容が意識に影響を与えるとき、それは直接意識されるのではなく、人類共通の心理的パターンに基づくイメージとして現れるが、そのイメージを生み出すときの基本的モチーフのこと。ユング,C.G.は、宗教・神話・伝説あるいは夢や精神病の妄想の内容に、時代や文化を超えて共通するイメージが存在することから、精神の中に祖先から受け継いだ普遍的なものがあると主張した。つまり元型の概念は、一種のイデア論とも考えられる。夢分析・芸術療法・箱庭療法などの解釈で重要な役割を担っているのである。

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ペルソナ

ペルソナとは、ラテン語の「仮面」を意味するもので、社会に適応する為に身に付けた表面的なパーソナリティのことで、元型のひとつである。職場での役職、家庭での立場など、状況に応じた役割を果たす。ペルソナとして選択されなかったものは、シャドウ やアニマ・アニムスとして無意識へと抑圧されている。適切なペルソナの形成は、人生の初期には不可欠であるが、固定化しすぎたペルソナが真の自己と対立し、個性化の妨げとなるおそれもあるのである。

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シャドウ(影)

シャドウ(影)とは、個人において生きてこなかったもうひとつの側面であり、意識にとって許容できない自分の暗黒面のこと。ユング,C.G.の提唱した元型のひとつ。意識において、ある自己イメージが選択されると、それに対立するイメージは無意識に抑圧される。そして、生理的に受け付けない人物という形で夢に登場したり、現実の人物 (同性である場合が多い)に投影されたりする。しかしシャドウを否定することは自分自身を否定することであり、潜在的な可能性を捨て去ることである。自分の中のシャドウと向き合い対決することが、個性化の第一歩である。

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太母

太母とは、養育に代表される包み込む基本的性格と、出産に代表される変容的性格とを持つ女性というもの全体に共通のイメージが、人類共通の集合的無意識のうちに存在すること。ユング,C.G.が提唱。母なるものを象徴する元型と考えた。子供を包み込む全てを与える聖母のイメージで現れることが多いが、子供の自我が成長し彼女から離脱しようとすると、怖るべき母親として自我を呑み込む存在に変わる場合もあるのである。

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老賢者

老賢者とは、ユングの提唱した元型のひとつで、太母・父なる神と並んで宇宙に充満する生命力であるマナ人格のひとつ。老師・仙人など世界各地の神話や伝説に見出されるもので、現実世界においては、実父・権威的象徴・実業家・権力者など、人を教え、癒し、導くものの中に見られる。同時に、父親コンプレックスの元になり、男性にとっては呑み込まれ、同一化される危険性を持つものであり、そこから父を乗り越えることにより豊かな個性化を遂げていくものである。

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アニマとアニムス

ユング,C.G.は、シャドウとの対決に続く過程として、心の中の異性イメージの変容を強調した。男性の心中の異性イメージをアニマ、女性の場合をアニムスと呼んでいる。アニマは、①生物学的、②ロマンチック、③霊的、④叡智、アニムスは、①力、②ロマンチック、③言葉、④意味の4段階で発達するとされる。これらの異性イメージは、しばしば現実の異性に投影され、精神的な成熟において重要な役割を果たすのである。

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箱庭療法

箱庭療法とは、ローエンフェルト,M.の世界技法を、ユング派セラピストのカルフ,D.が分析心理学理論を適用し、心理療法として確立したものである。砂を入れた木箱と多種の玩具(人・動物・木・建物など)が用意され、クライエントに自由に箱庭を作ってもらう。その際セラピストとの関係が重要視される。安全に守られてきた環境で箱庭を作る事で、はじめてクライエントは内面を表現し、自己治癒力が発揮できる。子供から大人まで適用可能な心理療法。

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父性原理

父性原理とは、自分自身をも自我から切り離し、他者との比較においておのれの相対性をひきうけてゆこうとする態度のこと。つまり「断ち切ること」といえる。また相補的な関係のものに、母性原理がある。

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母性原理

母性原理とは、「包み込むこと」であり、自分自身を他者と切り離すことなく、むしろそれとつながろうとする態度のことである。また、相補的な関係のものに、父性原理がある。

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実存分析(ロゴテラピー)

実存分析(ロゴテラピー)とは、フランクル,V.E.の主張する人間学的な研究法であり、心理療法のひとつ。個人がどんな意味と価値を実現しうるかという立場から、その実存を明確にしようとすること。フロイト,Sの快感原則や、アドラー,A.の権力への意思に対して、意味を求める意志の重要性を強調する。人生は、愛や体験や創造をすることのみに意味があるのでなく、不確実で見通しのない頼りなさを真に悩むこと(苦悩価値)により、充足感がもたらされると考えるのである。

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現存在分析

現存在分析とは、フロイトの弟子であったビンスワンガー,L.とボス,M.により創始された精神医学の学派、及びそれに基づく心理療法のこと。人間を客観対象化する自然科学的・還元主義方法をとった20世紀初期の心理学と精神医学を批判し、世界内存在としての人間を直接にありのままに理解しようとする現象学的立場を強調した。フッサールの現象学やハイデッガーの存在論を基礎として、クライエントの内的世界を重視し、同じひとりの人間として見ていこうとする。この姿勢は来談者中心療法と共通する。

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来談者中心療法

来談者中心療法とは、ロジャーズ,C.R.により展開された心理療法のこと。初期は非指示的心理療法と呼ばれていて、クライエントの成長する力に重点が置かれ、セラピストの受容的態度が強調された。その後、セラピストの人間的な態度を重視し、自己理論を背景とした来談者中心療法に変わり、さらに実存的観点からセラピストの純粋性が提唱されるようになった。またパーソン・センタード・アプローチというかたちで、エンカウンター・グループの実践など社会問題への展開が行われるようになった。

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共感的理解

共感的理解とは、来談者中心療法のセラピストに必要な態度のひとつである。クライエントの内的な主観的世界を、セラピストがあたかも自分のものであるかのように感じ取り、しかも巻き込まれずに、「あたかも~のような」という性質を失わないこと。共感的理解の治療的意味は、まずセラピストがクライエントを共感的に理解し、そしてそれをクライエントに反映させることを通して、最終的にクライエントが自分自身の理解に至ることを援助することにある。

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無条件の肯定的受容(配慮/関心)

無条件の肯定的受容とは、来談者中心療法のセラピストに必要な態度のひとつである。クライエントを、一人の独立した人間として無条件に認め、ポジティブな面と同様にネガティブな面をも受容すること。クライエントが不適応にあるということは、つまりクライエントが自分自身を受容できていない状態にあることを指す。そこで、セラピストが無条件にクライエントを受容することで、クライエントが自己を見つめ直し自分自身を受容できるように援助するのが、無条件の肯定的受容の意義である。

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自己一致

自己一致とは、自己概念(そうであるべき自分)と自己経験(あるがままの自分)が一致している状態のこと。ロジャースの来談者中心療法において目標とされる健全なパーソナリティの状態で、後にジェニュインネス(純粋性)と呼ばれるようになった。逆に自己概念と自己経験の不一致がクライエントに不適応をもたらすことになるのである。心理療法の場では、セラピストの自己一致が、クライエントの不一致から自己一致状態へ変化、治療効果をもたらす為の必要条件とされている。

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ストランズ

ストランズとは、本来の意味は撚り糸のことで、心理療法において、クライエントがどのような状態にあるのかを把握する為の手がかりのことで、最終的に統合されるべき人格の各側面である。ロジャーズ,C.R.は、7つのストランズの変化を段階づけることで心理療法の進行過程を客観的に評価しようとした。人格が未成熟な段階では各ストランズが区別可能であるが、成熟していくにつれ1本の網のような統一体になっていく。ストランズとして、①感情と個人的意味付け、②体験経過、③不一致、④自己の伝達、⑤体験の解釈、⑥問題に対する関係、⑦関係の仕方の7側面が用いられるのである。

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フォーカシング

ジェドリン,E.T.は、ストランズのひとつである体験過程こそ、心理療法の本質であると考えた。体験過程とは、身体感覚として体験されるが、概念にできない感情の流れと定義。この体験過程に接近することでクライエントの自己理解を援助する技法のことをフォーカシングと呼ぶ。フォーカシングでは、フェルトセンスと呼ばれる、曖昧であるが直接感じとれる身体感覚を明確化する過程を通して、自己の内面に存在する言語化・概念化が困難な心の動きに焦点を当てていくのである。

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エンカウンターグループ

エンカウンターグループとは、ロジャース,C.R.により開発された、人間的成長・自己洞察・対人技能の向上を目的としたグループ体験のこと。10人前後の小集団で数日間の合宿生活を行い、自由に話し合っていく。ファシリテーターと呼ばれる、集団の相互作用を促進するためのスタッフが、そのプロセスを援助していく。そうして参加者の間に自由な感情の交流が生じることで、新たな自分への気づきを得る。話し合い(セッション)に課題を設定する構成的エンカウンターグループもある。

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行動療法

行動療法とは、客観的に実証された学習理論の応用により、誤って学習された不適応型行動パターンを消去し、未学習の適応的行動パターンの形成を行うことで、問題症状を適切な方向へ変容させる心理療法のこと。行動療法の背景には、あらゆる人間の行動は学習により成立するという行動主義心理学理論が存在している。科学としての心理療法であり、精神分析や来談者中心療法とは異なり、直接観察できない人間の内的過程に働きかけることはしない。

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フラッディング

フラッディングとは、恐怖や不安症状の原因となる現実場面に、クライエントをいきなり直面させ、実際には何も恐ろしい事態が生じないことを理解させることで治療を行う、行動療法のひとつである。主に恐怖症・強迫性障害の治療に用いられる。実施における留意点として、クライエントの安全を確実に保障すると同時に、クライエントが逃げないように退路を完全に断つことが必要。エクスポージャーや系統的脱感作との相違は、段階的にではなく最初から最大級の恐怖に直面させる点である。

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エクスポージャー

エクスポージャーとは、曝露法とも言われるもので、恐怖や不安症状の原因となる状況や刺激に、クライエントを段階的にさらすことで、不適応反応を消去する行動療法のひとつ。フラッディングと同じ意味で用いることもあるが、段階的に恐怖刺激にさらす「段階的エクスポージャー」のことを、エクスポージャーと呼ぶことが多い。実施における留意点は、フラッディングと同様、クライエントの安全を確実に保障すると同時に、クライエントが逃げないように退路を完全に断つことである。

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系統的脱感作法

系統的脱感作法とは、代表的な行動療法であり、エクスポージャーと逆制止法が合わさったもの。逆制止法とは、不安や恐怖に対して、拮抗する反応(リラックス状態)をぶつけることで打ち消す技法のこと。具体的な方法としては、①不安拮抗反応を獲得する、②不安階層表を作成、③不安階層表に基づいて、不安の低い場面からイメージさせるとともに逆制止法を行い、不安が解消されたら次の段階へ進む、というのが一般的。ウォルピ,J.により考案。イメージではなく現実場面を使う現実脱感作法も用いられるのである。

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不安階層表

不安階層表とは、クライエントに不安・恐怖反応を引き起こす刺激や状況を特定し、それらの強さを段階的(多くは10段階)に配列した表のこと。系統的脱感作法やエクスポージャーの実施においては不可欠。不安階層表の作成方法は、主観的な不安・恐怖の強さを0~100の値で得点化したSUD(自覚的障害単位)を使用し作成されることが多い。

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嫌悪療法

嫌悪療法とは、不適応行動の消去を目的とした行動療法のひとつである。例えばアルコール依存症者に抗酒剤あるいは催吐剤を投与し、飲酒直後に吐き気を引き起こさせ、飲酒行動を抑制する。与える刺激としては、弱い電気ショックや不快な音刺激なども使用される。しかし、嫌悪療法の効果はあくまでも一時的なものであり、対症療法に過ぎないことを忘れてはいけないのである。アルコール依存症のほか、喫煙や過食、性的逸脱などが適用対象とされている。

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トークンエコノミー法

トークンエコノミー法とは、適切な反応に対してトークン(代用貨幣)という報酬を与え、目的行動の生起頻度を高める行動療法の技法である。トークンは、一定量に達すると特定物品との交換や特定の活動が許されるという二次的強化の機能を果たす。適用に あたっては、事前にクライエントとトークンと代替する物品・活動の取り決めをすることが重要。この技法は、強化子に飽きにくく、場所を選ばずに強化できる、強化が遅れないなどの点で効果的である。

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負の練習法

負の練習法とは、条件性制止法とも呼ばれるもので、ハル,C.L.の行動理論に基づく技法である。例えばチックなどの習慣化した不適応行動を意識的に集中反復させて、反復後に一定の休息を与える、という過程を繰り返し行う。それにより、反復による疲労や徒労感が学習され、症状が消失するというもの。チックのほか、吃音や心因性失語などが適用対象となるのである。消去すべき症状を意識的に反復させるという逆説的な技法。

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バイオフィードバック

バイオフィードバックとは、オペラント条件づけによるセルフコントロール技法のこと。自律神経系の生理活動を、バイオトレーナーなどの機器により、視覚・聴覚的に知覚可能な情報に変換し、クライエントにフィードバックすることによって、随意的なコントロールを学習させる。脳波や心拍数・血圧・体温・GSRなど、通常は自律神経が制御している活動を意識的に変化させることで、神経症・心身症の治療やストレス緩和などに応用されている。自律訓練法の目的が全身のリラクゼーションであるのに対し、バイオフィードバックはピンポイントの身体変化である。

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自律訓練法

自律訓練法とは、ドイツの精神科医シュルツ,J.H.により開発された、一種の自己催眠であり、セルフコントロール技法のひとつである。「公式」と呼ばれる自己暗示の言葉を頭の中で繰り返すことで、段階的に心身のリラクゼーションを行い、感情の沈静化と自律神経系の安定が得られる。不安・緊張をともなう神経症や心身症の治療、及びストレス緩和法として用いられる。従来は、自律神経系の意識的コントロールは不可能と考えられていたが、現在では自律訓練法やバイオフィードバックなどの技法が普及しているのである。

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認知療法

認知療法とは、ベック,A.T.により創始された心理療法のひとつ。認知とは、外界の刺激に対して意味付けや価値判断を行う情報処理のこと。パターン化され(スキーマ)、通常は意識されない(自動思考)認知の過程の歪みが、抑うつなどの不適切な感情反応を引き起こしていると理論づけている。治療としては、クライエントが認知の歪みを自覚・修正し、適切な認知・行動パターンを獲得することを援助する。抑うつだけでなく、パニック障害や人格障害の治療にも効果をあげているのである。

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論理療法(理性感情療法・合理情動療法)

論理療法とは、エリス,A.が創始した心理療法のひとつ。外界の出来事は、認知的枠組みである信念を通じて判断がなされ、その結果情動的反応が生じるとみなす。ゆえに、クライエントの不適切な情動反応は、信念の非合理性により生じたものとし、非合理的信念を合理的なものへと変容させることで治療を行う。認知療法がクライエントの自覚を促すのに対し、論理療法ではセラピストが積極的にクライエントの非合理的信念を徹底的に論駁・粉砕し、それに代わる合理的信念を構築させるのである。

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ABCDEモデル

ABCDEモデルとは、エリス,A.の論理療法の基礎理論のこと。Aは「出来事」、Bは「信念」、Cは「結果としての感情」を表す。AからCへ直接もたらされるものではなく、Bを媒介するもので、治療過程は非合理的信念を合理信念へ変えることである。Dの「論駁」を経てEの「効果」が得られる。

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認知行動療法

認知行動療法とは、行動的技法と認知的技法を効果的に組合わせて行う心理療法のこと。行動変容だけでなく、その行動を支配する内的な認知過程の変容も等しく重視する折衷型アプローチ。かつて内的過程を排除した行動主義心理学が、情報処理理論から内的過程を研究する認知心理学にシフトしたように、行動療法も認知的な技法を統合することで進化したといえるのである。対象に合わせ適した技法を組合せ、治療プログラムをデザインできる治療パッケージが特徴である。

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モデリング療法

バンデューラ,A.の社会的学習理論において、モデルを観察することで、新たな行動が学習されたり既存の行動の修正が行われることを、モデリング(観察学習)と呼んでいる。モデリングにより、不適切な行動を消去するとともに適応的な行動を獲得させ、問題行動の改善や障害の治療を行う技法が、モデリング療法である。恐怖症の治療、精神病患者や発達障害児のスキル訓練など、多くの場面に適用されている。

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社会的スキル訓練

社会的スキル訓練とは、社会的スキルの欠如が引き起こす不適応行動を治療する為の、認知行動的な訓練プログラムのこと。社会的スキルとは、対人場面での適切なコミュニケーションを可能にする認知的・行動的な技法である。精神分裂病者のリハビリテーションを目的として開発されたが、現在では発達障害児や情緒障害児の療育にも拡大されている。基本的な技法は、モデリングとロールプレイ(役割演技)による技能学習とそれに対する適切な強化である。

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ストレス免疫訓練

ストレス免疫訓練とは、マイケンバウム,D.が体系化した、ストレスに対する認知行動療法のこと。クライエントに、ストレスへの適切なコーピングと予防法を学習させる訓練プログラム。訓練は3段階で行われ、最初の教育段階では、ストレスについての知識をクライエントに与える。続いてのリハーサル段階では、リラクゼーション法などの行動的技法と自己教示訓練などの認知的技法を習得させ、最後の適用訓練段階は、実際場面での実践を行う。

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EMDR

EMDRとは、直訳すると「眼球運動による脱感作および再処理法」で、近年注目されているトラウマ関連障害に対する、認知行動的治療技法である。代表的な方法としては、①患者に恐怖を感じる場面をイメージさせる、②治療者が患者の眼の前で指を左右にリズミカルに動かす(1秒で2往復)、③それを患者に眼で追跡させる、④20往復したら眼を閉じ深呼吸をしてもらう、というものである。シャピロ,F.により偶然発見された治療法で、治療機序は未解明であるが、PTSDの治療には予想以上の効果が報告されている。

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森田療法

森田療法とは、森田正馬が創始した心理療法のこと。症状への「こだわり」が症状を固定化させているという悪循環を断ち切り、あるがままの自分を受け入れて生きて行く事を援助する。治療は合宿形式で、最初の1週間の絶対臥褥期では全ての活動を禁じられる。その後、軽作業期・重作業期・生活訓練期と推移する過程で、症状を生み出していた精神エネルギーの本来の形(生への欲望)を取り戻し、「あるがまま」の態度で再び社会復帰していくのである。

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内観療法

内観療法とは、仏教の修行を元に、吉本伊信が創始した心理療法のこと。研修所に1週間宿泊して行う集中内観では、クライエントを集中できる環境におき、両親など重要な他者との関係を、①世話になったこと、②して返したこと、③迷惑をかけたこと、の3点について思い出させる。セラピストは1~2時間ごとに訪れて想起内容を共感的に傾聴する。この作業を通じて、自己と他者のイメージが再構築され、肯定的な自他認知への変容が生ずる。また、集中内観の後も、生活の中で日常内観を行う。

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交流分析

交流分析とは、バーン,E.により開発された理論体系及び、集団心理療法のこと。「互いに反応しあっている人々の間で行われている交流(コミュニケーションのやりとり)を分析する事」で、自己理解の促進と自発性の増強、真の対人関係の回復を目的としている。自分の自我状態やコミュニケーションの癖に気づくことにより、過去から解放された、よりよい親密で生産的な人間関係と生活スタイルを実現しようとするのである。

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ストローク

ストロークとは、交流分析の用語であり、「人の存在を認める行為」を意味するもの。バーン,E.によると、人間は常に他者からのストロークを求めている。ストロークには、身体的に接触するタッチ・ストロークと、表情・仕草・言語による心理的ストロークがあり、またそれぞれ肯定的/否定的ストロークに分かれる。個人のストロークの受け方と与え方には独特の癖があり、それは幼児期にどのようなストロークを受けたかに影響されている。そして、現在の対人交流パターンを作り上げていくのである。

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構造分析

構造分析とは、交流分析では、自我状態を「親の自我状態(P)」、「大人の自我状態(A)」、「子供の自我状態(C)」、の3つに分かれていると仮定する。さらに詳細に5つに分けられる。①CP:個人の道徳性を司る部分(批判的な親)、②NP:養護性を司る(養育的な親)、③A:合理性を司る(大人)、④FC:創造性を司る(自由な子供)⑤AC:協調性を司る(適応した子供)

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エゴグラム

エゴグラムとは、構造分析をグラフ化したもの、またはそのための質問紙検査のこと。バーン,E.の弟子であったデュセイ,J.M.が考案。横軸に左からCP・NP・A・FC・ACの5つの自我状態、縦軸に各自我状態の強さを表す棒または折れ線グラフを配置して作図される。初期には、面接から直感的に作成されていたが、その後は質問紙による作成が主流となり、独立したパーソナリティ検査としても普及したのである。日本でも東大式エゴグラムが多くの臨床現場で用いられている。

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交流パターン分析

交流パターン分析とは、2人の間のやりとり(交流)パターンの分析のこと。構造分析において自我状態に偏りがある場合、そこに交流が集中しやすいのである。交流のパターンは、3通り。①相補的交流:交流が2者間で一致し、スムーズな交流が長続きするもの、②交叉的交流:2者間で交流の方向性が食い違い、不快な感情を引き起こすもの、③裏面的交流:表面上は普通の相補的交流に見えるが、その裏にもうひとつの交流が存在するもの。隠された交流が交叉的な場合、不快な感情が生じても本人には原因がわかないのである。

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ゲーム分析

表面的にはスムーズにみえる交流パターンが繰り返し行われているが、毎回なぜか不快な感情(ラケットと呼ぶ)が残る場合、その交流の裏に意識されない別の交流が存在してしていることがある。このような、反復される非生産的な表裏の交流パターンをゲームと呼んでいる。たとえば共依存もそのひとつ。気づかずに反復しているゲームを、自覚し修正することで、人間関係の慢性的な悪循環を断ち切る。この為の分析のことを、ゲーム分析と呼んでいるのである。

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脚本分析

脚本分析とは、人生をひとつの舞台とみなし、個人が知らず知らずのうちに演じてしまう人生の脚本を、理解し修正する為の分析。この脚本は、乳幼児期の経験、特に両親や周囲の大人から与えられたメッセージがもとになる。自己破滅的な脚本は、かつて与えられた「~であるな」という禁止のメッセージがもとになり、その人の人生を縛りつけている。そこで、自分の脚本はどういうものかを理解し、建設的な脚本に書き換えられることを通じて、人生計画を自分で制御していく。

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ゲシュタルト療法

ゲジュタルト療法とは、パールズ,F.S.が提唱した心理療法のひとつ。ゲシュタルトとは、「全体としての形態」という意味であり、人間存在の全体性と統合性をあらわす概念。過去へのこだわりや未来への不安にとらわれるのではなく、「いま・ここ」の体験を感じることを目指す。それまでの部分的だった自分自身と世界に、あるがままの全体性を取り戻し、自己実現を促進することが治療目的である。言葉による解釈よりも、「いま・ここ」での経験を意識することを重視する、独特の技法が使われている。

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気づき

気づきとは、固定概念や先入観に捕らわれていた為に、直接感じることができなかった、「いま・ここ」で自分が感じている心や身体の状態を、ありのままに知覚すること。感情・身体言語など、意識から排除していた部分を、クライエントが「いま・ここ」で気づくことができたときに、全体としての自分が感じられるようになるとした。パールズ,F.S.は「ミニ・サトリ」と呼ぶ。ゲシュタルト療法だけでなく、交流分析やフォーカシングでも重要な概念のひとつである。

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エンプティ・チェア

エンプティ・チェアとは、ゲシュタルト療法のひとつ。クライエントの心の中の分身・自分自身・重要な人物・事物・身体の一部・架空のものと対話の必要が生じたときに、クライエントの座るホット・シートの前にある空の椅子にその心の対象を座らせ、擬人化して対話を進めていく技法。またはその空の椅子のこと。日本では、椅子の代わりに座布団やクッションを用いることもある。

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ドリームワーク

ドリームワークとは、ゲシュタルト療法の技法のひとつであり、「夢を生きること」とも呼ばれているもの。夢に登場してくる人物や事物をクライエントが演じることで、言語化や行動化を通して夢を再現して、夢のメッセージを経験的に知ることができる。クライエントに夢とコンタクトを持たせ、それにより得られる洞察を可能にした。この技法の背景には、夢はクライエントの疎外された自己の部分であるという、ユング派の夢分析理論の影響が見られる。

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遊戯療法

遊戯療法とは、言葉の代わりに遊びを媒介にした心理療法のこと。言語による自己表現能力が未成熟な子供を対象としている。子供が、安全に遊びに没頭できるプレイルーム(遊戯療法室)で、セラピストと遊ぶことで治療が行われる。子供は、自由に遊ぶ事でカタルシスを行い、自己治癒力を発揮していき、セラピストとの治療的人間関係の中で、非言語的表現による自己洞察を行い、自己像を肯定的に変容させていくのである。個人遊戯療法と集団遊戯療法がある。

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遊び

遊びの理論には、余剰エネルギー説や生活準備説などがある。だが、遊戯療法における遊びには、自己表現及びカタルシスの役割が重視されている。また、対象関係論のウィニコット,D.W.は、遊びは移行領域で行われる作業であり、ファンタジーと現実が 共存できる世界で自由に遊ぶことで、子供は内的世界と現実の折り合いをつけていくとした。ゆえに安全で自由に遊ぶことが許されるプレイルームは、移行領域と同じ機能があるのである。

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アクスラインの8原則

アクスラインの8原則とは、アクスライン,V.M.が強調した、遊戯療法家に必要な8つの基本原理のこと。彼女は、ロジャース,C.R.の来談者中心療法の立場を発展させ、児童中心療法としての遊戯療法を提唱。具体的には、①よい治療関係を成立させる、②あるがままの受容を行う、③許容的雰囲気を作る、④適切な情緒的反射を行う、⑤子供に自信と責任をもたせる、⑥非指示的態度をとり、治療者は子供の後に従う、⑦治療はゆっくり進む過程であるからじっくり待つ、⑧必要な制限を与える、等である。この8原則は、日本の遊戯療法家にも広く取り入れられているのである。

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芸術療法

芸術療法とは、絵画や音楽などの芸術活動を媒介する心理療法のことである。心理療法やカウンセリングの多くが言語を主回路にするのに対し、芸術療法では作品に表れたイメージを用いるので、言語能力に問題のあるクライエントにも有効である。また、言語が一過性のものであるのに対し、絵や箱庭などの作品は何度でも見直すことが可能で、芸術表現行為そのものに、カタルシス効果や深層心理の投影、対人関係の促進などの治療的効果があると考えられている。

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コラージュ療法

コラージュとは、写真や絵・文字などを新聞・雑誌から切り抜き、これを台紙に貼り、ひとつの作品にすること。これを心理療法に取り入れたものを、コラージュ療法と呼ぶ。代表的なものとして、素材を切り取る新聞・雑誌をクライエントに用意してもらうマガジン・ピクチャー・コラージュ法と、セラピストが前もって切り抜き、箱に入れておいた素材を使うコラージュ・ボックス法がある。いわば二次元的な箱庭療法であり、解釈にも共通の理論が用いられる。

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サイコドラマ(心理劇)

サイコドラマとは、モレノ,J.L.が創始した集団心理療法のこと。演者(と観客)が、台本なしに自発的な役割を演じることを通じて、内的葛藤を表現し自己洞察へと至ると同時に、新たな、役割の取り方を学習していく。サイコドラマの治療要素は、演者(患者)・監督(主治療者)・補助自我(副治療者)・観客そして舞台の5つの要素から構成されている。

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補助自我

補助自我とは、サイコドラマにおける副治療者であり、即興劇の役者兼助監督でもある。主役であるクライエントの相手役となって、クライエントが自己の内面を演劇として表現するのを助ける役割。技法として、主役の役割を補助自我がそのまま演じる「ミラー」や、主役と補助自我の役を入れ替えて演じる「役割交換」、主役の分身を補助自我が演じ、2人で主役の内面を話し合う「ダブル」などがあり、サイコドラマにおいて補助自我の役割は重要であるとされている。

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風景構成法

風景構成法とは、中井久夫により開発された、心理検査を兼ねた芸術療法のひとつ。具体的には、A4の紙にサインペンで枠どりをして、クライエントに「川・山・田・道(大景群)、家・木・人(中景群)、花・動物・石(小景群)、付け加えたいもの」の順に描きいれてもらい、最後にクレヨンで着色し、全体でひとつの風景を完成させるもの。元々は精神分裂病患者とのコミュニケーション手段として考案された非言語的手法であったが、現在は独立した技法となっているのである。

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スクイッグル法

スクイッグル法とは、相互なぐり描き法とも呼ばれるもので、ウィニコット,D.W.が開発した描画法。具体的には、まずセラピスト(クライエント)がサインペンで用紙になぐり描きをする。続いてクライエント(セラピスト)が、そのなぐり描きから連想されたものを、クレヨンで線を描き加えて完成させるのである。この過程を、順序を交替して数回繰り返す。なぐり描きと描画をひとりで行うスクリブル法もある。複雑な描画でない為、絵が下手な被験者でも抵抗や緊張が少なく、子供にも有効である。

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Tグループ

Tグループとは、トレーニンググループの略称で、参加者相互の自由なコミュニケーションにより、人間的成長を目指すグループ・アプローチのこと。元々は、グループダイナミクスの研究者であったレヴィン,K.が発見した手法を発展させた、感受性訓練に由来するもの。初期の目的は、福祉職や管理職の為のリーダーシップの習得、つまり人材育成であったが、その後、人間性心理学や実存心理学の影響を受け、集団療法としても普及していったのである。

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ジョハリの窓

ジョハリの窓とは、グループ体験におけるパーソナリティ変容のメカニズムを説明する際に使用される概念のこと。自己のパーソナリティを、①自分も他人も知っている面(開放領域)、②自分は知らないが、他人は知っている面(盲点領域)、③自分は知っているが、他人は知らない面(隠蔽領域)、④自分も他人も知らない面(未知領域)、の4つの領域として把握する。グループ体験において、自己開示とフィードバックで、盲点領域や隠蔽領域を縮小し、開放領域を拡大することが、自己理解や人間関係訓練につながっていくのである。

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自己開示とフィードバック

自己開示とは、自分の考えや感情を相手に適切に伝えることを意味し、フィードバックとは、自分または第三者が相手をどう見ているかというデータを与えることである。エンカウンター・グループや、Tグループなどのグループ体験において、参加者が互いにこれらを行うことで、自己についての気づきを深めることができる。また両方とも、治療者とクライエントとの関係を促進する為の、マイクロカウンセリングにおける積極的技法でもある。

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セルフヘルプ・グループ

セルフヘルプ・グループとは、共通の障害や問題を抱えている人達が、相互援助を目的として、自主的に組織化・運営している自助グループのこと。セルフヘルプ・グループの効果としては、疎外感・孤立感の解消、克服モデルの提供、そして援助者役割を果たすことが治療となる援助者療法原理が挙げられる。専門的・制度的ケアに不充分な部分を補完するものであり、セラピストなどの専門家と対立するものでない。地域援助の一環としてのコンサルテーション機能がセラピストには期待されるのである。

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家族療法とシステム理論

近代西洋医学では、人間の体を還元主義的に捉える。患部や病因を特定しそれを排除することで治療を行う。一方東洋医学では、鍼灸のように、人体をネットワークまたはシステムとみなす。漢方では、体質改善による病気予防を重要視しているのである。従来の個人療法を西洋医学とするならば、家族療法やコミュニティ心理学は東洋医学にあたるもの。

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一般システム理論

一般システム理論とは、生物学者ベルタランフィ,L.が提唱した科学理論のひとつ。システムを、「相互作用しあう要素の集合体」として捉えており、上位システムと下位システムが入れ子状に構成されているとみなすのである。従来の還元主義科学において は、原因と結果を特定することで、事象を理解しようとしてきた(直線的因果律)。しかし、複雑に相互作用しあう要素からなるシステムにおいて、問題の原因を1つに特定するのは不可能(円環的因果律)とされる。家族療法では、家族をシステムと捉え、円環的因果律に基づいて把握しようとする。

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家族療法

家族療法とは、家族をひとつのシステムとし、個人ではなく家族システムを治療の対象とする心理療法のひとつ。個人の問題行動や症状は、過去の生育歴に由来するのではなく、現在の家族システムの歪みに由来すると考えられる。家族メンバー間のコミュニケーション様式(家族ルール)に着目し、歪んだ家族システムを、健全に機能するシステムへ変容させることを目指す。それゆえ、従来の個人療法とは異なる独特の技法(戦略的技法)を発展させ、ブリーフセラピーにも多大な影響を与えたのである。

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IP

家族療法では、個人でなく家族システムを治療単位としており、個人の症状や問題行動は、本人や他の家族メンバーに原因があるのではなく、その症状のおかげで家族システムの均衡が保たれていると考えている。ゆえに、症状や問題を抱えた家族メンバーをIP(患者の役割を担わされた人)と呼び、歪んだ家族システムの犠牲であるとする。これは同時に、IPの症状に対して個人単位の治療を行っても、それは一時的な対症療法に過ぎないことを意味するのである。

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コミュニティ心理学

コミュニティ心理学とは、複雑に相互作用しあう、社会システムと個人とを結びつける心理過程全般についての研究を行っており、この結び付けを、概念的かつ実験的に明らかにすることにより、個人・集団、及び社会システムがよりよく機能するような活動 計画の基礎を提供することを目的とする臨床心理学のひとつ。個人が不適応に陥ってから治療するのでなく、不適応に陥りにくい地域社会の実現を目指す、予防的アプローチであり、21世紀における臨床心理学の課題のひとつ。

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ブリーフセラピー

ブリーフセラピーの定義は未だ不明確。短期間で治療を行う心理療法全般を指す場合もあるが、近年では家族療法から発展した一連の心理療法を意味することが多い。これらは単に治療期間が短いというだけでなく、システム理論及びコミュニケション理論に基づき、個人を取り巻く環境(家族システム)に焦点を当てた心理療法。心理世界内面を探るのでなく、個人を取り巻くシステムの相互作用(コミュニケーション)を変化させることで治療を行っていくのである。

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対抗パラドックス

対抗パラドックスとは、症状処方とも呼ばれるもので、家族療法やブリーフセラピーの技法のひとつ。表面上は、症状や問題が悪化する方向へ治療をすすめるように見えながら、実際には、悪循環を切断するもの。例えば、自分で制御できない症状に悩むクライ エントに対し、わざと症状を起こすように指示。クライエントが自分の意志で再現することで、症状に対する意識的なコントロールを可能にする、あるいはクライエントの治療抵抗をセラピストに有利な方向へ設定することで、指示に従っても反しても症状の改善につながる、というもの。

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例外の発見

例外の発見とは、ブリーフセラピーの技法のひとつ。不適応行動の原因が何かを探るのでなく、不適応行動が出ない時はどんな状況なのかに注目。例えば子供の不登校が問題の場合、なぜ登校しないかでなく、「どういう時に登校するのか」を探っていくのである。どんなに小さな例外でも逃さず発見し、その例外を支えている条件を見つけ出し再現する。例外とは、すでに解決している部分のことであり、解決している部分を拡大することで問題部分を縮小していくというアプローチである。

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ミラクル・クエスチョン

ミラクル・クエスチョンとは、ブリーフセラピー独特の技法。問題解決後の状況を具体的にイメージさせる。例えば、「寝ている間に奇跡が起こり、あなたの問題がすべて解決したとします。そしたらあなたはその奇跡がおこったことをどんなことから気づきますか?」という質問を行い、さらにそのイメージをより具体化して行く事で解決法を探るのである。質問として、「あなたの夢が正夢になったら」を使う技法もある。その場合は、ドリカム・クエスチョンと呼ばれる。

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ソリューション・フォーカスド・アプローチ

ソリューション・フォーカスド・アプローチとは、解決志向アプローチとも呼ばれるもの。その特徴は、問題や原因に焦点を当てるのでなく、クライエントや関係者と協力し「解決」を構成する点。原因を探ったり、問題を明確化しようとすることは、いたずらに治療を長期化させたり、新たな問題を掘り起こしたり、悪役を作り出したりするという副作用がある。しかし、たとえ原因どころか何が問題なのかが明確でなくても、「解決」は可能。技法としてミラクル・クエスチョンや例外の発見が用いられるのである。

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コンサルテーション

コンサルテーションとは、コンサルタント(臨床専門家)によるコンサルティ(他の専門家)への助言指導を意味することが多い。クライエントに接しているのはコンサルティであり、コンサルタントは間接的な援助を行う。例えば、不登校児に直接関わる教師(コンサルティ)が、セラピスト(コンサルタント)の援助を受けて対応するなど。クライエントへの間接的援助だけがコンサルテーションの目的でなく、次に類似の問題が起きたときに自力で解決できるようにコンサルティを成長させることでもある。スーパーヴィジョンもコンサルテーションのひとつ。

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リエゾン

リエゾンとは、専門的な連携を意味する言葉。ひとつの専門領域を代表して、他の専門領域に援助的に関わり、専門領域間の相互関係を調整していく。精神医学においては、リエゾニスト(精神科医や心療内科医)が継続的に他科の治療チームと協力して、主に医療スタッフと患者・家族との間及びスタッフ間の相互関係上の問題を、その活動の対象とする。病院や学校などのシステムが持つ機能を最大限に活かすことを目的に、メンバー間の円滑な相互作用を促進するのがリエゾンの意義である。

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危機介入

危機介入とは、危機状態にある人に対して、迅速で効果的な対応を行うことで危機を回避させ、その後の適応をはかる援助のこと。危機とは、一面的に否定的なものではない。人間の適応を脅かして不適応に陥らせる危険であるとともに、その克服を通して高次のコーピングを身に付ける可能性を持つ分岐点でもある。不適応に陥ってから治療するより、危機状態にある間に適切な援助を行うことで、不適応を予防し適応を取り戻すことが重要。ゆえに危機介入には迅速さが求められるのである。

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電話カウンセリング

電話カウンセリングとは、電話を媒介とした心理的援助活動のこと。具体的な指導や助言よりも、共感的な傾聴が重視される。治療構造や専門性の面においては、電話カウセリングを心理療法とみなすのは難しい。しかし、時間や距離に制限されないという緊急時の即応性の点においては、危機介入に欠かせない援助法である。コミュニティ心理学においては、電話カウンセリングは、地域精神衛生上、有用な社会資源となる可能性を持つもの。

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