臨床心理学:カウンセリングの諸技法 (19)

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インテーク面接

インテーク面接とは、受理面接とも呼ばれるもので、相談機関に来室したクライエントに対して行う初回面接のこと。目的は、クライエントとの間にラポールを形成し、主訴及び問題に関する情報収集と明確化を行い治療方針を決定するとともに、クライエントに治療に関する情報を提供することである。インテーク面接で合意が得られてはじめて治療契約が交わされる。しかし他の援助法が必要と判断された場合、別の機関へのリファー(紹介)が必要となる。

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リファー(紹介)

リファーとは、相談機関に訪れたクライエントに対し、その機関では十分な対応ができない場合、他の適切な専門家にクライエントを紹介すること。特に精神病や器質性疾患が疑われる場合には精神科を、心身症の場合には心療内科を紹介するなど、他分野との 連携が大事。また神経症の場合でも、治療者の療法が有効な治療になりえない場合は、最も適した心理療法の専門家に紹介する。自らの能力を知ることが、治療者には求められるのである。

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ラポール

ラポールとは、心理療法の場面で、治療者とクライエントとの間に感情や意志の交流・理解があり、両者とも自由に振る舞える安心感、相手に対する信頼感が成立している状態のこと。心理療法における治療関係の出発点であり、理論の違いを超えて共通の基本前提条件として重視されている。また心理検査に関しても、検査者と被検者との間のラポールは重要であり、特に1対1で行う投映法や知能検査では不可欠とされている。

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転移(感情転移)

転移とは、元来は精神分析の概念で、患者が分析家に対し、過去の重要な対人関係を無意識的に再現した感情を向けること。広義には、心理療法中にクライエントから治療者に向けられる非合理的な感情を意味する。肯定的で親近的な感情を伴う転移を陽性転移、否定的で拒否的な感情を伴う転移を陰性転移と呼んでいる。どのように転移を扱うかは治療理論により異なる。転移は非合理的な感情であり、クライエントの正当な反応とは区別せねばならない。

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逆転移

逆転移とは、転移とは逆に、心理療法中に治療者からクライエントに向けられる、非合理的な感情のこと。陽性の転移は治療に役立つ場合もあるが、逆転移は治療者とクライエントの適切な距離を乱し治療の枠組みをも壊しかねない危険なもの。フロイト,S.は、逆転移は消滅させるべきとし、教育分析の重要性を強調した。しかし現在は、治療者が逆転移を自覚し、それに振り回されることなく治療に活かすことが重要視されている。特に境界例患者は、激しい転移・逆転移を引き起こす事が多く、注意が必要である。

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抵抗

抵抗とは、治療抵抗とも呼ばれるもので、心理療法中に現れる、治療を妨げるクライエントの言動のこと。クライエントは、意識上は治療を望んでいるが、無意識的に変化に対する不安があり、それが抵抗として現れる。自らの無意識と直面する苦痛を回避し、また症状や問題により得られる周囲の関心や同情を失いたくないという疾病利得が背景にある。しかし、治療者とともにクライエントが抵抗の意味を考え自覚していくことで、成長への手がかりともなるのである。

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教育分析

教育分析とは、セラピストやカウンセラーの訓練過程において、自らがクライエントとなり、習得しようとセラピーやカウンセリングを受けること。元々は精神分析の用語。精神分析家は、自己理解を深め、将来治療の妨げとなりうる自らの葛藤や抑圧された問題を前もって解決しておく為に、訓練段階で分析を受けることが求められている。しかし現在では、自己理解促進だけでなく、クライエントの内的変化を共感的に理解するため、自らも治療過程を経験しておくという効果が重視されているのである。

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スーパーヴィジョン

スーパーヴィジョンとは、セラピストやカウンセラーの訓練最終段階のこと。具体的には、実地訓練において、訓練生であるスーパーヴァイジーは、クライエントへの治療面接と並行して、指導者であるスーパーヴァイザーの面接を繰り返し受け、自分のケース過程を報告し指導・助言を受ける。治療面接を振り返るとともに、自らをクライエントの立場におくことで、スーパーヴァイジーの面接技術・共感性が向上し、次回の治療面接に活かされていくのである。

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マイクロカウンセリング

マイクロカウンセリングとは、アイヴィ,A.E.により開発された、カウンセラーの訓練プログラムのこと。カウンセリングや心理療法における技法を、分類・構造化したマイクロ技法階層表に基づき、1度に1つずつ習得していく。技法群を大別すると、基本的関わり技法、焦点のあて方、積極技法、対決、技法の連鎖及び面接の構造化、技法の統合の順で階層表の上層に配置されている。

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基本的かかわり技術

基本的かかわり技術とは、マイクロカウンセリングにおいて、最も基本的な技法群である。かかわり行動、クライエント観察技法、開かれた質問と閉ざされた質問、励まし・言い換え・要約技法、感情の反映、意味の反映から成立する。これらの技法は、ラポールを形成し共感を高めるのに役立つもの。どの流派のカウンセリングにおいても共通した技法といえる。クライエントを1個の独立した人格と認め、尊重する態度である。

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基本的傾聴技法

基本的傾聴技法とは、基本的傾聴の連鎖とも呼ばれるもので、マイクロカウンセリングにおいて、基本的かかわり技法の中の、開かれた質問/閉ざされた質問、励まし、言い換え、要約、感情の反映を基本的傾聴技法と呼ぶ。共感を高めるのに役立つ。これらの技法は、来談者中心療法において、ロジャース,C.R.が強調した技法である。しかしこれらは、ロジャース派に限らず、優れたカウンセラーならば無意識に使っているとされるものである。

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閉ざされた質問/開かれた質問

閉ざされた質問とは、「はい/いいえ」で答えられるような質問。応答が制限されている為、緊張が強いクライエントでも答えやすく、必要な情報を手早く集めるのに適している。それに対し、開かれた質問とは、「どうして/どのように/どんな~」などクライ エントに自由な応答を促す質問のこと。クライエントの自己開示を促進する効果があり、よい治療関係の成立に欠かせない。クライエントの状態や心理療法の進行に応じて、これらの質問をうまく使い分けることが重要。

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感情の反映

感情の反映とは、マイクロカウンセリングにおいて、基本的かかわり技法及び基本的傾聴の連鎖のひとつ。元は来談者中心療法における応答上の態度で、共感的理解に欠かせないもの。クライエントが話す内容に表現されている感情表現にカウンセラーが気づき、それを反射して返すことでクライエントの自己理解を援助する。適切に行うことで、カウンセラーとクライエントの間に信頼関係が生まれ、クライエントの防衛が解けて自己開示が促進されるのである。

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ナラティブ・セラピー

ナラティブ・セラピーとは、特定の心理療法のことではなく、社会構成主義に基づく治療理論と技法のこと。社会構成主義とは、客観的現実というものは存在せず、現実は人々の間で構成されるものという、芥川龍之介の「藪の中」的な世界観。ナラティブ・セラピーでは、クライエントを支配する「物語」を、セラピストとの対話を通して新しい肯定的・建設的な「物語」へと編集し直していくのである。

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リフレーミング

リフレーミングとは、肯定的意味付けとも呼ばれるもので、クライエントの言動や症状に新しい枠組を付け直すこと。マイクロカウンセリングにおける解釈とほぼ同義とみなされている。リフレーミングの意義は、固定化した一面的な物事の見方に縛られたクライエントや家族に対し、全く違う角度からの視点を提供することで、物事を多面的に見る柔軟性を取り戻させることである。したがって、新たな枠組みが真実かどうかは重要ではない。

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回想療法

回想療法とは、レミニッセンス療法とも呼ばれるもので、高齢者の抑うつに対する心理療法のこと。今までの人生を語ってもらい、それを共感的に傾聴するという方法で治療を行う。聴き手は必ずしも臨床の専門家である必要はない。高齢者の抑うつには、アイデンティティの混乱に伴う自己イメージの低下があり、過去を物語ることで自己洞察を深めアイデンティティの再統合をもたらすと考えられているが、本格的な研究が未だなく、はっきりした効果はよくわかっていないのである。

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トーキング・スルー

トーキング・スルーとは、自分の体験や感情を、話すことにより表現すること。多くの心理療法やカウンセリングにおいて、自らの内面を言語化することを主要な治療手段としている。うまく表現できない感情や葛藤は、症状化や行動化という形で適応を妨げる。特にトラウマ体験は、あまりにも異質な為に個人の心の中で異物であり続け、いわば消化不良を起こす。自らの体験を言語化することで、消化吸収できる形に噛み砕いていくのである。

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ピア・カウンセリング

ピア・カウンセリングとは、仲間同志によるカウンセリングという意味。元々は、何らかの問題を抱える人(心身障害者・死別経験者など)が、カウンセリングの訓練を受け、共通した問題を抱えるクライエントを援助することを指した。しかしその後イギリスを中心に、小中高校において、生徒がカウンセラーとなり、同級生や下級生を援助するピア・サポートの試みが、いじめ問題や性教育で実績をあげ、新しいカウンセリング形態として注目されている。

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エンパワーメント

エンパワーメントとは、ソーシャル・サポートのひとつ。社会的弱者の立場におかれた個人や集団が、自己主張・自己決定を通して、自らの権利を回復することを目的とした援助過程のこと。従来の社会的弱者への援助は、自力で問題を解決する能力を弱者から 奪うことにつながる危険があるとして、弱者が自らの権利を守る為に必要な情報や精神的支援などの形で援助を行うのが、エンパワーメントである。例としては、子供への教育を通じて、暴力から自分の身を守る能力を獲得させるCAPプログラムがある。

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