エスノメソドロジー
エスノメソドロジーとは、1960年代にアメリカ社会学の中から、パーソンズらの構造=機能主義的社会学の批判として生まれた新しいパラダイムである。ガーフィンケル,H.により、「人々の日常生活の方法の研究」を表すものとして命名され、方法論的な基礎付けを行った。従来の科学的モデルや合理性の概念を前提にした研究ではなく、生活世界に焦点を当て、人々の共有する常識的思考を「ドキュメント的解釈」・「日常会話の分析」により、解明しようとするもの。
Continue reading...エスノメソドロジーとは、1960年代にアメリカ社会学の中から、パーソンズらの構造=機能主義的社会学の批判として生まれた新しいパラダイムである。ガーフィンケル,H.により、「人々の日常生活の方法の研究」を表すものとして命名され、方法論的な基礎付けを行った。従来の科学的モデルや合理性の概念を前提にした研究ではなく、生活世界に焦点を当て、人々の共有する常識的思考を「ドキュメント的解釈」・「日常会話の分析」により、解明しようとするもの。
Continue reading...エソロジーとは、動物行動学・比較行動学とも訳されるもので、人間も含め様々な動物の行動についての生物学的比較研究のことである。対象をできるだけ自然の環境・生活場面において自然観察を行い、そこから種に固有な行動様式に着目して行動目録を作り、分類・分析を行う。近年では、分子生物学の知見を取り入れ、脳・神経系のレベルでの研究が行われている。
Continue reading...エティックとは、元来言語学者パイク,K.L.の文法素理論の用語でその方法論を一般化したものである。各個別文化体系内の機能を無視して自然科学的な差異・同一性に着目する普遍的アプローチのことである。
Continue reading...イーミックとは、元来言語学者パイク,K.L.の文法素理論の用語であり、その方法論を一般化したもの。あらゆる文化現象の各個別文化体系の機能に着目して人間の行動をその所属する文化の固有な視点から総合的に研究しようとするアプローチのことである。
Continue reading...間主観性とは、後期フッサール,E.の現象学の基本概念である。世界の意味了解は、近代的・合理的・普遍的な認識主体としての個人の主観においてなされるのでなく、超越論的な場における他者と共同体の構成という、複数の主観の共同化による高次の主観においてなされるとした。臨床心理学においても、サリヴァンの「与しながらの観察」やストロロウの「間主観的アプローチ」に端的に見られるように、クライエントとカウンセラーとの間の共生的二者関係の基礎概念となるもの。
Continue reading...哲学的には、目的論の反対概念で、自然・必然的な因果関係において全てを見ようとするもので、近代市民哲学の構成要素でもあり、目的意思・人間的主体の自由・社会的実践の特質が軽視されがちである。生物学的には、生気論に対立するもので、進化論や分子生物学など生命現象を、物理・科学的な無機的な現象と同等のものとして扱おうとするもの。心理学的には、全体論・有機体論の反対概念であり、要素主義的・分析的因果論的・自然科学モデルによる数量的人間理解となる。
Continue reading...機能主義は、19世紀後半に現れた科学的方法論のひとつ。物自体・本質といったものを直接対象とすることができないとする不可知論の前提で、実証主義・現象的な物事の結合・関連を明らかにしようとする立場である。心理学的には、構成主義の反対概念。心の機能は、有機体が環境に適応しようとする精神の統一的活動であるという立場をとるもので、行動主義の母体となるとともに、認知心理学にもつながるものでもある。
Continue reading...経験論は、古代ギリシアではソフィスト、キュレネ学派、アリストテレス、ストア学派、中世の唯名論者を系譜として持ち、近代に至ってはベーコン、バークリー、ロック、ヒュームらによってイギリス経験論の誕生となった。その後、啓蒙哲学に引き継がれ、ジェームズ、W.のプラグマティズムへの広がりを見せている。経験を通じて、形而上学的立場や懐疑論、唯物論や実証主義などに分かれるが、現代の自然科学一般がこの考え方に基づき発展してきているのである。
Continue reading...合理論は、古代ギリシヤではプラトンのイデア論に代表されるように、宇宙そのものの目的論的形成の原理であり、中世においてもキリスト教の神学的世界観に引き継がれ、自然的認識対象に関わる理性的能力が重要視されており、近代に至っては神から人間中心へと移行する中で数字と機械的自然観が結びついてデカルト、スピノザ、ヘーゲルに代表される近代的合理論の誕生となった。理性的で自律的な人格は、近代的主体となるもので、経験論と合理論とが相補的に科学的探求を推進してきたといえるものであり、現象学的還元によって初めてその根源的な基盤を問われるようになってきているのである。
Continue reading...ゲシュタルト心理学とは、19世紀のヴントに代表される、心的現象は要素の総和からなるという要素主義を否定して、20世紀初頭に、要素に還元できないひとつのまとまりとしての構造特性、つまりゲシュタルトに注目してその発生過程や機能を法則化した心理学である。現代では、機械論に対抗するものとして、現象学・ホーリズムの支柱になるとともに、認知科学の中で再評価される。
Continue reading...現象学とは、本来物自体と区別された現象の学を示すもの。人間の認識は、カントにとってはこの現象界に関わる経験的な実在的なものであり、ヘーゲルにとっては絶対精神の発現である意識の発展段階の記述を示すものであった。しかしフッサール,E.は、20世紀初頭、実証主義・心理主義・生の哲学・歴史主義などを批判し、現象の真ある普遍的認識の基礎を求め「事象そのものへ」回帰することを提唱。具体的には、現象学的記述・還元・判断停止などの方法により、志向性・生活世界・間主観性などの概念を提出、心理学・精神病理学・社会学・教育学など広く現象学派を形成。
Continue reading...構成主義とは、機能主義に対抗してティナチーが自身の立場を示す為に用いたもので、19世紀後半から20世紀初頭にかけて主流となったヴントらの要素主義的アプローチである。複合的な心的過程を、徹底した内観により個々の要素に分解、それぞれの要素の特質を調べて、法則定立的に統合の一般法則を見出そうとしたが、やがてゲシュタルト心理学からの批判、機能主義・行動主義の普及の中で衰退していくこととなる。
Continue reading...構造主義とは、人間の文化活動の全体性は、主体の経験からは常に無意識的に隠されているため、普遍的法則性を持った構造という理論モデルにより、対象となる現象を理解しようとする立場のことである。1960年代に、フランスから世界的に広まり、従来の実証科学的な方法、近代的な知のあり方に大きな転換をもたらすものとなっている。
Continue reading...行動主義とは、20世紀初頭、ワトソン,J.B.により提唱された心理学の 方法論のひとつで、70年代まで支配的なパラダイムとなっていたもの。 心的な概念を排除し、すべて刺激に対する反応という客観的行動の指標を もとに、人間や動物の行動の予測と制御を行うべきであるとした。 また遺伝要因よりも環境要因を重要視する環境主義をとった。
Continue reading...作用心理学とは、19世紀後半、ブレンターノ,F.によって提唱されたものである。ヴント,W.の心理学を、要素主義的で意識の内容を研究する現象学であると批判、むしろ心理学は精神作用、対象としてのあるものへの関係、つまり志向的関係を扱うべきであるとし、内観及び表現による内的経験の記述を行った。感覚や想像などの表象を重視し、オーストリア学派やゲシュタルト心理学、フッサールの現象学などにつながるもの。
Continue reading...システム論とは、対象を相互に作用し合う諸要素の集合と見なし、その集合全体をシステムと名付け、その生成や発展・消滅などを研究対象とする理論である。近代科学の分析的・原子論的方法の対極をなすもの。心理学においては、70年代以降、行動科学におけるミラーの諸リビング・システムの研究、家族療法における家族システムの研究、認知心理学の諸研究など全体を関係的に見る視点が不可欠となっているのである。
Continue reading...実証主義とは、超経験的なものを認めず、経験的事実のみを知識の源泉として、感覚的経験による実証を重視する立場のことである。実証主義に対抗する批判として、人間性を巡って生の哲学・現象学・プラグマティズム・実在主義・臨床の知などがあげられる。
Continue reading...実存主義とは、主体的存在としての実存を中心とする哲学的立場のことである。「いま、ここ」における主体の存在理由・自由な選択・自覚を重視するもので、高度に組織化され、没個性化を迫る現代社会において、改めて「自分は何者か」、「生きる意味は何か」を問いかけている。
Continue reading...新行動主義とは、1930年代以降の行動主義の心理学者によりとられた立場のことである。主なものに、トールマンのサイン・ゲシュタルトの概念、ハルの仮説演繹法による理論体系、徹底的行動主義と呼ばれるスキナーの反応―強化刺激による行動分析などがあげられる。
Continue reading...深層心理学とは、ブロイラーが、フロイトの精神分析学を評して名付けたもので、狭義には、1930年以前の精神分析を示し、それ以降の自我心理学とは区別されている。広義には、無意識の領域を想定するあらゆる心理学・精神医学の立場を示すもので、アドラーの個人心理学、ユングの分析心理学、ソンディの運命分析学なども含まれている。基本的な仮説としては、心の構造を意識の表層と深層に分け、深層が表層に対して力動的に影響を与えているというもので、意識の重層的理解・メタ認知的理解を目指している。
Continue reading...精神物理学とは、身体と精神との間の関数的関係について精密科学を築こうとしたもので、実験心理学の測定法の基礎となったものである。主に感覚経験に関して、刺激強度と感覚の大きさの判断について数学的に記述するもので、閾下・閾上の刺激差異が問題となっている。
Continue reading...生の哲学とは、生の力動性・根源性に人間存在の本質を見る立場のことである。生を計量的客観的な記述から切り離して、有機的にその生成と発展を捉えようとするもの。解釈学・実存哲学の先駆となる。
Continue reading...脱構築とは、1980年代に登場したポスト構造主義のキーとなる概念のひとつである。デリダ,J.により提唱された。脱構築の対象となるのは、階層秩序的二項対立を特徴とするロゴス中心的・音声中心的・男根中心的な構造である。基本的認識は、これまでの精神障害者・女性・植民地被支配者といった様々な階級における社会的弱者は、言説の主体から排除されていた、というもの。方法は、このロゴス中心的な構造の内部に働きかけて、自壊させることによって、新たな可能性・主体としての権威を見出そうとするもの。臨床心理学においては、社会構成主義の理念と連動して、ナラティブ・セラピーの理論的支柱となっているのである。
Continue reading...トランスパーソナル心理学とは、行動主義・精神分析・人間性心理学 といった、西洋の心理学モデルの限界を超える為に提唱された 超個人的心理学である。1960年代にアメリカを中心に発生した様々な 人間性回復運動の中から誕生したもの。西欧的自我・個人中心主義を 相対化するものであるとともに、文化的・宗教的にも多様な価値観の 融和を図るもの。
Continue reading...人間性心理学とは、実存主義を背景に、主観的経験・人間としての全体性・自由意志・成長の可能性・自己実現を重視する立場のことである。1950年代にマズロー,A.らによりアメリカを中心に、推進され、精神分析・行動主義に対して第3勢力と言われている。後に、トランスパーソナル心理学へと発展していくもの。
Continue reading...認知科学とは、経験に基づき、人間・生物・無生物に関わるあらゆる認知(知識の性質・構成要素・源泉・発展と利用)を対象とする学際的な科学のことである。心理学・計算機工学・情報工学・神経科学・言語学・哲学・教育学などが含まれている。具体的には,信念システム・感情・学習・パフォーマンス・意識・社会的相互作用・記憶・技能・発達・言語・知覚・思考が主題として取り上げられる。
Continue reading...認知心理学とは、1950年代後半に生まれ、やがて70年代になり認知科学の中心的な役割を担うようになってきたもの。コンピュータを中心としたモデル化とシュミレーションが特徴。行動主義の限界、情報科学の発展、神経生理学の発展を背景とし、従来の実証主義に基づく仮説検証といった心理学的実験パラダイムから包括的モデル作りへと大きくシフトしているのである。
Continue reading...パラダイムとは、科学理論の歴史的発展を分析するため、1960年代、クーン,T.S.により提唱された概念である。科学者共同体に共有されている科学理論の基本的枠組を指す。この基本的枠組は、問題の設定・解法を含み、教科書・教師・啓蒙書などを通して学習され、「通常科学」を形成する。この通常科学の範囲では、パラダイムは意識されることはないが、新しい科学理論が生まれようとする時や、時代・社会・人間集団が異なるときには、同じ概念について語っていても、理論的枠組が異なることで、語り手は全く異なる意味を考えているという、共約不可能性の問題が生じることとなる。
Continue reading...プラグマティズムとは、アメリカを代表する哲学で、形而上学的思弁 ではなく、現実の生活を解決する実践的な行為の理論として生まれた ものである。人間と自然・社会といった環境との相互作用として、生の 欲求に基づく具体的な行為に即して、知性的な分析を加えようとする 思想のこと。
Continue reading...プレローマとは、元来ユングがグノーシスから借用した言葉で、 ベイトソン,G.により新たに生態学的認識論の中に導入された概念。 無限にして不滅であり、また何らかの特性を持たず、あらゆるものに 浸透していくもの。対立するものを含みこんでウーヌス・ムンドゥス (一なる世界)を形成する、あらゆる原則性を含みこんだものである。
Continue reading...クレアトゥーラとは、元来ユングがグノーシスから借用した言葉で、 ベイトソン,G.により新たに生態学的認識論の中に導入された概念。 物理的因果法則に従うとともに生命という固有のプロセスに従うもの である。このような概念は、ボームの暗在的秩序とも通じるもので、 認識の発生プロセスを明らかにしようとするもの。
Continue reading...プロセス指向心理学とは、1980年代に、ユング派の分析家ミンデル,A.により提唱されたボディ・ワーク、グループワークを重要視するトランスパーソナル心理学のひとつである。身体的働きかけは、フォーカシングに似て、フェルトセンスを求めるとともにより微細な感覚に開かれたものである。コーマ・ワークにおいては昏睡状態にあるものに対する援助となっている。集団的な取り組みは、家族からコミュニティへと広がり、各地での紛争の解決、無意識のうちに権力関係として形成されているランクへの働きかけなど、極めて実践的な心理学である。
Continue reading...法則定立的とは、歴史学において、自然科学との同一性と差異性をめぐる議論の中から、19世紀末に新カント派のヴィンデルヴァント,W.が提唱したものである。自然科学を法則定立的であるとした。この考えは、現在パラダイム論争となっている近代の知/臨床の知の対比と重なるものである。
Continue reading...個性記述的とは、歴史学において、自然科学との同一性と差異性をめぐる議論の中から、19世紀末に新カント派のヴィンデルヴァント,W.が提唱したものである。歴史学を個性記述的であるとした。この考えは、現在パラダイム論争となっている近代の知/臨床の知の対比と重なるもの。
Continue reading...ポスト構造主義とは、1960年代から70年代後半にフランスで生まれた、構造主義を批判的に継承・乗り越えようとする思想運動のことである。構造自身の力動性に焦点を当てている。構造による主体の形成という視点を保持しつつ、構造主義の実体主義的形而上学的思考・ファロス中心主義を脱して、意味の生成過程、脱構築、リゾーム的・ノマド的機械状無意識の作用を通して、これまで抑圧・隠蔽されてきたものを明らかにしようとする思想運動。
Continue reading...ホーリズムとは、全体は部分の総和を越えるもので、個々の要素は全体としての 原理の下に包摂されると考える立場のことで、ケストラー,A.のホロン改革で 注目され、ニューサイエンスの中心原理となる。量子力学・有機システム論・ 生態学・トランスパーソナル心理学・東洋医学に代表されるように、総合的・ 円環的・個性的・共生的・相補的・自己組織化的なもの。
Continue reading...了解心理学とは、「生の哲学」の立場に立つ、ディルタイ,W.により提唱された心理学。説明を手段とする自然科学的心理学に対抗して、主体としての意味・体験の了解・解釈を手段とする精神科学的心理学とも呼ばれたもの。全体との関連で心的行為に意味を見出そうとするもので、構造心理学とも呼ばれている。
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