- ラテンアメリカの基礎知識 -
作者がもっているラテンアメリカについての基礎知識をまとめてみたもの
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目次


ラテンアメリカ概論

 1.アメリカ大陸について
 2.アメリカ大陸の発見と開拓
 3.ラテンアメリカ地域
 4.ラテン人とラテンアメリカ人


ラテンアメリカの言語

 1.はじめに
 2.スペイン語
 3.ポルトガル語
 4.フランス語
 5.グアラニー語


ラテンアメリカ文化

 1.ラテン文化
 2.ラテン音楽
 3.踊り、舞踊、ダンス
 4.ラテンアメリカ料理
 5.ラテンアメリカの格闘技
 6.ラテンアメリカの民芸品



ラテンアメリカンパワー

  1.最強事業家:カルロス・ゴーン
  2.隠れ天才: ルベン・ブラデス


ラテンアメリカ案内サイト

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自分なりの生き方の追求

 国際サバイバル道場
 ユートピアへの挑戦



2003年2月25日作成










ラテンアメリカ概論

 6.ラテン人、ラテン民族、ラテン系

 現在一般に知られた「ラテン人」とは、中南米とカリブ海地域のスペイン語とポルトガル語を話す人間を指していますが、ラテン人の正当なルーツといえば、まず、中世期時代一時ヨーロッパで強い勢力をもっていた「ラテン民族」の言語や文化的影響をさし、また彼らの気質や感覚も現在のラテン人を指すときに当てはめられています。

 広辞苑によると、ラテン民族とはラテン系言語であるイタリア語、サルデーニャ方言、レート‐ロマン方言(スイス北東部、アルプス山地のラエティア地方語)、フランス語、オック語(南フランス語)、カタルニア語、ポルトガル語、スペイン語、ルーマニア語、ダルマチア方言等を話す諸民族を指しています。
 つまりラテン民族の血統的な面からいうと、現代のフランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、モナコそしてルーマニアなどがラテン系といえるのです。
 さらに言語的な面からのラテン系となると、これらの他に、アフリカや中近東、アジアにスペイン、ポルトガル、フランスなどの植民地だったためにそれらの言語を話す国々があり、同言語地域としてラテンアメリカ諸国とフレンドリーな関係が見られます。

 つまり、上の写真のカリブのラテン人は、血統的にはラテン系ではなく、アフリカ系なのですが、アフリカ系のラテンアメリカ人とされています。

 7.ラテンアメリカ人の勢力

 ラテンアメリカ人とは、33カ国と10数カ所の欧米領土から形成される中南米地域に住む人間を指しています。ここは先住民とヨーロッパやアフリカ、中近東、アジアなど世界中から集まってきた移民たちによる人種のるつぼといった地域なので、白人もいれば、黒人もいて、東洋人も多く、先住民(インディオ)までいますが、現在ではこれらの混血化が進んだ人口約5億5千万人の多民族、多様人種の人間社会が形成されています。

また、アメリカ合衆国内に暮らすラテンアメリカ系住民は3,500万人にも上り、米国人口の15%以上にもなっています。産業とサービス業での人手として重要な存在となっており、米国内でも黒人社会と並ぶ勢力のラテンアメリカ社会が形成されています。

 ちなみに、米国では、ラテン系というとメイドやウェートレス、庭師や未熟練労働者などが想像されますが、統計を見ると(カリフォルニアにあるトマス・リベラ政策研究所の調査結果では)米国におけるラテンアメリカ系の中産階級はこの20年間で80%増加しており、ラテンアメリカ系社会には現在、連邦議会議員や市長もいれば、民間企業の重役、大口消費者、そして最も重要なことは大変な数の登録有権者がいるということです。選出された公職者や政治家、あるいは実業界は、突然先を争ってラテンアメリカ系住民の心と購買力を勝ち取ろうと躍起になっています。最近の大統領選挙ではスペイン語を話すことができればラテン系の票を集め大きな差をつけるようになりました。
 参考までに、最新の統計によれば、米国に住むラテンアメリカ系住民の58.5%はメキシコ系、9.6%はプエルトリコ系、4.8%は中米系、残りはラ米・カリブ海出身者で占められています。

 つまりアメリカ合衆国の中には、大きな発展を見せる「ラテンアメリカ系社会」が存在しており、それらが持つラテンアメリカ諸国との経済的関係を考慮した影響力に、言語と文化を加えた総合的影響力は、アフリカ系、ヨーロッパ系、アジア系、中近東系を上回る絶大勢力なのです。以前これを知らずに日本のある政治家が、米国内のラテン系について非難的コメントをしたことがあり、日本が国際社会から大変な非難を浴びてしまい、当人は辞職に追い込まれるという羽目になったことがあります。(アメリカの経済不況の原因は国内のラテン人がお荷物になっているからだという発言)

 血統と出身地

 一般にラテンアメリカ諸国では、血統による国籍を承認すると同時に、生まれた国での自動的国籍取得によって、いわゆる「2重国籍」が認められています。(たとえばアルゼンチンで生まれたドイツ系2世は、大使館で手続きをすればドイツの国籍を持つことができ、同時に出生地のアルゼンチンの国籍ももつことができるので、2つの国籍を所有しますが、アルゼンチンにとってもドイツにとっても問題はないのです。そういうことで、彼らは二つの国のパスポートを持ち歩いたりします。)

 つまりラテンアメリカでは、各個人は民族的アイデンティティーと生まれた国のアイデンティティーの両方を持ちます。たとえば、ブラジルの学校では、クラスの中に日系もいればドイツ系、イタリア系、アフリカ系、ユダヤ系、中国系、アラブ系といろいろな子供がいますが、それは普通なことなので、差別も対立もありません。ただ、それらの民族的アイデンティティーが消えてしまうようなこともありません。それぞれの民族的組織があり、それぞれの伝統や習慣を守ろうとする行事や活動が活発です。そして他の民族の習慣や伝統を尊重し、それらを受け入れる寛大さも見られます。またこのアイデンティティーは親のアイデンティティーや祖父のアイデンティティーなどから複雑に広がっていきます。

 右上の写真はイタリア系アルゼンチン人ですが、左の2人の女性はドイツ系パラグアイ人です。血統的にはラテン系ではなく、ゲルマン系なのですが、生まれた国と育った環境で彼女たちもラテンアメリカ人となります。

 ちなみに、日本の産業界でリーダーシップを発揮している日産の社長カルロス・ゴーンは、ブラジルに生まれましたが、レバノン系ブラジル人の父親と、レバノン系フランス人の母親を持っています。そのために、血統的にはアラブ系ですが、フランス国籍とブラジル国籍を持ち、F1レースなどが盛んなブラジルで車にあこがれて育ち、父の祖国レバノンにも留学し、そして母の国フランスで大学を修め、フランスの企業に就職しました。 3つのアイデンティティーを生かして日本に暮らすラテンアメリカ人なのです。


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