10月5日、せっかくだから、もう一度ドルフィンスイムをすることにした。実際、少し物足りない気もしていたのだ。もっとも、病みつきになると、どれだけやっても、そう感じるらしい。同じ宿で知り合った人の中には、毎日のようにドルフィンスイムに出かけている人もいたし、船に乗れば必ず乗り込んでくる女の子達もいた。この日は5〜6頭づつの小規模なグループに次々と出会いながら、一日中イルカ達と泳ぎ回った。他の人達が南島に上陸している最中にも、有志たちはイルカ達と遊んでいた。今回はイルカと視線を合せて、横に並んで泳ぐこともできた。イルカはそれを見て、すかさず逃げていった。ジャンジャン。今回はハシナガイルカにも出会うことができた。ハシナガイルカは警戒心が強いので初心者はドルフィンスイムをすることはできない。50〜100匹くらいの集団で見張りが2頭起きている以外は、みんな眠りながら泳いでいるのだった。なんて器用なんだ。それはともかくとして、ここでは、ドルフィンスイム体験を通して得た、にわか知識を基にドルフィンスイム小笠原流作法でも書いてみることにしよう。

イルカにもいろいろな種類がありますが、小笠原諸島にいる間に聞いた名前は、パンドウイルカ、ハシナガイルカくらいでした。初心者がドルフィンスイムできるのは前者であり、数頭のグループで泳いでいることが多いようです。後者は100頭以上のグループを作っていることもありますが、警戒心が強いため、上級者でなければいっしょに泳ぐことは難しいようです。
イルカは食べて、寝て、遊んでの繰り返しです。また、同じ場所で食べていると食べ物がいなくなってしまうのがわかっているので、移動もします。寝てるときは当然遊んでくれませんし、食べてるとき、移動しているときも余裕がないので遊んではくれません。船がイルカと巡り合ったときに、彼らが遊ぶ余裕があるときにだけ、理想的なドルフィンスイムができます。また、イルカは波乗りをして遊んでいる場合が多いので、波のある場所にいることが多くあります。出会った場所が人が泳ぐには波が高すぎて危険な場合には、泳ぐことができません。当然、イルカと出会えない可能性もありますから、ドルフィンスイムの船に乗ったからといって、必ずドルフィンスイムができるわけではありません。

基本的には水中メガネ、シュノーケル、フィンの3点セットです。泳ぎに自信のない人はライフジャケットを付けましょう。ライフジャケットをつけるとイルカといっしょに潜ることができませんが、海面からでも十分にイルカといっしょに泳げます。逆に、水中に潜ってイルカと戯れるように泳ぐためには、かなり泳ぎがうまくないとダメですから、心配はいりません。
1.イルカに触ろうとすること
イルカは嫌がって近寄ってくれなくなります。
2.子供イルカのいるグループを追いかけ回すこと
子供イルカのいる母親イルカは神経質で、グループ全体もそれに合せます。無理に追いかけてはダメです。人間に対する恐怖心が増します。
3.大きな音を立てて水に入ること
4.バタバタと水音を立てて泳ぐこと
5.手をバタバタさせて泳ぐこと
以上はイルカが危険を感じて逃げていってしまいます。泳ぐときはフィンを海面に出さずに、また手を使ってはいけません。スクロールはやめてくれぇ〜

1.シュノーケリングに慣れること
イルカが泳いでいる場所は当然、水深がかなりあります。また、浜辺に比べれば波の高い場所となります。シュノーケリング3点セットに慣れて、そのような場所で問題無く泳げるように練習しておくと良いです。また、シュノーケリングクリア(溜まった水を吹き出すこと)ができることが少なくとも必要です。また、余裕があれば耳抜きを伴って、深く潜る練習もしておくと良いです。
2.体調を整えておくこと
前日、遅くまで遊んで疲れていたりすると、せっかくイルカと出会っても、うまく泳ぐことができませんし、溺れる可能性も高くなります。睡眠を十分にとって、体調を整えておきましょう。また、船酔いしやすい人は、酔い止め薬を早めに飲みましょう。
3.良い船を選ぶこと
ドルフィンスイムをやっている船も、その姿勢はさまざまです。本当にイルカが好きな船を選びましょう。ドルフィンスイムはピークシーズンであれば毎日のように行われています。イルカのほうでも、どの船がイルカに優しくて、楽しく遊べるかを知っています。そんな船にはイルカのほうから近寄ってきます。そうでない船の場合にはイルカに出会えない可能性も高くなります。宿の人など、現地の人から情報を仕入れましょう。
1.出かけれる日に、出かけること
海の状態は、日々変わっています。今日、海が穏やかでも、明日は海が荒れているかも知れません。一度、海が荒れれば、4、5日は波がおさまらないこともよくあります。また、ドルフィンスイムの船も客人数の関係で毎日出るとは限りません。小笠原への滞在日数の関係もあるでしょう。出かけれる日があったならば、すぐに出かけることです。島についたら、まずは船の出発予定を確認しましょう。
2.気張り過ぎないこと
イルカたちには、人間の気持ちが伝わるようです。多くの人が「イルカ、イルカ、イルカ」というふうに血走った気持ちでいると、イルカのほうでもそれを察して現れてくれないことが多いようです。人間でもあまりに熱中されると、逃げ出したくなるものです。「いっしょに泳ごうよ〜」くらいの軽い気持ちでいるといいらしいです。
3.しつこく追いかけ回さないこと
追いかけてみても、泳ぎでイルカには勝てません。イルカはどんどん離れていってしまいます。逆に、イルカのほうで興味があれば、向こうから近寄ってきてくれます。

今回、ホウェールウォッチングには出かけませんでしたが、この時期であればマッコウクジラを見ることができるそうです。しかし、クジラに出会える可能性はイルカと比べて、かなり低いようです。同じ宿の人も何度が出かけていましたが、出会えた人はほんの僅かでした。また、2、3月にはザトウクジラが回遊してくるので、この時期をねらって小笠原諸島を訪れる人も結構いるそうです。
ドルフィンスイムから帰って、一息ついた。夕日を見にウェザーステーションまで出かけることにした。ウェザーステーションは、海が見渡せる場所にあり、夕日の名所なのだそうだ。午後5時に宿を出発、「日没は5時半くらいだから、ちょうどいい時間じゃない?」同じ宿の人は気楽にそう言った。またしても、歩いて登る、登る、登る。「男の足で20分くらいだよ」同じ宿の別の人は言った。きっと彼は健脚に違いない。30分程かけてウェザーステーションに近づくと、汗はダラダラになっていた。辺りは暗くなり、何故か降りてくる人々とすれ違う。やっとの思いでウェザーステーションに辿り着いた。日は既に沈んでいる。人々は帰ろうとしているではないか。ショック〜。ウェザーステーションにはログハウスのような展望施設がある。そこに登ってみると、まだ沢山の人々が感動の余韻を持て余すかのように太陽の沈んだ水平線を見つめていた。太陽が沈んでしまい辺りは灰色に包まれている。とはいえ、ウェザーステーションから見る広大な海の眺めは素晴らしいものだった。単なる日没がどうしてこんなに感動的なのだろうか。あなたは今日、日没に感動しただろうか。わたしは薄明かりの中、欄干にカメラを固定して日の沈んでしまった水平線に向けてシャッターを切るのだった。

わたしは、また一人で山を下った。前を二人の女性が歩いている。お互いに顔は見えないが挨拶を交わし、話しを始める。話していくうちに同じ宿の人だとわかる。顔が見えないというのは不思議なものだ。降りる途中に父島の街明かりを見下ろせる場所があった。ほんのほんの小さな街なのだが、それでも夜景は美しい。雲の影から月が顔を出す。月もまた美しい。そういえば、明日は仲秋の名月だったな。
