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小笠原ふらり一人旅 ページ3


ドルフィンスイム

9月30日、ドルフィンスイムに出かける。予約は前日に済ませておいた。近くの青灯台という場所にドルフィンスイムにの船が2隻やってきている。受け付けの人が桟橋に立っている。しっかりと船を間違えながらも、受け付けを済ませる。今日は全員で7人くらいの客がいるようだ。受け付けでは、ダイビング免許の有無、シュノーケリングの経験などを問われる。船長はとても恐そうな人だ。ドルフィンスイムをやっている船は父島でも数隻あるらしい。イルカに対する姿勢はそれぞれで、本当にイルカが好きでやっている人もいれば、観光営業としてやっている人もいる。イルカへの接し方を細かに教えてくれるところもあれば、そうでないところもある。

船長のイルカの説明を聞きながら、父島周辺を回ってイルカを探す。話しを聞いているうちに、船長は本当にイルカが好きな良い人だとわかる。船は30人定員ほどの小さな船なので波の荒いところに行くと、まるでこけそうになるくらい揺れる。そうそう、遊園地にこういう乗り物があったと思う。決して冗談ではない。もっとも、いつもいつも波の荒いところにいるわけでもないので、そんなに心配はいらない。

小さい船なので、小笠原の青い海がより身近に感じられ、島の岸壁が迫ってくる。南島、ジェニービーチ、ジニービーチなどを巡りながら探してみるが、なかなか見つからない。1時間、2時間と経過し、みんなの中に少し暗い気持ちが広がり始めた頃、イルカと遭遇。「さぁ、みんな用意してぇ!」というガイドの声に、客の緊張が高まる。ドルフィンスイムを目的として来ている人々の緊張感がビリビリと伝わってくる。波はかなり高い。しばらくシュノーケリングもしていないわたしは、ライフジャケットをつけて海に入る。

海中を左右に見回してイルカを探す。天空からの光は、水面のさざなみを煌かせ、彼方から差し込む光は、海中に透き通る静かな青い世界を創り出す。海面から少し離れたところに、イルカたちが戯れ、その中心には白いビキニに白いフィンを身に纏ったガイドが小麦色の美しい肢体をくねらせて、まるでイルカのようにしなやかにドルフィンキックをしながら深く深く潜っていっている。イルカたちはその泳ぎに興味を持って追いかけている。キュー、キューというイルカたちの鳴き声が聞こえる。鮮やかな青い世界の中で繰り広げられる、今まで見たこともないような、想像さえ超えるような、美しいイルカと人の共演。人があんなに美しく泳げるなんて、考えてみたことも無かった。

イルカはやがて、わたしの近くにもやってきた。近い。まるで1mくらいに感じられる。イルカには手を出してはいけないと聞いていたわたしは、水面にプカーっと浮かんだままで、すぐ下を泳いでいく数頭イルカたちを、ただただ眺めている。感動せずにはいられない。イルカと人が同じ水の中で泳いでいること、それ自体、すごいことに感じられる。わたしとイルカを隔てるものは何もないのだ。イルカもわたしも、この自然の中に住む仲間なのだ。いくら言葉で説明しても、わたしには、この感動をうまく伝えることはできないだろう。感動は言葉を超えている。いや、言葉で説明する必要さえないものなのだ。

船に戻って、イルカたちを眺める。「遊んでくれて、ありがとぉ〜、また遊んでねぇ〜!」そう言って、そのイルカたちとお別れをした。20〜30頭いる大きな集団だった。いつのまにか、イルカたちを囲んで、ドルフィンスイムの船たちが集まってきている。あまり美しい光景とも思えないが、ドルフィンスイムをしたい人々がいる限り、繰り返される光景だろう。

ガイドは自然を求めて内地から移り住んできたのだという。自然が好き、海が好き、泳ぐことが好き、イルカが好き、そう語る彼女の表情は生き生きとして、眩しいほどにきらきらと輝いていた。

兄島

我々は食事のために兄島に上陸した。兄島に人は住んでいないが、学術調査用の桟橋がある。兄島には野性化した羊が沢山いるらしい。遥かに高い崖っぷちの上に白いものが見える。どうやって登ったのかと思えるような場所だが、羊のようだ。兄島には戦前には人が住んでいたらしい。少し入れば住居跡があると聞いたが、行ってはみなかった。おそらく亜熱帯の植物に覆いつくされていることだろう。兄島の海に潜ってみた。色鮮やかな魚達が沢山泳いでいる。いっしょに上陸した女の子に、内地では高価な熱帯魚が泳いでいるのだと教えてもらった。こんな場所で値段の話をするのも、おかしなものだ。

海中公園

イルカの大きなグループと出会った我々は、もうイルカを探すのはやめて、海中公園に潜ったり、南島に上陸したりすることにした。島に住み着いているイルカは約30頭。もう、他のイルカはほとんどいないだろう。海中公園とは海中の景観がきれいな場所のことだ。青い海の底に大きなテーブル珊瑚や枝珊瑚が群生していて、色とりどりの魚達はその間をあちらへこちらへと泳いでいる。この辺りの魚は餌付けがされているらしく、ウィンナーを差し出すと、恐いくらいの魚達が集まって来る。そんな美しい海の中で、小麦色に日焼けした若者達が、カラフルな水着を身につけて、好き勝手に潜ったり、浮かんだりしている様は、見ているだけも美しいものだ。

南島

我々は南島に上陸することにした。南島は特別環境保護地区とやらに指定されている。人口の建造物は一切ないし、何かを持ち込んでも、持ち帰ってもいけない。上陸するには、船から飛び移るか、船を近づけておいて泳いでいくしかない。この船では後者らしい。南島の近くに船を止め、そこからは岩のアーチの下を泳いで上陸する。上陸の方法もユニークだが、上陸したときの南島の美しさは感動ものだ。青い空、そびえる岩肌、緑の植物、白い砂浜、エメラルドグリーンに透き通る海、赤茶けた大地。人々が知らない遥か昔から連綿と続く悠久なる風景。白い砂地には遥か昔に絶滅した貝の貝殻が転がっている。しかし、その貝殻も昔に比べれば減ったそうだ。入り江を見下ろす丘の上に登ってみると、真新しい空缶が2本転がっていた。


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