糖に関した発展した話


さて、入試レベルとしては、もう十分なんですが、興味のある人に、もう少し発展した話をしましょう。

単糖類のところで書きましたように、重要な単糖類として、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトースがあるのですが、もう二つ、重要な糖があります。(大学入試では出ないはずです)

左側の糖を「デオキシリボース」、右側の糖を「リボース」と言います。

よく似ていますが、ちょっと違うよ。右下を見てください。デオキシリボースでは「H」ですが、リボースでは「OH」でしょ?

違いはそこだけなんですが、生体(生き物の体)内では、この二つは、だいぶ違う役目を担っています。

また、フルクトース(果糖)にも似ているようですが、ちょっと違うでしょ?まず、炭素の数が違う。フルクトースはC6ですが、こいつらは、C5ですね。

以前に出てきたグルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトースは、いずれも食べ物に含まれていて、ヒトのエネルギー源として働きますが、この二つは、だいぶ違った役目を果たします。 ここでは、余談として、そんな話をしてみましょう。


遺伝に関係したデオキシリボース

まずデオキシリボースは、(生物の範囲の範囲ですが・・・)生物の遺伝に関係しています。

物理・化学の人(高校で生物をやっていない人)も、細胞の中には「核」があって、その中には「DNA」という、遺伝情報を伝える物があるという事は、中学校で学びましたよね。

「じゃぁ、そのDNAって何?」

当然の疑問ですね。

当然「化学」的に言えば、そういう「分子」があるって事なんです。

「じゃぁ、その分子ってどんなもの?」

そりゃまた当然の疑問だ。

その構成成分は、主に「デオキシリボース」と「リン酸」と「塩基と呼ばれるもの(酸・塩基の「塩基」とは違います)」なんですね。そう、デオキシリボースは、DNAの重要な構成パーツなんです。

もう少し詳しく知りたい場合はここを読んで下さい。

遺伝情報発現に関係したリボース

まずリボースは、(生物の範囲の範囲ですが・・・)生物の遺伝情報の発現に関係しています。

って言っても、物理・化学の人(高校で生物をやっていない人)は「遺伝情報の発現」を知らないんですよね(^^)。

心配知るな、私も「物理・化学」です。

それについて、理系の基礎知識として知っておいたほうが良いので、簡単に書いておきます。

中学校の理科では、DNAの遺伝の仕組みばかり説明して、そもそもなぜDNAが必要なのかを説明していないから、かえって話がややこしくなるんですよね。

生物は生きています(だから生物なんだろうけど・・・・)。つーことは、それを形成する「細胞」も生きています。

生きているって事は、何かやっているんですよ。

例えばですね、こんな場合を考えてみましょう。

ごはんを食べると、血糖値が上がります。(血液を流れる糖の濃度が上がるって事)。このままでは、体に何かと問題が起きるので、血糖値を下げる必要があります。そこで、食後、血糖値が上がると、すい臓にある「ランゲルハンスβ細胞」という細胞から「インシュリン」というホルモン(これも分子の一種です)が血液中に放出されます。インシュリンは「血糖値を下げる作用」があるんですよ。

この過程がうまく行かない(血糖値が下がらない)病気が、有名な「糖尿病」ですね。(糖尿病には他のタイプもありますが。)

ところで、この過程で、「ランゲルハンスβ細胞」は「血糖値が上がったという情報をキャッチ」して、「インシュリンを合成」して、「インシュリンを血中に放出」したんですね。

なぜ、そんなことができるんですか?

そうです、「ランゲルハンスβ細胞」は、DNAの中に「血糖値が上がったという情報をキャッチする方法」、「インシュリンを合成する方法」、「インシュリンを血中に放出する方法」を書いてある「マニュアル」を持っているんですよ。

そうです、DNAってのは、単に遺伝がどうのこうのっていうんじゃなくて、「生きるための方法」が書いてあるマニュアル本なんです。

さて、話がそれました。リボースの説明をするんでしたよね。

で、もう一度「インシュリン」の話をします。

具体的には、インシュリンは「ランゲルハンスβ細胞」の細胞質の中にある「リボゾーム」という粒々の中で合成されます。(原料は、細胞質から採りこみますが、詳しい話は略します)

ここで問題が生じます。

DNAは核の中にあります。リボゾームは細胞質(核の外)にあります。要するに離れているんですよ。

では、DNAからリボゾームに「マニュアル(インシュリンの合成の仕方)の内容を伝える」必要があるんですね。

その「伝達係」もこれもまた分子でして、こいつを「RNA」と言うのです。

DNA → RNA → リボゾーム → インシュリン

こんな感じです。

この流れは、別に「インシュリンの合成」に限りません。生物が生きる上での「基本的な流れ」です。

DNA → RNA → リボゾーム → タンパク質の合成

もう少し一般的に書くと、こんな感じです。(インシュリンもタンパク質なんです)

この「流れ」を「セントラルドグマ」と言います。

ま、物理・化学の人間にとって、入試には関係無いけど、理系の基礎知識って事で・・・(^^)。

で、やっと「リボース」の話ができますね。

その問題のRNAは、主に「デオキシリボース」と「リン酸」と「塩基と呼ばれるもの(酸・塩基の「塩基」とは違います)」でできているんです。

そう、リボースは、RNAの重要な構成パーツなんです。

で、RNAはDNAの情報を具体化(発現)するための、伝達係なんです。

もう少し詳しく知りたい場合はここを読んで下さい。

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