グルコースは、普通結晶状態では環状のα−グルコースとして存在しているが、 水に溶かすとα−グルコースの他に、環状のβ−グルコースと環の開いた鎖状構造をとるものが一定の割合で混ざった平衡状態になる。そのため水溶液中のグルコースはフェーリング液を還元してCu2Oの赤色沈殿を生成させる。
デンプンはα−グルコースがαグリコシド結合で重合した高分子化合物であり、アミロースとアミロペクチンがある。このうちアミロースは、αグルコースが全て直鎖状に結合した構造を持ち、アミロペクチンはところどころに枝分かれを含む樹状構造を持つ。デンプン分子は、水溶液中でかなりの部分が螺旋状の空間構造をとる。この水溶液にヨウ素溶液を加えると青紫色を呈するのはこの螺旋状の構造の中にヨウ素分子が入り込むためである。デンプンを原料として、これを完全に加水分解したのち酵母を作用させて、アルコール発酵によりエタノールを製造する事ができる。
[京都薬科大学:出題時赤字部分は空欄]
さらに、以下のような設問がなされていました。
[設問]
次の化合物A〜Dの中で、単糖と同様に安定な環状構造がとれる化合物が二種類考えられる。それらの環状構造をそれぞれ一つづつ記せ。
[解答と解説]
環状構造を採る事が出来るのは、AとDです。
生じる環状構造は、
Aはグルコースの環状化の仕組。Dはフルクトースの環状化の仕組から考えると分かると思います。
まずAについて考えてみましょう。環状と鎖状で、どの原子がどの原子に対応しているかを描いてみました。グルコースから考えると、アルデヒド基と水酸基の部分が繋がるはずですね。そうなると、Bではダメだと分かりますね。
次にはDについて考えてみましょう。同じ様に描いてみました。フルクトースから考えると、ケトン基と水酸基が繋がるはずですね。ですからCではダメなんです。
さらに、こんな設問も続いていました。
[設問]
化合物A〜Dの中でフェーリング液を還元しない化合物の記号を記せ。
[解答と解説]
まず、結論を書きますと、Dです。
フェーリング反応は還元性検出反応ですね。実際問題は、アルデヒドの検出と言えるでしょうが。
まず、AとBはアルデヒド基がありますから、フェーリング反応をします。ですから答えになりません。
で、CとDは見た目、アルデヒド基が無いので、反応しないようにも思えますが、Cの方は反応します。
といいますのは、フルクトースの還元性のページで書きましたように、「炭素鎖末端で隣り合う水酸基とカルボニル基は、入れ替わる事ができる」というのがありました。
ですから、Cは見た目アルデヒド基はありませんが、実際には、中間状態として存在するはずです。ですから、Cもフェーリング反応陽性のはずです。
結果、反応しないのは、Dという事になります。
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