退行

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退行とは

退行とはストレスや不安を感じるような人間関係や状況に対して以前の発達段階に戻ることで対処する心理的な防衛機制のことをいいます。

退行は、大人でも子どもでも、年齢相応でない振る舞いをしたときに、どの発達段階でも見られることがあります。

例えば、病気と診断されて入院した高齢者は、胎児のように丸まったり、ぬいぐるみを握りしめたりして、その状況に対処することがあります。

一方、兄弟姉妹が生まれたばかりの幼い子どもは、一人っ子でなくなった不安感から、おねしょや指しゃぶりなど、卒業したはずの行動に戻ってしまうかもしれません。

退行の原因

フロイトは、神経症の形成には退行が重要かつ影響力のある要因であると考えました。

フロイトの娘であるアンナ・フロイトは、個人は心が行き詰まり、固定された発達段階でパフォーマンスを発揮すると提唱しています。 

フロイトの哲学は、退行行動は、心理性発達段階を取り巻くフラストレーションからくる固定化によって説明できるとしました。 

フロイトは、個人が問題を解決するには、大人になって解決するか、退行によって処理するかの2つの方法しかないと考えていたのです。

退行は成人期よりも小児期に多く見られ、一般に外傷、ストレス、障害によって促進されます。 

頻度は少ないですが、退行は成人期のどの段階でも起こり、乳児期の優れた段階まで戻ることもあります。 

成人は、心配、恐怖、いらだち、不安、負の感情を促す状況に対して退行することがあります。

退行の例

典型的な機能レベル以下の動作は、セラピストのオフィス内だけで起こるわけではありません。

日常生活でも、恋愛関係における未熟な瞬間から、子ども時代のより実質的な発達上の問題まで退行は起こり得ます。

退行性は、ストレス下で現れることが多いのです。

例えば、渋滞に巻き込まれた運転手が、普段はそんなことしないのに、怒って癇癪を起こすことがあります。

また、トラウマを抱えた子どもが、親指をしゃぶったり、おねしょをしたりするようになることもあります。

防衛機制として、退行はより安全だと感じられた以前の段階に戻ることを意味します。

感情的に圧倒されたとき、人は自分の欲求を満たすために、子どもの頃のやり方に戻ることがあります。

このようなとき、「インナーチャイルド(大人の中にいる子どもの部分)」は人間関係に大打撃を与える可能性があります。

自分の思い通りにならないと癇癪を起こし、冷静にコミュニケーションをとったり、放っておいたりできなくなります。

その代わりに、自分の欲しいものを手に入れるために相手を操ったり、困難について話し合う代わりに反抗したり、自分の要求を口にする代わりに対立を避けたりするかもしれないのです。

小児期と大人の退行

例えば、以前は親指をしゃぶるのをやめていたのに、ストレスのかかる出来事の後に親指をしゃぶるようになることがあります。

多くの場合、小児期の退行には、退行の根本的な原因を取り除くことで対処することができます。

大人の退行も子どもと同様、ストレスやネガティブな感情を経験したときに起こるのが一般的です。 

退行を経験した大人の中には、ストレスを感じなかった発達期の時期や、ストレスの多い出来事に対処するために保護者の存在があった時期に退行する人もいます。

心理学者の中には、退行を有害な行動とみなす人もいますが、カール・ユング博士をはじめとする他の人たちは、退行は多くの人にとって肯定的な心理行動であり、効果的な防衛メカニズムになりうると提唱しています。

しかし、人によっては、精神的な健康状態によって退行することがあり、その場合は、精神衛生の専門家の助けを借りることが有益な場合があります。

退行行為への対応

確かに、問題が起きたとき、完璧な対処法がすぐに手に入るわけではありません。 

大人になると、人生が計画通りにいかないとき、利用できる対処法は何でも利用し、それが困難なときを乗り越える原動力になることを願っています。 

成熟した対処法には、日記を書く、話し合う、瞑想、運動する、などがあります。

大人でも、ストレスに耐えられず、退行的な対処をする人もいます。

しかし、退行が続くと、その人の全体的な適応に悪影響を及ぼします。 

最適かつ健全な機能を発揮するためには、日常的に健全な対処法を学び、採用する必要があり、多くの場合、メンタルヘルス専門家の指導が必要となります。