学習性無力感

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学習性無力感とは

学習性無力感とは努力をしても報われないことが長期に渡って続くことで意欲を失う状態のことです。

セリグマンによる学習性無力感

学習性無力感という概念は、心理学者のマーティン・セリグマンが発見したものです。

セリグマンによると学習性無力感は、動物が逃げることができないストレスを繰り返し受けることで生じるといいます。

学習性無力感に陥った動物は刺激を避けようとしなくなり、状況を変える力がないかのように振る舞うようになります。

逃げる機会を与えられても、この学習性無力感によって、何も行動できなくなります。

人間も学習性無力感に陥ることがあります。

人は自分の状況をコントロールできないと感じると、あきらめて運命を受け入れる傾向があることが分かっています。

学習性無力感についての実験

セリグマンは、学習性無力感について実験するために犬たちを2つのグループに分けました。

まず1番目のグループの犬たちを柵の中に入れて、電気ショックを与えます。

この犬たちにはボタンを押せば電気は止まるという学習をさせます。

次に2番目のグループの犬たちを柵の中に入れて電気ショックを与えますが、ボタンを押しても電気は止まりません。

2番目のグループの犬たちは、電気を止めることができないことを学習しました。

そのあと、2つのグループの犬たちを別の柵に入れます。

この柵にはボタンがありませんが、柵が低いため飛び越えることができます。

最初に1番目のグループの犬たちを柵に入れました。

電気が流れると犬たちはボタンを探しましたが、ボタンが見つからないことを確認すると、柵を飛び越えて電気ショックから逃れました。

次に2番目のグループの犬たちを柵に入れました。

電気ショックを与えても犬たちは、何もアクションを起こすことなく電気ショックを受け続けました。

人の学習性無力感

学習性無力感の影響は、人間にも見られます。

例えば、いつも算数のテストで悪い点数を取る子どもは「何をやっても算数の成績は上がらない」と感じるようになります。

もう一例挙げると、人見知りをする性格は、自分の力では変えることはできない思う人は、人と交流することを避けるようになり、その結果、内気な性格がますます顕著になることがあります。

また、学習性無力感は、いくつかの異なる精神疾患との関連も指摘されています。

うつ病、不安神経症、恐怖症、内気さ、孤独感などはすべて学習性無力感によって悪化する可能性があります。

ドナルド・ヒロトによる実験

1971年、大学院生ドナルド・ヒロトは、学習性無力感について人を使った実験を行いました。

被験者を2つのグループに分けて、それぞれ騒音が流れている部屋に通します。

2つのグループの人たちには、どちらもパネルのボタンを正しく組み合わせて押すことで、音を消すことができると説明しています。

1つ目のグループの人たちはボタンの組み合わせすることでうるさい音を消すことができました。

一方、2つ目のグループの人たちが入った部屋のボタンは壊れています。

どんな組み合わせで押しても、騒音は止まりません。

2回目の実験では、1回目では参加していない3つ目のグループの人たちも実験に参加しました。

3つのグループの人たちは、それぞれ騒音がする部屋に通されました。

部屋にはスイッチが付いていました。

1つ目と3つ目のグループは、スイッチがに触れるだけで、すぐに音を消す方法を見つけました。

しかし、2番目のグループは、ただ座って耐えて待っていただけでした。

ユリウス・クールによる実験

セリグマンの研究を引き継いだのは、ドイツの科学者ユリウス・クールです。

彼は学生を対象に実験を行いました。

様々な知的問題を解いてもらうのですが、すべての問題には解決策がありません。

被験者はそれを知りません。

何度も失敗し、自分の能力を否定されたあとに、解決可能な簡単な課題を与えたところ、これも解くことができませんでした。

子どもの学習性無力感

子供の学習的無力感は、毒親によって引き起こされることが多い。

助けが必要なのに誰も助けてくれないという体験が繰り返されると、子どもたちは「何をやっても状況は変わらない」と感じます。

子どもは、自分の人生における過去の出来事をコントロールできないことを体験すると、未来の出来事も同じようにコントロールできないものだと思うようになります。

自分は何をやっても結果は変わらないと思うため、子どもは「頑張らなくてもいい」と思うようになります。

成績不振による学習性無力感

子供は勉強しても成績が上がらないと「自分は努力しても成績は上がらない」と考えるようになります。

学業不振は、子供の生活の他の分野にも影響を与える可能性があります。

学校での成績が悪いと何をやっても無駄だと感じてしまい、他のことにも挑戦する意欲を失うことがあります。

学習性無力感に陥る原因

人が学習性無力感に陥りやすくなる原因を紹介します。

間違いや欠点ばかりを教え込む

親や教育者が、解決策を示さず子供の間違いや欠点ばかりを教え込むと、子供は「自分は何をやってもダメだ」と思うようになります。

問題を広げる

過度に叱り、お小遣いを減らされたり、数日間遊びに行かせてもらえなくなるなど、他のことまで処罰の対象になると学習性無力感に陥りやすくなります。

自分自身に問題があると考える

「お前はなんてダメな人間なんだ」といつも言われることで、学習性無力感に陥りやすくなります。

失敗が続く

大人でも何度も失敗すると、何をやっても必ず失敗するという認識を持つようになります。

学習性無力感を克服する方法

もし何かに失敗した場合、ダメなのはやり方であって、自分ではないと考えましょう。

やり方を改めることによって、次から失敗をしないようにすることができます。

他人が失敗した場合は、人格をけなすのではなく、やり方を改めるように言いましょう。

例えば、子どもがコップを落として割ってしまったときは「お前はなんてダメな人間なんだ」と怒るのではなく、「次から落とさないようにグラスを両手で持ちましょうね」と教えるのが正解です。

子供の人格をけなすようなことを繰り返すと、その子供は何をやっても間違っていると思うようになります。

失敗は誰にでもあります。

バカだから失敗するのではなく「大丈夫、次はうまくいく」という空気を作ることが大切です。

関連心理学用語

防衛機制

防衛機制とは不安な気持ちから自分を守るために無意識に行われる心理的なメカニズムのこと。

パブロフの犬

パブロフの犬とは犬にベルを鳴らしたあとにエサを与えることを繰り返すと犬はベルの音を聞いただけで唾液が出るようになること。