ノーザン・テリトリーに入り、いよいよエアーズ・ロックが近づく。道路わきには、見渡す限りの平原に、背の低い潅木が生える。その潅木でさえも、場所によっては枯れ果てて、無残な残骸をさらす。乾燥した大地は、自然の過酷さを現す。この辺りにくると、土は赤くなり、熱く燃えている。遥か遠くに、台地のような盛り上がりが見える。エアーズ・ロックを待ちわびている人々は、ついにエアーズ・ロックに出会ったと思う。しかし、これはマウント・コナである。エアーズ・ロックと同じくアボリジニ(原住民)にとっての聖地であり、登山にはアボリジニの許可が必要という。

エアーズ・ロックは、オーストラリア最大の観光地の一つである。この岩の他になにもないこの場所に、毎年多くの観光客が世界中からやってくる。夕方になると、岩全体が見える場所に観光客が集まり、シャンパン、ビール、ワインで夕日に映えるエアーズ・ロックを見て乾杯する。この日は、夕日付近に雲があり、岩が真っ赤に染まることはなかった。翌朝は、登山をしようと思ったが、強風のため許可が下りなかった。雨が降ると、風が強いと、気温が高いと、アボリジニにとっての特別な日だと、など多くの理由で登山は禁止となる。しかたなく、岩の周りを歩く。一周約2時間、確かに大きな岩である。岩の周りには、これまたアボリジニの聖地が点在し、そこでは写真が撮れない。

オルガ岩群はエアーズ・ロックから25km程の場所にある奇岩群である。エアーズ・ロックと同じく、平原の中に忽然とその姿を現す。一枚岩ではないが、その大きさはエアーズ・ロックの4倍程度ある。オルガ岩群の中はウォーキングトレイルがあり、そのトレイルを風の谷まで歩く。往復4時間である。アニメ「風の谷のナウシカ」の舞台であると考えられる。展望台からは岩の間に広がる風の谷が見える。この岩の間を風が通り抜けていくから、そう呼ばれるのであろうか。遥かに広がる緑の谷は、理想郷をイメージされたのも理解できる程に美しい。

キングス・キャニオンはエアーズ・ロックの100kmほど北にある渓谷である。急峻な崖を登ると、絶壁の稜線がほぼ平坦に広がる。ここもハイキング・コースになっている。往復4時間。丘を越え、谷を越え行くと、岩に降り注いだ水の溜まる水溜りがあり、水泳ができる。ちなみに、ここは砂漠の真中である。泳いでみたが、水は思ったほど冷たくもない。

砂漠の中に湧いたオアシス。アデレードからの六日間の砂漠ツアーの終点はアリス・スプリングである。エアーズ・ロックへ向かう観光客の中継都市でもある。街には、ネイティブ・アート、オパールの土産物屋が多く、アボリジニの人々が多く歩き回っている。彼らは多くの場合、裸足である。この辺りのネイティブ・アートは点描であり、日本人にも人気がある。同じオーストラリアのネイティブ・アートでも、それぞれの地域で違いがある。

アリス・スプリングを出発し、陸路ケアンズへ向かう。どこまで行っても、砂漠の風景、僅かな潅木、まっすぐな道が続くだけである。そんな炎天下の中でバスは故障、一時間程度の停車となる。ただ、ただ暑い。バスの中は蒸し暑く、外は日陰もなく、太陽は容赦なく照りつける。砂漠で故障をすれば、命取りになりかねない。ここは特に通る車も少ない。無線が通じるのかどうかは知らないが、通じたところで最寄の街からは何時間、あるいは何日もかかる。

人々からあまり興味を持たれない砂漠の地にあるのは、キャトル・ステーション(畜産牧場)である。牛や羊を放し飼いのような状況で飼っている。あまり手間をかけなくとも、放っておけば、牛も羊も育つ。ステーションで働く人間は僅かで、あるのは平原と、毎日やってくる太陽、月、星といったところか。ここでは、カンガルーの赤ちゃんをペットにしている。

人がいない、工業もない、ということは自然がある。ステーションからの朝日は、とても美しかった。まさに、オーマイガッ(おおっ、我が神よ)な美しさである。
