取り入れ

取り入れとは

取り入れとは、「外部の物や質を取り入れ、自己の中に取り込むこと」、つまり、取り入れは誰かが他人の思考や衝動、感情を取り入れ、それを自分の人格に取り込むことです。

取り入れという概念は、ジークムント・フロイトによって初めて紹介されました。

彼は、精神分析学の理論を発展させた精神分析医です。

精神分析とは、無意識の思考や感情が人の行動に影響を与えるという理論です。

フロイトは、人は不快な考えや脅威的な考えから自分を守るために防衛機制を用いると考えました。

防衛機制とは、不安や社会的問題などから自我を守るための意識的・無意識的な行動のことです。

取り入れの仕組みと例

ここで、取り入れの一例を紹介します。

太郎は4歳で、もうかなり上手に自分の服を着ルことができます。

今日、彼の母親は急いでいて彼のために服を並べておく時間がないので、急いで「素敵な」服を着てくるように言い付けます。

そこで太郎は、自分でできることに興奮して、一番派手なシャツと一番かっこいいブルージーンズを選びました。

そして、それらを誇らしげに着て、「素敵な」服に着替えた速さを母親に見せようと急ぎます。

母親ははベビーシッターと電話で話しているところですが、ベビーシッターは直前でキャンセルしてしまいました。

太郎が部屋に入ってきて、母親に服を見せびらかします。

しかし、母親はすでに怒っていて、彼が選んだ服を見て、さらに怒りました。

太郎の選んだ服を見た母親は怒り心頭で、太郎を部屋に追い返してしまいました。

怒られた太郎は、やっぱり服の着方はわからないと思い、そのまま服を脱いで部屋で母親が服を着せてくれるのを待ちます。

母親が部屋に来るまでに、太郎は怒りを覚えます。

なぜなら、自分が正しい服を選んでいないだけでなく、太郎はただそこに座って、まるで自分が「間抜け」であるかのように母親を見つめているからです。

太郎はさらに気分が悪くなっています。

なぜなら彼は自分で服を着ることができないし、本当に頭が悪いと感じているからです。

母親がそう言ったんだから、きっとそうなんだと考えます。

これは、ストレスの多い母親と幼く不確かな子どものいる家庭での、一見何の変哲もない日常の一例です。

しかし、同じような判断や拒絶が頻繁に起これば、幼い太郎は人生を始める前に敗北感を味わうことになりかねません。

その敗北感は取り入れ的なものです。

太郎は、社交界で活躍する友人たちに「一緒にいたい」と思わせたい母の気持ちを理解する術がありません。

また、ベビーシッターが来ないので、母が今大変急いでいることも知る由もありません。

太郎が知っているのは、母親が彼の着る物のセンスを好まず、今は彼を馬鹿にしているということです。

太郎は、母親の問題を、自分に対する見方、つまり、最終的に自分のアイデンティティの一部または全部に取り込んでいるのです。

もちろん、母親は太郎のことを頭が悪いとは言っていませんが、太郎が真っ赤なカウボーイシャツにカウボーイブーツ、ブルージーンズで友達の前に現れると思うと、とても恥ずかしくなったのです。

太郎は、体の緊張や顔の表情、顔のわずかな動きから、その気持ちを感じ取りました。

投影の対極にある取り入れ

投影」という言葉をご存知の方は多いと思います。

私たちは、自分自身が(無意識に)持っている感情や特性を、他人に押し付けてしまうことがあります。

でも、「今日は社長が怒っていたよ」と言いながら、自分自身も怒っていたことに気づかないのです。

取り入れは、その逆であることが多くあります。

相手の無意識の感情や気持ち、あるいは妄想を引き継ぎ、自分の感情や気持ち、妄想だと思い込んでしまうのです。

アメリカの精神分析医ハロルド・F・サールズは、自らの性的欲望を強く抑圧するセラピストについて書いています。

同時に、抑制的なセラピストの患者は、より性的にアクティブになり、性的な問題に夢中になっているのが見て取れ、ます。

患者は事実上、セラピストの無意識を吸収し、セラピストの望みを演じているのです。

サールズは、この過程が精神病にも決定的な役割を果たすといいます。

弱い自我が投影されやすいところでは、取り入れが起こりやすくなります。

関連心理学用語

防衛機制

防衛機制とは、私たちの脳の中で、無意識のうちに心配事を管理しているシステム。