バクテリア遺伝子転移のメカニズムの中では、「接合」が自然環境下で広範囲に研究された最初の形態ではあるが、最初に確認されたのはこれではなかった。バクテリア間の遺伝子転移の研究は1928年にイギリスの細菌学者フレデリック・グリフィスが、無毒の肺炎桿菌性バクテリアが、死んだ有害肺炎双球菌とともに、それをマウスの体内に投入すると有害なバクテリアになることを観察したのが最初であった。グリフィスは元は無毒のバクテリアも、死んだ有毒のバクテリアから転移動因を拾って、マウスを殺すに足る力を備えるにいたったのだと結論付けた。
そのときの転移動因は、死んだバクテリアが分解した時に、回りの媒体に拡散したDNAであると今ではわかっている。ある遺伝子が一つの完全なプラスミドの一部として取り込まれたり、或いは、遺伝子を含んでいるDNAの一断片でもそのレシピエントの染色体に統合されれば、「形質転換」で遺伝子の交換が成功したことになる。
グラム陰性菌もグラム陽性菌も自然界で「形質転換」するには、宿主を無くしたDNAが安定していることと、これからレシピエントになる細胞の方がDNAを取り込む能力を十分発揮していることが必要である。つまり、レシピエントはDNAと結びついて、それを内面化するのに特化した表層蛋白質を広く外部に示す必要があるのだ。
最近まで、研究者は「形質転換」の起こりうる場所はほとんどないだろうと思っていた。何故なら、自由になったDNAが土壌や水中で安定しているはずがないからである。だが、ドイツのエルデンブルク大学のミカエル・ロレンツとビルフリート・ワッケルナゲル、ニューヨーク大学のギュンター・ストツキー、他が、彼らの研究によって、自由になっているDNAが土壌の成分と結びついて安定しうることと、そのDNAを有能な細胞が取り込むことを実証した。さらに新たな調査では、プラスミドのDNAは、河川の水の中や川床の石に付着した石上性微粒子の中でも「形質転換」によって、時々、転移している事を示している。しかしながら、私は、染色体の遺伝子については、水中や土壌環境で「形質転換」によって転移している事を示すような観察結果は今まで聞いたことはない。
それでも、遺伝子操作を受けたバクテリアを自然界に投入すれば、それでただちに、「形質転換」で遺伝子転移が起こりそうだと思う学者は少ない。自然界での「形質転換」は、同種のバクテリアの細胞間でのみ起こりうるようである。そして、「形質転換」ができるバクテリア種の数は相対的に少ないのである。ということで、バイオテクノロジー学者は、こうした種を遺伝子操作に使用するのを避ければよいのである。さらに言えば、死んだバクテリアは時々大量のDNAを放出し、それを他の特定のバクテリアが吸収するのだが、そのDNAが元の遺伝子のまま同化されることはないのがほとんどのケースである。サウス・フロリダ大学のジョン・ポール、他は、河口の水中で、明け方にたいていのバクテリアが死に、その遺伝物質を放出すると、細胞から解き放たれて高濃度で分布しているのが見られることを示した。しかるに、実験室の実験では、調査研究者は、宿主を無くしたDNAが生きたバクテリアに拾われレルト、すぐに、新しいDNAへの統合への使途のためにその構成要素へと分解される事を見出した。つまり、自由になったDNAにある遺伝子がそのままで存在しつづける事は稀なのだ。
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