停戦委員会 >> YUJI * STORY >> 有事法制資料集 >> 第154回国会 武力攻撃事態への対処に関する特別委員会 議事録 第 3 号(05/07) 第 3 号(05/07) PM

○ 第154回国会 武力攻撃事態への対処に関する特別委員会 議事録


第 1 号(04/23) | 第 2 号(04/26) | 第 3 号(05/07) 午前 | 午後

自由民主党 衛藤征士郎 | 民主党 岡田克也 | 民主党 玄葉光一郎 | 自由党 藤井裕久 | 日本共産党 志位和夫 | 社会民主党 土井たか子


第 3 号  平成14年5月7日(火曜日)

     ――――◇―――――

    午後一時十六分開議

○瓦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。藤井裕久君。

○藤井(裕)委員 私は、激動の昭和という真っただ中に生まれました。
そして、濁流の中で何とか生き長らえてきた。そして、自由党の安全保障
政策の基本は、第二次大戦の反省の上にすべてができています。ですか
ら、第二次大戦の反省の上に立った自由党の政策を私自身の経験とオーバ
ーラップさせながら私どもの考えを申し上げますので、総理におかれて
は、その我々の考えに対して御意見をいただければありがたいと思ってい
ます。
 私が生まれた一カ月前に五・一五事件があったんです。それは、総理が
今いらっしゃる公邸の一隅で、時の総理大臣犬養毅は、海軍の少壮士官に
よって、話せばわかるというのに対して、問答無用ということで命を失わ
れました。これをもって戦前の政党政治は終わったと言われております。
 また、官邸で、加えて申しますと、二・二六事件、昭和十一年二月二十
六日のあの事件の銃弾の弾痕がございますね。これは、陸軍の少壮士官が
陸軍の一部を使って反乱を起こし、当時の平和を求めていた高橋是清、斎
藤実、この二人の命を奪い、終戦のときの総理大臣をやられた鈴木貫太郎
に重傷を負わせた、こういうことですね。
 私は、そういうのを見てまいりまして、軍というものは、日本の本当の
国民の生命を守り、日本の平和を守るという組織であることは間違いなく
事実でありますが、もし一たん指導者が誤れば、国民を塗炭の苦しみに陥
れる集団であることも否定できないと思っております。
 今総理は、政治の最高責任者であるとともに、三軍の長なんですね。明
治憲法においては、統帥権の独立という形で総理のところをバイパスして
いたんですね、軍事問題は。それについて、けしからぬ、それを侵犯した
ぞということでやったのが五・一五事件ですよね。勝手に政治が中に入っ
てきて、ロンドン軍縮条約を勝手にやった、こういう話ですよね。
 今、そういうことは全くありません。全くありませんから、総理におか
れては、特にこういう法律を出されて、総理の役割というのはますます大
きくなるというこの原案なんですよね。ひとつ、どうか総理、三軍の長と
しての覚悟を述べていただきたいと思います。

○小泉内閣総理大臣 まず、政治として、総理大臣として一番留意しなき
ゃならない点、それは、二度と戦争を起こしてはならないことだと思って
おります。そういう過去の忌まわしい、避けなければならなかった戦争事
態に突入して、国民は悲惨な苦しみに直面した。こういうことから、戦
後、いろいろな反省の上に立って、今日、日本はこのような平和のうちに
先進国の仲間入りを果たすことができたと思うのであります。
 今後、総理大臣としては、戦争を起こさないということと同時に、もし
不慮の事態が起こったならば、未然に防ぐ、あるいは被害を最小限にとど
める、緊急事態に対しては常に備えておくということが大きな責任ではな
いかと思っております。

○藤井(裕)委員 私は、総理にもう一つ言っていただきたいことがある
のですが、それはきょうのメーンテーマでありますから、徐々に申し上げ
ます。
 私は、小学校六年から中学一年にかけて、東京直下の大爆撃の真下にい
ました。もう高射砲も撃てなくなっちゃっていたですね。そしてサーチラ
イトだけが爆撃機のパイロットの顔をよく映していたんです。そのくらい
低空飛行で爆撃が行われました。私は防空ごうの中で、もし生あれば、こ
ういう社会に絶対してはいけないということを幼心に誓ったんです。今、
不思議に命長らえてこういう場に立っているというのが実感なんですよ。
そして、戦争の悲惨さというものを後世に訴え伝えることも非常に大事で
すが、なぜこのような悲惨な事態が起こってきたのかということをもう一
度はっきりさせて、これからの世代につないでいくということが我々の役
目なんじゃないかと私は思っているんです。
 そして、それは、はっきり言いますと、政治があるいは指導者が原則と
いうものを全く無視して、安全保障の基本はどうあるべきかとか、自衛権
というのはここまでだとか、そういうものは全くなかったんですね。ある
ものは国威発揚の閣議決定だけなんですよ。国威発揚というのは、どんど
ん出ていけという話です。それしかありませんでした。

 そこで、簡単に昭和のことを申しますが、昭和二年、三年の山東出兵は
邦人保護なんですよ。邦人保護の名においてよその国に土足で入るという
ことは、国際法上許されていないのです。これをやりました。昭和六年の
東北地方、満州でもいいですが、その地域における軍事行動によって、昭
和七年には満州国をつくりました。それは国際的な常識からいえば全く反
するということで、結局国際連盟から離脱せざるを得なくなった。
 そしてその同じころ、熱河作戦といって、これはまたどういう理由があ
るのか、全く理由がないけれども、山海関を南下して、そして河北省だと
かあるいは蒙古、内蒙古、こういうところに出ていっちゃった。これも全
く理由がない。
 さらに、盧溝橋事件を機として、昭和十二年には中シナ、今の言葉じゃ
ないけれども、昔は中シナですよね、それへ上陸して、揚子江を北上して
南京まで占領しちゃったんですね。これだって全く大義名分がありません
ね。全くありません。
 それから、蒋介石政権が重慶に移ったら、蒋援ルートと称して、重慶の
蒋介石を助けるということで、昔の言葉で言いますが、北部仏印に出てい
っちゃった。その明くる年には、南方から来る石油を確保するために、南
部仏印まで出ていっちゃった。そしてついに日米開戦のきっかけになっ
た。こういう歴史を持っているわけですね。そこにあるのは無原則です
よ。単なる国威発揚だけなんですよ。
 だから、私たちはそこのところが一番大事だと思っています。物事は原
則を持って、これは絶対やっちゃいかぬということをはっきりさせること
によって、どうか国の最高責任者は軍という最大の力を持ったグループを
リードしていただきたい。このことについて、御意見があったら伺いま
す。

○小泉内閣総理大臣 一国の軍隊、日本は自衛隊を軍隊とは呼んでおりま
せんが、外国に例をとりますと、一国の軍隊というのは自国の独立と平和
と安全を確保するために存在するんだということで、各国が軍隊を保持し
ているんだと思います。
 日本におきましては、自衛隊も独立と平和を守る大事な組織として、現
在いろいろな点から、国民の支持のもとに、国民とともにある自衛隊とし
て、国民を守るための訓練や装備の拡充や、あるいは有事に対してそれぞ
れ対処していかなきゃならない、いわば国民の安全を確保するための重要
な組織であるということから、日々国民とともにある自衛隊という意識を
持ちながら精進、訓練にいそしむべきだと思っております。

○藤井(裕)委員 どうか今申し上げたような歴史観を正確に持っていた
だきたいと思うんです。
 あえて伺いますが、私が申し上げたような歴史観について御印象をおっ
しゃっていただければありがたいと思います。

○小泉内閣総理大臣 それは、いろいろ日本が、当時の政治状況として、
日本の生きる道を探った中で国際社会から孤立していった、それを断じて
避けなきゃいけなかったと私は思っております。
 そういうことから、日本は戦後、国際社会から孤立してはならない、国
際協調を大きな外交政策の柱としてやってきたわけでありまして、今藤井
議員が指摘されたような、戦争突入に至る間、国際社会から孤立したとい
う、国際社会の非難に耳をかさずに国際連盟から脱退したというようなこ
とは、今後もしてはならないと思っております。

○藤井(裕)委員 政治家の背骨は歴史観だと思いますから、どうか正し
い歴史観を持って軍をリードしていただきたいと思います。私は軍隊とあ
えて申しますが、自衛隊で結構です。
 そこで、そういう時期には、確かに日本にあったのは熱狂的ムードだっ
たんですね。そして、その熱狂的ムードを、はっきり言えば、あおったの
が指導者だったと思いますよ。反面において、冷静に世界における日本の
立場、そして、日本はいかにあるべきかとちゃんと冷静に理解していた方
もあるんですね。これは指導者にもあります。軍の関係の方にもありま
す。そして、一般国民の中にはそういう方がいっぱいいらっしゃる。とこ
ろが、そういう一つのムードの中に流れた。
 余り冷静に見られた方のことを一々申しませんが、例えば総理の選挙区
におられた井上大将ですよ。井上大将は最後の海軍大将ですね。この方が
海軍兵学校の校長をしておられたときに、英語を最後まで教えられたでし
ょう。教えられたんですよ。そして、どうせ敵性語を、しかも海軍兵学校
という軍の中枢の若いやつを育てるところで何をやっているんだという物
すごい非難があった。そのとき井上大将は、いずれ戦争は終わる、そのと
きにこれからの日本の中枢をなすのはこういう若い人だ、そしてその人た
ちは英語を知らなきゃいかぬと言って頑張り通されたんですね。今総理の
選挙区のことだけ申しましたが、そういう方もいっぱいいらっしゃったん
ですよ。もちろん一般の方の中に随分冷静に見ていらっしゃる方がいらっ
しゃったんですね。
 ところが、何でこんなことになったかというと、さっき申し上げたよう
に、私は、基本的なルールがなくて、それがために熱狂的なムードにあお
られるような社会がどんどんできていってしまったということじゃないか
と思うんですね。
 ですから、はっきり言って、この基本原則というものをつくった上でこ
の緊急事態法制というのを考えるのは私は正しいと思う。緊急事態法制が
なぜ正しいかといえば、これはだれも言うことですが、政治家として国民
の生命と日本の平和を守るためにはこれがなきゃいけないという意味にお
いてもそうですし、もう一つ、これをやらないでおいたら必ず超法規にな
るんです。超法規というのは民主主義の根幹に一番反することになるんだ
と思うんです。民主主義というのは、法の支配、法治国家というのが民主
主義の一番の基本なんであって、これはどうしてもやらなきゃいけないと
私は思っているんです。
 ところが、そこだけが突出しているんですよ、今のは。要するに、自衛
隊の行動だけが突出して、その自衛隊の行動に対して国民がどれだけの制
限を受けなければならないということだけが突出しているということは否
めないんですね。
 日本の中で、これから安全保障、安全保障というのは、日本の平和、そ
して国民の生命を守るのは、こういうこととこういうこととこういうこと
があって、その中の自衛隊行動だというまず位置づけをしなきゃいけない
と思うんですね。さらに、自衛隊行動は、戦前の例からいえば、全く自衛
権という限界を超していろいろな行動をしたことなどを考えれば、これは
どうしてもそういう基準が必要だと思うんですよ。
 だから、私たちは、こういう緊急事態法制は絶対に必要だと思う。しか
し、その土台がないんですね。突然この自衛隊の話だけが出てくる。そう
じゃなくて、土台、基礎というのは何かといえば、安全保障政策の全体像
である。この全体像をしっかりやっていただきたいというのが私どもの強
い期待なんです。
 そうでございますから、私たちは別の法律を出します。それは緊急事態
に対する対策を否定している法律ではありません。緊急事態に対する法制
は絶対必要だけれども、その基礎の中に、今の土台がない。それではだめ
だということをあらわした法律を出しますので、ひとつ、今のような物の
考え方について御理解をいただきたいと思います。

○小泉内閣総理大臣 政党政治、このあるべき姿というのは、批判も大事
ですけれども、対案を出すということから考えると歓迎すべきことだと思
っております。そういう対案があってこそ建設的な議論ができると思いま
すので、この緊急事態に対してどのような備えをすべきかという点につき
ましては、藤井議員の考え方あるいは自由党の考え方、大いに展開してい
ただきまして、これからあるべき有事態勢はどういうものかという議論を
深めていきたいと思っております。

○藤井(裕)委員 実はきょうのメーンテーマじゃないんですけれども、
去年、テロ対策法がありましたね。我々はあれに反対しましたね。それは
どういうことかというと、もちろん総理には総理のお考えがあると思うん
だけれども、僕らから見ると、今の基本的国際ルールに反しているという
ふうに考えて反対をしたんです。
 なぜかというと、これはアメリカの自衛権だということになっているわ
けですね。これは国際的に認められているわけです。それに対してヨーロ
ッパが一緒に共同行動をとることは当たり前なんです。これはNATO条
約五条によって、集団自衛権といいましょうか、一国が攻撃を受けたら、
それは全体が攻撃を受けたこととみなして行動するんだということですか
ら、ヨーロッパが出るのはいいんです。
 ところが、日本は、安保条約にはそういうことがありません。また、憲
法の解釈でもそれがありません。そして、といって、国連の平和活動への
決議もありません。あのときの御議論は、後方支援だという話になってい
るわけですね。後方支援というものが、一体、武力行動かどうかという議
論はあったんですね。しかし、これは、国際司法裁判所では、後方支援は
武力攻撃ではない、コンバットという言葉を使っていますね、コンバット
じゃない、しかし、これが武力による威圧とか武力行使であるという考え
については否定できないということも言っているんですね。
 そういうことですから、私は、きょうのメーンテーマじゃないけれど
も、そういうことがあったわけでして、よりやはり国際ルール、そして秩
序というものに慎重に取り組んでいただきたいというのが私たちの気持ち
なんですが、それはメーンテーマじゃございませんので、きょうはこれ以
上申しませんが、もう一つここで申し上げておきたいことは、平成十年か
ら十一年にかけまして、自自連立あるいは自自公連立というのがあったわ
けです。そのとき第一にやったのが国会議員の削減でありましたので、そ
のために少しおくれましたが、この両合意書には、今私が申し上げたよう
な形の緊急事態法制をつくるべきだということがどっちにも明記されてい
たんです。そして、その中で、プロジェクトチームはまじめに勉強された
と思います。
 ところが、平成十二年の四月になりまして、これは亡くなった方で大変
恐縮ですが、小渕総理が私どもの党首に、君たちとの合意は正しいと思っ
ている、日本の将来のために正しいと思っている、しかし自民党が動かな
いんだ、勘弁してくれ、こういうことを言われたんですよ。これは間違い
ない事実なんです。ですから、今の小泉総理がこう言っておられるという
こととは別に、二年間のうちにそんなに変わってしまったんだろうかとい
う奇異の感じも持っています。
 そこで、どうか総理が、一々このときはこうだったなんというのは結構
なんでして、思いのままを、今のこれは事実でございますから、おっしゃ
って、感想を述べていただければありがたいと思います。

○小泉内閣総理大臣 本来、緊急事態に対してどのような備えをしておく
べきか、あるいは有事に対してどのような対応を考えておくべきかという
のは、もっと早くやってしかるべきだったと思います。そういう状況だっ
たからこそ当時の自由党も、自民党の小渕総裁に対してそのような有事態
勢の整備を進言したのではないかと思っております。
 しかし、政治課題というのは、いろいろその時々によって山積しており
ます。恐らく、小渕総理にとってみれば、小渕総理自身の当時の判断によ
って、自分としてはほかのこともやらなきゃならない、自由党の提案なり
提言は正しい認識だと思うけれども、その当時の政治課題に上げるのは時
期がまだ早いといいますか、熟していないと思ったのかもしれません。そ
れは私の憶測ですから、今、小渕総理がどう言っているかわかりません
が。
 ともかく私は、いつの時代においても、平和のときにこそ、いざ乱が起
こったとき、一朝事が起きたときに、冷静に考えておくべきものだと思っ
ておりますので、今回も、むしろ今までそういう備えをしてこなかったと
いう反省の上に立ち、国民的な議論の中で有事に対してどのような態勢を
とっていくべきかということを議論する、また、法整備をしていくという
ことは大変重要なことだと認識しております。

○藤井(裕)委員 もう一度念を押しますけれども、私どもは、この緊急
事態法の基礎にある安全保障政策の根幹とか、あるいは自衛権の限界とい
うものを明確にした上でこれをやっていただきたいということがあること
をもう一度ここで申し上げておきたいと思います。後で、時間の範囲でこ
の問題に触れます。
 とにかくきょうは、この具体的な法の内容は同僚の議員に任せまして、
そのことは申しません。申しませんが、いろいろ問題があることは事実で
すね。
 きょうも午前中に出ていたように、「予測される」というのは、もしか
するとアメリカとの協力関係の法律じゃないのという意見もありますね。
それから、新しい緊急事態であるのをどうして先送りにしているのとか、
それからもう一つ、国民の皆様にいろいろなことをお願いするのに今の憲
法の公共福祉という抽象的な概念だけでいいのとか、いろいろあります。
しかし、きょうはそのことは申しません。私どもの同僚が次の機会に必ず
これを申し上げますので、きょうは申し上げることは差し控えまして、次
の問題は安全保障の基本方針の問題なんです。
 私どもは、安全保障の基本方針は少なくとも法律をつくって書くべきだ
ということを言っておりまして、おおむね三つ。
 一つは、何といったって自衛権でございますよね。みずからの国をみず
からが守らないようでいて、これは独立国家ではないわけでありますか
ら、最大のものは自衛権です。
 そして、しかしそれは日本の自衛権だけで事を運ぶということになれ
ば、自主独立、何というんですかな、自分だけで防衛をやるということに
なりまして、これは世界の大勢から見てもおかしいことの上に、有権者、
なかんずく納税者の方にこれはやはりいかぬことだと思うんですよ。やは
り防衛力というのは簡素にして精緻であるということが大変大事なことで
あり、納税者の方に過重な負担を強いるということはやはり問題があるの
であって、そういうときにこれを補完する形でほかの施策を考えていかな
ければならないということだと思います。
 しかし、基本は自衛権です。みずからの国はみずからで守るというこの
気概ですね。これが一番ですね。そこで補完的にあるのが、やはり日米共
同防衛体制です。これも大事なことです。きょうはそこの話に余り入りま
せんが。そして、日米共同防衛体制の根幹をなすのは日米安保条約でござ
いますが、その日米安保条約の第十条には、国連の機能がこの日本の地域
に充実した場合にはこの効力はそれまでだよということまで書いてあるわ
けです。
 ということは、国連の平和活動というものを日米安保においても想定し
ているわけです。そして、国連の平和活動というのは国連憲章の中の物す
ごい重要なファクターだと私は思っています。なぜならば、第一次大戦後
の国際連盟の中では、これはなかったわけですね。経済制裁しかなかっ
た。
 そこで、どういうことが起きたかというと、昭和十年のムソリーニ・イ
タリーのファシズムがエチオピアを侵略した。何にもできなかった。それ
を黙って見ていた。昭和十三年にはナチス・ドイツがチェコ、ズデーテ
ン、これに侵略に入った。その年の早くにはオーストリーも併合しちゃっ
た。これに対しても何にもできなかった。何にもできなかったわけです
ね。
 そして、言われているミュンヘン会談というのがありますね。あれは結
局、ヒトラーとムソリーニに、イギリスの総理はチェンバレンですね、そ
れからフランスの総理がダラディエですね、これは言いくるめられちゃっ
たわけですね。ところが、その総理大臣たちが、イギリスやフランスに帰
ったら、平和の天使として迎えられているんですね。これなんですよ。こ
れは大変な歴史の教訓なんですね。
 だから、そこに生まれたのが第二次大戦後の国際連合であり、そこの中
核をなすのが私は国連憲章だと思うんです。このことはやはり今の平和秩
序の中に十分組み込まれていて、それを日本としても三つ目の重要な柱と
して考えていかなければならないと思っておりますが、私どもの安保基本
政策三つについての御意見と、私が法律をつくらなきゃいけないと申して
いることについての御所見を伺います。

○小泉内閣総理大臣 今藤井議員が言われました三つのこと、いわば、自
衛権、みずからの国はみずからの力で守るというその重要性、しかしそれ
には限度がある、日米協力して安全保障体制、日本の独立と平和を守る、
さらにもう一歩進んで、それは国際社会と協調していくべきだ、この点に
ついては私ももっともだと思っております。
 これからの安全保障政策におきましても、日本としては専守防衛、第二
次大戦の反省を生かして、どのようにこれから平和と安全を確保していく
かということで、今まで努力されてきたのは先輩方であり、またその先輩
方の努力を我々もしていかなきゃならないと思っております。
 そういう点において、まず日本の独立と平和と安全は我が国自身の力で
確保しなきゃならないといういわゆる気概ですね。しかし、これについ
て、それには限界がありますから、今、日米安全保障条約ということによ
って、日本の足らざるところ、アメリカと協力しながら日本の安全の確保
を図っていこうということでありますので、私は、今後、これらの日本の
防衛政策の基本を踏まえながら、今言った、国際協調の中で、日本として
は国力にふさわしい、平和活動にも、お金も出しますけれども人も出そう
ということで、今自衛隊の諸君は海外に出て平和活動に従事しているわけ
であります。私は、これも、藤井議員が指摘されたように、日本独自の力
とアメリカとの協力と、一歩進んだ国際協調の一環だと思っております。
 十年前に、自衛隊を海外に出すということは大反対だという、徹夜まで
して、牛歩までして反対された政党もありましたけれども、今うそのよう
に、自衛隊が海外で平和活動をしていることによって、多くの国民は支持
を与える。私も東ティモールに行って、あの暑さの中、各国の軍隊と共同
して七百名近い自衛隊の諸君が、女性自衛官も交えて、汗を流しながらあ
の東ティモールの国づくり、いろいろな国土の整備に取り組んでいる姿を
見まして、大変心強く感銘いたしました。
 私どもは、今後、このような日本の平和と安全の重要性、それをいかに
確保していくかという点からも、今言ったような、国際社会と協調しなが
ら、経済大国になっても軍事大国にならないということを念頭に置きなが
ら、国力にふさわしい国際社会の中での日本の役割は何かということを真
剣に考えていくことが、また日本の平和と安全のためにも大変重要ではな
いかと思っております。

○藤井(裕)委員 私が国連の平和活動と申しましたのは、おっしゃるP
KOはもちろんその中でございますが、もっと、国連の平和活動そのも
の、武力行使というものまで入るということを今申し上げたつもりであり
ます。
 これは自衛権とは全く関係ありません。これは自衛権とは全く関係ない
世界の問題であって、後でもう少し申し上げますが、九条とは関係ないと
いう議論もあるわけですね。要するに、前文の、国際社会の一員として、
自国のことのみ考えて云々という、いつも総理が言われているものです
ね。こういうことからいえば、九条というのは自衛権の話なんで、これは
自衛権とは全く関係ない話なんだ、その武力行使は国連憲章上許されてい
るんだということからくる議論なんでございますね。そのことを今申し上
げたかったわけですよ。
 ですから、PKOは結構です。私は、PKOでもまだおかしいと思って
いますよ。国際基準に従って武器が使えないなんというのを、またこれ憲
法九条の解釈だなんというのはおかしいです。おかしいですが、きょうは
PKOの話はもういたしません。
 もっとある国連の平和活動について私は伺ったつもりなんでございます
が、もし御意見があったらお教えいただきたいと思います。

○小泉内閣総理大臣 この国連の平和活動について、これは自衛権と別だ
から、もっと武力行使も認められるんじゃないかという考えもあるのは承
知しております。
 しかし、私どもとしては、自衛隊の武力行使あるいは戦闘行為について
は、いろいろ国民の気持ち、さらには世論の動向、そして海外における影
響については非常に注意深く、また慎重でなくてはならないということも
あり、そういう中で、憲法の範囲内でどこまで可能かということで、一歩
一歩、国際社会の中で自衛隊の活動が、各国の軍隊の中で、極めて制約し
た中でも、日本の役割として果たしていかなきゃならないということでや
ってきたわけでありますので、今の時点で、国際社会、国連の中だったら
ば自衛隊も武力行使可能ではないか、あるいは戦闘行為が可能じゃないか
ということについては、私は、もう少し慎重であるべきじゃないかと、そ
こまでいきますと憲法の改正議論にも踏み込んでいきますので。これは、
私は否定しません、議論は。しかし、今回の有事の関連法案につきまして
は、私は、憲法改正にまで踏み込んでおりませんし、従来の憲法解釈を変
えるつもりはありませんので、その点についての議論については確かに御
不満もあると思いますけれども、議論の中ではされるのは結構だと思いま
す。

○藤井(裕)委員 昭和三十一年に日本は国連に正式に加入いたしました
ね。一部の人の中には、あの加入したときに国連平和活動は適用除外だと
いうふうに言ったんだという人もいますが、それは全く違いますね。全く
違います。無条件で加入したことは間違いないわけでありまして、総理の
口から、あれは無条件だったということをまず言っていただけますか。

○福田国務大臣 加盟したときに何らかの留保をした、そういう条件をつ
けていることはございません。

○藤井(裕)委員 そのとおりなんですよ。何の条件もついていないんで
すよ。
 では、国連憲章に何て書いてあるかというと、さっきの柱は第七章です
よね。武力行使は例外ですよ、武力行使ができるのは国連が決議したとき
というこの例外があって、あとは自衛権の話と、この二つしかないわけで
すね。さっきのテロの問題はそれをちょっと踏み外しているということを
言ったんですが、きょうのメーンテーマじゃないからそれは言いませんけ
れども、例外的にこれが認められているんですね。そして、それが国際連
盟のときはなかった、しかし国際連合のときにはできたという非常に重要
な規定なんですね、これは。非常に重要な規定なんです。そして日本は参
加した。
 二条には何て書いてあるかというと、誠実に加盟国はこれを遵守しなけ
ればならないと書いてあるんです。もう一つ、日本国憲法九十八条二項に
は、日本が締結した条約、確立した国際慣例については誠実に遵守しなけ
ればならないと書いてあります。これとの関係は一体どうなんでしょう
か。――待ってください。法制局長官が個人的に嫌だとかいうことではな
いんです。僕は津野さんはよく知っているんです。だけれども、そういう
ときに限って法制局長官が出てこられて、今、基本的な話なんですよ。基
本的な話なので、そのときに法制局長官、これは官房長官の管下にあるわ
けなんです、少なくとも官房長官が答えていただかなければ、何で政治家
議論になるんでしょうか。ひとつ、どうぞそういうふうに。

○福田国務大臣 これは、私が平成十三年に国会で答弁をしていることで
ございますので申し上げます。
 PKF本体業務の凍結解除、これは我が国の国連加盟の際の条件に反
し、憲法九条を否定するものではないかというお尋ねがあったときの言葉
でございますけれども、「我が国は、昭和二十七年六月十六日付岡崎外務
大臣発リー国連事務総長あて書簡をもって国連に対する加盟申請を行いま
したが、加盟に当たって我が国が何らかの留保を付したとは考えておりま
せん。」ということであります。
 他方、我が国が憲法九条に禁ずる武力の行使または武力による威嚇を行
い得ないことは当然でございます、いわゆるPKF本体業務の凍結が解除
されても、自衛隊の部隊等は、我が国が国連平和維持隊に参加するに当た
って憲法で禁じられた武力の行使をするとの評価を受けることがないこと
を担保する意味で策定されたPKO参加五原則に沿って制定された国際平
和協力法に基づいてこのような業務を行うこととなりますので、憲法上問
題にはならない、こういう答弁を実はしておるわけでございます。

○藤井(裕)委員 総理も官房長官も、話がPKOの話になっちゃうんだ
よね、ここになると。これ、今PKOの話をしているんじゃないんです。
それから、PKFの話をしているわけでもないんです。PKFというのは
PKOの本体業務の話ですから、要するにPKOの話ですよね。そうじゃ
なくて、国連の平和活動というのは、例外的に武力行使が認められてい
る、特に国際連盟にはなかった仕組みなんですね。そして、それはナチや
ファシズムというものを退治するために絶対必要だということでできた仕
組みなんですね。全然違うんですね。今、福田さん、もう一度言いますけ
れども、PKOの話とかPKFと称するものの話をしているんじゃありま
せんから。その点はもう一度お答えください。

○福田国務大臣 国連憲章四十二条及び四十三条に基づく国連軍につきま
しては、これまでの憲法九条の解釈、運用の積み重ねがございます。
 すなわち、まず第一に、自衛隊については、我が国の自衛のための必要
最小限度の実力組織であり、したがって、憲法第九条に違反するものでは
ないこと。
 第二、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空
に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超え
るものであって、憲法上許されないことである。
 第三、我が国が国際法上、集団的自衛権、すなわち自国と密接な関係に
ある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわら
ず実力をもって阻止する権利を有しているということは、主権国家である
以上、当然であるが、憲法九条のもとにおいて許容されている自衛権の行
使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであ
ると解しておりまして、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超え
るものであって、憲法上許されないこと。
 第四に、国連の平和維持隊への参加は、当該平和維持隊の目的、任務が
武力行使を伴うものであれば、国際平和協力法におけるいわゆる五原則の
ような格別の前提を設けることなくこれに参加することは憲法上許されな
いこと。
 以上のような憲法九条の解釈、運用の積み重ねから推論すると、我が国
としてこれに参加することについては憲法上疑義がある、こういうふうに
考えているわけであります。

○藤井(裕)委員 その話なんですよ。要するに、国際協調主義というこ
とが非常に大きな原則になっているのに、九条というものを非常に曲げて
解釈するがゆえに、今のような福田さんの話が出てくるんですよね。本当
はもっと素直に考えて、国際協調主義というのは前文に書いてあるんです
よ。総理がよく使われる言葉なんですよ。自国のことのみに専念して他国
を無視してはならない、そして、国際社会において名誉ある地位を持ちた
いと思う、これは総理がいつも言っておられることですよ。そして、九十
八条二項というのには、はっきりとそういうものを遵守しなければならな
いと書いてある。国内法がまずそうです。国際法でどう書いてあるのか。
入った以上は守りなさいと書いてあるのですよ。そこで、日本の九条とい
うのを非常に曲げて解釈するから、今の福田さんのような話になっちゃう
んだよね。
 ですから、私は、総理も福田官房長官もわかっておられると思うんです
よ。それが、今までの積み上げとおっしゃっているけれども、例えば、も
しそれを踏み外したようなことを言うと、国会でやられちゃうんじゃない
かという話ですが、それもあえて申し上げますよ。憲法九十九条には、総
理大臣も一般大臣も国会議員も、平等に書いてあるんですよ。そして、そ
れは職務を遵守するための義務なんですよ。改正の議論をするななんとい
うことはどこにも書いてないし、憲法九十六条には改正のことが書いてあ
るんですよ。だから、過去においてこれに関連していろいろな暴言を吐い
た方もいますから、それはおやめいただくことはいいですよ、暴言吐いた
人は。しかし、まじめに憲法の今の問題点を議論した人をけしからぬとい
うのは、では、国会議員もみんなやめてもらわなければならないですよ。
 今、憲法調査会では、憲法のここに問題があるという議論をどんどんし
ているじゃないですか、衆議院においても、参議院においても。それと総
理のお立場は、憲法九十九条上、何の違いもありません。どうか、どちら
でも結構ですから、そうだと、やはりおかしいと思っているということを
おっしゃっていただきたいと思います。

○小泉内閣総理大臣 憲法改正の議論は、するのに何らおかしいことはな
い、私は常々言っているんです。解釈を変えるんだったら憲法を改正した
方がいいということも私ははっきり言っているんです。今の憲法のまま解
釈を変えるのはかえっておかしくなるというのが私の立場です。解釈まで
変えるのだったら憲法を改正すべきだと言っているのが前々、私の一つの
主張でありますし、これが直ちに改正に結びつくものではない。
 議論を封殺するのはおかしい、議論は大いに結構だ、しかし、今の時点
で私は憲法改正を政治課題にのせる考えはないということを言っているの
も事実であります。

○藤井(裕)委員 それでは、改正する気は、政治課題としてはないとい
うのはわかりましたが、やはりおかしいなと思っておられるかどうかだけ
は言ってください。

○小泉内閣総理大臣 それはおかしい点がたくさんあります。例えて言え
ば、憲法九条もそうです。いまだに自衛隊について、解釈の点において、
一切の戦力は保持してはならないということを言っていますけれども、果
たして自衛隊が戦力でないと国民は思っているでしょうか。しかし、法律
上の問題でこれは戦力じゃないと規定しているのであって、一般国民は、
多くの国民は自衛隊は戦力だと思っているのは、常識的に考えてそうだと
思いますね。
 しかしながら、これは、この議論をするとほかの議論が、ほかの法案が
課題になるぐらいいろいろな政治上の問題も出てきますから、いろいろな
解釈の積み重ねで、日本の国際社会での役割、あるいは日本の平和と安全
を確保するのはどういうことかということで先輩なり我々が今努力してき
て、ようやく最近は、こうして憲法改正議論も堂々とできるような状態に
なってきたし、自衛隊も海外に出て平和活動に寄与している点において
も、多くの国民が批判するような状況ではなくなってきた。やはり積み重
ねというものもきいてきているわけですね。
 私は、そういう点において、憲法改正論議はタブーじゃない。憲法を改
正すべきでないという議論も結構、憲法を改正すべきだという議論も結
構、大いにするのが国会議員の役割じゃないでしょうか。

○藤井(裕)委員 まず、すき間という言葉はやめてくださいよ、もう使
わないでくださいよ。すき間というのは、人によっては、これは憲法違反
のことをやっているととっている人はいっぱいいますよ。そうじゃなく
て、今おっしゃったように、憲法はおかしいんだ、だけれども今直してな
いからしようがないんだということになれば、やっちゃいけないというこ
となんですよ。それは守らなきゃいけないんですから、やっちゃいけない
んですよ。だから、またテロ法の話になっちゃうけれども、あれはやっち
ゃいけないことをやったんだというふうに申し上げるわけですよね。
 そこで、次の話は、自衛権の話に行きますけれども、今自衛権の話も出
ましたから。
 自衛権というのは、本当に、自衛権の名において何でもやってきたわけ
ですね、過去の世界は。例えば十九世紀のヨーロッパ帝国主義というの
は、宣教師が殺されたといっちゃ中国を侵略したんでしょう。これは自衛
権でやっているわけですね。
 私は日本でもいい例があると思うのは、山県有朋はこう言っているわけ
ですよ。日本には生命線と利益線があると言っているわけでしょう。生命
線というのは本当の意味の領域ですよね。利益線というのは、いや、そこ
までとっておかないと危ないよという話でしょう。それから何が出たかと
いうことです。日韓併合はそれから出ているんですよ。そして、さっきち
ょっと言いましたが、熱河作戦と言ったけれども、満蒙がその生命線だと
言ったのはそれから出ているんですよ。
 つまり、自衛権というのは、本当に考えようによってはどんどん拡大し
ていくんですね。そして、その弊害というのがあるんですね。ですから、
自衛権というのは、我々は抑制的に考えなきゃいけない。今のようなこと
は一方にあると同時に、個別の自衛権というのは抑制的に考えなきゃいけ
ないというのが我々の立場なんです。
 けさの議論でも出ていましたが、何というんですか、必要最小限で他に
方法がないとき、しかも日本が直接侵略されたとき、あるいは侵略される
おそれが極めて高いときということは、我々がずっと言ってきたことなん
です。僕は、総理に、それだけおっしゃるならば、法律に書いてください
よ。
 というのは、近隣諸国は、さっき言ったように日本の過去の行状に対し
て非常な不信感があるんですよ。ですから、さっき話も出ていたけれど
も、武力行使事態というようなのが、それがどこまで入るかという議論も
大事ですよ。しかし、根っこで本当に自衛権はここまでだということをは
っきりさせるならば、ああいう問題は起きてこないんですよ。だから、ま
ず、自衛権はここまでだということをはっきりさせていただきたいなと思
っておりますが、いかがでしょうか。しかも、それを法律に書いていただ
きたいと思います。

○小泉内閣総理大臣 今議論しております有事関連三法案は、自国が攻撃
された場合なんですよ。(藤井(裕)委員「予測はどうですか」と呼ぶ)
予測を含めて。自国が攻撃される、予測される事態、これを議論している
んですから、まさに日本の独立と平和と安全を守るというその議論ですか
ら、私は憲法の中でも範囲内で当然これはできる問題ですし、また、やら
なきゃならない問題だと思っております。
 自衛隊を海外に派遣するという問題ではなくて、自国が攻撃を受けた場
合にどうやってその安全を確保するかという話なんですから、そこを混同
しないでいただきたいと思います。

○藤井(裕)委員 ちょっと逆の混同だと思うんですよ。
 さっきいろいろ議論に出ていた中に予測というのがありましたね。予測
は直接、攻撃じゃないのですね。私どもは周辺事態法のときに、私どもの
党が言って直していただいたのはそれは何だというと、自国が直接攻撃さ
れたのでなくても、そのまま放置すれば間違いなくやられてしまうという
のをあえて入れていただいたわけですね。そこまでが私は個別自衛権のぎ
りぎりの範囲だと思っているんですよ。ところが、今度の予測というの
は、きょうはその法律の中の議論はしないことにしていますからやりませ
んけれども、予測というのはもっと上の話なんですね。だから、その大前
提として、自衛権はもうここまでだと言えば、予測がどうだとかおそれと
どう違うかという話のもう一つ前なんです、本当は。それをしっかりやっ
ていただかないと困るという意味で私は自衛権の話をあえてここで申し上
げているわけなんですね。
 日本だって戦争のとき、自衛権と言ったのですよ。しかし、僕らの小学
校のときに軍歌がありまして、「断固膺懲堂々と」というのがあったので
すよ。膺懲というのは懲らしめですよ。日本は、戦争を始めるときには自
衛権と言って、僕ら子供にはこれは懲らしめで今やっているんだと教えて
いるわけですよ。そういうのが現実なんです。だから、自衛権は本当に厳
格に考えないといけないということをもう一度申し上げておきたいと思い
ますね。
 それから次に、自衛権というのはそういう意味で、さっきちょっと総理
も言われましたけれども、非常に限定的に解釈し、抑制的に解釈しなけれ
ばいけない。そして、それは我々は法律をつくるべきだということを申し
上げておりますが、もう一つ、自衛権そのものの定義がまだはっきりして
いないのですよね。それは何から来ているか。日本の憲法の由来と、その
憲法の文字がなかなか難しいというかわかりにくいから解釈をふらふらす
るんですね。この両方だと思いますよ。
 きょうは憲法改正の議論を正面から言いませんけれども、マッカーサー
というのかな、GHQが原案をつくったわけでしょう。GHQがつくった
原案のうち、日本で変えてもらったのは二つしかないのです、大きなとこ
ろで。一院制というのを二院制にしてもらったことと、土地及び天然資源
は国有とすると書いてあるのを、余りにひどいじゃないかといってやめて
もらったのがありますが、あとはほとんどそのままできているわけです
ね。
 それで、マッカーサーの三原則の第二項目には、あれはイエローペーパ
ーというんだね、イエローペーパーというのには何て書いてあるか。難し
い言葉は使いません、自衛の戦争も侵略のための戦争も、ともにだめだと
マッカーサーのイエローペーパーには書いてあるんですよ。それをケーデ
ィスという実際にこれを仕切った人間が、これはちゃんと日本の調査団が
言っていますよ、ケーディスがそれは余りに非現実的だと言って、自己の
責任で消しちゃったんですよ。
 ですから、これまた本当は難しい言葉だけれども、日本の憲法九条に
は、学者ならわかるという、国際紛争解決の手段としての戦争は放棄する
と書いてある。ところが、前文に何て書いてあるかというと、全然違うこ
とが書いてあるわけでしょう。全然違うことが書いてありますね。これも
総理の言葉で言えばすき間なんですけれども、すき間じゃなく、おかしい
と言っていただきたいのですね。だって、諸国民の公正と信義を信頼しで
しょう。前文というのは憲法の全体像を出すのですから、少なくともそこ
に一言、日本はまずみずから自分を守るんだ、その上に立って諸国民を信
頼するんだ、これならわかるんですよ。一つも書いていない。ということ
は、マッカーサーの思想がそのまま出ているんですよ、これは。そのまま
出ているんですね。
 だから、あのときに、昭和二十二年、僕は中学三年なんですが、ニュー
ヨーク・タイムズにはこう書いてあるんですよ。これはユートピアの社会
だ、日本が悪いことをしなけりゃ世界は平和なんだねと皮肉たっぷりにニ
ューヨーク・タイムズは言っているんですよ。
 僕らは教わりましたよ。同じことに、もうこれからの世界の国々は日本
を攻めてくるなんてあり得ないんだから、日本は無防備でいいんだと教わ
った。しかし、僕らの先生は立派な方ですから、本質はわかっていたと思
いますよ。本質はわかっていたけれども、そう言わざるを得ないんです。
だって教科書がみんなそうなっちゃったから。つまり、そこに物すごいギ
ャップがあるんですよ。
 九条の言葉だっておかしいでしょう。あれは普通の日本人じゃわからな
いんですよ、九条の言葉というのは。「国際紛争を解決する手段」という
のは、どこから持ってきたかというと、昭和三年の不戦条約から持ってき
ているわけですね。不戦条約から持ってきたけれども、その不戦条約を、
実際中心になったのはアメリカとフランスですわな、ケロッグ・ブリアン
条約。戻ったら、これは何だ、これは自衛権もだめなんじゃないかとフラ
ンスとアメリカで怒っているんですよ。わからないんです。それをまた翻
訳しているんですから、ますますわからないんです。現に、昭和八年に
は、この侵略定義条約をつくらないとこれはもう不戦条約はもたないとい
うところまで行ったけれども、結局そんな話になると、だめになっちゃっ
たんですね。というぐあいに、非常に難しいことなんですよ、まず。
 そこで、今の前文は、もうあれは無防備の前文ですよ。そして、九条と
いうわかりにくい不戦条約から持ってきた文章を日本語に翻訳しています
から、あそこもわからないんですね。
 日本の普通の方に聞いてください。あれは自衛権も否定しているんじゃ
ないかと言う方が結構いますよ。なぜならば、日本に攻めてくるのだっ
て、おまえの国が欲しいよと来るんじゃないんですよ。何か理屈がついて
いるんですよ。何か理屈がついて押し寄せてくるわけでしょう。今はそう
いうことはない、ほとんどあり得ないと思いますけれども、何か理屈がつ
くんですよ。そうすると、これも国際紛争解決じゃないのと思っている方
は、日本人の普通の良識のある方に意外にいらっしゃいますよね。
 ですから、非常に憲法の文言が悪いということはまず申し上げておきま
す。どうか、すき間じゃなくて、おかしいと思うとそれをまず言っていた
だけますか。

○小泉内閣総理大臣 いろいろ解釈の幅があるということで、すき間もあ
ると言ったわけでありますが、今言っているように、今の憲法でも、詳細
に勉強、研究された学者の間でも、自衛隊は憲法違反だと言っている人も
いるんですよ。しかし同時に、この憲法九条を読んで、自衛権まで否定し
ていないんだ、だから自衛隊は合憲なんだと言う学者もいるわけです。学
者が、頭のいい、勉強に勉強して学問を積んだ学者の間でも、同じ文章
で、これは憲法違反、合憲、違憲、議論があるんだから、一般国民が惑う
のはおかしいことではない。むしろ、惑ったり、おかしい点があるのは私
も認めます。だから、私は将来憲法は改正した方がいいということはかね
て言っている。そういう点においては憲法改正論者であります。
 しかし、現実の政治家として、ましてや総理大臣として、今憲法改正し
ましょうと言ったらどうなりますか。そのぐらいのことはよくわきまえて
いますよ。国会の状況もよく御理解いただきたいと思います。

○藤井(裕)委員 さっきから言っているように、政治課題にするかどう
かというのはわかっているんですよ。だけれども、憲法九十九条違反でも
何でもないんだから、堂々と言ってくださいよ。堂々と言ってください
ね。僕らの党は決して、そんなことおっしゃったからといって責任追及す
るなんて言いませんよ。絶対言いませんよ。だって、これはだれだって自
由なんだから。現に、憲法調査会、各党みんな好きなこと言っているじゃ
ないですか。だから、それはそれでいいんです。ですから、余り心配なさ
らないでどんどん言ってください。
 政治課題か云々というのはわかります。それは結構です。しかし、本当
は政治課題にまで持っていくのが筋だと思いますよ。思いますが、今の総
理の言葉は、それはそれで理解しますけれどもね。
 そこで、次なんですが、今言ったような自衛権から何が出てくるか、も
う総理は先に言われましたけれども、戦力なき軍隊というのがあるんです
ね。こんな非常識な言葉はないんですよ。だけれども、今政府の公式解釈
はそれなんですよ。ですから、総理、こういうことを出してきているんで
すから、まずそれから変えましょうよ。
 これはどういうことかというと、芦田修正とかなんとかは別としまし
て、あの憲法の条文は本当にわかりにくいというのは今お話しのとおり。
吉田さんは、これは自衛権ないと言ったんでしょう。それは、総理も言わ
れたように、読み方なんですよ。あの難しい言葉を一応侵略戦争としまし
ょうか。侵略戦争はやっちゃいけないと書いてあるんですね。それから、
もう一つ後の方には、戦力は持っちゃいけないと書いてある。戦力は持っ
ちゃいけないんなら自衛の戦力も持てないんだろう、こういうのが吉田議
論なんですよ。それは後ろにいる法制局がちゃんと振りつけたと思います
よ、吉田さん時代に。
 それが、昭和二十九年になって自衛隊ができちゃったんですね。そうす
ると、これはとんでもないという話になって、解釈から変えていかなきゃ
ならない。こういうふらふらした解釈がおかしいんだけれども、二十九年
の解釈、統一解釈ですよ、どう書いてあるかというと、自衛隊は国土防衛
の実行部隊だと書いてあるんですよ。国土防衛隊なんです。そして、それ
は何も変えていませんから、今の自衛隊は国土防衛隊なんです。何でそれ
がティモールやなんかに行っているんですか。私は、行っていることが悪
いというのと逆なんですよ。
 今でも昭和二十九年の解釈をそのままとっているんですよ。第二項に何
て書いてあるかというと、近代戦力を持っていないんだからこれは戦力じ
ゃないと言っているんですよ。これは統一解釈ですよ。昭和二十九年です
よ。あれから四十五年、五十年近くたって戦力なき軍隊という、普通の人
からいうと非常識。
 よく、総理も今言われましたけれども、政治不信と今いろいろなところ
で騒いでいる、出ているでしょう、これも政治不信の根源だと思います
よ。だけれども、普通の人が考えてわからないことをこういう場だけで言
っているんですよ。これ、政治不信の最たるものだと思いますよ。
 総理、そこいらは、あれはやめた、戦力なき軍隊なんておかしい、イー
ジスの話も例に出すまでもないんですよ。あれはミサイルを搭載している
んですよね。そしてミサイル攻撃能力があるんですよ。しかも高高度の探
知能力もあるんですよ。これは戦力じゃないんでしょうか。アメリカと日
本しかないんですよ、イージスは。それで戦力なき軍隊と言ったら、これ
ほど政治不信はないんじゃないでしょうか。私は、そこいらからも政治不
信を直していただきたいですね。
 総理、こういうのを出してこられたんだから、いや、昭和二十九年のは
間違っていた、こう言っていただきたいと思います。

○小泉内閣総理大臣 今の議論はともかく、今お話しの趣旨はよくわかり
ますよ。だからこそ私は、テロ対策法のときに、あいまいな点があると。
日本人というのはあいまいさをうまく包容する国民であるというのは、い
い例が憲法だと私は思っています。私の答弁も、あいまいだ、あいまいだ
と批判する人がいましたから、それはあえて、では自衛隊はどうなのかと
言って戦力の問題を出して、もっと私を追及してくれると思ったんです
よ、当時。だれも追及しない。私の方が拍子抜けしちゃった。
 だから、そういう点で、私は今までいろいろなお話を、議論を聞いてお
りまして、確かに日本の憲法にはあいまいな部分がかなりあります。憲法
九条も、自衛隊は違憲、合憲論が分かれている点からとってもそうであり
ます。しかも、戦力の点一つとっても、一般の常識から見れば、自衛隊が
戦力なかったら自分の国を守れないじゃないか、これ、常識ですよね。し
かし、法律上の議論からすると、これは戦力ではないということになって
いるわけです。
 だから私は、そういうあいまいな点を含みながら、現実の政治から、か
といって、国防上、安全保障上、独立と安全を守るためには、現行憲法が
改正できるような状況でないんならば、現実の政治にどうしようかという
ことで積み重ねてきたのが今の議論なんですよ。今、見てごらんなさい。
国会の状況から見て、憲法改正できる状況じゃありませんよね。それも現
実、政治家として判断しなきゃならない。
 憲法、すべきだという議論はいいですよ、議論は大いに。しかし、現実
においてそれが可能でないという状況であるならば、私は、今までの議論
を積み重ねた上で、日本としてふさわしい対応をしていかなきゃならない
ということを言っているのでありまして、私は、今の憲法はおかしいんだ
という藤井議員の指摘に異論を唱えるものではありません。

○藤井(裕)委員 総理は自由に物が言えるということもおっしゃった。
そして、何でも改革しようとおっしゃっている。では、政治課題の問題は
別としまして、僕はこれは改革すべきだと思うんだ、こう言われるだけで
日本の世論は動くんですよ。反対もいますよ。反対もいたっていいじゃな
いですか、あなたは何でもやるとおっしゃっているんだから。そして堂々
と、僕はこう思う、僕はこう思う、こういうことを言っていただくことが
私は今大事だと思います。
 決して非常識なことをやろうとしているんじゃなくて、もう五十五年変
わらなかった国というのはないんですよ、ゼロですよ。不磨の大典である
明治憲法でさえ五十五年なんですよ。あれは不磨の大典なんですよ。それ
と同じ長さまで来て、世界にこんな例がないんですね。それを世の中の人
の方がわかっている。しかも、戦力なき軍隊なんというのは国会だけで通
用する議論なんですから、総理はどうか、僕は政治課題にはしないけれど
もおかしいと思うともうさっきおっしゃいましたね、おっしゃいましたか
らちゃんと新聞にも載ると思いますけれども、おかしいということをもう
一度おっしゃっていただければありがたいと思います。

○小泉内閣総理大臣 私は、総理大臣として憲法改正を現実の政治課題に
のせる気はありませんが、最初の選挙から憲法改正論者で通っておりま
す。

○藤井(裕)委員 今解釈論がありましたから、もう一つ解釈論を聞かせ
てください。(発言する者あり)

○瓦委員長 ちょっと静かにしてください。

○藤井(裕)委員 昭和五十三年なんですけれども、核は憲法の上からい
って、もちろん防衛核ですが、合憲であるということを言っています。こ
れはそのままでよろしゅうございますか。

○小泉内閣総理大臣 それは合憲論をとっております。しかし、日本は核
は持たないと。政治論。

○藤井(裕)委員 そこで、今まで議論した中に憲法の話が大分出ました
ので、きょうの主たる議題は憲法じゃないかもしれないけれども、憲法に
ついて少し伺いたいと思うんですよ。
 僕は、日本の憲法の今の問題点は大きく分けて二つだと思っているんで
すよ。一つは古過ぎる、一つはマッカーサー司令部でできた原案であると
いうこと、この二つなんですよ。
 第一の古過ぎる。日本は古い方から十五番目の憲法です。今百八十国ぐ
らい、イギリスみたいな不文法の国がありますけれども、百八十国ぐらい
は憲法を持っていると思います。そのうち古い方から十五番目です。そし
て十四番まではみんな改正しています。そして、日本より新しい憲法を持
つフランスもドイツも、何十回となく改正しています。
 それが古いがためにどういうことが起こっているかというと、今、私は
人類の最大の問題は世界の平和と地球環境の保全だと思うんですよ。その
環境という言葉が一言半句出ていないんですよ。こんな憲法はおかしいで
すよ。そういう意味で、古いというのが一つの欠点です。
 もう一つ本当はあえて欠点を言いますと、国の機構の問題なんですよ。
初め出たときはともかく、今、参議院と衆議院は同じ仕組みなんですよ。
ところが、同じ仕組みであって、かつ衆議院優位になっているんですよ。
こんな国はゼロですよ。
 アメリカは連邦とそれから代表ということがありますからちょっと違い
ますが、アメリカは対等ですよね、上院と下院は。いろいろなことで、や
れ何だ、条約の承認権とかなんとかありますが、あれはバランスとってい
ますよね、バランスとっている。そして、法案については廃案になるんで
すよ、あれは。それからイタリーもそうです。イタリーも全く廃案になる
んですよ。そういう意味で、非常に日本の国会のあり方というのが問題だ
ということもあえて申し上げておきます。
 それから第二は、やはりGHQの原案をもとにしているということなん
ですよ。GHQの原案をもとにしているということはどういうことかとい
うと、一つは、まず第一に人に日本の憲法をつくってもらった国なんてな
いんですから、それはまずもう皆さんおわかりだから、それは言いませ
ん。
 もう一つ問題は、あれは御承知のように一週間で二十五人でつくったん
でしょう。そのうち四人が秘書と通訳でしょう。つまり一週間で二十一人
でつくったわけですね。総理の言葉じゃないけれども、どんな俊秀だって
整合性のあるものなんかできるわけないんですよ、一週間で二十一人です
から。だから、さっきのような、前文と九条の違い、前文と九十八条二項
の違いというようなものが出てきているんですね。
 そして、もう一つは、翻訳でしょう。だから、翻訳なるがゆえのわから
なさがあるんです。
 我が大先輩の山本有三先生が、あなたは文豪なのに何で参議院議員なん
かになるのと聞かれたときに、僕は日本語の憲法をつくりたいと言われて
いるわけでしょう。そして、山本さんが書かれた憲法前文というのがある
んですが、実に雄渾ですよ。日本人らしいですよ。
 だから、GHQがつくったということはいろいろな意味があるんです
ね。二十一人で一週間、拙速。二番目に、日本語でない、したがってわか
りにくい。それからもう一つは、物すごい抽象的なんですね。
 大体、地方自治のとき、地方自治の本旨に基づきというあれは何です
か。何にもわからないですよ、地方自治の本旨に基づき。社会保障だっ
て、最低の文化的生活を維持すると言っているんでしょう。ここはわから
ないです。
 僕らは、地方自治ならば、何のために地方自治をやるんだということを
憲法に書くべきだと思うんですよね。例えば地域文化というものをしっか
りやるということとか、それから、本当に地域の特性を生かすとか、いろ
いろなことがありますわな。
 それから、社会保障だったら、僕らと総理とは違いますけれども、基礎
年金と介護と高齢者医療は国の責任において保障すると書いて初めて憲法
に値するんですよ。
「健康で文化的」じゃわからないんですよ。
 教育だって、教育を受ける権利と義務と書いたって何にもわからないん
ですよ。僕らは、やはり教育の目的を書くべきだと思いますね。自制ある
自由のもとにおいて個性豊かな人間をつくるとか、日本の文化と伝統を受
け継いで後世に伝えるとか、そして、さっきも言ったように、環境とか世
界平和のために尽くすのは人類の職責であり、そして日本人の義務である
とか、そういうことを書かないで、教育を受ける権利と義務があるなんて
書いたって何もわからないんですよ。
 いろいろ申しましたが、限られた時間の中で、今の防衛政策、安保政策
を少し超えるかもしれませんけれども、憲法の、私が言った、古いという
ことと、よその国の人がつくって、しかも拙速につくったということ、こ
の二点についての総理の御意見を伺いたいと思います。

○小泉内閣総理大臣 五十年間以上一度も改正していない憲法というの
は、古いといえば古いと言えるし、もっと柔軟に変えるべきことは変えて
もいいと思うんですが、これがまた日本が普通ではないと言われる一つの
理由になっているのかもしれません。古いといえば古いです。もっと改正
すべき点はいろいろあると思います。
 それと、確かに、この憲法は日本人自身の手によってすべて書かれたと
いう点でないということは、今までの憲法調査会の議論、いろいろな議論
を聞いても、それは私は当たっていると思っております。

○藤井(裕)委員 ひとつ、憲法の問題については、ぜひ総理が先頭にな
って、政治課題じゃなくていいですよ、やはりおかしいんだと。
 結局、これは、国会の三分の二といいますが、しょせん発議権にすぎな
いんですよ、国会議員のやることは。問題の本質は国民の皆様なんです。
有権者の皆様なんです。有権者の皆様に理解をしていただく直接の行動を
とるべきだと僕は思っているんですよ。だから、もちろん発議者のいろい
ろな合意をとるということは大事だと思いますが、同時に、有権者の方そ
して国民の皆様に理解していただければ、これは過半数でございますか
ら、どうかそういうお気持ちでこの憲法問題には対処していただきたいな
ということを強く思っております。
 そして、きょうは法律の話はしないつもりでおりましたが、若干時間が
ありますので、後の人に譲る意味において若干申しますが、この法律の持
っている一つの難点は、さっきからずっと申しましたように、自衛隊の行
動だけが先走っていて、そして、その中で国民の皆様に対するいろいろな
制約を求めようとしているということだと思っているんですよ。
 さっき申し上げたように、安全保障の基本方針というものを土台として
しっかりつくって、あるいは、自衛権というのはこれだけが限界だという
土台をしっかりつくって、その土台の上に、こういうこともあるんだよと
いうことを説明して初めて、近隣諸国あるいは日本の国民の皆様への理解
が深まるはずなんですね。ですから、そういうところが抜けているという
ことについて私どもは非常に疑念を持っています。ですから、独自案を出
します。こういうものを含めた独自案を出します。
 それからもう一つは、これはいろいろな方が議論されていると思うんだ
けれども、今の異常事態というか緊急事態というのが、確かに総理も一番
の尊敬しておられる福田総理の時代に、昭和五十二年にその指示によって
動き出して、そして、五十六年、五十九年に案ができて、それから三十年
間ほったらかしておいたという問題なんですね。ただ、その時期には、確
かにその時期から考えれば当然かもしれませんが、旧ソ連、もうなくなっ
ちゃった国が大挙して北海道に押し寄せてくるという一つの前提があった
ことは、これは否定できないんですね。そのことが今回の案にもずっと残
滓として残っていることは間違いないんです。
 どこかのテレビで言われていたけれども、これはファンダメンタルなも
のなんだからいいんだと。私は、ファンダメンタルかどうかは別として、
いろいろな新しい緊急事態というのがあるということも頭に置いておいて
いただきたいと思うんですね。そういうことをやらなきゃならないとき
に、ファンダメンタルと言われているのか何か知りませんが、今から三十
年前の緊急事態を前提としたものだけを今回やろうとしているというこ
と、そのことについて疑念があります。第二に疑念があります。
 それからもう一つは、国民の皆様に対していろいろな制約を求めるとき
には、今世界のルールは二つあるんだと思うんですよ。一つは、同じ戦敗
国のドイツです。ドイツは憲法でやっていますね。憲法で非常事態という
ものを置いて、憲法に基づいていろいろな制約をお願いするという形にな
っている。もう一つがアメリカ型ですね。アメリカは憲法にありません。
アメリカは憲法になくて、大統領が、例えば我が国でいえば総理大臣です
ね、が、非常事態というか緊急事態を宣言して、その上で一種の制約をお
願いする、こういう形なんですね。これの二つのどちらかでなきゃおかし
いんですよ。今、緊急事態を宣言する規定もこの中には入っていません。
武力行使の認定だけなんですね。認定だけなんですよ。そうじゃなくて、
やはり、こういう時期が緊急事態だということをはっきりさせるというこ
とによって多くの国民の皆様に理解をしていただくということが必要なん
だと思うんですね。
 そうして、そこの、制約する原点が公共の福祉なんですよね。これは問
題だと思いますよ。公共の福祉というのは極めて抽象的で、私はさっき憲
法の改正のときに、公共の福祉という言葉はやめた方がいいということを
言おうと思ったんですが、世界人権宣言にしろ、国際人権条約にしろ、あ
るいは欧州人権条約にしろ、そういう言葉で使っていないんですね。みん
な、民主主義国家の道徳に従ってとか、他人の権利とか他人の信義を害し
ない範囲においてとか、表現の自由に至っては、国土の保全に反するよう
なことを言っちゃいけないとか、そういうようなことがみんな書いてある
わけでして、僕はやはり公共の福祉という抽象的な言葉だけでこれをやる
ということにも疑念を持っているんです。
 恐らくそういうところに入っていかれるんだと思うんだけれども、いず
れ我々の党の代表がそこいらもお話しすると思いますけれども、そこいら
について、きょうはそっちが主流の話じゃありませんけれども、概略、総
理のお気持ちをおっしゃっていただきたいと思います。

○小泉内閣総理大臣 ある点においてはむしろ抽象的な表現の方がいい場
合もあると思うんです、余り具体的に列挙できない場合もありますから。
公共の福祉といえば、あいまいだといえばあいまいかもしれません。じ
ゃ、人権だといったって、あいまいといえばあいまいな点があるでしょ
う。だから、そこまで全部、具体的に、限定的にやれというと、かえって
無理な場合もあるから、私は、抽象的な議論で、文言においてもいい場合
もあるんではないかと思っております。

○藤井(裕)委員 私は、話したいことはもうこれですべてなんです。私
は簡単明瞭に話すのが好きなもので、若干時間を残しておりますけれど
も、今まで申し上げたことは、簡単ではあるけれども、私たちとしては、
大変大事なことを言っているつもりなんです。どうか、そういうことを御
理解の上、これは修正じゃありません、我々は独自案でございますから、
その独自案に対してひとつ謙虚に受けとめていただきたい。
 最後に、ひとつお気持ちをお聞かせください。

○小泉内閣総理大臣 これだけ、現職の総理大臣が憲法改正論議も踏み込
んで議論を議員と闘わせるというのも、今までの国会では珍しいことです
よね。これは非常に、私は、大きな議論であって、大事な議論だと思って
おります。
 今後、憲法改正議論が必ずしも直接、憲法改正に結びつくものではあり
ませんが、議論としては、大いに自由にこういう委員会の場でもするとい
うことはいいことだと思っております。

○藤井(裕)委員 終わります。

○瓦委員長 次に、志位和夫君。

○志位委員 私は、有事法制三法案について、日本共産党を代表して、小
泉首相に質問いたします。
 自衛隊を海外に派兵する法案としては、既に周辺事態法が九九年に強行
されたわけでありますが、この法律は、できないことが二つあります。こ
の法律というのは、日本に対する武力攻撃がなくても、アメリカがアジア
のどこかで介入戦争をやった場合に、自衛隊がその戦争に参加できる仕組
みをつくるものでしたが、できないことが二つあった。
 一つは、自衛隊が米軍の活動を支援する際に、武力の行使を行ってはな
らないということが建前とされておりました。もう一つは、この戦争に日
本の国民を動員する際に、強制力をもっての動員は許されない。協力とか
依頼ではあっても、強制してはならない。この二つのできないことが周辺
事態法ではあったわけであります。
 今、国会に提出されている有事法制三法案というのはこの二つの点がど
うなるのか、私は法案の条文に即してこの点をただしていきたいと思いま
す。
 まず、自衛隊による武力の行使、これはどうなるのかという問題です。
 武力攻撃事態法案の第二条では、法案で使われる用語の定義について規
定しております。その第二条第二号では、武力攻撃事態とは何かについ
て、武力攻撃が発生した事態、武力攻撃のおそれのある場合、武力攻撃が
予測される事態、この発生、おそれ、予測、この三つのケースを包括した
規定だと定義しています。
 それを受けて、「定義」の第二条第六号では、そうした武力攻撃事態に
対する対処措置とは何かについての定義を定めています。この第六号の
イ、武力攻撃事態を終結させるために実施する措置というのを定めており
まして、総理、見ていただきたいんですが、その(1)として、「武力攻
撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開そ
の他の行動」を規定しています。つまり、自衛隊は、この定義によります
と、武力攻撃事態を終結させるために武力の行使ができるという規定にな
っております。
 そうしますと、ここで規定されている、武力攻撃事態を終結させるため
に自衛隊が行う武力の行使というのは、武力攻撃事態の三つのケース、す
なわち、武力攻撃が発生した事態、武力攻撃のおそれのある場合、武力攻
撃が予測される事態、このすべての場合で武力の行使ができるということ
になりますが、これはいかがですか。

○小泉内閣総理大臣 それは、我が国が武力攻撃を受けた場合は武力の行
使ができますよ、攻撃を受けた場合は。そのために自衛隊があるんですか
ら。しかし、予測する段階で武力の行使なんか必要ないでしょう、必要な
備えをするんだから。いろいろな、どういう部隊を展開するか、どういう
予防措置をつくるか、これは武力の行使じゃないんです。

○志位委員 総理の答弁は、要するに、武力攻撃が発生した場合に限られ
る、おそれや予測ではできないということですね。(発言する者あり)お
それはいいんですか。どっちなの。

○小泉内閣総理大臣 それは、武力攻撃がない、おそれがある場合に、武
力行使なんかする必要ないじゃないですか。

○志位委員 要するに、おそれや予測では武力の行使はしないということ
を、あなた、言われました。
 ただ、私、この法案について聞いているんですよ。この法案の中身につ
いて聞いているんです。この法案では、先ほど言ったように、武力攻撃事
態、発生、おそれ、予測、全部を含んだ武力攻撃事態を終結させるため
に、その全体を終結させるために対処措置として武力の行使ができると一
般的に規定しているんですよ。
 じゃ、総理の言うように、武力攻撃が発生した事態のみにしか武力の行
使ができないというのであるならば、その根拠になる規定、これはこの法
案の定義の中にありますか。あったら言ってください、根拠になる規定。

○中谷国務大臣 我が国の場合に、武力の行使ができる組織というと自衛
隊だけでございます。この法律は、自衛隊法とこの武力攻撃事態法案と二
つが必要でありまして、武力攻撃事態法にはその手続を書いているわけで
ありますけれども、自衛隊の行動につきましては、自衛隊法の七十六条の
中に、自衛隊の活動できる規定といたしまして、武力攻撃を受けた場合と
いう規定があります。この両方によって自衛隊の行動が律せられるわけで
ございます。

○志位委員 答えてないんですよ。この武力攻撃事態法案の中に、おそれ
や予測の場合では武力の行使ができないという規定があるかないか、これ
を聞いているんです。自衛隊法の問題を聞いているんじゃないんです。こ
の法案の中にあるかないかを聞いている。
 なぜこれを問題にするかといいますと、この武力攻撃事態法案というの
はプログラム法でもあるわけでしょう。つまり、これがもし法律になった
とするならば、二年以内に、事態対処法案としてさまざまな法律を改正す
る必要があるわけですよ。そのとき、自衛隊法だって改正する必要があ
る。自衛隊法のもと案にもなるんです。だから、自衛隊法に規定してある
かどうかを聞いているんじゃない。
 この武力攻撃事態法案の中に、発生の場合のみしか武力の行使ができな
いというんだったら、根拠になる規定があるかないか、あるんだったらど
こにあるんだと聞いているんです。どうですか。この法案のことを聞いて
いるんですよ。

○中谷国務大臣 この法案につきましては、自衛隊のことだけではなく
て、国民の避難誘導とか、その他のことを含めまして包括的に決めており
ます。この中で、自衛隊の記述はございますが、その際の国会承認等の手
続を書いておりますし、委員御指摘のくだりもございます。
 しかしながら、自衛隊が可能な行動につきましては、自衛隊法がござい
まして、この八十八条によりますと、「出動を命ぜられた自衛隊は、わが
国を防衛するため、必要な武力を行使することができる。」ということに
なっております。そして、出動を命じられる場合には、さまざまな要件が
つけ加えられますし、また、国会の承認も必要でありまして、こういう点
で自衛隊の行動は律せられるわけでございます。

○志位委員 質問に答えてくださいよ。自衛隊法のことを聞いているんじ
ゃない。この武力攻撃事態法の中に、おそれや予測の場合には武力の行使
をしてはならないという明確な条文の規定があるかどうか聞いているんで
すよ。それを聞いているんです。イエスかノーか。

○中谷国務大臣 この条文には書かれておりませんが、自衛隊が防衛出動
をして武力行使をするということは、自衛隊法に書いております。ですか
ら、この法案の手続等によりましても、そういう予測の場合におきまして
は武力の行使ができないということでございます。

○志位委員 それでしたら、私、自衛隊法の問題を聞きたい。
 私は、自衛隊法にあるからといって、ここに規定がないことを合理化で
きないというのは先ほど言ったとおりです。ここにその規定がないという
ことを今防衛庁長官は認められましたけれども、おそれや予測の場合には
武力の行使をしてはならないという規定がなければ、その規定に合わせて
事態対処法制として自衛隊法も変えられてしまう。だから問題にしてき
た。
 では、自衛隊法との関係を次に私聞いてみたいと思うんですよ。
 自衛隊法では、武力行使の要件、このように定めております。「武力行
使に際しては、国際の法規及び慣例によるべき場合にあつてはこれを遵守
し、かつ、事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならない
ものとする。」自衛隊法八十八条二項であります。
 今度の武力攻撃事態法案の三条三項、見ていただきたい。三条というの
は、武力攻撃事態法案の中で、基本理念、すなわち武力攻撃が起こったと
きの行動原則を決めた部分であります。これを見ますと、こういう規定で
すよ。「武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度におい
てなされなければならない。」
 これ、重大な違いがあるでしょう。つまり、「国際の法規及び慣例によ
るべき場合にあつてはこれを遵守し、」というのがすっぽり抜け落ちてい
るわけですよ。あなた、自衛隊法に則してやるとおっしゃったけれども、
自衛隊法の武力行使の規定と今度の武力攻撃事態法案の規定は違う。「国
際の法規及び慣例」が取り外されている。これ、何で取り外したんです
か。何で取り外したんですか。

○中谷国務大臣 この武力攻撃事態法案というのは、基本理念を定め、そ
れぞれの事態対処のための手続を書いております。それによりまして自衛
隊が行動するわけでありますが、実際の自衛隊の行動につきましては自衛
隊法の中にございまして、その際も、七十六条の中に、我が国を防衛する
必要と認める場合には防衛出動を命じるというふうに記述を書いておりま
すし、八十八条の条文には御指摘の国際法規を遵守しという規定がござい
ますので、それに従って行動するわけでございます。

○志位委員 全然答弁になってないんですよ。何で落としたかを聞いてい
るんです。
 武力攻撃事態法案の中で、自衛隊の武力行使の要件を書いたのはここだ
けですね。これ、間違いありませんね。うなずいているから、ここだけな
んですよ。武力行使の要件を書いたのはここだけなんです。ここだけで、
何でわざわざ落とす必要があるんですか、国際の法規及び慣例の遵守。な
ぜ落としたのかを聞いているんです。今のじゃ答弁になっていません。な
ぜ落としたのか。

○中谷国務大臣 自衛隊法には、自衛隊の方の根拠を書いております。そ
して、武力攻撃事態法案にはその理念を書いておりまして、武力攻撃事態
に際しましては、自衛隊のみならず、いろいろな省庁また公共団体等の行
動を決める必要がございますので、その基本的理念を書いているわけでご
ざいます。

○志位委員 ともかく、自衛隊法と今度の武力攻撃事態法というのは、武
力攻撃事態法がいわば基本的な法律になるんですよ。これに基づいて、二
十一条、二十二条、二十三条の事態対処法制で自衛隊法も変えられるんで
すよ、二年以内にそういうことになっているじゃないですか。
 だから、なぜこれを落としたのか。今度の法律で落としたら、自衛隊法
だって落とすことになるんですよ。国際の法規及び慣例の遵守をなぜ落と
したのか、全く説明になっていない。ちゃんと説明してください。

○中谷国務大臣 自衛隊の行動につきましては、自衛隊法に基づいてやる
わけでございます。それで、今回、この武力攻撃事態処理法というのは、
こういう武力攻撃を受けた事態に自衛隊のみならずほかの機関も対処する
必要がありますので、政府として、全体の対処を基本的に定めた法案でご
ざいます。
 それによりまして、自衛隊法の七十六条の防衛出動の記述も、自衛隊が
出動する際の手続がこの武力攻撃事態処理法案によって始まる記述の変更
はございますけれども、その他の自衛隊の基本理念につきましては、その
根拠として残しているわけでありますし、また、八十八条におきましても
原文のままでございますので、自衛隊の行動に関して変化するところはい
ささかもないわけでございます。

○志位委員 何でこの問題を私がきちんとただしたいかといいますと、先
ほど私は、武力攻撃事態法案の定義の、つまり第二条の問題点から問題に
いたしました。ここでは、武力攻撃事態というのは三つのケースを包含し
ている、発生とおそれと予測、これを包含している事態だと規定し、その
全体を終結させるために自衛隊は武力の行使ができるというふうにかかっ
ているというふうに私は聞きました。
 それに対して総理は、これは発生だけだ、武力攻撃が発生したときじゃ
ないと武力の行使はできないとお答えになりました。そこで私は、では、
それはどの条文によって規定されているんだ、この法律の中のどの条項に
よって規定されているんだというふうに聞きましたら、結局、この法案の
中には、おそれや予測の場合での武力の行使を禁止する規定の条項はない
というのがさっきの答弁だったでしょう。だから問題にしているんです
よ。
 というのは、おそれや予測で武力の行使をやったら先制攻撃になるんで
すよ、これ。国際法違反になるんですよ。そして、おそれや予測での対応
というのは、周辺事態法とも重なり合ってくる。日本に対する攻撃がなく
ても、アメリカが軍事行動を起こしたら、自衛隊がその戦争に参加する。
これはまさにおそれや予測という事態と重なり合ってくる。こういう事態
でも日本が武力の行使ができるというところに道を開いてくるんじゃない
か、そういう規定なんじゃないか。だから、このおそれや予測の問題はあ
いまいにできない問題だから聞いているんです。
 これを禁止する条項はないんですよ、あなたが認めたように、この法案
の中には禁止する条項がない。一方で、国際法の遵守を落としてしまって
いる。これは一体どういうことなのかということを聞いている。
 先ほどの自衛隊法八十八条二項の「国際の法規及び慣例によるべき場合
にあつてはこれを遵守し、」これを歴代の政府が何という意味に説明して
きたのか、これを御存じですか。どういう意味でこれを説明してきたの
か、歴代の政府は。御存じですか。

○中谷国務大臣 まず、この法案の中で自衛隊の行動に関する記述はほか
にもございまして、第三条の三に、「武力攻撃が発生した事態において
は、武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。
この場合において、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される
限度においてなされなければならない。」という記述もありますし、日本
国憲法の保障するものに従うということもございます。
 それはそれとして、この法律によって自衛隊の出動の要件が定められて
おります。自衛隊は、防衛出動がかからない限りにおきましては武力行使
をすることもできませんし、また、武力行使をする場合におきましても、
総理から承認をいただいた自衛隊の活動できる地域においてのみできるわ
けでございまして、これまでのこの審議でのやりとりにおきまして、武力
の行使ができるということは防衛出動が起こってから、すなわち、武力攻
撃を受けてからでないと武力の行使はできないということはお答えをいた
しておりまして、この基本原則は何ら変わるものではございません。

○志位委員 また質問に答えていないですね。
 私が聞いたのは、自衛隊法の八十八条二項にある国際の法規及び慣例の
遵守、これをどういう意味の条項だとこれまで政府は説明してきたのかと
いうことを聞いているんですよ。ちゃんと答えてくださいよ。ちゃんと質
問に答えさせてください。関係ないこと答えてもしようがない。

○中谷国務大臣 それの条項の意味でございますけれども、原則として、
国会の事前承認を得て、防衛出動命令が下令されて、自衛権の発動の三要
件に該当する場合に限られておりますし、この武力行使は、国際の法規、
慣例によるべき場合にあってはこれを遵守し、事態に応じ合理的に必要と
判断される限度を超えてはならないという要件を課しております。
 その国際法規及び慣例には、ジュネーブ条約の記述とか、ヘーグの陸戦
法規とか、毒ガスの禁止に関する議定書とか、対人地雷条約とか、そうい
うものが含まれるわけでありまして、武力の行使が我が国を防衛するため
に必要最小限度の範囲内にとどまるべきとの趣旨でそのような記述がされ
ているというふうに理解をいたしております。

○志位委員 今、ジュネーブ条約などの国際人道法を守る規定だというふ
うにおっしゃいましたが、そういう意味だけですか。そういう意味だけで
すか。そういう意味だけなの。

○中谷国務大臣 その趣旨というのは、自衛隊というものが国際的なルー
ル、法規に従って行動するものであるという意味でございますが、例え
ば、ジュネーブ条約に関しましては、武力の行使の対象は戦闘員に限られ
ますし、軍事目標に限られる。また、民間人や民間施設を攻撃の対象とし
てはならないこととされておりまして、そのような国際的なルールを守っ
て自衛隊が行動するということでございます。

○志位委員 そうすると、全く矛盾した説明になるんですよ。
 この武力攻撃事態法案の第二十一条、「事態対処法制の整備に関する基
本方針」というのがありますが、その第二項では、「事態対処法制は、国
際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施が確保された
ものでなければならない。」と書いてありますね。つまり、そういうジュ
ネーブ条約などの国際人道法を守る事態対処法制を二年以内につくるとい
うことが書いてあるわけですよ、法律で。それを書いておきながら、基本
理念の中に、その基本になる国際法の遵守を落とす理由はないじゃないで
すか。落とす理由がないじゃないですか。ここにそういう事態方針をつく
るというんだったら、何でここから落とす必要があるんですか。

○中谷国務大臣 自衛隊法にそういう記述がなければ書く理由があります
が、もう既に自衛隊法の中に記述がございますので、書く理由はございま
せん。

○志位委員 そういう軽々しいことで落とせるような条文じゃないんで
す、これは。これは、政府はこれまで、この八十八条二項の、この前段の
部分の国際の法規及び慣例の遵守という項目の意味について、繰り返し国
会で答弁していますよ。これはどういう意味かというと、(パネルを示
す)この赤い文字で書かれた文は、日本の側からの先制的な武力攻撃はで
きないんだということを保証する条文なんだということを繰り返し言って
いますよ。繰り返し言っています。
 例えば、一九六〇年三月一日、これは衆議院予算委員会、この場ですけ
れども、林内閣法制局長官、自衛隊法八十八条第二項について、これは国
連憲章第五十一条の要件に当たる場合以外には武力の行使をしてはならな
いということを書いているものだと説明しています。
 すなわち、国連憲章第五十一条で述べている武力攻撃に対する自衛反撃
以外の武力の行使、すなわち先制的な武力の行使、まあおそれや予測の場
合での武力の行使、これはやってはならない規定なんだということを繰り
返し言っていますよ。つまり、武力行使の三要件でいうならば、武力攻撃
が発生したということをあらわす規定なんだということを言っています
よ。繰り返し言っています。
 これを今度の法律では取り外してしまった。これは、政府の従来の説明
に照らしても、国際法規と慣例の遵守、これをわざわざ落としたというこ
とは、武力攻撃が発生しなくても、武力攻撃のおそれや武力攻撃の予測が
される場合、これでも武力の行使ができるところに道を開いたということ
になるじゃありませんか。
 だって、これまで先制攻撃ができない最大の担保、保証がこの赤い、国
際法と慣例の遵守と説明していたんですから。それを落としちゃったら、
先制攻撃できるということになっちゃうじゃないですか。おそれや予測の
場合でも、これはできるということになっちゃうじゃないですか。そうい
う重大な条文になっている、今度の法案は。どうですか。


○中谷国務大臣 この条文に書かれていなくても、自衛隊法や自衛隊出動
の許可がなければ、自衛隊は行動できませんし、武力行使もできません。
したがいまして、そのおそれの場合は、防衛出動はできますけれども、武
力攻撃が発生しなければ武力の行使はできないわけでございますし、この
自衛権の発動の三要件につきましては、従来から、憲法第九条のもとにお
いて認められる自衛権の発動としての武力行使については、三点、我が国
に対する急迫不正の侵害があること、これを排除するために他に適当な手
段がないこと、必要最小限度の実力行使にとどまるべきことというのが定
められておりまして、これは憲法の九条のもとに決められたことでござい
ますので、これに従って行動するというのは従来どおり当然でございま
す。

○志位委員 なぜ落としたのかの理由を聞いているんですよ。なぜわざわ
ざ落とす必要があったのかの理由なんです。自衛隊法に書いてあったら、
そのまま書きゃいいじゃないですか。そんなに軽い条文じゃないんです。
先制攻撃をやっちゃならないということの保証になる条文だと説明できた
極めて重大な条文なんですよ。なぜわざわざ落とす必要があったのかと聞
いているんです。自衛隊法に書いてあるからというのは説明にならない。
落とした理由を聞いているんです。

○福田国務大臣 先ほど来防衛庁長官が再三答弁しているとおりなんでご
ざいますけれども、この先制攻撃云々というお話でございますが、その前
に申し上げますと、今度のこの武力攻撃事態法においては基本理念を述べ
ているわけでございまして、そういう意味で、それでは先制攻撃のことを
何にも触れてないじゃないかということになりますれば、それはこの「事
態に応じ合理的に必要と判断される限度」、こういうことを述べて、これ
はまさに委員のおっしゃっていることを防ぐためにある条文だ、こういう
ように考えるべきである、このことは防衛庁長官がただいま述べたとおり
でございます。

○志位委員 この「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」というの
は、武力の行使をやることが前提にあって、それをこれだけの限度でやら
なきゃなりませんよということを書いてあるだけなんですよ。武力の行使
はもう前提になっているんですよ。その限度を書いてあるだけなんです
よ、これは。
 その前にある文章をなぜ落としたのかというのを聞いているんです。前
にある文章があったでしょう、国際の法規及び慣例の遵守。なぜ落とした
んですか。なぜわざわざ落とす必要があったのか。何でこんなこと答えら
れないの。

○福田国務大臣 要するに、必要最小限度の自衛権の行使、こういうこと
を述べているわけでございますからね。ですから、今赤く書いてあった部
分、国際法規云々というようなことについてはそこで十分カバーできるん
だというように考えていいのではないかと思います。

○志位委員 カバーできないんですよ。
 だから、国際法の遵守をもって、この国際法の遵守というのは国連憲章
五十一条の遵守なんだと。国連憲章五十一条では、武力行使が現に発生し
た場合にのみ自衛の反撃が許される、これが国際法規の遵守の意味なんだ
と。だから、これがあるから、おそれの場合では武力行使はできません、
もちろん予測の場合でもできません、こうやって政府はこれまで答弁して
きたんですよ。
 これをなぜわざわざ落としたのか、落としてしまったらおそれや予測で
も武力の行使ができるようになるじゃないかと、少なくともこの法案では
そういう構造になっているじゃないかということを問題にしているんで
す。官房長官、あなたが出している法案でしょう。

○津野政府特別補佐人 御説明を官房長官の御答弁の前にさせていただき
ます。
 まず、この武力の、先ほど防衛庁長官からも答弁がございましたけれど
も、我が国に憲法第九条のもとにおいて許容されております自衛権の発
動、これにつきましては政府は従来から、いわゆる自衛権発動の三要件と
して、我が国に対する急迫不正の侵害があること、すなわち武力攻撃が発
生したこと、これがまず第一要件として掲げられているわけでございま
す。それから第二に、この場合にこれを排除するために他の適当な手段が
ないこと、及び第三として、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
に該当する場合に限られているわけでございます。
 そして、今回いわゆる武力攻撃事態法案も提出、提案したわけでござい
ますけれども、あるいは自衛隊法も現にございますが、これらはいずれも
憲法の規定の解釈、そういったものを前提といたしましてできているわけ
でございまして、決して先制攻撃ができるというようなことでそういった
規定をつくったわけではございません。そして当然、その自衛隊法上、武
力を行使する場合には、先ほどの御指摘のような文言が自衛隊法上もござ
いますわけでございますから、御懸念のような先制攻撃を許容していると
いうようなことはさらさらないということでございます。

○志位委員 あなたがどんなにこの解釈をやっても、私が聞いたことに全
然答えてないんですよ。なぜ落としたのかということですよ、国際法の遵
守を。国際法の遵守、必要ないから落としたんじゃないですか。するつも
りがないから落としたんじゃないですか。そうとしか言いようがないです
よ。
 だって、この法律全体通して武力攻撃事態というのは非常に広く規定さ
れています。武力攻撃が発生した事態だけじゃなくて、おそれの事態、予
測の事態、三つを全部包含している。そのときに、定義で、それを終結さ
せる、武力攻撃事態を終結させるというのは、発生も終結させる、おそれ
も終結させる、予測の事態も終結させるということでしょう。この全部を
終結させるための対処措置として自衛隊ができることは、武力の行使とい
うことが無規定に入っているんですよ、無限定に。
 そして、この武力の行使というのは、明示的に、おそれや予測の場合で
はやってはならないという規定は、法案の条文、定義の中でも、法案の全
体を通しても、どこ一つないでしょう。どこ一つないところに、あわせて
持ってきて、国際法規の遵守を落とすということになったら、これは無法
な先制攻撃に道を開く法律だというふうにとられたってしようがない法案
に私はなっていると思います。
 私は、結局、これだけ聞いてもはっきりしたことが二つあるんですよ、
二つあるんです。一つは、この法案全体を通して、おそれや予測の事態で
武力の行使をしてはいけないという規定がないこと。第二に、先ほど言っ
たように、国際法の遵守という項目を武力行使の要件から落とすという重
大な変更をしておきながら、合理的な説明はだれもできなかった、防衛庁
長官も、官房長官も、法制局長官も説明できなかった。私は、そういう点
で、まさに国際法を守る意思を持っていない法案だと断ぜざるを得ませ
ん。

 私は、次に進みたいと思うんですが、こういう極めて危険な内容を持つ
武力攻撃事態法案が周辺事態法と合体したらどういうことになるかという
問題について、次にただしていきたい。
 総理は、周辺事態と武力攻撃事態が重なり合うことを繰り返し認めてお
られます。これは、一つの事態に対して、周辺事態法と武力攻撃事態法が
いわば組み合わさって発動されることがあるということになります。
 周辺事態法というのは、日本に対する武力攻撃がなくても、アメリカが
アジアのどこかで介入戦争を始めたら自衛隊がその戦争に参加する法律で
した。ただ、周辺事態への対応として、自衛隊が、例えば米軍への補給と
か輸送とか修理とか医療とか、いわゆる後方地域支援、これをやれること
ができるとされていたけれども、自衛隊は、周辺事態法によりますと、派
兵先で決して武力の行使をしてはならないという縛りがかかっていました
ね。これは間違いありませんね。どうですか。

○福田国務大臣 今の質問にお答えする前に、先ほどなかなか理解できな
いというお話がありましたので、もう一度申し上げますけれども、委員
は、第二条、「定義」のところで言われているわけですね。
 しかし、この法律の基本理念、第三条にございます武力攻撃事態への対
処に関する基本理念、ここには、この第三条二項に、「事態が緊迫し、武
力攻撃が予測されるに至った事態においては、武力攻撃の発生が回避され
るようにしなければならない。」こう書いてございます。第三項には、
「武力攻撃が発生した事態においては、武力攻撃を排除しつつ、その速や
かな終結を図らなければならない。」このようにも書いてあるわけです
ね。その法律の基本理念がここに書いてあるわけですから、この理念を持
ってこの法律を施行していく、こういうことになるんだろうと思います。
 また、もう一つ申し上げれば、この第十八条、ここには、「我が国が講
じた措置について、直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければなら
ない。」こういうふうに規定されているわけであります。
 ですから、こういうことからわかりますとおり、国際法規を無視すると
かそういうことでは全くなく、むしろ積極的に事態の排除というか、戦争
の、武力の排除とか終結とか、
こういうことをもっと重く考えるべきではないかと思っております。

○志位委員 今の質問への答えは。

○瓦委員長 引き続いて……(志位委員「じゃ、もういいです」と呼ぶ)
いいですか。

○志位委員 今の官房長官の説明は、全く成り立たない説明なんですよ。
 二条で、さっき言ったような規定を定義したわけです。その定義を受け
て対処措置というのが定義されたわけですね。それを、全体を受けて、第
三条の基本理念の第一項で、「万全の措置が講じられなければならな
い。」とあるわけですね。この万全の措置の中には、当然、武力の行使が
入るわけですよ。
 それで、その後に、例えば第二項に、もうこのことは説明されましたけ
れども、「事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態において
は、武力攻撃の発生が回避されるようにしなければならない。」と書いて
ありますよ。しかし、この回避の手段については書いていないでしょう。
武力を行使して相手側の武力攻撃の発生を回避するという手段だってとり
得るんですよ。とっちゃいけないとどこにも書いていないじゃないです
か。それを書いていないということを問題にしているんです。
 武力の行使ができるという一般的な規定をして、それで万全の措置をと
る、そして、そういう基本理念をやっておきながら、この基本理念のどこ
におそれや予測の場合では武力の行使をしてはならないという規定がある
かといえば、どこにも書いていない。書いていないどころか、国際法を守
るということも書いていない。ですから、この問題を問題にしたわけで
す。
 さっきの質問に答えてください。周辺事態法について、これは武力の行
使をしてはならないという原則がありますね。いいですか。まあ首振って
いますから、そういうことでしょう。周辺事態法は、武力の行使をしては
ならないという基本原則があるんですよ。
 これは、これまでの自衛隊を海外に出す法案、いろいろありました。P
KO法九二年、それから周辺事態法九九年、テロ特措法が二〇〇一年。こ
れすべて、武力の行使をしてはならないという規定が入っていますよ。と
ころが、今度の武力攻撃事態法にはその規定が全くないというのが私は問
題にしているわけですよ。
 それで、私、先に進みたいんですけれども……(発言する者あり)いい
ですか、先に進みたいんですけれども。
 ですから、周辺事態法では、米軍を支援する自衛隊の艦船というのは戦
闘地域に行っちゃならないという決まりがありましたね。戦闘地域、つま
り武力攻撃を受ける可能性のある戦闘地域で後方支援活動をやっちゃいけ
ない。補給とか輸送とか、これをやっちゃいけない。もっと後ろの方の安
全な後方地域でのみ許されるんだというのが周辺事態法の建前でしたね。
ですから、米軍への支援活動を自衛隊がやっている最中に武力攻撃がされ
る危険が生まれたら、その支援活動を中断しなきゃならない。中断してそ
の場から逃げて、攻撃に遭わないようにしなきゃならないというのが周辺
事態法の定めですね。これは間違いないですね。簡単に。

○中谷国務大臣 おっしゃるとおりであります。

○志位委員 ところが、私は、武力攻撃事態法のこの法案の体系でいく
と、違ったことになるんじゃないかと。
 この法律が発動されたら、米軍への支援活動を例えば自衛隊の艦船がや
っている、補給の活動をやっている、輸送の活動をやっている、こういう
活動をやっていたとしますでしょう。そのときに自衛隊が武力攻撃がされ
る危険が生まれても、その場から逃げるわけにいかなくなるでしょう。こ
の武力攻撃事態を終結させるために武力の行使も含めて万全の措置をとる
という法律の定めに従うならば、その場にとどまって米軍への支援活動を
継続しなければならなくなるというのがこの法律だと思いますが、いかが
でしょうか。

○中谷国務大臣 日本が武力攻撃をされているときは、そのとおりであり
ます。

○志位委員 日本が武力攻撃をされているときはという条件つきで聞いた
んじゃないんですよ。米軍への支援活動をやっている際なんですよ。
 武力攻撃事態法というのは、武力攻撃事態を終結させるための法律でし
ょう。武力攻撃事態には、さっきも何度も言っているように、三つのケー
スが入るんですよ。日本が攻撃されている場合、それから、おそれがある
場合、予測の場合、三つ入るんですよ。
 この武力攻撃事態を終結させるために、米軍が海外で動いた。そのとき
に、自衛隊が支援活動をやっている、それが危なくなってきた、例えば、
武力攻撃のおそれがある場合、予測される場合も武力攻撃事態に入るわけ
ですから、そういう場合には逃げるんですか、どうですか。その場合は逃
げるんですか、それともその場にとどまってやるんですか。
 武力攻撃事態で、武力攻撃がまだ発生していない、しかし武力攻撃のお
それがある、あるいは予測がある、それで出ていった。出ていったとき
に、海外で自衛隊の艦船が
危なくなった、そのときは逃げるんですか、それともその場にとどまって
戦うの。どっち。

○中谷国務大臣 米軍が行動できるというのは、我が国が攻撃された後で
あります。自衛隊も、これも武力攻撃があった後、武力の行使をするわけ
でありますので、そういう際の米軍の行動に際して支援も行う必要がござ
いますし、日本を防衛する米国軍を防衛するというのは当然のことであり
ます。

○志位委員 私の質問に全く答えないんですね。
 つまり、武力攻撃のおそれがある事態、武力攻撃が予測される事態、こ
ういう場合ですよ。こういう場合に、米軍がこういう場合でも行動できる
でしょう。武力攻撃事態を終結させるために実施する措置というのが、さ
っき言った第二条「定義」の第六号「対処措置」のところにあるわけです
けれども、その一は、さっき言った自衛隊の武力の行使などの活動、二
は、自衛隊の行動及び米軍が安保に従って武力攻撃を排除するために行う
活動、それを支援する活動とあるんですよ。
 だから、米軍は、武力攻撃事態が発生したら、日本有事でなくたって、
日本が攻撃されていなくたって、武力攻撃事態というのはおそれや予測を
含むんですから、行動できるんですよ。そうやって行動している米軍に日
本の自衛隊の艦船が後方支援をやっていた、兵たん支援をやっていた、危
なくなった、そのときに逃げるのか逃げないのかということを聞いている
んです。ちゃんと答えてください。
 武力攻撃があった場合は、それは日本に対する武力攻撃ということで応
戦するんでしょう、あなた方の論理からいえば。それを聞いているんじゃ
ない。もうそれはさっき答弁をもらいました。おそれや予測の場合でもど
うなるんですかと聞いているんです。

○中谷国務大臣 お尋ねの我が国に対して武力攻撃が発生していない段階
でありますけれども、武力攻撃が予測をされる場合、または武力攻撃のお
それのある場合におきましては、米国の武力行使と一体化するような支援
措置や我が国としての武力行使が行えないことは当然でございまして、一
体化するような支援措置が行えないということであります。

○志位委員 逃げるか逃げないかを聞いているんですよ。
 そうすると、逃げるんですね。逃げるということなの。一体化する活動
ができないということは、逃げるということですか。

○瓦委員長 中谷防衛庁長官、ちょっと待ってください。逃げるとか逃げ
ないというのは、わかりますか。

○中谷国務大臣 我が国におきましては、集団的自衛権を行使しないとい
うことになっております。

○志位委員 ちゃんと答えてくださいよ。  だから、その場合は、支援
活動を中断して撤退するんですか。

○中谷国務大臣 我が国といたしましては集団的自衛権を行使し得ないと
いうことでございます。その地域を離脱するということでございます。

○志位委員 結局そういうふうに答えたわけですけれども、そうすると、
何のために武力攻撃事態法をつくったか。日本に対する武力攻撃を排除す
る排除すると言っておきながら、肝心のときは逃げてくるというんじゃ話
にならないじゃないですか。
 これは、私は、一つの事態なんですよ、一つの事態。これは一つの事態
なんだけれども、周辺事態から武力攻撃事態へと読みかえると、自衛隊の
対応が変わってくるんじゃないかということを問題にしている。周辺事態
法では禁止されていた武力の行使を明示的に禁止する条文がないんです
よ、この法律には。これを禁止する条文が全くない。ですから私は、これ
は米軍が行う戦争に日本が一体になって戦争をやれる道を開くものじゃな
いか。法案上はそうとしか読めない。あなた、幾ら否定しても、法案の構
造と矛盾した答弁ですよ。矛盾した答弁です。
 おそれや予測ではこれは武力行使しないんだということをおっしゃいま
した。それは結構ですよ。しかし、おそれや予測でどんどん武力行使をや
っている国がありますよ、世界に。アメリカですよ。私、総理に、それだ
けやらないと言うんだったら、アメリカに対する基本姿勢を聞きたい。
 アメリカがこの間行ってきた戦争というのは、例えば一九八三年のグレ
ナダ侵略、八六年のリビア空爆、八九年のパナマ侵略など、国連総会の決
議で国際法違反と糾弾されるような先制的な軍事力行使、何度も何度もや
っています。それで、そのたびに日本政府は、残念ながら、情けないこと
に、理解だとか支持とか、ただの一度もノーと言っていません。
 それで、そのアメリカが、ブッシュ大統領は、ことしの一月二十九日に
行った一般教書演説で、イラン、イラク、北朝鮮を、テロを支援してい
る、大量破壊兵器を開発している、悪の枢軸と決めつけて、こう言いまし
た。私は、危険が高まっている折に、何か出来事が起きるまで待つことは
しないだろう。これは明らかに、先制的な軍事力行使も辞さない、テロの
ためだ、大量破壊兵器のためだということになれば先制攻撃も辞さない戦
略をとることを世界に公言しているということになります。
 それで、ラムズフェルド国防長官、最近、フォーリン・アフェアーズ
五、六月号で、「変化する任務、変貌する米軍」という論考を寄せていま
す。これを見ますと、備えあれば憂いなしとか、総理と同じようなせりふ
を言っていますけれども、これもアメリカ製だったのかなと思いながら読
みましたけれども、その中でこういうふうに書いていますよ。「アメリカ
を防衛するには、予防戦略、そして時には先制攻撃も必要になる。すべて
の脅威を相手に、いつでも、どこででも防衛策を講じるのは不可能であ
る。テロやその他の姿を現しつつある脅威から国を防衛するには、戦争を
も辞さない覚悟を持つべきである。攻撃は最大の防御であり、時に、それ
が唯一の防御策である場合もある。」こうはっきりアメリカは述べている
わけですね。
 総理に伺いたい。総理は、ブッシュ大統領のいわゆる悪の枢軸発言、こ
れについて理解するという発言をされてきましたけれども、ラムズフェル
ド国防長官のこの御発言、これは質問通告してありますからお読みになっ
ていると思うのですけれども、はっきり先制攻撃と言っていますよ。先制
攻撃と言っている。こういう先制攻撃は絶対に容認できないと日本政府と
してはっきり言うべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○小泉内閣総理大臣 それは、ラムズフェルド国防長官の発言は発言とし
て、アメリカの安全保障上戦略としてあらゆる選択肢を残しておくという
ことだと私は理解しております。

○志位委員 あらゆる選択肢として先制攻撃を理解するということです
ね。大変重大な発言です。そういうことですね。

○小泉内閣総理大臣 事態によっては、アメリカはアメリカの立場を表明
していると私は理解しております。

○志位委員 私は、先制的な軍事力行使をこれだけはっきり理解すると言
ったら大変な発言だと思いますよ。
 ブッシュ大統領の悪の枢軸発言に対しては、ロシアも中国ももとより、
ヨーロッパ諸国、EUも、すべてこぞって反対している。東南アジアも中
東も、世界みんな反対していますよ。例えばEUの国際担当委員、EUの
外務大臣に当たるパッテンさんという方、御存じだと思うんですが、この
方はイギリスの保守党の幹事長を務められていた、イギリスの保守政界の
重鎮ですよ。このパッテンさんも、このブッシュ発言については、世界に
対する危険な絶対主義的で極度に単純化された立場だと、これを激しく非
難しています。
 世界の主要国の首脳の中で、総理、このブッシュ発言に理解を示したり
ラムズフェルド国防長官の発言まで理解を示すという人は、これは恐らく
ちょっとほかに見当たらないんじゃないかと思うぐらい、これは、アメリ
カに対して本当に言いなりの国だということがよくわかりました。
 それで、私は、この論戦全体を通じて、政府は、武力攻撃のおそれの事
態や予測の事態では武力の行使をしないと繰り返した、先制攻撃はしない
と繰り返した。それは結構ですよ。しかし、先制攻撃をお家芸としている
米国に一言の批判もできないで、理解ということをはっきりするような、
そういう政府がこういう先制攻撃は幾らしないということを言ったところ
で、私は何の保証にもならないと思う。そして、現に法案はそういう道を
開くものになっております。私は、非常に深刻な法案の本質が浮き彫りに
なったと思う。
 この法案は日本の国民の安全を守るものじゃありません。アメリカが行
う先制攻撃の戦争、ラムズフェルド氏が言うような戦争、介入の戦争、こ
れに対して武力行使をもって自衛隊が参戦する法案だと思います。武力攻
撃が発生した場合だけじゃなくて、武力攻撃のおそれの場合、予測の場合
で、先制攻撃、先制的な武力攻撃への道を開いたこと、つまり、明示的な
禁止がなく、禁止条項をわざわざ取り外してその先制的な攻撃への道を開
いたこと、そして国際法規と慣例の遵守を法案から一切取り外したこと、
先ほどのこれですね、この国際法規と慣例の遵守を一切取り外した、これ
は私は国際法無視の、米軍の戦争への参戦を想定しているからではないか
と。そうとしか説明つかない。私は、この法案というのはそういう本質を
持っていると思います。
 さて、もう一つの大きな問題に進みたいと思います。周辺事態法では、
戦争に国民を動員する際に強制力を持って動員はできないという建前があ
ったわけでありますが、これがどう変わるかという問題点です。
 先ほども述べたように、周辺事態と武力攻撃事態というのは大きく重な
り合ってくる。それは、一つの事態を周辺事態から武力攻撃事態へと読み
かえることができるということになります。そういう読みかえをしただけ
で、米軍の戦争への国民の強制動員が可能になってくる、こういう仕組み
ではないか。
 政府の法案どおりにこれは整理をしたものです。(パネルを示す)それ
で、左側が周辺事態の場合です。周辺事態の場合は、自治体に対して協力
を求めることができる、ここまででした。民間に対しては協力を依頼する
ことができる、ここまででした。私もあのガイドライン法のときにさんざ
んここで議論をやりましたけれども、自治体には強制できないんですとさ
んざん言ったものでしたよ。民間には義務づけないんですとさんざん言っ
たものでした。
 ところが今度は、事態は同じ、一つの同じ事態なのに、それを武力攻撃
事態と……(発言する者あり)重なり合うから同じ事態になるんですよ。
武力攻撃事態と読みかえただけで、自治体について国が指示、実施できる
ようになる。
 それから国民については、すべての国民に協力を義務づけることになっ
ています。第八条ですね。(発言する者あり)すべての国民ですよ。何の
制約もありません。それから、施設管理、土地などの使用、物資の収用、
取扱物資の保管命令を出せることになっています。それから、保管命令違
反者などに対しては罰則を科せられるようになっています。
 それから指定公共機関、例えばNHKとか、NTTとか、ガスとか、電
気とか、これは幾らでも広げられるわけでありますけれども、この指定公
共機関に対しても国が指示、この指示に従わなければ実施ができる。それ
から、医療、土木建設工事または輸送の業務に従事する者、これに対して
は業務従事命令が出せる。
 これだけ変わってくるわけですね。(発言する者あり)ただ、事態は一
つなんです、重なり合う事態があるのですから。周辺事態と武力攻撃事態
というのは重なり合ってくるということを認めているのですから、事態は
一個なんですよ。事態は一個なのに、それを周辺事態から武力攻撃事態に
読みかえただけで、これだけ国民を強制動員できる仕掛けになっている。
 私、そういう中で幾つかただしたい問題があります。
 特に深刻な問題が幾つか出てくるのですが、第一は、自衛隊が防衛出動
をしたもとで、取扱物資の保管命令に従わなかった国民には罰則が科され
るという問題です。これは、改定自衛隊法百二十五条にはこういう規定が
あります。「取扱物資の保管命令に違反して当該物資を隠匿し、毀棄し、
又は搬出した者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」
というのがあります。
 ここで言う取扱物資というのは何でしょうか。法律でこの取扱物資とは
何かという規定がありますか。法律で規定がありますか。

○中谷国務大臣 食料とか、水とか、燃料とか、建設資材等でございま
す。

○志位委員 私が聞いているのは、法律に規定があるかと聞いているので
す。早く答えてください。

○中谷国務大臣 法律では物資と規定をいたしておりますが、自衛隊の行
動に必要なものでございます。

○志位委員 要するに、何でも入るということなんですよ。自衛隊が必要
だと言ったら、何でもこの取扱物資に入ってくる。自衛隊が燃料が必要だ
と言ったらガソリンスタンドも、これはもう強制の中に入ってくる。それ
から、食料が必要だとなればコンビニエンスストアも入ってくる。お米が
必要だとなれば米屋さんもかかってくる。こういう仕掛けでしょう。水が
必要だとすれば水道業者もかかってくる。つまり、規定がないということ
ですよ。無規定、無限定ということですよ。
 戦前、一九三八年に国家総動員法というのがありますね。国家総動員法
というのは、総動員物資というのがちゃんと規定されていますよ、法律
で。法律で規定されています、これとこれとこれとこれと。この国家総動
員法よりも、法律でもその物資についての規定がないというのは、もっと
悪いと思いましたよ。
 次の設問に入りたい。
 政府は、保管命令に違反して保管物資を隠匿、毀棄または搬出するとい
う悪質な行為を行う場合に限り、罰則を科すという答弁をされましたね。
悪質な行為に限るというのですけれども、こういう場合はどうなるのか。
私は戦争に協力できないという信念を持っている方がいるとしますでしょ
う。そういう、戦争には協力できないという信念から物資の保管命令を拒
否した国民は、悪質な行為となるんでしょうか。例えばお米屋さんが、取
扱物資に米が指定された、そのときにお米屋さんが、私はこの戦争には協
力できないという信念から、みずからの思想、信条から保管命令を拒否し
て、通常どおりお米の販売をやったとしますでしょう。この場合、悪質な
行為になるんですか。

○中谷国務大臣 これは本人の内心には関係ございません。事実行為とい
たしまして、わざと物資を隠匿したり使用できないようにする悪質な行為
が行われた、すなわち、その行為に基づいて考えるわけでございます。

○志位委員 悪質な行為とあなたが言ったから、悪質な行為に入るかどう
か聞いたんです。どっちなんですか。入るの、入らないの。一々こういう
ことを何度も聞かせないでくださいよ、時間がないんですから。

○中谷国務大臣 その者の行為の概要に照らして判断をするわけでござい
ます。(志位委員「だから、悪質に入るか、入らないか」と呼ぶ)行為に
係るわけでありまして、悪質は入りません。

○志位委員 悪質じゃないとしても、では、保管命令に違反して保管物資
を隠匿、毀棄、搬出すれば処罰の対象になるわけですね。なるわけです
ね。(発言する者あり)それを悪質と言うんだという今答弁がありました
よ、どこかの座っている人から。それを悪質と言うんですか。それを悪質
と言うとしか、これはあなたの答弁は理解できませんね。
 それで、内心の自由に立ち入らないということを言いましたけれども、
戦争に協力できないという信念に基づいて保管命令を拒否した国民を犯罪
者として罰するということは、戦争への非協力、戦争への反対という思
想、信条を処罰の対象とすることに私はなると思います。憲法十九条の
「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」という条文に違反
する、基本的人権の侵害行為になると思います。いかがですか。

○中谷国務大臣 これはいつも起こるわけではございません。国家の存亡
の危機、もう究極な段階で、まさに我が国に武力攻撃が起こって、目の前
でいろいろな被害が発生をしている場合に、国として、国民の生命財産を
守るという責務に基づいて行う行為でございます。同じ日本人、また日本
に住んでおられる方として、やはりこういった事態につきましては御協力
をいただくというのが当然のことでございます。
 それから、この行為に係るわけでございますが、隠匿、毀棄、または搬
出した者と書いておりまして、隠匿というのはやはり故意をもって隠す、
毀棄というのもそういうことで壊すということでございまして、この行為
をした者にかかるということでございます。

○志位委員 今の防衛庁長官の答弁には不正確な点があるので、一つ訂正
しておきたい。
 日本に対する武力攻撃がまさに起こって、それに対する事態だと言いま
したけれども、防衛出動というのは起こらない前から出動できるんです
よ。おそれのある場合だって出動できるんですよ。それで、そのおそれの
ある場合でも今の罰則が来るんですから、そこは訂正しておきたい。国民
の皆さんに誤解を招くそういう発言は、慎んでいただきたいと思います。
 私はさらに聞きたいんですけれども、今きちんと答えなかったけれど
も、思想、良心の自由というのは、これはどなたもお認めになると思うけ
れども、いわば絶対的自由ですよ、内心の自由。これは国家権力といえど
も絶対立ち入ることのできない自由だというのは、これは異論はないと思
います。そして、思想、良心の自由の中には、沈黙の自由も含まれるでし
ょう、沈黙の自由。つまり、自分がある思想を持っている、それを言うと
きには表現の自由の問題に行くわけですけれども、言わない自由も含まれ
るわけですよ、沈黙している自由。これが含まれることは間違いないと思
うんです。
 しかし、戦争、つまり、さっきの私の設問にかかわって言いますと、戦
争に協力できないという信条を沈黙している自由は絶対的に侵すことはで
きないと思うんですよ。ところが、物資の保管命令が罰則という強制をも
って一律に課せられたらどうなるか。そうしますと、戦争に協力できない
という信条を持つ国民は、その信条を沈黙している自由を侵害されてしま
うんじゃないでしょうか。つまり、無理やりその信条を行為として表現し
なきゃならなくなる。つまり、この保管命令には協力できないという行為
として示さなきゃならなくなる。そして、行為として示したら、罰則とい
う、お縄になるという、そういうところに追いやられることになる。
 これはまさに思想、信条の自由、内心の自由、沈黙の自由、これを奪っ
ていくということになるんじゃないですか。いかがでしょうか。

○中谷国務大臣 それは、我が国に対する武力攻撃をいかに考えるかとい
うことでありまして、これは放置をしていましたら、非常に被害や損害、
また死傷者がふえていくわけでございます。ですから、そういった侵略を
いかに早期に排除し、それを終結するかという行為を行っているわけでご
ざいまして、我が国を守るということにつきまして国民の皆様方がこの点
を御理解いただいて、そういう際には御協力をいただかないと、国という
ものも守れないし、また、国としても国民を守れない。お互いに協力をし
合って国としての防衛を果たすということに尽きるのではないかというふ
うに思います。

○志位委員 あなたは私の聞いた質問に答えないですね。私が聞いたの
は、こういうふうに一律に罰則つきで強制を課したら、それは思想、良心
の自由、沈黙の自由を侵害することになるんじゃないですかと聞いている
んですよ。
 あなたは、日本に対する武力攻撃をともかく排除するためだと繰り返し
て言うけれども、さっき明らかになったように、周辺事態法と、それから
この武力攻撃事態法というのは重なり合って発動することがあり得るわけ
ですよ。日本に対する武力攻撃がなくたって、おそれのある事態、予測の
事態とすればもう発動できるんですよ。アメリカの戦争に協力できるんで
すよ。アメリカの戦争に協力するとなったら、反対する人がたくさん出る
のは当たり前なんです。その反対する人が、保管命令に違反したら犯罪者
とされてしまう。
 私は、本当に、この罰則つきで国民に強制するというのは許されないと
思います。日本は、憲法九条を持つ国ですよ。憲法九条は、戦争をやって
はならない、戦争に協力してもならない、戦争をやることが犯罪だという
のが憲法九条です。その九条を持つ国で、戦争に協力することを拒否する
国民を犯罪者とするというのは、これはこれ以上の違憲立法はない、私は
このように思います。
 もう一つの点を申し上げますと、第二に、二つ目の問題です。武力攻撃
事態のもとでは、国民の権利と自由をいわば無制限に制限できる仕組みが
つくられるという問題であります。
 武力攻撃事態法の基本理念を定めた第三条の第四項では、次のような規
定があります。「武力攻撃事態への対処においては、日本国憲法の保障す
る国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる
場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであ
り、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」この規
定がございますね。
 それで伺いたいんですが、ここで「公正かつ適正な手続」と述べられて
いるのは、この個別法を定めるということですね。防衛庁長官、そうです
ね。――うなずいていますから、ではもういいです。そういう説明でし
た。
 それでは伺いますけれども、日本国憲法の保障する国民の自由と権利
に、この条項では、三条四項の条項では制限が加え得ると規定されている
んですが、その制限はどこまで許容されるんでしょうか。どこまでの制限
が許されるんでしょうか。憲法には三十条の条文にわたって国民の基本的
自由と基本的権利、これを詳細に規定しているわけでありますけれども、
どの範囲まで人権が制限できるのか。私が聞きたいのはあなたの解釈じゃ
ありません。法律にそういう規定があるかどうかです。武力攻撃事態法
に、そういう国民の権利の制限はどこまでできるという法律の規定がある
かどうか。

○福田国務大臣 権利の制限を伴う対処措置につきましては、個別の法制
整備において、この基本理念にのっとり、制限される権利の内容、性質、
制限の程度等と、権利を制限することによって達成しようとする公益の内
容、程度、緊急性などを総合的に勘案して、その必要性を検討するという
ことを考えております。
 したがいまして、制限される権利とかその内容については、今後整備す
る法制において個別具体的に規定することが適切であると考えておりま
す。

○志位委員 ということは、つまり、この武力攻撃事態法には、この法案
そのものには規定がないということですね。そういうことですね。ちょっ
と、ちゃんと答えてください、ないかどうか聞いているんですから。

○福田国務大臣 武力攻撃事態への対処においては、日本国憲法の保障す
る国民の自由と権利が尊重されなければならない、それで、「これに制限
が加えられる場合」、こういうことでありますけれども、「その制限は武
力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正
な手続の下に行われなければならない。」こういうことになっているわけ
ですね。そして、個別の法制整備もこのような基本理念のもとで行われる
こととなりますから、そういう意味で、国民の権利制限はすべて個別法に
任せるということにはなりません。

○志位委員 私は制限が法律に規定されているかどうかを聞いたので、あ
なたの今の答弁だと、「武力攻撃事態に対処するため必要最小限」という
以外にはないということですね。――早く答えてください。イエスかノー
かでいいです。

○福田国務大臣 御指摘のとおり、基本的には、この基本的な理念をここ
に述べております。

○志位委員 では、それ以外にないということですね。それ以外に制限す
る条項はないということですね。

○福田国務大臣 ですから、ここでもって基本的な方向性というものが理
念として示されている、こういうふうに考えてください。

○志位委員 要するに、これ以外にはないということですよ。つまり、武
力攻撃事態に対処するため必要最小限と政府が認定したら、どんなに個別
法を広げてもつくれるわけですよ、武力攻撃事態に対処するために必要な
と。
 必要最小限というのは何の歯どめにもなりはしない。あなたが必要最小
限、必要最小限と言って、世界第二の軍隊をつくっちゃったじゃないです
か。だから、必要最小限というのは何の歯どめにもならない。つまり、個
別の法律をつくったら、そして武力攻撃事態に対処するために必要とされ
るならば、国民の権利と自由が個別法によって無制限に制限されるという
ことになるんですよ、この法律では。
 私は、これでは戦前の大日本帝国憲法とどこが違うのかと。戦前の大日
本帝国憲法の一番の反省というのは、国民の権利や自由を並べた項目はあ
った。あったけれども、これはみんな全く形骸だった。なぜならば、全
部、法律の定めに従ってとか、法律のよるところに従ってとか、全部法律
で制限されたからです。個別の法律さえつくれば国民の権利や自由が制限
されるとなったら、大日本帝国憲法と変わらなくなるじゃありませんか。
どうでしょうか。そういうことでしょう、その点では。答弁できないよう
ですね。そこは同じになるんですよ。
 個別の法律さえつくれば国民の権利と自由が制限できる、そういうやり
方で最後やったのが治安維持法じゃないですか。暗黒政治じゃないです
か。この暗黒政治をやったために侵略戦争への道が開かれて、あんな惨害
を生んだんじゃないですか。その反省に立って、あの新しい憲法では、基
本的人権を、侵すことのできない永久の権利として十一条で明記して、法
律の抜け穴さえあれば基本的人権を制限できるという考え方を排除したん
ですよ。これが今度の憲法なんです。
 時間が来ましたので、私の質疑、ここで大体終わりになりますけれど
も、私、きょうは、有事三法案について、条文に即して問題を明らかにし
てまいりました。そうしますと、結局、アメリカが海外で引き起こす介入
戦争に自衛隊が武力行使をもって参戦する、憲法違反、国際法違反の参戦
法案となる。そのために、憲法で定められた国民の自由と人権あるいは地
方自治に重大な制約を加え、首相に権力を集中させる、戦時体制をつくる
という点でも、憲法を踏み破るものになる。
 私は、冒頭に、周辺事態法には二つの縛りがあったと。武力の行使はで
きないという縛り、強制動員はできないという縛り、この二つの縛りを取
り外す、これに今度の武力攻撃事態法案を中心とする三法案の恐るべき内
容がある。これは廃案にするしかないということを最後に強調して、終わ
りにいたします。

○瓦委員長 次に、土井たか子君。

○土井委員 いわゆる有事法制というのは、一言で言えば戦時法制と言わ
れるのですね。しかし私は、戦争時代に育っているものですから、たしか
総理は三歳でいらしたと思うんですよね、戦争の終わったとき。したがっ
て、戦争になればどういう状況になるかをつぶさに知っております。日本
が他国から攻められて戦場に化したときとなれば、阿鼻叫喚のちまたです
よ。そのときになってどうしようこうしようではあるまいと実は私は思い
ます。
 憲法を見ておりますと、戦争放棄をしっかりと決めている第九条ですか
ら、したがって、それを具体的に生かしていくことのためには何が大事か
ということが問われているわけなんです。かつて小渕総理のときに、党首
討論で私は取り上げて、この問題をお尋ねする機会がございました。その
ときに小渕さんは、平和に対しての政治の要諦は平和外交であると言われ
たんです。総理はどのようにお考えになりますか。

○小泉内閣総理大臣 外交も大変大事であります。同時に、我が国が武力
攻撃を受けた場合、どのような対応をするかということも大事でありま
す。そして、日本としては、いかに戦争を起こさないかということで、戦
後一貫して我々も先輩も努力してきたわけでありますし、今後とも、その
考えに変わりありません。

○土井委員 そうおっしゃる総理ですから、それではお尋ねをしますけれ
ども、私ども、平和外交の中では、わけても近隣諸国との間の交流を緊密
にして、お互いの平和友好というのを具体的に促進するということが常に
私は大事だと思うんですね。
 我が国は、七二年の年に、日中共同声明を国交正常化に当たって締結を
いたしております。そしてまた、七八年の年に、日中平和友好条約を結ん
でおります。その都度、中国政府を唯一の合法政府と認めて、台湾は中国
の一部であるということを理解し、尊重するということを確認いたしてお
ります。
 これは、実はアメリカの台湾に対する立場は違っているわけでありまし
て、アメリカには台湾関係法がございます。台湾への武力攻撃はアメリカ
の重大な関心事であって、特にブッシュ政権になってからは、台湾の防衛
の意思を明確にいたしております。
 そうした中で、中台間で武力紛争が起こったといたしますと、これはあ
ってはならないことですが、アメリカは台湾への軍事協力を行うでしょ
う。当然、我が国に対しても周辺事態としての後方支援というのが求めら
れてくるであろうと思いますが、この場合、我が国は何ができるのか。中
国との平和友好条約がありながら、アメリカ軍に対しての後方支援という
ことが考えられてよいはずはないと思うんです。
 ことしはちょうど日中国交正常化三十周年でありまして、有事法制を整
備する前に、東アジアの平和と安定のための話し合いの場を設けたり、信
頼醸成措置や予防外交というのを展開するという、外交、政治面での努力
が真っ先にこれは必要とされているものではないかと思うんですが、総理
はどのようにお考えになりますか。
    〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕

○小泉内閣総理大臣 中国は中国の考えがあるということは承知しており
ますし、しかしながら、台湾を武力解放するというふうには思っておりま
せん。あくまでも話し合いで平和裏に解決してほしいというのが日本の立
場であります。アメリカにはアメリカの立場があるでしょう。日本として
も、ことしは日中国交正常化三十周年の節目を迎えます。いろいろな交流
事業を進めて日中友好発展を図る考えに変わりはありません。

○土井委員 そうおっしゃるのなら、先日来、中国との間で外交問題、政
治問題化していることがございます。申し上げるまでもございませんけれ
ども、総理の靖国神社参拝問題。中国側からこれに対して強い抗議の意思
が示されておりますが、防衛庁長官の訪中まで延期になっているというこ
とでございまして、本来は外交問題になり得ない事柄がこのようになって
いるということを考えてみますと、総理は、春の例大祭に行かれてしまっ
たんですけれども、来る八月十五日、さらに秋の例大祭の参拝というのを
どのようにお考えになっていらっしゃいますか。

○小泉内閣総理大臣 この靖国参拝と日中友好、交流を促進しようという
考えとは別物であります。靖国参拝は、私の信条からしたことでございま
す。

○土井委員 これは、平和外交とか、一方で外交に対してしっかり取り組
みながらとおっしゃっている中身からすると、どうもまだまだ総理御自身
の御理解というのが違っていると私は思いますね。過去に目を閉ざす者は
現在を見ることができないという有名な言葉がございます。バイツゼッカ
ー元大統領の言葉でございますけれども、常に、やはり外交問題、政治問
題というのは、この観点というのと、この認識というのと、この問題に対
しての自覚というのが大事なんじゃないでしょうかね。そういうことがし
っかりわきまえとしてなければ、今回の有事法制の中身も、アジア近隣諸
国からすると脅威にこそ感ずれ、これに対して歓迎する向きは、全然これ
は望めないだろうと思いますよ。
 このことをまず最初に申し上げておきまして、一体日本に対してどこの
国が攻めてくるかという、これは、冷戦時代のソ連がなくなった後は日本
を攻撃するような国は見当たらない、防衛庁がこういう認識を持っておら
れる。また、防衛庁の方のお考えとして長官からこれを承りたいと思うん
ですが、どのようにこの問題に対してはお考えをお持ちですか、御認識を
お聞かせください。

○中谷国務大臣 私にも家がありますけれども、では、どこの人が泥棒に
入るかと質問されても、答えられません。しかし、そういう犯罪行為や災
害というものは常にあるわけでありまして、やはり備えをしておくという
ことは必要でございます。国家の歴史も、人類の有史以来、いろいろな事
態が起こっております。こういった文明が発生した時点においても、さま
ざまな紛争やテロ、ゲリラ、不審船、発生しております。そういう事態
に、国家として国民を守る備えはどこの国であろうともしておかなければ
ならないと考えております。

○土井委員 驚きましたね。天変地変と違うんですよ、これは。そして、
ある日突然起こったという出来事でもないんです。長官は、つい先日、三
年から五年の期間では想像できないとおっしゃったはずではなかったんで
しょうか。そういうことからすると、大分、この立法をせんがために、以
前に出しておられた見解をお変えになってきているなというのが、ただい
まのお答えの中からうかがい知れるところですよ。
 そうして、今回のこの法案を見ますと、どうもあいまいな点が多いんで
す。
 まずお聞かせいただきたいのは、武力攻撃事態ということに対しての認
識なんです。法文は、やはりその定義があるでしょうし、定義に従って概
念というのをしっかりつかみ取っていないと、法律自身に対して、これは
わけがわからぬということになっちゃうんですね。的確に行うこともでき
ないでしょう。
 この武力攻撃ということに対しての認識はどのように持ったらいいんで
すか。武力攻撃事態ということに対してどういう認識を持ったらいいんで
すか。いかがですか。

○中谷国務大臣 武力攻撃事態といいますと、武力攻撃、これはおそれの
場合も含みますけれども、それが発生した事態と、事態が緊迫して武力攻
撃が予測されるに至った事態というものを指すわけでございます。
 このうち、最初の武力攻撃が発生した事態というのは、自衛隊法の七十
六条の防衛出動を下令し得る事態でありまして、この武力攻撃のおそれの
ある事態というのは、今の自衛隊法の武力攻撃のおそれのある場合と同じ
でございまして、その時点における国際情勢、相手国の明示された意図、
軍事攻撃などから判断して、我が国への武力攻撃が発生する明白な危険が
切迫していることが客観的に認められる事態でございます。
 そして、同じく、もう一つの予測される事態というのは、自衛隊法七十
七条の防衛出動待機命令を下令し得る事態でありまして、事態が緊迫して
防衛出動が発せられることが予測される場合と同様でございます。この時
点はどういう時点かといいますと、国際情勢の緊張の高まりなどから、我
が国への武力攻撃の意図が推測をされて、我が国への武力攻撃が発生する
可能性が高いと客観的に判断される事態というふうに定義をいたしており
ます。

○土井委員 今の長官の御発言を承っておりましても、わかりませんね、
これは。
 予測される事態というのは、またおそれがあるという事態とは、具体的
にどう違うのかを御説明いただきたいんですね。
    〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕

○中谷国務大臣 わかりやすく説明いたしますと、武力攻撃というものが
あります。これは、破壊行為とか人が死んだりする大変な事態ですね、国
内において。それに対して、おそれの事態からやはり自衛隊を出動させて
対処する必要がありますので、その自衛隊が出動する事態を武力攻撃のお
それのある事態というふうに呼びます。それから、さらに自衛隊が出動す
る前の段階で、やはり防衛出動の待機命令とか、予備自衛官を招集した
り、また陣地構築をしたり、また地方公共団体等、国民の皆さんに危ない
ですよという警告をして、逃げてくださいという避難の措置をする必要が
ありますけれども、それがその防衛出動が予測される前の段階で、それを
武力攻撃が予測される事態というふうに呼んでおりまして、いわゆるA段
階、B段階、C段階というような、事態の段階に応じて対処し得るために
区切りをつけるための表現でございます。

○土井委員 これはいよいよわからなくなりましたね。Aランク、Bラン
ク、Cランクというのはどこにも法案には書いてございませんで、一体そ
れは、Aランクは何なんですか、Bランクは何なんですか、Cランクは何
なんですか。いよいよわかりません。

○中谷国務大臣 まず、では最初の段階からお話ししますと、事態がどん
どん推移をしまして、我が国への武力攻撃が発生する可能性が高いと客観
的に判断される事態におきましては、これはそろそろ自衛隊の出動のため
の準備をしなきゃいけないということで、予備自衛官を招集したり、また
政府としてもそのための備えをする段階であります。
 次の時点が、武力攻撃が発生する明白な危険が切迫している段階で、こ
れは、いよいよ防衛出動をして自衛隊を出動させるという段階であります
けれども、この時点は武力攻撃が発生した段階ではございません。これ
は、おそれの段階でありまして、実際に自衛隊が出動して、地域を区切っ
て、この地域で自衛隊が活動する、そこにいる人たちは安全なところに避
難してくださいというときであって、さらに、その中で行動している、中
で実際武力攻撃が発生した際に武力の行使ができる段階でありまして、こ
ういうふうな三段階に区分して、いろいろと政府としての対処をし得る区
間の定義をいたしているわけでございます。
 御理解いただけましたでしょうか。

○土井委員 なかなか理解は難しいですね、今の御説明でも。どんどん御
説明いただければいただくほど、わかりにくくなります、これ。
 この予測できる事態というのは、予測される事態というのは一体どうい
う状況かということになると、防御施設等々もつくることができるんでし
ょう。大体は、おそれがあるというふうに言われている場合と、今の予測
されるというふうに言われている事態とでどう違うかというのは、国民の
立場から見てどう違うかということを言っていただかないとよくわからぬ
のです。大体は、有事法制というのは国民の生命と財産を守るというのが
至上命題じゃないですか。そういう点からいうと、ただいまお答えいただ
いた中身というのは、やはり国民不在ですよ。
 だれが決めるんですか、これは。予測されるという状況であるとか、お
それがあるとかいうのは、だれが決めるんですか。

○中谷国務大臣 その段階は非常に大切な段階でありますので、政府が決
めまして、国会承認で国会の承認をいただくことになっております。
 一般の方々がわからないということでありますが、非常に稚拙な事例で
ありますが、火事が自宅で発生したとすれば、緊急自動車が出動するその
時点が自衛隊が出動する時点、そしてその緊急自動車が出動するために
は、その乗組員とか対処する人を集めなきゃいけませんし、いろいろな準
備も要ります。その準備を始めてもいいというのがこの予測される事態で
ございまして、例としては不適切でございますが、準備に入る段階、それ
から実際に……(発言する者あり)

○瓦委員長 静粛に願います。

○中谷国務大臣 出動する段階、そして実際に火事の現場で消火に当たる
段階というふうに、段階ごとに時程を考えていただければ御理解いただけ
るのではないでしょうか。

○土井委員 どうもこれは不適切な説明でと御自身おっしゃるとおり、こ
れは正直なことだと思うんですが、わかりづらいですね。
 これは具体的には、政府とおっしゃるけれども、政府のどこで決められ
るんですか。

○福田国務大臣 武力攻撃事態対処法案九条ですね、九条に記載してあり
ますけれども、武力攻撃のおそれの場合、また武力攻撃が予測されるに至
った事態、両方含めまして、この武力攻撃事態の認定というものは対処基
本方針に定める事項とされておりまして、この対処基本方針は、閣議で策
定された後直ちに国会の承認を求める、こういうことになっております。
閣議で決定するものであります。

○土井委員 先ほど来、どう違いますかといって、おそれとそれから予測
されるというのを承ったら、わからぬですよ、結局。まことにわかりづら
い。あいまいと言ったっていいと思うんですが、それをお決めになるの
が、結局は事態対処専門委員会という場所ですね。これがあるのは、安全
保障会議の中で新設されるという格好ですか。この事態対処専門委員会と
いうのをどういう人員構成でつくられることになるんでしょう。

○福田国務大臣 緊急事態に際しまして、政府は、事態の認定、対処に関
する基本的な方針の策定などの重大な判断を極めて限られた時間的制約の
中で的確に行うことが必要となります。このような政府の意思決定におき
ます安全保障会議の重要性にかんがみまして、同会議に、内閣官房長官の
もとに、専門的な調査分析をして同会議への進言を行う、こういう組織を
設けることによりまして、事態発生時に迅速かつ的確に対応できるよう平
素から専門的な検討を行わせ、会議の審議を補佐させるということにして
おります。  この委員会の委員については、内閣官房及び関係省庁の中
から局長級以上の関係者を任命することを想定しておりまして、その人数
等については、今後、具体的に定めていくということにしております。

○土井委員 防衛庁、自衛隊からのメンバーはこの中に入るんですか。

○福田国務大臣 自衛隊も、これはその持つ情報、知見を必要とするとい
うことでありますので、当然入るべきだと思っております。

○土井委員 これは制服の人だろうと思いますがね、恐らく。そうでしょ
う。

○福田国務大臣 それは特に定めておるわけでありませんけれども、その
知見、情報を有する者ということでお考えいただきたいと思います。

○土井委員 日本に対する武力攻撃のおそれや予測をされるような事態と
いうことになりますと、これはやはりアメリカ軍が関与しているとか関係
しているということが当然のことながら考えられるのですが、むしろ、先
にアメリカ軍が関係する武力紛争が起こっていて、その影響が日本に波及
してくる事態というのがおおよその中身ではないかというふうに思われる
のですが、このように認識をしていて、長官、間違っていますか。

○福田国務大臣 この法律ができまして、すぐこの法律が発動するとかい
うことではないわけでございまして、この法律は、今後五年、十年、二十
年、三十年、場合によったらもっと長い期間使わなければいけない法律で
あるということを考えますと、特別な国を限定して、指定して、その影響
下とかいうようなことを言うべきではないのではないかというふうに私は
思っております。

○土井委員 どうも今の御答弁もはっきりしないのですけれども。いわゆ
る周辺事態が存在して、日本の武力攻撃事態というのがそれと併存すると
いうことを長官も先日来お答えの中でおっしゃっているわけですが、概念
的な区別じゃなくて、実態論としてそれをここでもう一度御説明いただき
たいと思います。

○中谷国務大臣 周辺事態というのは、我が国の周辺の地域において我が
国の平和と安全のために重大な影響がある場合でございまして、そういう
場合には、我が国といたしましては、当然のことながら武力行使はできま
せんけれども、我が国としての憲法の範囲内で後方支援をして、そういう
事態が我が国有事にならないように努めるわけでございます。  武力攻
撃事態というのは、まさに、我が国に対する武力攻撃に及んで、我が国と
して自衛権に基づいて対処する、国を挙げて、いろいろな機関で国民を守
っていく行為でございます。
 こういう二つの法律をいかに運用するかということでございますが、当
然、その事態にかんがみますと、それが併存するようなケースもあり得る
わけでございますが、それぞれの法律に従いまして、その内容に基づいて
対処をするということでございます。

○土井委員 そうすると、具体的に言えば、周辺事態法に従って行動をと
っている、アメリカ軍の後方支援をしているという状況下で、予測するこ
とができるという日本のいわゆる武力攻撃事態もあるわけですね。そうい
う状況もあるわけでしょう、可能性として。

○中谷国務大臣 そういう事態もございます。

○土井委員 そういうことになると、周辺事態法に従って行動をとってい
る自衛隊の行動も、後方支援から、むしろ積極的にアメリカに対して協力
をさらにすることが要請されるという場面が私は出てこようと思います
よ。そういうことになれば集団的自衛権の行使ということに当たります
が、そういう不安というのは当たらないとお考えですか、どうですか。こ
れは現実の問題としてありますよ。

○中谷国務大臣 周辺事態の場合は、当然のことながら憲法の枠内で武力
行使をしない範囲でございます。これが併存する場合につきましては、我
が国の武力攻撃事態におきましては、我が国の武力攻撃の部分といたしま
して米軍に対して支援を行うわけでありますし、事態が、我が国に武力攻
撃が発生した場合におきましては、米軍と安保条約の五条に基づいて共同
対処するわけでございまして、それぞれ事態というものは法律に基づいて
実施をするわけでありまして、併存する場合において、仮に周辺事態が続
く場合におきましては、その分野におきましては、集団的自衛権にならな
い範囲での支援になるというわけでございます。
 これはどう切り分けるかというのが疑問に思われると思いますが、この
点につきましては、周辺事態の法律のときに日米の調整メカニズムという
ものをつくりまして、日米の協力のあり方についてそこで調整を行うわけ
でありますし、我が国の武力攻撃事態におきましても、そういう共同の作
業所がつくられまして、米軍の支援に関するものにつきましてもそこで調
整をするということで区別して行っていきたいと思いますが、一般論とい
たしまして、我が国に武力攻撃が差し迫ったり、発生した場合におきまし
ては、当然のことながら、武力攻撃事態、すなわち我が国の有事事態を優
先するというのは当然のことでございます。

○土井委員 さあ、そこで承りたいんですが、今回出ている法案は三法案
です。本来、四つの法案を出すと言われ続けてきました。私の覚えに間違
いなければ、四月八日までは与党の方の協議会でその問題が討議されてい
たはずであります。四月の八日以後、この四つ目の法案は幻の法案になり
ました。この四つ目の法案というのはなぜ消えたのか、どういう法案を考
えられつつあったのか、明らかにしていただきたいと思います。

○福田国務大臣 米軍の法制に関する法案のことですか、委員のお尋ねの
四つ目とおっしゃるのは。そういうことですか。(土井委員「私は見てお
りませんから、わかりません」と呼ぶ)そうですか。では、それを前提と
してお答えを申し上げます。
 今国会では、米軍が自衛隊との共同対処行動において円滑な行動をとり
得るよう、米軍に適用のある法令に関し特例措置を講ずる必要があるか否
かを検討したのであります。おっしゃるとおり、検討したのであります。
その結果、現行の法律の範囲内で対応し得ることが明らかとなったという
ことで、今回は法案提出は行わないということにしたのでございます。
 よろしゅうございますか。

○土井委員 先ほど政府が定義をされた有事とは、有事を認定する対象を
広くとらえておられるために、攻撃が予測される事態と日本周辺での武力
紛争のうち、日本への武力攻撃に至るおそれのある周辺事態並びに予測さ
れる周辺事態との境界が重なる部分があるということをさっき認められた
んです。これは、今回の法案で言ったら二条六号イ(2)で、これはもう
なかなかややこしい法案ですが、対処措置の定義として、合衆国の軍隊が
実施する日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動が円
滑かつ効果的に行われるために実施する、こういうことがこれは保障され
てあって、一方、安保条約とここで言われている中身は、恐らく安保条約
五条なんですね。五条を見ますと、「日本国の施政の下にある領域におけ
る、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくする
ものであることを認め、」「共通の危険に対処するように行動する」とい
うことになっておりまして、「日本国の施政の下にある領域における、」
となっているんですよ。
 今問題にしているのは、日本の施政の領域を外れて周辺事態行動として
なされている作戦行動の中で、米軍がこういう行動をとるということも考
えられるわけですから、したがって、安保条約の五条という条文以外にこ
の安保条約について見当たりませんですね、根拠になる条文は。安保条約
の五条で決めているところにはこれは合致しないというふうに考えていい
んですか。

○中谷国務大臣 先ほど周辺事態と重なる場合という御質問がございまし
たけれども、周辺事態への対応としての米軍の支援は、周辺事態法に基づ
いてやります。
 また、我が国の武力攻撃事態への対応としての米軍の支援は、今後整備
されます武力攻撃事態時の米軍支援のための法制に基づいてそれぞれ実施
されるわけでございますが、後者の武力攻撃事態への対応ということにつ
きましては、安保条約の五条に基づくものでございます。

○土井委員 簡単に言うと、我が国の施政下にある領域でないところで米
軍が活動することも、この五条の中に言う、日米安保条約に従って行動を
とるということになるんじゃないんですか。

○中谷国務大臣 その場合におきましては、周辺事態への対応としての米
軍の支援は、周辺事態法に基づくわけでございます。我が国の防衛のため
に行動をする場合につきましては、今回整備をされます武力攻撃事態時の
米軍支援のための法律に基づいてそれぞれ実施するわけでございます。

○土井委員 それは、先ほどから周辺事態法と併存する部分というのが今
回の法案にはあるということをおっしゃっていることを前提として私は話
を進めているんですよ。
 つまり、これは、安保条約上は日本国の施政のもとにある領域における
武力行使となっていながら、有事を武力攻撃が予測される事態まで拡大さ
れたことによって、安保条約第五条の決めている中身と完全に矛盾してい
るというふうに考えなきゃならぬ事態が出てきたんです。このことを……
(発言する者あり)お隣でそれはそうだとおっしゃっていますよ。そのこ
とを御認識されているかどうか。いかがですか。

○川口国務大臣 御質問が、我が国に対する武力攻撃以前の段階における
必要な行動と安保条約との関係ということでございましたら、まず、日米
安保条約第五条に基づいて米軍が武力の行使を行うのは、我が国に対する
武力攻撃が行われた場合に我が国を防衛するためであるということでござ
いますけれども、武力攻撃以前の段階において必要な行動をとる場合に
は、安保条約及び地位協定の範囲内で行われることになるわけでございま
す。
 また、武力攻撃発生の前後を問わず、そのような米軍の行動を円滑かつ
効果的なものとするために必要な措置を我が国がとるということは、日米
安保条約の目的の範囲内でございます。

○土井委員 今の外務大臣の御答弁、おかしいです。武力攻撃事態以前の
状況とおっしゃるけれども、これは、予測できるということがもう認識さ
れた途端から武力攻撃事態ですよ。  したがって、この今回の法案を見
ておりますと、アメリカ軍との関係からいえば、周辺事態法下にある日米
の、日本の自衛隊とアメリカ軍、それぞれは、やはりこの立場からすると
お互い周辺事態法に、日本でいえば日本の国内法である周辺事態法に従っ
ての日本側の自衛隊の行動であって、アメリカ軍はアメリカの国内法に従
っての行動であって、そして、先ほど来からおっしゃるように、メカニズ
ムがきちっと相互間であるわけですから、これはガイドラインに伴うメカ
ニズムのことをおっしゃっていると思いますが。  したがって、それか
らすると、その周辺事態法の中で動いている途次予測されることが、具体
的に、これは非常にわかりにくい御説明を初めにずっといただいたわけで
すが、武力攻撃事態だという認識を持てば、安保条約はアメリカ軍に対し
ては第五条しかないんです、問題になるのは。  しかし、日本の施政権
下にある場所ではありませんよということ、これははっきりしているじゃ
ないですか。いかがですか。

○川口国務大臣 この安保条約の第五条でございますけれども、これは、
我が国に対する武力攻撃がいまだ発生していない時点において、米軍が我
が国に対する武力攻撃を効果的に排除するために安保条約の範囲内におい
て必要な行動をとるということを想定していると考えております。
 そのような米軍の行動を円滑かつ効果的なものにするために必要な措置
を我が国がとるということは、日米安保条約の範囲内であるというふうに
考えております。

○土井委員 もう繰り返し繰り返しになりますが、必ずしも日本国の施政
のもとにある領域じゃないのですよ、これは。そこで起こる問題なんで
す。もう一度安保条約の五条を見てください、どう決めているか。(発言
する者あり)

○瓦委員長 静かにしてください。

○土井委員 もうこれは待つだけ時間のむだです。
 よろしいですか。これははっきりした答えを用意して、私ももう一度こ
こに立ってその御答弁を聞きますから、きちっとしていただきたい。
 実は、周辺事態法のときから問題だったのです、これは。参議院の方で
質問主意書が出ております。それに対しての政府からの答弁というのは、
それについて触れられていないけれども、具体的にこれに対して実行する
ことができるという中身ですよ。
 はっきり申し上げますけれども、条約で触れられていないことであった
ら何でもできるんであったら、条約を結ぶ意味がない、条約の条文の意味
がない。特にこのような軍事問題が絡むようなことに対して、そういう認
識とそういう解釈、そういう対応というのはゆゆしいものだと私は思いま
すよ。これははっきりすべきだと思うから、もう一度おさらいしてくださ
い、そのあたり。そして、お答えを改めて聞きます。委員長、よろしゅう
ございますか。

○中谷国務大臣 安保条約五条というのは、日本の施政権下への攻撃が定
められておりまして、そういう場合に米軍が共同対処できるということで
ございます。
 この範囲につきましては、自衛隊の場合は我が国の領海、領空と公海、
公空の範囲で行動するわけでありますが、いわば日本は盾の役割をするわ
けでございますが、米軍につきましては、やりの役割等もするわけでござ
いまして、その範囲等につきましては、この安保条約で言う施政権下とい
うのに限られたわけではございません。

○土井委員 お答えになっていないです、今のは。もう行き違いですよ、
全く。こちらの質問に対して正確にキャッチしていただいていない。これ
は、盾だ、やりだというような表現というのはわかりにくいです。ひと
つ、もう一回これはおさらいをして、きちっと出直していただきたいと私
は思います。
 今までに全くないのならいいですよ。しかし、質問主意書が出て、それ
に対する答弁というのをそのままで置いておくわけにはいかない問題が、
今回の法案ではいよいよ濃くなったんです。したがって、私はここにその
質問をしたわけであります。
 委員長、よろしゅうございますか。

○瓦委員長 後ほど理事会にお諮りをいたします。

○土井委員 法文というのは言葉が大事なんですね。今回のこの法案を見
ておりまして、まことにわかりづらいのは、まず言葉なんですが、使い
方、相当これは法案を用意される方は苦心されたに違いないと思うんです
けれども、条文を見ておりますと、随所に政府というのが出てくるんで
す。内閣でなくて政府となっているんです。十六条から二十二条まで、す
べて主語は政府となっているんです。
 私は、古い人間だと言われるかもしらぬけれども、ここで思い起こすこ
とがある。国家総動員法では、政府という用語を全部使っていたんです
ね。今ここに持ってまいりました。これが国家総動員法ですね。官報で出
された中身を見てみますと、確かに政府になっていますよ、ずっと条文
は。
 日本国憲法では、政府ということを用語として使っている条文はないん
です。みんな内閣ですよ。ただ一カ所だけ政府という表現が使われている
のは、前文の箇所なんです。政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こる
ことのないように決意しというくだりです。これは、明治憲法下の政府が
起こした、また、大正、昭和と来て、この国家総動員法が働いている間に
起こした戦争という歴史的反省を込めた用語として、前文の箇所にはもち
ろん政府という気持ちを込めた用語として使われているという説が多数意
見なんです。
 政府と内閣の違いは何ですか。お聞かせください。

○津野政府特別補佐人 お答えいたします。
 政府と申しますのは、一般的に、内閣及びその統括のもとにある行政機
関を総括した意味で一般的には使われております。
 それから、内閣と申しますのは、これは、憲法上使われております行政
権の帰属主体としての意味で使われているわけでございます。

○土井委員 わざわざ、今御説明になった中で、政府という用語をおとり
になった意義はどこにございますか。

○福田国務大臣 本法案でもって政府という言葉を使っておりますけれど
も、政府が負っている役割は、対処基本方針を作成すること、対処措置を
総合的に推進すること、損失に関する財政上の措置を講ずること、対処措
置について安全を確保すること、国際連合安全保障理事会に報告を行うと
いうようなことでございまして、これらの役割を政府に負わせているの
は、これらの行為が、法律の執行、予算の作成、外交関係の処理に関する
ことであり、行政府に負わせるのが適切であるというふうに考えておると
いうことであります。

○土井委員 これではお答えになりません。今おっしゃるようなことだっ
たら、内閣ということにしても同じですよ。わざわざ政府になっている意
義を聞いているんです。いかがですか。

○福田国務大臣 この法律では、政府という言葉をわざわざ使ったという
ことでありますけれども、これは、内閣だけでなくて国全体が一体となっ
て行うべき武力攻撃事態の対処である、このような観点からこの政府とい
う言葉を使ったわけでありまして、政府による措置は、国民の理解と協力
を得て効果的に実施していかなければいけないというように考えておりま
す。

○土井委員 そうすると、私は古いかもしれないがと言った国家総動員法
に「政府ハ」と使われてきたことと無関係ではありませんね。今回も国家
総動員という意味をやはり持つんですね。今の御説明ならそうなります
よ。

○福田国務大臣 この政府というのは、もう一度申し上げますけれども、
内閣及びその統括下にある行政機関を総括した意味ということでありまし
て、これは行政府、こういう意味でございまして、国の機関から立法府及
び司法府の機関を除いたもの、こういうことになります。
 今、国家総動員法という話がございましたけれども、そういうお話は初
めて聞いたので、全くそういうことを意図してやったものでもなければ、
もしその国家総動員法に政府という言葉を使っているのであれば、これは
政府という言葉は一般的によく使う言葉でございますので、偶然の一致だ
ろうというふうに思っております。

○土井委員 それは、終わりの方は何かおかしいことをおっしゃいまし
た、今。冗談じゃないですよ。ここで、法案に対してまじめに審議をして
いる場所で何をおっしゃっているのか。終わりの方の御発言というのはお
かしい、私はそう思います。そうですよ。だけれども、こういう御答弁を
聞いていて、私、質問するというわけにいかない。後の方で何をおっしゃ
ったんですか。大体、こちらはまじめにやっているんですよ。そして、大
事な問題をこれから言おうと思っておりましたが、次回に私はこれを譲り
ます。
 一言、総理には申し上げたい。先日、この法案が議院運営委員会で諮ら
れた上で本会議に出たときに、自民党の席は半数ぐらいに減りましたよ。
非常に空席が目立つ中で、提案趣旨説明が行われて、そして各党の代表質
問があったんです。我が党の金子代議士が、そのことに対して触れて、ど
う思われるか総理というふうに聞いた気持ちは、まことにやるせない気持
ちです。
 私たちにしてみると、本来憲法からしたらこういう法律はつくる法律じ
ゃない。国民からしても、どこからどのような攻撃があるかと聞いたら、
真剣にそのことを今考えなければならないという状況じゃないです。もっ
と真剣に考えるべきは経済や景気じゃないですか。今国民生活からすると
緊急を要する問題じゃない。(発言する者あり)それじゃ、自民党の方々
そうおっしゃるのならば、本会議場にもしっかり出て、そうしてこの問題
にしっかり取り組むべきじゃないですか。(発言する者あり)

○瓦委員長 静粛にしてください。

○土井委員 そういうことを考えると……(発言する者あり)

○瓦委員長 静かにしてください。

○土井委員 私は、この法案に対して、中身が、大事なところが全部後回
しになっていて、例えば、一番大事なのは、先ほど私申し上げましたけれ
ども、国民がどのように守られるかという問題でしょう。自衛隊や米軍の
活動の円滑化という問題もあるかもしらぬ、そればかりじゃないですか、
今回の法案は、一言で言ってみれば。そして、自治体に対しても、自治と
いうのがまるで考えられないやり方というのが出てくるし、そして国民に
対しては協力を要請されていて、必要な協力の内容が一向に明らかじゃな
いんです。
 総理大臣は、私の本会議での代表質問に対して、総合的に全体がわかる
ような形でこれに対してはしっかり取り組みたい、国民の皆さんが理解し
ていただけるような法案でこの問題に臨みたいということを答えられたん
ですよ。肝心のところがないんじゃないですか。
 したがって、この法案に対しては、どうか撤回をお願いします。撤回を
していただくということが大事だと思う。欠陥法案だと申し上げたいと思
います。
 委員長、時間がまだありますけれども、残余の質問は次回に、私、回し
ます。

○小泉内閣総理大臣 国会の本会議には多くの議員が出席して質疑に参加
するのが望ましいことは、言うまでもございません。
 また、今回の法案は、欠陥法案だと言いますが、有事のことについては
平和のときから考えるのが政治の要諦なんです。全く有事に対する法案を
出す必要がないという立場の方もおられますが、私はそうは思わないんで
す。
 そういう点から、今回、平時から有事のことを考えようということで議
論をしていただいているんであって、私どもは真剣にこの法案を国会で議
論していただきたい。また、国民の協力を得て、備えあれば憂いなしとい
う対応を政府としてはしたいということから提案しているんであって、私
どもは、立場は違ってもこの問題について真剣に議論をしていただきたい
と思っております。

○土井委員 繰り返しいつもそれをおっしゃるのが総理です。
 最初に私は、備えあれば憂いなしの備えとは何であるかということを申
し上げました。したがって、そのことが軽く考えられ、憲法をしっかり尊
重してこれを生かしていくという努力がないがしろにされる中では、全く
国と国民の立場や将来を守っていくという政治にはなり得ないと私は思い
ます。
 このことを申し上げて、今回は、その観点から見れば、この法案は、二
年がかりであと法案を用意されるというところの部分が大変大事な部分で
すから、なぜ拙速にこの法案を提案して審議を急がれているのかよくわか
らないという人たちが多いですよ、町中では。そのことを申し上げて、私
は終わります。

○瓦委員長 土井たか子議員の持ち時間は終了いたしております。
 次回は、明八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会す
ることとし、本日は、これにて散会いたします。


    午後四時五十四分散会


[出典]衆議院 - 会議議事録情報 >> 特別委員会 衆議院 武力攻撃事態への対処に関する特別委員会議録

停戦委員会 >> YUJI * STORY >> 有事法制資料集 >> 第154回国会 武力攻撃事態への対処に関する特別委員会 議事録 第 3 号(05/07) 第 3 号(05/07) PM

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