さて、実際に入試問題を解きながら、頭を整理してみましょう。
右図のようにU字管を隔膜で仕切り、隔膜の左側の管には水 v ml を、また右側の管にはnモルのショ糖水溶液をvmlをそれぞれ入れて、室温 T K に放置した。隔膜がろ紙の時には図Aの様に両管の液面の高さは変化しないが、半透膜の時は図Bの様に右の液面が h cm 高くなった。
これについて、次の問いに答えよ。ただし溶液は希薄であるとする。
問1 隔膜の両側でどのような変化が起こって、この様な現象が生じたか。AとBの場合について、それぞれ 60 字以内で説明せよ。
問2 Bの場合に、管の断面積を S cm2 としたとき、ショ糖溶液の体積増加分 Δv ml を表す式を求めよ。
問3 1気圧に相当する水柱の高さを H cm 、気体定数をR 気圧・ml/(K・モル) としたとき液面の差 h を H、n、R、S、T、v で表せ。なおその式を導く過程を分かり易く示せ。
問4 Bの両側の液に濃硫酸を数滴ずつ加えてあたためたのち、ふたたび室温にもどしたところ、液面の差が約 2h cm になった。この理由を化学反応式を使って説明せよ。
[大阪市立大学]
(^^)
実は、我が母校の入試問題なんですが・・・・。問3を説明したくて、この問題を取り上げました。
順番に説明してみましょう。
まず、化学2をまだ履修していない人のために、一言付け加えましょう。「ショ糖」というのは、ま、お砂糖の事です。水に溶けますが、電離はしません。また問題4は、化学2なので、やらなくて結構です。
それから、問題を説明する前に、問1の直前にある「ただし溶液は希薄であるとする。 」について、説明を加えておきましょう。
高校化学で習う「浸透圧」や「凝固点降下」、「沸点上昇」の計算式は、全て「濃度」に比例していましたよね。
実はあれは、あまり正確ではありません。本当は「濃度の一乗」には比例しないんです。が、濃度がすごく薄い時に限って、 「濃度の一乗に比例していると見なせる」んです。数学3Cで言う「近似」です。
濃度がある程度濃いと、正比例しません。しかしそういう場合は、超難関大学・難関大学(旧帝国大学クラス)でないと、まず出題されませんので、ここでは触れない事にします。
で、我が母校を良く言うのは気が引けるんですが、一応、国公立大学なので、いいかげんな事は書けない訳です。だから正確に「濃い場合は考えなくて良いよ」という意味で、「ただし溶液は希薄であるとする。 」と、注釈がついているんですね。
問1の説明
ろ紙は、水分子も通れますが、砂糖分子も通過出来ます。
ですから、右側に砂糖を入れたとしても、拡散によって、左側にも広がり、左右とも同じ濃度の砂糖水になるはずです。
なら左右に浸透圧の差が無くなりますよね。(浸透圧が無くなる訳ではないよ)
ですから、液面の差は生じない訳です。
一方で、半透膜なら、水分子は通過出来ますが、砂糖分子は通れません。ですから浸透圧に差が生じて浸透現象が起きます。ですから、液面差が生じる訳です。
ま、こういう内容が書いてあれば良いんじゃないですかね?
問2の説明
ここは、以下を解くためのヒントです。
ここで引っかかってしまうと、後に影響しますので、「注意して考えろよ!」という警告ですね。
それなりにちゃんとした大学は、くだらない意地悪な出題はしません。こんな問2みたいなショーモナイ問題を聞くという事は、「大学がショーモナイ大学」なのか、もしくは「何か意味があるか」のはずなんです。
一応、大阪市立大学の問題です。つまり、「警告なんだ」と気がつく訳です。
「水面差が h 」・・・?
ここに何かあるはずです。
あ、そうか、水面差が h と言う事は、こういう事だ。
右側の水面は上がるけど、左は下がるんですよね。それを合わせて h なんですから、右側の上昇だけなら、半分の(h/2)ですね。
断面積が S だと書いていますから、体積増加と言うなら、
Δv = (h/2)・S
と分かります。
この設問を省略すると、「2で割る」のを忘れる人が多くなるので、親切で質問してくれているんですよ。
こういう風に、出題者の心理を読むのも重要です。
では、次のページに進んで下さい。