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耐震強度偽装2006年3月

日付 出来事 典拠
3月1日 合同捜査本部は、姉歯秀次元建築士が構造計算書を偽造したホテル「京王プレッソイン茅場町」(東京都中央区)で建築基準法違反容疑での検証を始めた。同ホテルは京王電鉄が建築主で、木村建設が施工主である。 「耐震偽造 東京・中央区のホテルを検証 合同捜査本部」毎日新聞2006年3月1日
3月2日 木村建設の破産管財人が熊本ファミリー銀行を提訴した訴訟の第1回口頭弁論が東京地裁(富田善範裁判長)で開かれた。破産管財人は熊本ファミリー銀行に預金の返還や損害賠償等、総額約42億円の支払いを求めている。

木村建設が倒産したのは、メーンバンクの熊本ファミリー銀行が問題発覚直後に預金口座を突然凍結したことが原因と主張する。「破産に追いやることを認識しながら、自らの債権回収を優先した」。

「熊本ファミ銀に42億請求 木村建設管財人が提訴」共同通信2006年3月1日
「自らの債権回収優先…木村建設管財人、取引銀行を提訴」読売新聞2006年3月2日
「熊本ファミ銀が争う姿勢 木村建設管財人の訴訟」共同通信2006年3月2日
3月5日 住友不動産は、札幌市内で建設中の分譲マンション2棟について、耐震強度に疑問が生じたとして販売を中止し、契約を解除する手続きをとっていることを明らかにした。耐震強度偽装事件発覚後に販売を中止したマンションには東急不動産及び株式会社明豊エンタープライズのアルス町田ブライシスがある(日本ERIが建築確認)。

販売を中止したのは札幌市豊平区の「シティハウス福住公園通」(15階建て、51戸)と、同市西区の「パークスクエア発寒駅前メイプルサイド」(15階建て、149戸)の2棟である。2棟とも、設計者はテクノ設計事務所(札幌市)、施工者は伊藤組土建、確認検査機関は日本ERI。構造計算は耐震強度を偽装した姉歯秀次元建築士以外の建築士に下請けに出された。

2棟の耐震強度は、民間検査機関の検査で承認済みだったが、耐震強度偽装問題発覚(2005年11月)を受け、設計側からも再検査を促す声があり、別の検査会社に依頼した。2月中旬に2棟のマンションの耐震強度に疑問があると報告を受けた。

限界耐力計算

新しい計算法「限界耐力計算」が問題視されている。建築基準法施行令上認められている耐震強度の計算方法には複数の方法があり、その方法によっては耐震強度は様々な数値になる。耐震補修や、解体・建替えの基準値が異なってしまうのは大いに問題である。

販売を中止した住友不動産の分譲マンションは限界耐力計算で計算していた。限界耐力計算は2000年から使えるようになった計算法である。同じ建物でも本方法で算出したのと従来の計算法で算出したのとでは耐震強度が異なる。許容応力度等計算で耐震強度基準の「1」を下回っても、限界耐力計算では満たす場合もある。

使いようによっては鉄筋や柱の太さを合法的に減らすことができる。強度不足だったマンションが一転して安全となり建て替えも改修も必要なくなる。実際に姉歯建築士の偽装で耐震強度不足とされた都内新宿区のマンションがこの「限界耐力計算」で計算し直して「安全」とされている。このような事実がマンション購入者に知らされていない点が問題である。

日本建築構造技術者協会JSCAは限界耐力計算には問題があると指摘したが、国土交通省はそれに応じなかった。耐震偽装物件を検証し直す際に限界耐力計算を用いてもよいと通知してしまった。その結果、JSCAが指摘した通りの深刻な問題が次々に発覚した。

構造計算には大きく分けて四種類ある。許容応力度等計算と時刻歴応答解析は1981年の「新耐震設計法」の導入時、あるいはそれ以前から存在する。許容応力度等計算は「ルート1」許容応力度計算、「ルート2」剛性率・偏心率確認、「ルート3」保有水平耐力計算に分かれている。姉歯秀次元建築士が偽装に使ったのは保有水平耐力計算だった。一方、限界耐力計算とエネルギー法は2000年の「性能設計法」の導入以降に使われるようになった新興の計算法である。

「住友不動産が2棟分譲中止 札幌で耐震強度に疑問」共同通信2006年3月5日
去石信一「<耐震強度>住友不動産が「不安ある」2棟の販売中止 札幌」毎日新聞2006年3月5日
「「耐震強度に疑問」札幌のマンション2棟の販売中止」読売新聞2006年3月5日
3月6日 北海道電力のグループ会社「北電興業」(札幌市)が札幌市中央区に建設した賃貸マンション2棟で、耐震強度に疑問が生じたとして、入居者に説明するとともに、入居予定者とは解約手続きをとっていることが判明した。「震度5強の地震でも倒壊の恐れはないが、必要な耐震強度を満たしていないと判断した」とする。問題となっているのは22戸が入居している「エナコート大通22」(9階建て、23戸)と、2月18日から15戸が入居予定だった「エナコート山鼻」(10階建て、30戸)である。

浅沼建築士に下請けを出した北電総合設計(札幌市)は「二級建築士と知っていたが、実績を評価していたので仕事を頼んだ」と話す(「二級建築士と知らなかった 偽造建築士の発注元代表」中国新聞2006年3月9日)。北電総合設計は北海道電力・泊原子力発電所の設計も行っている。

「同設計会社は、原発その他の発電所など、重要な社会インフラの設計施工を多く行って来ているからだ。電力会社系設計会社が、故意に本来資格がない者に設計を行なわせて欠陥建造物を作っていたという事実は、単なる「マンション設計偽装」問題の次元を超えた疑惑を呼ぶ」(山岡俊介「“二級”建築士とわかっていて頼んだ!? 北海道電力系設計会社。原発は大丈夫か!?」ストレイ・ドッグ2006年3月12日)。

「札幌で新たに2棟強度不安 北電系の賃貸マンション」共同通信2006年3月6日
3月6日 建築士の不正行為を審査する国土交通省の中央建築士審査会(会長・村上周三慶応大教授)は、無断改築を繰り返したビジネスホテルチェーン「東横イン」(本社・東京都大田区)の関連会社に一級建築士の名義を貸していたとして、千葉県の建築士の免許を取り消した。

東横インの無断改築問題で処分を受けたのは、同社の関連会社「東横イン開発」に所属していた建築士(千葉県白井市)。設計業務をするには管理建築士を置くことが必要で、この建築士は2000年12月から同社の管理建築士であった。建築基準法などに違反した7件について、設計や工事監理を行う意思がないのに、建築確認申請書の設計者欄に名義を貸していた。

通常の名義貸しの処分は業務停止3カ月とされるが、この建築士は2000年12月から2006年1月まで毎月10万円の報酬を受け取り、同チェーンのほとんどの違反物件にかかわっていたとみられ、重い処分となった。同省は「一連の行為は極めて悪質」として、建築士法で最も重い行政処分を下すことを決めたが、「実名公表を義務付ける規定がない」として氏名公表は見送った。東横イン問題で建築士に懲戒処分が出るのは初めて。同省は無断改築の実際の設計者についても今後処分する。

世紀東急工業の建築士、耐震強度偽装で懲戒処分

国土交通省は、姉歯秀次元一級建築士による偽装物件の元請け建築士6人を追加処分した。6人は姉歯元建築士に構造計算を発注していた設計事務所6社に在籍していた。懲戒処分は1人を免許取り消し、5人を2〜12カ月の業務停止とした。建築士の今年度の免許取り消しは計11人になり、過去最高となった。

処分を受けたのは木村建設(熊本県)、世紀東急工業(東京都)、中村組(静岡県)、アーキグラム(福岡県)、岡田建築設計(同)、醇建築・まちづくり研究所(同)に在籍していた計6人。木村建設の建築士は4件の偽造物件(ドルチェ芝浦弐番館等)に関与したとして免許取り消し処分を受けた。

世紀東急工業の建築士は偽装物件「アーバン武蔵小金井」に関与したとする。基準に適合しない設計を行ったことや、名義貸しを行ったことが処分の理由である。国交省によると、関与した偽造物件の数、保有水平耐力比0.5未満の物件への関与の有無を基準に、総合的に判断して処分の重さを決めたという。

長谷川豊「<東横イン>名義貸し建築士の免許取り消し」毎日新聞2006年3月6日
「建築士2人の免許取り消し 不正改造や耐震強度偽装で」共同通信2006年3月6日
「東横イン開発に名義貸し、1級建築士の免許取り消し」読売新聞2006年3月6日
「管理建築士の免許取り消し=東横イン不正改造で名義貸し−国交省」時事通信2006年3月6日
「姉歯物件の元請け建築士6人、国交省が追加処分」読売新聞2006年3月6日
佐々木大輔「元請け建築士に免許取り消しや業務停止の処分」建設総合サイトKEN-Platz 2006年3月7日
3月7日 札幌市は、市内の二級建築士が元請業者から構造設計を依頼された計5棟のマンションの耐震強度を偽装していたと発表した。市によると、偽装を行ったのは、浅沼良一・二級建築士である。マンションの建設を担当した元請業者と下請けの浅沼建築士が2月6日、「構造計算書に偽装があった」と市に報告に来て発覚した。

浅沼建築士は1996年から構造計算業務を始め、これまでに112棟の構造設計を手掛けた。そのうち33棟で偽装疑惑が判明している。偽装を始めたとされる1999年は2棟、2000年が1棟だったが、2001年4棟、2002年6棟、2003年7棟、2004年6棟、2005年7棟とエスカレートしていた。市は日本建築構造技術者協会に委託し検証を進める。今後該当するマンションの管理組合等にも通知する。

構造設計を担当した浅沼建築士が、構造設計の段階で、地震などに建物が耐えられるかなどを調べる構造計算書を作成中、複雑な計算作業を処理できず、つじつまを合わせるために5棟について数字を操作したという。共同通信の取材には「納期が迫ったため、耐震基準に不安が残るまま、元請けの設計会社に提出してしまった」と答えた。

浅沼建築士は二級の資格では手掛けられない複雑な物件の計算を行っており、建築士法違反(無資格業務)の可能性もある。浅沼建築士は設計事務所を登録せず、休眠中の不動産会社の名義を使っていた。札幌市役所の会見では「登録しなければならないことを知らなかった」と釈明した(柴沼均「耐震偽造 浅沼建築士は疑惑否定 道は元請けなども調査へ」毎日新聞2006年3月8日)。

北海道建設部は浅沼良一・二級建築士に発注していた元請けの設計会社5社や一級建築士に建築基準法違反がないか、調査する。一級建築士や元請けは、33棟の構造計算書の改竄を認めた浅沼良一建築士を管理監督する立場にあり、道は責任を重いと判断している。調査の焦点は、元請けと浅沼建築士との具体的な関わりである。

建築士法では高層マンションなどの複雑な建築物の設計には一級建築士の資格がいる。二級建築士が設計に携わる場合は一級建築士が管理しなければならない。元請け事務所が浅沼建築士に設計を丸投げしていれば、浅沼建築士は無資格設計したことになり、建築士、事務所とも建築士法違反に問われる可能性がある。

札幌市のマンション住民から相談殺到

札幌市の耐震データ偽造問題で、住民から「自分のマンションは大丈夫だろうか」等の問い合わせが関係機関に殺到している。同市がマンション名を公表していないことが不安に拍車をかけている。同市建築指導部には、6日に12件、7日には51件の相談が寄せられた。

日本建築構造技術者協会道支部JSCA等、建築・構造設計の専門家4団体が2005年12月から実施している「構造計算書偽造問題特別相談」の窓口は今回の事件発覚以前からファクス等による相談が相次いでいた。今回の耐震偽造問題発覚後、特別相談の専用ファクスが一日中鳴り続けている。道マンション管理組合連合会にも7日だけで50件以上の問い合わせがあった。

札幌市で発覚した耐震強度偽装は、建物の安全が設計者任せにされ、建築確認段階で不正が見過ごされる実態を改めて露呈した。姉歯秀次元一級建築士以外による偽装、強度不足物件がさらに拡大する深刻な事態となっている。今回、札幌市で発覚した偽装は「非姉歯」の調査とは別の経緯だったこともあり、国交省幹部は「まさに底なしの様相となってきた」と頭を抱える(酒井孝太郎「「非姉歯」さらに拡大…事態深刻」産経新聞2006年3月8日)。

姉歯事件の発覚した当初から姉歯建築士は特異例なのか、「氷山の一角」なのか議論されてきた。結果的に言えば、「氷山の一角」であることが証明された。そもそも特異例ならば、これほど大きな問題にはならなかった。本格的に調べれば、似たようなのはいくらでも出てくるだろう。

「札幌市の2級建築士、マンション5棟の耐震強度を偽装」読売新聞2006年3月7日
「5棟の構造計算偽造を確認 札幌市のマンション調査」共同通信2006年3月7日
「札幌 30棟が強度不足か 同じ建築士 2棟で入居解約」産経新聞2006年3月7日
「納期迫り提出と建築士 札幌のマンション耐震問題」共同通信2006年3月7日
長谷川豊「<耐震偽造>浅沼建築士は技術不足 複雑計算できず改ざんか」毎日新聞2006年3月8日
酒井孝太郎「札幌の33棟で偽装 2級建築士認める 無資格業務疑いも」産経新聞2006年3月8日
「北海道が元請けも調査へ 札幌の計算書偽造問題」共同通信2006年3月8日
「<耐震偽造>「大丈夫?」住民から問い合わせ殺到 札幌」毎日新聞2006年3月8日
3月9日 強度不足のため営業休止に追い込まれたホテル経営者らでつくる「被害ホテル連絡協議会」は、総合経営研究所(総研)に対し、コンサルタント料返還などへの考え方を糺す質問状を近く提出する方針を決めた。 「総研に質問状−耐震強度偽装問題でサンホテル奈良など」奈良新聞2006年3月10日
3月9日 持ち家一戸建て住宅への住み替え(購入や建築)を希望する人の主な関心事は、欠陥住宅の事件、地盤の強度、住宅の耐震性能である。不動産ポータルサイト「HOME'S」を運営するネクストが実施した「持ち家一戸建て希望者の意識調査」で明らかになった。

家の購入や建築に当たって興味がある話題を聞いた問いでは、「欠陥住宅・手抜き工事事件(60%)」(男性:54.9%、女性:64.5%)が1位である。2位は「建築予定地・周辺の地盤の強度(52.8%)」(男性:48.0%、女性:57.0%)、3位は「住宅の耐震強度、耐震性能(50.0%)」(男性:44.5%、女性:54.9%)。2005年11月以来の構造計算書偽造事件の影響を感じさせる項目が上位を占めた。

株式会社ネクスト「持ち家一戸建て希望者の関心事は「欠陥住宅」「地盤強度」「耐震性能」」2006年3月9日
3月10日 自民党の伊藤公介元国土庁長官の資金管理団体が政治団体からの計400万円余りの献金を収支報告書に記載していなかったとして、元秘書が政治資金規正法違反(不記載など)の疑いで伊藤氏に対する告発状を東京地検に提出した。

提出したのは伊藤氏の元私設秘書で、支援者でつくる政治団体「西多摩夏冬会」(東京都あきる野市、2002年解散)の幹部だった同市の会社役員上田政晴氏。伊藤氏は2006年2月の政倫審で、この問題についての質問に「自分自身は(献金は)受け取っていない。(2002年分以外は)資料がなく、今調査している」と答弁した。

「伊藤元長官の告発状提出 「献金不記載」で元秘書」共同通信2006年3月10日
3月13日 国土交通省は、戸建て住宅やマンションの賃貸・販売に際して不動産業者に義務付けられている「重要事項説明」の対象に、アスベスト(石綿)調査と耐震診断に関する項目を追加すると発表した。同日付で宅地建物取引業法の省令を改正し、4月24日から施行する。

アスベスト使用に関する調査は全物件、耐震診断は、新耐震基準が適用される1981年以前に新築された建物が対象。業者に対し、それぞれ調査・診断の有無とその内容について、契約成立前に説明することが義務付けられる。アスベストの健康被害や耐震強度偽装問題を受け、消費者の不安が高まっていることから、同省は説明項目を増やすことにした。 

「「石綿調査」「耐震診断」を追加=不動産業者の重要事項説明に−国交省」時事通信2006年3月13日
3月14日

ヒューザー小嶋進社長の破産手続き開始

東京地裁(西謙二裁判長)は、ヒューザーの小嶋進社長について破産手続き開始を決定した。「会社の連帯保証債務の支払い能力がない」とする。破産管財人にはヒューザーと同じく瀬戸英雄弁護士を選任。今後、ヒューザーだけでなく、小嶋社長個人の資産も調査、マンション住民ら債権者への配当を行うことになる。

旧破産法上の債権者集会に当たる財産状況報告集会は、既に破産手続きが開始されたヒューザーと同じ9月13日に同地裁で開かれる。債権届け出の期限は6月30日。偽装が発覚したマンション「グランドステージ住吉」(東京都江東区)の住民3人が2月23日、申し立てていた。

ヒューザー破産管財人、対自治体訴訟を引き継ぐ

ヒューザーの破産管財人はヒューザーが18自治体に約139億円の損害賠償を求めた訴訟を当面引き継ぐ方針を明らかにした。「偽造を見逃した検査機関に責任はないのか」と語る。ヒューザーは1月30日、姉歯秀次元建築士が関与したマンションが建つ東京都や横浜市などの自治体に対し、解体や補修の費用、物件を売却できなくなった損害等の賠償を求め東京地裁に提訴。小嶋進社長は「破産後も破産管財人には訴訟を継承してほしい」と話していた。
「小嶋社長も破産手続き開始 東京地裁が決定」共同通信2006年3月14日
「小嶋社長の破産手続き開始=マンション住民が申し立て−耐震強度偽装・東京地裁」時事通信2006年3月14日
武本光政「<耐震偽造>ヒューザー小嶋元社長も破産 東京地裁が手続き」毎日新聞2006年3月14日
桐野耕一「<耐震偽造>破産管財人、ヒューザー訴訟を引き継ぐ」毎日新聞2006年3月15日
3月17日 耐震偽装問題を中心にマンション開発について考えようと、シンポジウム「これでいいのか建築・まちづくり行政」が、川崎市高津区の「てくのかわさき」で開かれた。パネルディスカッションでは、データ偽造が発覚したグランドステージ川崎大師の住民、平貢秀さんが「国や行政の補償・賠償の必要性を理解してほしい」と訴えた。まちづくり・環境運動川崎市民連絡会(小磯盟四郎事務局長)の主催。約100人が参加した。 市川明代「安全ショック:構造計算書偽造 マンションの住民「国の補償が必要」/神奈川」毎日新聞2006年3月18日
3月17日 連合北海道(渡部俊弘会長)は、耐震偽造問題の徹底調査と再発防止を道に要請した。浅沼良一建築士に発注した元請けや行政の責任も検証した上で再発防止策を確立するよう求めた。

道庁で要望書を提出した佐藤富夫事務局長は「誰がどの時点でどう関与したのか。偽造を招いた要因を掘り下げて検証してほしい」と要求。要望書では現行の建築士制度の問題点を明らかにすることなど5項目を申し入れた。道の野村昌信建設部長は「元請けの責任も明らかにし、厳正に対処する」と述べた。

丸山博「耐震計算偽造:連合北海道、道に再発防止を要請/北海道」毎日新聞200年3月18日
3月19日 札幌の耐震強度偽装問題で、構造計算書を偽造していた浅沼良一・二級建築士の元請けであった札幌市内の一級建築士事務所が、新たにデータ改ざんが分かった埼玉県内の設計事務所の男性にも構造計算を発注していたことが、分かった。二件の偽装にかかわった監督責任が改めて問われるとともに、構造設計士が下請け扱いされる建築士制度の問題が浮かび上がっている。

浅沼建築士は中高層建築の設計資格がない二級建築士で、埼玉の男性は建築士資格そのものを持っていなかった。元請けの事務所代表は何れも資格を確認していなかったことを認めた。その上で、「実績があったので頼んだ。構造計算書をすべてチェックするのは物理的に不可能」と反論した。

「札幌、埼玉の元請けは同じ 構造設計は下請け扱い」共同通信2006年3月19日
3月28日 姉歯秀次元建築士の妻が早朝、千葉県市川市富浜の駐車場で血を流しているのが見つかり、病院に運ばれたが間もなく死亡した。千葉県警行徳署は、自宅近くのマンションから飛び降り自殺したとみている。妻は体調を崩して最近入退院を繰り返しており、姉歯氏は2005年12月、妻の病気治療費が原因で偽装を始めたと証言していた。混迷を深める偽装問題で、2005年11月に建築士が自殺したのに続き、二人目の「犠牲者」が出た。

午前5時50分頃、マンション駐車場で、会社員男性が自分の車に乗ろうとしたところ、車のサンルーフが壊れ、車内で女性が血を流しているのを見つけ、管理人を通じて119番した。調べでは、妻はマンション最上階の7階廊下から手すりを乗り越えて飛び降り、車の屋根に落ちたとみられる。現場や自宅に遺書はなかった。

「姉歯元建築士の妻が自殺 マンションから飛び降りか」共同通信2006年3月28日
3月29日 耐震強度の偽装が発覚したホテルでつくる被害ホテル連絡協議会のメンバーらは、開業を指導したコンサルタント会社「総合経営研究所」(総研)を相手に、東京地裁に訴訟を起こす方針を固めた。弁護士と具体的な内容を検討した上で「なるべく早く提訴したい」とする。

総研が被害ホテル連絡協議会に対し、「当社が法的責任を負う根拠は存在しない」として経営指導料の返還などに応じる意思がないことを文書で伝えたことが判明した(2006年3月30日)。総研は「偽装など思いもよらぬこと」とし、ホテル側が求めた設計料の弁償についても「根拠は存在しません」と答えた。

「総研を提訴へ=耐震偽装で被害ホテル」時事通信2006年3月29日
3月30日 耐震データ偽装事件を受け、京都府内の建築関係団体や官公庁の労組など6団体でつくる「構造計算書偽造問題を考える会」(代表、片方信也・日本福祉大教授)は組合員らを対象に事件に関するアンケートを実施した。違法ではないがコストダウンなど何らかの理由で構造計算の不備や手抜き工事などがあった、または聞いたことがあるとの回答が20件以上あった。

同会は2005年12月に結成、記述式アンケートを2006年1月下旬〜2月中旬に実施。国交省や府、京都市、宇治市の建築関係公務員のほか建築設計事務所、建設業勤務者ら172人から回答があった。

「偽造や手抜きの強要などの体験はあるか」との問いには「構造の減額を断ったら設計料が不払いになった」(設計事務所、50代)「わざと荷重を抜くなど設計不備が出てきた」(同、30代)など直接体験を挙げた回答が4件。また建築行政にかかわる公務員からも「工期やコストを追求する業者が多いため下請けが手抜きなどを行うのでは」(40代)「鉄筋の抜き取りは聞いたことがある」(50代)。

一方、再発防止に関しては「相互チェック機能の確立」(設計事務所、20代)と「個人の倫理観」(同、30代)が多い一方、「立場は弱く、建築主の言いなりになることが多い」(同)など、設計士の地位と報酬の向上を求める指摘もあった。

同会は、結果とともに建築の理念を明記した基本法「建築法」制定の検討や確認・検査制度の根本的見直しなどを求める要請書を北側一雄国交相に郵送した。

中野彩子「耐震計算偽造:「手抜きの強要ある」4件 「考える会」がアンケート/京都」毎日新聞2006年3月30日
3月30日

姉歯建築士の耐震強度偽装物件98件に確定

姉歯元一級建築士による耐震強度偽装事件で国土交通省は最終調査結果をまとめた。姉歯元一級建築士が構造計算に関与したことが判明している物件は205件、このうち偽装が確認されたのは98件となった。57件の偽装が確認されているマンションのうち、耐震強度が50%未満の分譲マンションについては解体や建て替えなど国の公的支援策の対象となっている。

姉歯元建築士が関与していないケースでも偽装が発覚するなど事態は深刻化しており、潜在的な偽装物件が掘り起こされるには、なお相当の時間を要するとみられる。今後、公的支援の対象が増える可能性もはらんでおり、問題の終息には程遠い状況だ。

「姉歯偽装98件確定 国交省、実態解明なお時間」産経新聞2006年3月31日

2006年4月

日付 出来事 典拠
4月1日 国土交通省は、耐震性などに問題のあるマンションの建て替えと大規模修繕を総合的に進めるため、「マンション政策室」を設置する。マンションのストックは466万戸、そのうち旧耐震基準のものは100万戸あるとされており、建て替えや大規模修繕が必要となる。 「4月に「マンション政策室」を設置 国交省」住宅新報2006年3月27日
4月3日

雨漏り被害でマンション住民、大豊建設を提訴

徳島市内にある分譲マンション「コスモグランディ大松」の住民は、設計と施工を担当した大豊建設(東京都中央区)に補修費や慰謝料など合わせて約1億8800万円の支払いを求める訴訟を徳島地裁に起こした。同マンションはSRC造の12階建てで、95年12月に完成。戸数は74戸で、そのうち55戸の住民が、床や廊下などに数多くの亀裂が入り、雨漏りの被害を受けているとする。

訴状によると、55戸の住居では、和室や洋室、バルコニーの床や天井に多数の亀裂が生じ、大半の住居で漏水が生じていた。例えば、20戸の和室で畳を持ち上げて床版を確認したところ、16戸で亀裂が発生していた。大半のひび割れの幅は0.3mmを超えており、幅1mmのひび割れもあった。バルコニー側の壁や柱、梁でも多数の亀裂が確認できた。住民らはこれらのひび割れの原因として、「コンクリート打設時の養生期間が不十分だった影響が大きい」と主張している。

共用廊下の壁や柱、梁にも多数の亀裂が生じていた。2階から12階の共用廊下の壁だけで123本の亀裂が生じており、12階には39本の亀裂が集中していた。さらに、共用廊下の床と天井スラブでは200本を超える亀裂と白華(エフロレッセンス)が見つかった。白華とは、コンクリート内部の水酸化カルシウムが水によってコンクリート表面に浸み出して結晶化する現象。

共用廊下の床に生じていた亀裂で水溜試験を実施したところ、ひび割れは下の階まで貫通していたことが判明した。10階の共用廊下に面して設置されているパイプスペース内では、多数のジャンカも認められた。ジャンカはコンクリート構造物において、粗骨材が多く集まってできた、空隙の多い不良部分を指す。発生原因としては材料分離、締め固め不足、型枠からのセメントペースト漏れがなどがあげられる。断面性能の低下、コンクリートの中性化、鋼材の腐食の促進などの影響を及ぼす。

屋上のアスファルト防水層の継ぎ目にも亀裂が生じており、最上階の12階の住居では、和室とリビングの天井から漏水していた。「台風などの際にバルコニー側のサッシのレール部分から雨水があふれ出し、室内に浸透した雨水が床の亀裂を伝わって下階への漏水を招いた」と主張する。

住民らは耐震性能についての欠陥も指摘した。同マンションでは、構造図通りに構造スリットが施工されていなかった。構造スリットとは、地震時に柱のせん断破壊を防ぐために、柱と壁の縁を切る部材。このほか、南西方向の地盤が沈下して建物と地上に設置している脚踏み台との縁が切れている欠陥も見つかった。

浅野祐一「雨漏りなどの被害に対する補償を求めて大豊建設を提訴」ケンプラッツ2006年4月12日
加藤明子「雨漏り被害:マンション住民、東京の建設会社を提訴 1億8000万円払え /徳島」毎日新聞2006年4月4日
4月4日

イーホームズ買収

ベンチャーキャピタル大手のSBIホールディングスは、同社と最高経営責任者CEOの北尾吉孝氏がイーホームズの発行済み株式の約49%を取得すると発表した。同社の藤田東吾社長らから1万0678株を10日付で取得する。取得価格は不明。SBIが40%、北尾氏が9%を取得する。イーホームズは姉歯建築設計事務所の構造計算書の耐震強度偽装問題で多くの偽装物件を見逃した指定確認検査機関である。

SBIホールディングスにとってイメージダウンは避けられない。公式発表とは裏腹にいずれ売り逃げるつもりだろう。短期の利益を上げるためだけの行動だろう。イーホームズのような欠陥企業に投資する程、資金があまっているならば偽装物件の被害者救済に使うべきだろう。

「<イーホームズ>SBIホールディングスが株式5割取得」毎日新聞2006年4月4日
「イーホームズ株の49%取得=不動産事業を強化−SBI」時事通信2006年4月4日
「イーホームズ株49%を取得 SBIが筆頭株主に」共同通信2006年4月4日
4月4日 札幌市のマンションの耐震データ偽造問題で、浅沼良一・二級建築士がかかわった物件は新たに6件あったことが、道の調査で分かった。この結果、浅沼建築士が関与した物件は合計118件となった。新たな物件が見つかったことで、浅沼建築士への行政処分はさらに時間がかかる見込みとなった。 「<耐震偽造>浅沼2級建築士物件が新たに6件 計118件」毎日新聞2006年4月4日
4月6日 耐震強度偽装事件をめぐり、行政側の対応を検証してきた北側一雄国土交通相の私的諮問機関「緊急調査委員会」(座長・巽和夫京大名誉教授)は、住宅を消耗品とする意識の改革を求め、建築確認制度見直しの提言を盛り込んだ最終報告書をまとめ、提出した。

政治家介入をめぐる解明が期待されたが、2行で触れただけだった。問題の公表時期などについて、「政治家からの働きかけでゆがめられたことをうかがわせるような不自然な点は認められなかった」とだけ記述。具体的な検証内容は明らかにしなかった。

建築確認事務を民間機関に開放するよう建築基準法が改正された1998年当時、「チェックが甘くなるのでは」などと問題が指摘されていたにもかかわらず、現在まで改善策が取られてこなかったが、この行政の「不作為」についても最終報告は具体的には言及していない。

「今回の委員会は、巽和夫京大名誉教授を座長に、ジャーナリストや弁護士らが名前を連ねている。その調査能力に期待した人にとっては、拍子抜けする中身だろう」(「耐震偽装報告/再発防止に生かさないと」神戸新聞2006年4月9日)。

一方、危険性の高い建物の名称などの公表に関し、「不確実性を残したまま発表して招きうる混乱より、発表を控えることで混乱が広がることもある弊害の方がはるかに大きいことを教訓にすべき」と指摘。行政に対し、積極的な情報開示を促す見解を示した。

「「住宅は消耗品」、意識改革を=調査委が最終報告−耐震偽装」時事通信2006年4月6日
「耐震偽装の緊急調査委、最終報告は行政責任に言及せず」読売新聞2006年4月7日
4月7日 長崎県大村市で2006年1月、認知症高齢者グループホーム「やすらぎの里さくら館」が全焼し、入居者7人が死亡した問題で、この建物に構造的な欠陥がある疑いが「日本グループホーム学会」(事務局・東京都小平市)の検証で浮上した。建物は、耐震偽造事件で捜査対象になっている総合経営研究所(総研、東京都千代田区)と、木村建設(熊本県八代市、破産手続き中)系列のコンビで建築。外壁のコンクリートが空洞だらけで鉄筋がむき出しになっており、建築基準法違反の可能性もある。 「<グループホーム全焼>建物に構造的な欠陥が浮上 長崎」毎日新聞2006年4月7日
4月11日

都市再生機構、大量紛失で構造計算書の保管状況調査

独立行政法人「都市再生機構」(旧都市基盤整備公団、横浜市中区)でマンションの構造計算書が紛失していた問題で、同機構は本社や全国9支社の事務所、倉庫など約100カ所で構造計算書の保管状況の実態調査に乗り出した。文書管理規定違反が常態化していたとみられ、月内にも調査結果を発表する方針。耐震データ偽造事件発覚以降、少なくとも154棟分の紛失が確認されている。

大量紛失は、耐震データ偽造事件発覚後、2005年11月から2006年2月にかけて同機構の分譲マンション136団地(939棟)の管理組合が、構造計算書の提出を要求して明らかになった。うち533棟は計算書の存在を確認したが、154棟は紛失が確定。残る252棟で調査を継続中だ。

同機構の内規によると、構造計算書は2004年6月までは永年保存が義務付けられ、それ以降は最長40年の保存期間が定められた。文書管理規定でも、常に所在を明らかにして、ファイル名や保存場所を管理簿に記し、整備・管理するよう定めている。しかし実際には、2006年1月、東日本支社が東京都板橋区の倉庫に保管していた構造計算書約200冊が水浸しになっているのを職員が発見するなど管理は杜撰だった。この倉庫には2005年6月、別の書類を探しに職員が訪れて以来、誰も出入りしていなかったといい、昨夏の集中豪雨で浸水したらしい。

構造計算書などは建築主が保管するとともに、2001年8月施行のマンション管理適正化法で、管理組合へも引き渡すことが義務付けられた。しかし、同法以前の構造計算書について、機構は全体状況を把握していないのが実情という。これまでの調査によると、職員が個々の判断で保存していたため、後任への引き継ぎが徹底されておらず、保管場所の特定がしにくい状況になっているという。

同機構カスタマーコミュニケーション室は「構造計算書を永年保存としていたのは、過去の技術を継承するためだった。耐震データ偽造事件が起こる前は、住民側から提出要求もなく、行方不明になっていることに気付かなかった」と説明している。

吉永磨美「<都市再生機構>構造計算書の保管状況調査 大量紛失で」毎日新聞2006年4月11日
4月12日 国土交通省は、耐震強度偽装問題で強度が基準の15%しかなかった「グランドステージ藤沢」の解体工事が20日ごろ始まるとの見通しを明らかにした。国の建て替え支援策の対象となっている分譲マンション11件のうち解体工事が始まるのは初めて。再建計画はまだまとまっていないため、当面は4階以上を対象に解体を進める。
4月13日 奈良市三条本町の「サンホテル奈良」(休業中)のオーナー会社「増富」(奈良市)が、工事代金など総額約7億1300万円の損害賠償を求めた訴訟の第一回口頭弁論が13日、奈良地裁(坂倉充信裁判長)で開かれた。被告は開業指導等に携わったコンサルタント会社「総合経営研究所(総研)」(東京都千代田区)と内河建所長、建築確認を行った民間指定確認検査機関「イーホームズ」(東京都新宿区)等である。

訴えによると、オーナーの不動産会社は2004年8月ごろ、総研からホテル建設を勧められた。サンホテル奈良は2005年11月、JR奈良駅前に開業したが、直後に建物の耐震強度不足が判明し、休業に追い込まれた。ホテル側は「耐震強度偽装は、総研の指示によるもの。また、イーホームズは必要な耐震強度を備えていないことを見抜く義務に違反した」と主張する。

これに対し被告側は「耐震強度が偽装された事実を知らなかった」「何ら過失はない」とし、請求の棄却を求め全面的に争う姿勢を示した。総研側は「全く知らないところで耐震強度が偽装され、鉄筋量が不当に減らされた」とし、イーホームズ側も「建築確認申請をした原告側に最大の責任がある」と反論した。

総合経営研究所、偽装認識し建設決定か

耐震強度偽装事件で、合同捜査本部は経営コンサルタント会社「総合経営研究所」(総研、東京都千代田区)が開業指導し、姉歯秀次元建築士が構造計算書を偽造した奈良市のビジネスホテル「サンホテル奈良」を現場検証した。同ホテルはアトラス設計の渡辺朋幸代表が2004年3月、姉歯元建築士による構造計算の問題を総研側に指摘した後に建設が決まった物件である。

合同捜査本部は、指摘を受けた総研が、法令違反の可能性を認識しながら低コスト化を優先したため耐震強度が不足した疑いもあるとみて捜査している。総研には工事代金の前倒し支払いを建築主のオーナーに求め、問題が公表される前に代金全額を回収した可能性も指摘されている。

高瀬浩平「<耐震偽造>サンホテル奈良の損賠初弁論、総研側は争う構え」毎日新聞2006年4月14日
「「偽装事実知らず過失ない」−「サンホテル奈良」耐震強度偽装問題」奈良新聞2006年4月14日
「総研関与のホテルを検証 偽装認識し建設決定か」共同通信2006年4月13日
4月13日

国土交通省、マンション売買価格を公開

国土交通省は、土地やマンションの売買価格を27日からホームページで公開すると発表した。価格情報はこれまで不動産業者に限って共有される例などが多かったが、国土交通省は不動産の登記簿を元に購入者から情報を集めて四半期毎に更新する。個人情報保護への配慮から慎重に議論してきたが、番地や買い主の名前を伏せる形での公開を決めた。

購入を希望する土地周辺の取引価格を誰でも知ることができるようにすることで、市場の透明性を高めるのが狙い。一般消費者向けの情報を透明にし、取引を円滑に進める。取引価格の公開には、実態にそぐわないバブル的な値付けを防ぎ、不動産鑑定評価の信頼性を高めるといった利点もある。

対象は東京23区、横浜市、名古屋市、大阪市、京都市などを中心とした約1万8000件。2006年度中に全国に広げる予定である。具体的には、登記簿情報を元に、対象地域の不動産購入者全員に調査票を送り、購入価格を記載してもらう。回収した調査票は各地域の不動産鑑定士が実際の物件を調査した上で、誤記や特殊要因がないかなどを精査する。調査の精度に問題は残るが、売買当事者にとって、一定の参考資料にはなるだろう。

「【調査】不動産の取引価格約1万8000件を4月27日から公開、国交省」日経不動産マーケット情報2006年4月14日
4月14日 耐震強度偽装事件で警視庁と千葉、神奈川両県警の合同捜査本部は、建築基準法や建築士法違反容疑などで、構造計算書を偽造した千葉県市川市の姉歯秀次元建築士と建築確認申請や施工を担当した建設会社「木村建設」(熊本県八代市、破産)元幹部らを、月内に逮捕する方針を固めた。

合同捜査本部は立件対象を10人程度に絞り込み、検察当局などとの最終調整を急いでいる。2005年12月の一斉捜索以来、約4カ月。警察、検察の動きがにわかに慌しくなってきた。多くの被害住民を出した事件はヤマ場を迎える。

マンション販売「ヒューザー」(東京都大田区、破産)については、小嶋進社長に出頭要請し、来週にも任意で事情聴取。強度不足を認識しながらマンションを販売したとする詐欺と宅地建物取引業法違反容疑の立件に向け、他の幹部からも事情を聴き、早急に詰めの捜査を進める。

「「住」の安全、安心へとつなげるには、「姉歯物件」が生み出された時点に返り、背景、原因を徹底的に追う必要がある」(「【耐震強度偽装】姉歯物件なぜ許した」高知新聞2006年4月18日)。

「耐震偽装、月内に逮捕 姉歯氏と「木村」元幹部ら」共同通信2006年4月14日
4月15日

偽装マンション住民から札幌市に批判相次ぐ

浅沼良一・二級建築士による札幌市のマンション耐震データ偽造問題で、耐震強度が国の基準に満たないマンションの住民に対する初の説明会が夜、同市中央区であった。市建築指導部と分譲した太平洋興発(東京都中央区)に対し、資産価値が下がったことや市が偽造を見抜けなかったことへの批判が相次ぎ、住民の怒りは収まらなかった。

説明会は非公開。市が国の基準に満たないと認定した4棟のうちの1棟(30戸)が対象で、23戸の30人が出席した。同市などによると、市と同社は偽造を防げなかったことを陳謝。耐震強度が国の基準の70%余りしかなく、震度6弱の地震までしか保証されないことなどを説明した。今後、別の方法で耐震強度を計算し、それでも基準を下回った場合は耐震補強工事が必要なことを周知した。

住民は「市にペナルティーがなく、責任を住民が負うのか」「資産価値が下落したのは明白なのに従来通りの固定資産税の請求がきた」「今後の安全を担保してほしい」などと強い口調で市に迫った。

同社は今後の対策の費用を負担する意向をこれまで示していたが、この日は「誠意をもって対応する」との回答にとどまった。住民からは「市が直しなさいと言えばいい。はっきりして下さい」との声も飛んだ。終了後、同市の高崎博・建築調整担当部長は「住民の感情は厳しく、納得していないだろう」と述べた。16日も別のマンション2棟の住民説明会が市内である。

「<耐震偽造>マンション住民に初の説明会、批判相次ぐ 札幌」毎日新聞2006年4月16日
4月16日

姉歯秀次元建築士に名義貸し疑惑

耐震強度偽装事件で、構造計算書を偽造していた姉歯秀次元建築士が少なくとも6年前から、マンションやホテルの設計資格がない建築デザイナーの秋葉三喜雄・秋葉設計代表(千葉県市川市)に、一級建築士の自分の名義を貸していたことが、関係者の話で分かった。姉歯元建築士は報酬等として総額で1000万円超を受け取っていたとみられる。

デザイナーは、千葉県船橋市の不動産会社「サン中央ホーム」が開発、施工した船橋市内のマンション三棟の契約を結び、設計の全体を仕切ったが、実際に「建築基準法上の設計者(元請け設計者)」として、船橋市に届けられていたのは姉歯氏であった。

建築士法では一級建築士の資格がなければ、一定の高さや延べ面積以上の建物の設計を禁じている。資格がないデザイナーは姉歯氏に依頼し、名義を借りたという。建築デザイナーは取材に「違法行為とは思っていなかった。姉歯元建築士と組んだ仕事はホテルやマンションなど約90棟」と話す。

調べや関係者によると、デザイナーは姉歯氏と約10年前に知り合い、6年ほど前からサン中央ホームの仕事を請け負うようになった。姉歯氏のデザイナーへの名義貸しは約15件の物件で行われ、姉歯氏は報酬として、設計料の二割を受領。総額は1000万円以上にのぼる。判明している約1000万円のうち3分の2が構造計算に対する謝礼で、残る3分の1に当たる300万円程度が「監修料」名目で支払われていた(「名義貸し見返り3百万 姉歯氏、14棟に関与」共同通信2006年4月19日)。

警視庁などの合同捜査本部は、姉歯元建築士の名義貸しは長年にわたり常態化していたと判断している。千葉県内のマンション建設時の建築確認申請に絡む建築士法違反容疑で、月内に姉歯元建築士を逮捕、建築デザイナーについても同法違反容疑で立件する方針。名義貸しの全容解明に向けて、詰めの捜査を急いでいる。

姉歯秀次元建築士は、名義を貸して継続的に謝礼を受け取っていた千葉県の建築設計業者に対し、建築確認の申請先をイーホームズに変更するよう要求していた。合同捜査本部は、姉歯氏が耐震強度不足の物件の確認申請をパスさせるため、同社を利用したとみて追及する方針。

「6年前から名義貸し 建築デザイナーに姉歯元建築士」共同通信2006年4月17日
「名義貸し、報酬1000万円超か=偽装マンションなど約15件−姉歯元建築士」時事通信2006年4月17日
「<耐震偽造>姉歯元建築士が業者に検査機関の変更求める」毎日新聞2006年4月21日
4月17日

原爆ドームを見下ろす高層マンションに反対運動

核兵器の悲惨さを後世に伝える世界遺産・原爆ドーム(広島市中区)が景観問題で揺れている。ドーム南東約100メートルに、14階建ての高層マンション(高さ44メートル)の建設が進んでいるためである。施工主は三井不動産株式会社広島支店である。

完成すればドーム(高さ25メートル)を見下ろす形になる。被爆者らは「平和を祈る場にそぐわず、ドームの価値を下げる」などとして、高さを予定より低くするよう建設変更を求める署名活動を始めた。

平和公園・原爆ドームを中心とする聖域は、世界中の平和を願う人々が多く訪問する一帯であり、この地球上で核兵器を使うことの愚かさを告発している地域である。この聖域のバッファーゾーン内に高層マンションを新築し、見下ろすことは、原爆で心ならずも殺された20万を超す死者を冒涜することにつながる。

「<原爆ドーム>近くに高層住宅、被爆者ら変更求め署名活動」毎日新聞2006年4月17日
4月17日

木村建設に粉飾決算疑惑

耐震強度偽装事件で警視庁などの合同捜査本部は、姉歯秀次元建築士が構造計算書を偽造したホテルとマンションの半数以上を施工した木村建設(熊本県八代市、破産)の木村盛好社長や篠塚明元東京支店長ら10人前後に対し、事情聴取のため出頭を要請した。一斉聴取する。合同捜査本部は建設業法違反(虚偽記載)容疑での立件に向け、木村社長らに詳しい説明を求める。容疑が固まり次第、月内に逮捕する方針である。

木村建設には粉飾した決算書類を国土交通省に提出していた疑いが浮上している。国や県に経営事項審査(経審)の申請を行う際、業績を良く見せかけるために、粉飾した決算書類を提出した疑いが持たれている。未完成の工事の売り上げを前倒しで決算に盛り込むなどの手口で数字を操作した。

経審は公共工事を受注しようとする業者に義務付けられ、経営状況や技術力を総合的に判断した評点は、入札参加資格の格付けにも使われる。木村建設は、有利な入札参加資格を得るために、提出書類を粉飾したとみられる。決算書類を粉飾して経営状況を良く見せかけ、工事を受注しやすくする狙いがあったとみられる。建設業法では、公共工事を請け負う業者は経営状況や技術力の審査を受けなければならないとしており、虚偽報告には「50万円以下の罰金」が科せられる。

捜査本部は、2005年12月下旬に耐震データ事件の関係先を一斉に捜索。決算書類の粉飾は、捜索で得た資料から浮かんだ。粉飾は経営陣の意向だった可能性が高く、捜査本部は木村社長や篠塚明・元東京支店長らに対する事情聴取を踏まえて経緯を確認する。捜査幹部は「容疑が堅いものから手掛けていく。詐欺容疑については長期化するだろう」と見通しを語る。

「偽装物件には、木村建設などの施工会社をはじめ、建築主や経営コンサルタント、確認検査機関など多くがかかわっていた。木村建設を突破口に、偽装の全容に迫ることが課題になる」(「社説=耐震偽装聴取 不正の解明を速やかに」信濃毎日新聞2006年4月18日)。

木村建設、粉飾決算を認める

木村建設は破産申し立て後、破産管財人の弁護士に対し、利益を数億円水増ししていた粉飾決算を認めていた(「木村建設、粉飾決算認める…利益数億円水増し」読売新聞2006年4月19日)。未完成の建物工事の代金計上を偽るなどして、利益を水増ししていた粉飾の手口も明かしたという。

同社側は粉飾決算の結果、法人税を納めすぎたとして、税の還付を求める手続きを進めている。還付が実現すれば、債権者への配当に充てるという。関係者によると、木村建設幹部が破産管財人に対して粉飾決算を認めたのは、合同捜査本部が2005年12月に行った家宅捜索後である。

同社の決算報告書によると、2003年6月期の経常利益は約2500万円、税引き後利益は約1100万円。2004年同期はそれぞれ約2億5900万円、約4800万円、2005年同期は約2億6100万円、約6700万円で、大幅な伸びを示していた。しかし同社幹部は、これらの決算は利益を大幅に水増ししたものであったことを明らかにした。

ヒューザー小嶋進社長に詐欺の可能性

合同捜査本部はヒューザーの小嶋進社長に対し、18日に任意の事情聴取に応じるよう要請した。小嶋社長は姉歯秀次元建築士による構造計算書のデータ偽造を知った後、マンションの引き渡しを指示した疑いが指摘されている。捜査本部は、詐欺や宅地建物取引業法違反などの容疑を視野に、小嶋社長から詳しい説明を求める方針。

問題が公表される前の2005年10月27日、小嶋社長は関係者を集めてデータ偽造への対応を協議。この後、販売子会社役員からグランドステージ藤沢の引き渡しをどうするかと問われ「問題ない」と引き渡しを指示したとされる。この時点で、小嶋社長はすでにグランドステージ藤沢のデータ偽造を知っていた可能性がある。

非破壊検査

「非破壊検査技術が普及することで、結果として手抜き工事や耐震偽装の抑止力となり、使用者に安心感を提供できることにつながるのではないか」(上原太郎「耐震偽装問題、官を待たず民間レベルの動き活発化」日経ビジネス2006年4月17日号11頁)。

「建築の信頼回復には国の動きをいち早く先取りする民間の知恵が不可欠」(篠原匠「ファンド、強度チェックで自己防衛」日経ビジネス2006年4月17日号11頁)。

「木村建設社長らに出頭要請 耐震偽装で警視庁など」共同通信2006年4月17日
「<耐震偽造>木村建設社長ら17日にも一斉聴取」毎日新聞2006年4月17日
「偽装物件名、自ら言及=対策会議で、翌日代金受領−小嶋社長、詐欺の可能性」時事通信2006年4月15日
「<耐震偽造>木村建設、粉飾決算書提出か 社長ら聴取へ」毎日新聞2006年4月16日
4月17日

偽装ホテル「アルクイン黒崎」オーナー、日本ERIを提訴

耐震強度が偽装され、営業休止を余儀なくされた北九州市八幡西区のビジネスホテル「アルクイン黒崎」を経営する菅原不動産(菅原康夫社長)は、週内にも同ホテルの耐震強度を検査した民間の指定確認検査機関「日本ERI」(東京都)を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こす考えを明らかにした。

同ホテルは、姉歯秀次元建築士が構造計算書を改ざんし、木村建設(熊本県八代市、破産)が施工した。耐震強度が一部で87%しかなく、市の営業自粛要請を受けて2005年12月10日から営業を休止していた。18日から営業を再開するが、改装工事費や収入減などで約2億4000万円の損害を受けたという。

「北九州のホテル、「日本ERI」に損害賠償請求へ」読売新聞2006年4月18日
4月19日

イーホームズに架空増資疑惑

イーホームズ(東京都新宿区、藤田東吾社長)が2001年に確認検査機関の指定を国から受ける直前、増資したように装い、虚偽の登記をした疑いのあることが、警視庁など合同捜査本部の調べで分かった。イーホームズは構造計算書の偽装を見抜けなかっただけでなく、自らの資本を偽装していた。藤田東吾社長の正義感も偽装であった。社名の実態は「良いホームズ」ではなく、「違法ムズ」であった。

法人登記簿によると、イーホームズは1999年12月に資本金1000万円で設立。2001年4月に約1300万円の増資を実施して資本金を約2300万円にした。同年10月には資本金を倍以上の総額約5000万円にまで増やした。約2700万円を増資したとする。この増資は、一時的に第三者から借りて調達したもので、登記後、引き出していた可能性がある。

イーホームズは架空増資をしたとされる直前に増資額と同額を一時的に借り入れていた。借入金は増資直後に返済されている。登記の際、イーホームズ名義の銀行口座に「株式払込金」を入金し、銀行から発行された「保管証明書」を増資の根拠としていた。しかし、合同捜査本部の調べで、この資金は入金直前に第三者から借り、証明書の発行直後に引き出され返済されていたことが判明した。

イーホームズ側は増資分と同額の資金が増資直後に流出した事実について、藤田東吾社長が当時経営していた東京都新宿区内の造園会社に融資したとしている。藤田社長は「2001年に2700万円増資して登記後、同額を自分が経営していた造園会社に貸し付けた」と周囲に説明していた(「増資後に同額貸し付け 藤田社長経営の別会社に」共同通信2006年4月20日)。一方、合同捜査本部はこの資金が増資したように装うために一時的に借りた「みせ金」だったとみている。増資の時期に増資と同額を自ら経営する別会社に「貸し付けた」とする不透明な金の流れの解明が必須である。

イーホームズ、見せ金を迂回返済

イーホームズが2001年10月、藤田東吾社長が同社元監査役の司法書士らから借りた資金で約2700万円の増資をした直後、同額が関係の深い造園会社を迂回して司法書士らに返済させた。藤田社長が国交省の指定を受けるため、増資資金の還流工作を主導したとみられる。

神奈川県在住の司法書士が約2700万円の増資資金のうち、2400万円を貸した。25日、読売新聞の取材に応じ、「造園会社の運転資金が必要だと言われて融資した」「1か月後に藤田社長から返してもらったが、増資に使うなら貸さなかった」と証言した(「架空増資疑惑、“見せ金”2700万を迂回返済」読売新聞2006年4月26日)。

イーホームズは2001年10月、藤田社長が新たに約2700万円分の同社株を購入する形で増資を実施し、資本金を約5000万円とした。藤田社長はこの資金を司法書士らから借りて調達したが、その直後、イーホームズは同額の約2700万円を、藤田社長が当時、代表取締役を務めていた新宿区内の造園会社に貸し付けていた。

ところが、捜査本部が2005年12月、同社を捜索して押収した資料を分析した結果、この貸付金が約1か月の間に数回に分けて藤田社長の口座に移され、その直後、司法書士らに渡っていたことが判明した。捜査本部では、藤田社長が、造園会社に資金を貸し付けたように装って、架空増資の目的で一時的に借り入れた「見せ金」を、司法書士らに返却していたとみている。

検査機関の要件

指定確認検査機関は、建築基準法に基づき国に登記簿などを提出して経営基盤などを証明する必要がある。建築基準法に基づく国土交通省の局長通達では、民間の指定確認検査機関には、資本金などの財務基盤を3000万円以上にするよう義務付けている。

更に資本金等を基準に指定確認検査機関の検査対象範囲が定められている。資本金額等により、指定後に検査をすることが認められる建築物の規模が決められている。床面積が2000〜1万平方メートルの建物の確認検査業務を行う場合は5000万円以上、1万平方メートル超の場合は1億円以上にするよう求めている。

これに基づき、イーホームズは資本金が約5000万円とする登記事項証明書を国交省に提出し、2001年12月に確認検査機関の指定を受けた。イーホームズは増資の結果、床面積1万平方メートル以内までの物件を検査することが認められた。より多くの物件の検査ができるように架空増資(見せ金増資)した疑いがある。イーホームズが財務体力に見合わない過剰な数の検査を請け負うことになったことが杜撰な検査につながり、偽装を見抜けなかった原因となった可能性がある。

捜査経緯

合同捜査本部は2005年12月、姉歯元建築士による建築基準法違反容疑の関連先としてイーホームズ本社を捜索。押収資料を分析したところ、資本金が約5000万円になった2001年10月の増資などに不審点があることを突き止めた。この増資は実体がなかった疑いが出てきたという。法務局に対し虚偽の登記申請を行った疑いがあるとみている。捜査本部は、同社がマンションなど大規模物件の検査を請け負うため、架空増資をした疑いがあるとみて、公正証書原本不実記載容疑で本格捜査に乗り出す。今後、藤田東吾社長らから事情を聴く。

耐震偽装を罰する建築基準法は、確認検査機関の検査ミスを処罰する規定がないが、偽装を見抜けなかった点について「過失はない」と強弁していたイーホームズに確認検査の関連で初めて違法性が浮かんだ。刑法の公正証書原本不実記載罪は「懲役5年以下または罰金50万円以下」の罰則を定めている。

イーホームズ、指定取消しへ

架空増資疑惑が浮上した民間指定確認検査機関「イーホームズ」について、国土交通省は、建築基準法が規定する「不正の手段で(検査機関の)指定を受けた」ケースに該当する疑いが強いとして、指定取り消しに向けた手続きに入ることを決めた(2006年4月20日)。近く、藤田東吾社長らから事情聴取ら幹部から事情を聴く。姉歯秀次元建築士の偽装を見逃したずさんな業務と合わせ、来月にも同社を処分する方針。

国土交通省の調べによると、イーホームズの確認検査員十数人が、姉歯秀次元建築士の偽装を見逃していた。同省は5月の連休明けから検査員らの聴取を開始、建築基準法に基づき資格取り消しなどの処分を行う方針を固めた。

イーホームズは姉歯秀次元建築士による構造計算書の偽造を見逃していた民間の指定確認検査機関である。イーホームズは、姉歯元建築士による偽装物件計98件のうち、37件の建築確認を下ろした。これらの中には一階から最上階まで柱や梁の太さが同じという異常な構造だったり、構造計算書と構造詳細図の数値が食い違っていたりしたケースがあったが同社は完全に見逃していた。偽装を見抜けなかった審査に、一級建築士の検査員ら10人以上がかかわっていたことが立ち入り検査で判明している。大半が地方自治体OBである。

「<耐震偽造>イーホームズ、虚偽増資の疑い 指定得るため」毎日新聞2006年4月20日
「イーホームズ強制捜査へ 検査機関指定直前 架空増資の疑い」産経新聞2006年4月20日
「イーホームズに架空増資疑惑、警視庁が捜査へ」読売新聞2006年4月20日
「イーホームズ架空増資か=確認検査機関指定前−公正証書不実記載の疑い・捜査本部」時事通信2006年4月20日
「イーホームズが架空増資か 指定直前に資本金倍増」共同通信2006年4月19日
「イーホームズ「指定」来月にも取り消し、増資疑惑で」読売新聞2006年4月20日
「<耐震偽造>イーホームズの虚偽増資疑惑で社長らを聴取へ」毎日新聞2006年4月21日
「偽装見逃し、十数人=自治体OB検査員ら近く聴取−イーホームズ処分へ・国交省」時事通信2006年4月21日
「【耐震偽装】借金で増資装う? イーホームズ 藤田社長を聴取へ」産経新聞2006年4月21日
4月19日

消費者の98.6%が「欠陥住宅・耐震偽装物件はもっとある」と回答

ユナイテッドルームズが不動産会社の情報開示についてのアンケート調査を発表した。耐震強度偽造問題にあったような、欠陥住宅・耐震偽装物件がまだ隠されていると考える人が98.6%に達することがわかった。住宅の安全性には根強い不安があるという。

質問は「欠陥住宅・耐震偽造問題を受け、他にもそういった物件が隠されていると思うか」で、これに対し、「とてもそう思う」が68.3%、「どちらかといえばそう思う」が28.5%で、合わせて98.6%に達した。

また、「不動産会社が公開する情報は少ないと思うか」という質問には、「とてもそう思う」が36.3%、「どちらかといえばそう思う」が49.5%で、計85.8%が情報開示が不十分であると感じていた。

開示すべきだと思う情報は、「第3社機関・公的機関からの物件の性能評価」「設計図書・構造計算書の設置・閲覧・解説本の作成」「建設現場の見学会・建設現場の映像や画像」が上位で、「たとえ内容の詳細を理解することは難しくても、物件に対する安心感を抱かせる情報を求めている」という(同社)。

「消費者は、建物の構造や住宅の安全性について十分な情報を持っているとは言いがたい。消費者がそうした情報をきちんと吟味できれば、危険な住宅の価格は下がるため、販売・施工会社が利益を得るためには、安全性の高い住宅を建てなければならないと考えるようになる」(山崎福寿「保険活用と情報開示急げ」読売新聞2006年4月27日)。

鴨沢浅葱「「欠陥住宅・耐震偽装物件はもっとある」と思う人が約99%」nikkeibp.jp 2006年4月20日
4月20日

SBIホールディングス、イーホームズ株売却

総合金融サービス会社のSBIホールディングスは、発行済み株式の40%を保有する民間の「イーホームズ」の株式について、北尾吉孝最高経営責任者(CEO)に買い戻し条件付きで譲渡すると発表した。

譲渡額は公表していないが、「取得額と同額」とする。当面は、北尾CEOがイーホームズの49%を保有する筆頭株主となる。イーホームズに架空増資の疑いが浮上したことを受けた措置で、SBIは「イーホームズが指定確認検査機関の免許をはく奪された場合などのリスクを考慮した」と説明している。

20日の東京株式市場で、SBI(東証一部)の株価は一時、前日終値比1700円安の6万600円まで下落した。午前の終値は同700円安の61600円だった。

「イーホームズ株、SBIが最高経営者・北尾氏に譲渡へ」読売新聞2006年4月20日
「<SBIホールディングス>イーホームズ株、北尾氏に譲渡」毎日新聞2006年4月20日
4月20日

三菱地所が構造計算を理由に販売中止

三菱地所は、札幌市中央区で建設中の分譲マンション「パークハウス円山桜スクエア」について販売を中止し、既に契約済みの入居予定者に対し、契約解除を申し入れたと発表した。販売中止の理由について、「構造について自社で検証したところ、構造計算の考え方で社内基準に合わない部分があり、総合的に判断した」とする(広報部)。

三菱地所によると、このマンションは総戸数20戸で、地下1階・地上11階建てのRC造。設計はアトリエジーセブン(札幌市)、施工は東亜建設工業が担当していた。日本ERIが2005年4月に建築確認を下ろしている。2006年7月に引き渡す予定であった。

札幌の耐震強度偽装問題で、販売を中止するのは住友不動産に次いで2社目。住友物件で耐震データの改ざんを認めた埼玉県内の設計事務所に勤める無資格の男性が三菱物件も構造計算していた。

三菱地所は一連の構造計算書偽造事件を受け、1999年5月以降に自社が手がけた分譲マンションのうち、民間の指定確認検査機関が建築確認を下ろした約210棟のマンションについて、社内で構造計算を再検証している。このマンションについては、社内基準に合わない疑義が生じたため、日本ERIに構造計算の検証を依頼。3月に建築基準法上は問題がないとの回答を得たという。

詳細な再検査は継続中だ。すでに売買契約を結んだ6戸については今年7月下旬に引き渡す予定だったが、対応が間に合わないと判断。4月15日から契約解除を申し入れている。

東京建物らが構造計算を理由に販売中止

新日鉄都市開発と東京建物が、札幌市西区で建設中の分譲マンション「デュオーレ山の手」の販売を中止し、入居予定者との契約解除を申し入れていた。入居予定者には契約を解除するよう申し入れている。東京建物は安全性の再検証に時間がかかるためと説明する。新日鉄都市開発は「契約者に説明が終わるまで販売中止の理由は公表できない」としている。 同マンションは地上15階、地下1階建てで、総戸数60戸。2006年12月に入居予定だった。住友不動産の物件などで耐震データの改ざんを認めた埼玉県内の設計事務所に勤める無資格の男性が構造計算し、民間確認検査機関の日本ERIが2005年7月に建築確認していた。両社は姉歯秀次・元1級建築士による構造計算書の偽造問題を受け、安全性などの確認作業を実施している。 札幌市内では、三菱地所や住友不動産が、埼玉県内の同じ設計業者が手がけていたマンションの販売を中止している。
「三菱地所が販売中止 札幌耐震偽装で2社目」共同通信2006年4月20日
「「社内基準に合わない」、三菱地所が札幌市内のマンションの販売中止」ケンプラッツ2006年4月20日
「札幌のマンション販売中止 埼玉の無資格男性が設計」共同通信2006年4月24日
「札幌のマンション、安全性再検証のためと販売中止」読売新聞2006年4月24日
4月21日 イーホームズが、架空を含む増資を繰り返し、資本規模に応じた認可などを次々に取得していたことが分かった。警視庁などの合同捜査本部は、同社が業務拡張を狙い、架空増資した疑いがあるとみて、公正証書原本不実記載容疑で捜査を進めている。 「資本増やし次々認可=イーホームズ、業務拡張狙いか−架空増資の疑い・捜査本部」時事通信2006年4月21日
4月22日 姉歯秀次元建築士が2005年11月、構造計算書を偽造した賃貸マンションの建築主に「ある開発業者に最初に偽造するよう指示され、その時の改ざん用のソフトを(その後も)そのまま使ってしまった」と偽造を始めた経緯を説明していたことが、関係者の話で分かった。 「「開発業者に指示された」 姉歯元1級建築士」共同通信2006年4月22日
4月23日

木村盛好社長、姉歯秀次元建築士らを一斉逮捕へ

警視庁と千葉、神奈川両県警の合同捜査本部は、木村建設の木村盛好社長らを建設業法違反(虚偽申告)容疑、姉歯秀次元建築士らを建築士法違反(名義貸し)容疑で、それぞれ逮捕状を請求する方針を固めた。今週半ばにも一斉逮捕する。これを突破口に、マンション、ホテル建設に絡む詐欺容疑の立件を目指す。

さらに、捜査本部は、民間確認検査機関「イーホームズ」に対し、公正証書原本不実記載(虚偽登記)容疑で強制捜査に同時着手する検討を始めた。イーホームズの藤田東吾社長も逮捕する方針である。多くのデータ改ざんを見逃した検査機関にも事件が波及する公算が大きくなった。

木村社長らは2005年6月期まで数年にわたって、国土交通省の「経営事項審査」に提出した決算書類の営業利益を、約3億円水増しするなどの粉飾をした疑いが持たれている。

姉歯元建築士は、知人の建築設計業者が不動産会社からマンション設計を受注し、自治体に建築確認を申請した際、この業者に自分の名義を貸した疑い。業者は建築士の資格を持っておらず、姉歯元建築士は14物件で名義を貸し、約1000万円の報酬を受けていたという。

一方、イーホームズは2001年12月に国土交通相から確認検査機関の指定を取得したが、その直前の同年10月、資本金を2300万円から5000万円に増資し法人登記。捜査本部は、この時調達した2700万円は、藤田東吾社長が一時的に知人に借りた「見せ金」であり、大規模建造物の検査資格を得るための架空増資だったとの疑いを強めている。

これまでに姉歯元建築士は、構造計算書のデータを改ざんした理由としてコスト削減を求める木村建設の圧力があったと証言。姉歯元建築士は、「検査が甘い」としてイーホームズに建築確認の申請先を変えるよう元請けの建築設計業者に要求していたことが分かっている。捜査本部は、木村建設の「短工期」「低コスト」を売りにした工事や慢性化した赤字経営と、イーホームズのずさんな検査が、今回の事件の背景にあるとみている。

「<耐震偽造>今週半ば一斉逮捕 木村社長、姉歯氏ら約8人」毎日新聞2006年4月23日
「耐震偽装、捜査大詰め 姉歯氏、木村社長逮捕へ」共同通信2006年4月22日
「耐震偽装 イーホームズ社長ら きょうにも逮捕状」産経新聞2006年4月24日
4月24日 耐震強度偽装事件を受け、国土交通省が、姉歯秀次元建築士らが関与していないマンションなど103件について構造計算書を検証したところ、少なくとも12件で、強度が建築基準法の基準を下回る疑いがあることが分かった。いずれも国指定の民間指定確認検査機関が建築確認をしていたが、再計算の結果、強度が暫定値で基準の60-90%しかなかった。

国交省が国指定機関50機関が建築確認をしたマンションなど約500件を無作為に抽出。このうち計算上の強度が基準ぎりぎりの100-110%の物件103件について、耐震強度を国交省の所管団体「日本建築防災協会」で再検証した。この結果、12機関の12件の強度が、暫定的な数値で60-90%台しかないことが判明した。

「強度不足の疑い、再計算で12件…国交省が抽出調査」読売新聞2006年4月24日
4月25日

イーホームズ、廃業を決定

指定確認検査機関のイーホームズ(藤田東吾社長)は取締役会を開き、今月末に全社員を解雇し、5月末に会社を清算することを決めた。国土交通省に対しても4月26日、役員が訪れ、取締役会で廃業を決めたことを口頭で伝えた。国指定の検査機関が廃業するのは初めて。

イーホームズは26日までに、5月末で指定機関業務の廃止手続きを行う方針であることを同社Webサイトで発表した。藤田東吾社長名で「過去の増資に係る嫌疑により私が立件されるという報道があった。事態の展開で今後の事業運営を維持するのは困難と取締役会で判断した」と説明する。2001年に確認検査機関の指定を受ける際、増資したように装って登記したとして、刑事責任が問われる見通しとなったため、同社は業務継続は困難と判断した。

同社は一連の耐震強度偽装問題で姉歯秀次・元一級建築士による偽装98件のうち37件を見逃していたことが判明。偽造を見抜けなかったことに批判が集中していた。顧客離れが続き、業務が激減、業績が悪化していた。同社は問題発覚前は、売り上げの8割以上を建築確認検査業務が占め、常時数千件の物件を担当していた。しかし現在継続中の業務は約200件にまで落ち込んでいた。

「ベンチャー企業であるイーホームズの場合、経営規模を実態より大きく見せかけたことが、構造計算書の改ざんを見逃す結果につながった可能性があり、確認検査機関として指定した国の責任は重い」(滝鼻太郎「重い国の責任」読売新聞2006年4月27日)。

SBI、イーホームズに株式返還

投資会社のSBIホールディングスは、同社と最高経営責任者(CEO)の北尾吉孝氏が保有する指定確認検査機関のイーホームズ(藤田東吾社長)の株式を、藤田社長らへ返還し資本関係を解消すると発表した。株式譲渡契約を解除する。

理由についてSBIは、イーホームズの架空増資疑惑など「諸状況をみて総合的に判断した」「当初の狙い通り、住宅監査事業を進めるには、不確定要素が高くなった」とする。SBIと北尾氏は、保有するイーホームズの発行済み株式の合計49%を近く返還し、6000万円の取得資金の払い戻しを受ける。

「イーホームズ、来月末で廃業へ」読売新聞2006年4月26日
「イーホームズ、清算へ・業務継続は困難と判断」日本経済新聞2006年4月26日
「イーホームズ、来月業務廃止=「立件報道で運営困難」−耐震偽造」時事通信2006年4月26日
「イーホームズが来月廃業 HPで発表」共同通信2006年4月26日
「イーホームズに株式返還 SBI、資本関係を解消」共同通信2006年4月25日
川口雅浩「<耐震偽造>イーホームズとの株式譲渡契約を解除 SBI」毎日新聞2006年4月25日
4月26日

姉歯秀次元建築士・木村盛好元社長・藤田東吾社長らを逮捕

耐震強度偽装事件で、警視庁と神奈川、千葉両県警の合同捜査本部は午前中に、元建築士・姉歯秀次、木村建設元社長・木村盛好、指定確認検査機関「イーホームズ」社長・藤田東吾の各容疑者ら計8人を逮捕した。

捜査本部は今後、8人を含む関係者による「偽装の構図」の全容解明を急ぎ、強度不足を知りながらマンションやホテルを顧客に引き渡したとされる詐欺容疑の立件に全力を挙げる。

調べによると、姉歯容疑者の知人の建築デザイナー秋葉三喜雄容疑者は2004年3-10月にかけ、建築士の資格がないのに千葉県船橋市内のマンション2件を設計するなどした建築士法違反の疑い。姉歯容疑者は秋葉容疑者に、この2件の設計で建築士の名義を貸した同法違反ほう助の疑い。

木村容疑者と、同社元東京支店長篠塚明、元専務森下三男、元常務橋本正博の各容疑者は、赤字だった2004年6月期決算を黒字に粉飾し、虚偽の決算書類を同年9月に国土交通省九州地方整備局に提出するなどしたとして、建設業法違反の疑いで、熊本県内などで逮捕された。

「名義貸しや虚偽報告に、建築デザイナーも木村容疑者も「業界では普通に行われていること」と言っている。こうしたことが業界の“常識”なら、やはり徹底して追及すべき問題だ」(「「業界では普通」の構造を洗い出せ」読売新聞2006年4月27日)。

「当局が困難な捜査を乗り越え、素朴な被害者感情である「だまされた」にこたえられるか、推移を見守りたい」(宗像紀夫「「偽装を認識」解明できるか」読売新聞2006年4月27日)。

「この捜査で、背景にある業界の実態、建築行政の有名無実が浮かび上がることを望み、悪を逃さぬ突破口にと期待する」(「よみうり寸評」読売新聞夕刊2006年4月27日)。

「能力を超えた仕事の受注に向かい、チェックの甘さを招いたことが、偽装物件の増殖を許す結果になった―。捜査当局が描く事件の構造である。どこまで核心に迫れるだろうか」(「耐震偽装で逮捕 誰の責任か解明を急げ」中国新聞2006年4月27日)。

「偽装やそれが疑われるケースは、北海道から九州まで広がり、建築に対する国民の不信を募らせている」(鶴岡憲一「実質伴った制度再構築を」読売新聞2006年4月27日)。

「法律のすき間で、実は平穏な日常が脅かされているかもしれない現実に、多くの国民が早期の解明と責任の明確化を求めるのは当然のことだ」(「規制緩和の「影」に迫れ」岩手日報2006年4月27日)。

イーホームズ藤田社長も逮捕

藤田容疑者とイーホームズ元監査役の司法書士、岸本光司容疑者は2001年10月、同社が約2700万円を増資したように見せ掛け、資本金を約5000万円とする虚偽の登記をしたとして、電磁的公正証書原本不実記録などの容疑で逮捕された。岸本容疑者は藤田容疑者に増資金額の大半を一時的に貸し付けていた。増資の登記も請け負っていた。

藤田東吾社長が姉歯秀次元建築士らと同時に逮捕されたことにより、イーホームズも耐震強度偽装一味のメンバーであるとの印象を強めた。そのように世間が感じたとしても無理はない。姉歯元建築士の逮捕まで半年以上もかかったのに対し、藤田社長は疑惑発覚から逮捕まで早かった。藤田社長はなかなかの二枚目で弁も立つので、もしかしたらやってないのでないかと思ってしまいそうになる。うっかり同情してしまいそうになる。

「イーホームズの藤田容疑者について捜査当局には当初、立件を困難視する考えもあった。建築基準法には、強度不足の見逃しを想定した罰則が見当たらないためだ。同法のような経済関係法は、実務を円滑にするルールを定めるという側面が強いのだろうが、これは法の不備といわざるを得ない」(「【耐震偽装事件】詐欺立件に向けて威信かけた捜査を」南日本新聞2006年4月27日)。

偽装マンション被害者の声

「厳正な捜査で真実を暴いてほしい」。耐震データ偽造事件で被害に遭った分譲マンションの住民達は姉歯秀次容疑者ら逮捕の知らせに、口をそろえた。

グランドステージ池上管理組合理事の男性は「今回の逮捕を入り口に事件の全ぼうを明らかにし、国には二度と同じようなことが起きないように制度をきっちりと整えてほしい」と期待を込めた。その一方で「でも逮捕されてもマンションの建て替えや支援には何の影響もない」とため息。「私たちは再建に向けひたすら努力するしかないんです」とやるせない胸中を語った。グランドステージ池上は姉歯容疑者が国会の証人喚問で「最初の偽造」と証言した東京都大田区のマンションである。

グランドステージ住吉の購入者の男性会社員(38)は「粉飾決算や名義貸しなど、耐震データ偽造事件ではない容疑で逮捕したのは残念。事件の核心まで追及されなければ、今後同じようなことをやっても、誰も追及できないことになってしまう」と警戒感を示す。「偽造事件に入らず捜査を幕引きにすることは許されない」と、力を込めた。グランドステージ住吉はイーホームズが建築確認し、木村建設が施工した江東区の物件である(67戸)。

これまで姉歯容疑者らが出席した国会の証人喚問や、参考人質疑の傍聴をしてきた墨田区にあるグランドステージ東向島(36戸)の田中拓・対策委員会代表は「国会では、逮捕された誰もが真実を語ったようには見えなかった」と振り返り、強調した。「今回も、国家のメンツを保つ逮捕に終わってはならない。真相を引き出さなければならない。私たちはそれを見ています」

「姉歯元建築士・木村元社長・藤田社長ら8人を逮捕」読売新聞2006年4月26日
「司法書士が架空増資関与 ともに共謀で逮捕へ」共同通信2006年4月26日
桐野耕一「<耐震偽造>被害住民ら「厳正な捜査で真実暴いて」」毎日新聞2006年4月26日
4月26日

ヒューザー債権者説明会

破産手続き中の「ヒューザー」と小嶋進社長などの破産管財人を務める瀬戸英雄弁護士は、都内で初めての債権者説明会を開いた。説明会には同日早朝からヒューザーが販売したマンションの住民らが次々と訪れ、会場には100人以上が集まった。

瀬戸英雄弁護士は冒頭、「ヒューザーの資産価値を極大化して、賠償義務を果たすことが、公的支援による国民の負担を軽減することになる」と述べ、関係金融機関などに協力を求めた。建築確認検査手続きを巡り、ヒューザーが自治体を相手取って提訴した国賠訴訟やイーホームズに対する損賠賠償請求訴訟を受け継ぐ方針を明らかにした。

「<耐震偽造>ヒューザー管財人が自治体提訴の継承方針示す」毎日新聞2006年4月26日
「「賠償果たし国民負担を軽減」=ヒューザー破産管財人が報告−都内で債権者説明会」時事通信2006年4月26日
4月27日

イーホームズ藤田東吾、都議に働きかけ依頼

イーホームズ社長の藤田東吾容疑者が、民間確認検査機関の指定を受けるために、かつて伊藤公介・元国土庁長官の秘書を務めた経験のある吉原修・東京都議=自民=に、国土交通省への「働きかけ」を依頼していたことが分かった。

伊藤元長官はヒューザーの小嶋進社長を耐震偽装問題が公表される直前に同省幹部に引き合わせたことが問題になっている。藤田容疑者の依頼を受けた吉原都議は国交省に要請しており、一連の耐震偽装に政治家が深くかかわっている実態が改めて浮かび上がった。

合同捜査本部の調べや関係者によると、イーホームズは2001年5月に国交相から住宅性能評価機関の指定を受けたが、受注実績がほとんどなかったため、建築確認申請を審査できる民間確認検査機関の指定を得ることを計画。藤田容疑者は同10月に増資の登記をした直後、国交省に指定の申請を行った。しかし、同省は同社の企業規模を理由に東京都内のみの検査業務ができる都指定の検査機関になるよう指導した。

ところが、全国展開を希望していた藤田容疑者は、吉原都議に「国に指定の申請を出しているのになかなか下りない。どうして時間がかかるのか聞いてほしい」と要請。吉原都議は国交省に出向き「友達が申請をしているが時間がかかっているようだ。なるべく早くお願いします」と同社が国交相指定の確認検査機関になるよう求めたという。

同社はその後の12月21日に国交相の指定を受け、建築確認検査の業務を開始した。藤田容疑者はこの指定を受けるために、同社の資本を2300万円から5000万円に増資したが、増資に必要な資金を知人の司法書士から借り、間もなく返却した架空増資だったとして逮捕されている。無理な増資だったうえに、指定を受けるために、吉原都議を利用していたことになる。

吉原都議は自民党公認で2001年6月に初当選し、現在2期目。84年1月〜00年12月まで伊藤元国土庁長官の秘書を務め、伊藤氏の長官時代(96年11月〜97年9月)は秘書官だった。吉原都議の資金管理団体「吉原修連合後援会」と同都議が支部長を務める「自民党東京都町田市第3支部」の政治資金収支報告書によると、藤田容疑者から2団体に対し、2002年に計36万円、2003年に計39万円、2004年に計326万円の献金があった。

藤田容疑者と吉原都議は青年会議所時代からの友人。吉原都議は毎日新聞の取材に「藤田君から電話があり、何課だか覚えていないがアポを取って国交省に行った。(藤田容疑者と)一緒かどうかは覚えていないが、友達のために、頼まれて何もしないわけにはいかなかった。お金をもらうために口利きしたことはない」と話している。

イーホームズ従業員が杜撰な審査実態を証言

イーホームズの複数の社員らは、警視庁など捜査本部の調べに対し「建築確認検査はずさんだった」と証言している。「検査はほとんどノーチェックだった」「検査件数が多すぎて、とてもさばききれなかった」と証言している(「<耐震偽造>イーホームズ ずさん検査の実態、社員ら証言」毎日新聞2006年4月27日)。

同社はもともと、住宅性能評価機関として社長の藤田東吾容疑者が1999年に設立したが、受注がほとんどなかったため2001年12月に確認検査機関の指定を取得した。その後、検査業務の受注が増えたが、業容の拡大に要員や検査体制が追いつかず、耐震強度などのチェックを素通りさせるケースが多かった。

2005年9月に建築確認した10階建てマンションでは、別物件の書類がまじっていた他、「地下10階建て構造」などと書かれた間違い書類が検査を素通りしていた。姉歯秀次容疑者に国会証人喚問で「見ていない」とまで言わせるほどだった。

「イーホームズの審査担当スタッフ一人当たりの年間審査件数は、02年度は237件だったが、04年度には361件へと急増。その時点で審査スタッフ67人中、建築確認事務を行える資格を持つのは24人だけで、実務はそれ以外の「補助員」に支えられていた」(「スピード至上 崩れた信頼」読売新聞2006年4月28日)。

イーホームズを監査法人や証券会社が問題視

イーホームズの監査法人や上場を担当していた証券会社が、同社の増資を問題視する指摘をしていた。捜査本部は、同社が確認検査数を急速に増やす裏で、ずさんな検査や不正な増資をしていたことが耐震偽装の背景にあるとみて、今後厳しく追及する方針だ。

藤田容疑者は2001年10月、資本金を2300万円から5000万円にした。ところが登記から数日後、増資分を自分が経営する造園会社に融資した。この経緯について、イーホームズの監査法人は2002年決算の監査報告書で「支配株主への貸付金」と問題視する付記事項を付けていた。

また、東証マザーズへ2006年3月上場するため審査をしていた証券会社も2005年7月頃、増資の直後に同額を造園会社に融資していることに気付き「問題あり」として、最終的に上場は延期になった。イーホームズ側は2005年6月、増資に充てた資金は実際は借入金だったのに「藤田社長の自己資金」などとする弁護士名の意見書を作成していた。

「<イーホームズ>都議に働きかけ依頼 検査機関の早期指定で」毎日新聞2006年4月27日
「藤田容疑者、都議に口利き依頼=イーホームズの国指定「よろしく」 」時事通信2006年4月27日
「「架空増資の疑い」を指摘 イ社、虚偽の意見書作成か」共同通信2006年4月26日
4月28日

イーホームズ藤田東吾、容疑を認める

イーホームズ社長の藤田東吾容疑者は東京地裁による拘置質問で「増資は見せ金と判断されても仕方がなく、違法だと分かった」と容疑を認めた。「大規模な物件を検査する資格を国から得るために、資本金を増やしておくことが必要だった。早く確認検査機関の指定を受けて業績を伸ばしたかった」。藤田社長は、これまでの警視庁などの合同捜査本部などの調べに対し「違法な見せ金という認識はない」と容疑を否認していた。

藤田容疑者は1999年12月にイー社を設立。2001年5月に住宅性能評価機関として指定された後も、仕事の受注はほとんどなく、決算では欠損が出ていた。増資を計画した当初は銀行に融資を申し込んだが、ベンチャー企業の経営者として実績が認められず断られたという。

「藤田容疑者、容疑認める 「見せ金で違法だった」」共同通信2006年4月29日
「「違法な見せ金だった」=イー社社長が架空増資認める−耐震計算偽造」時事通信2006年4月29日
「<耐震偽装>架空増資は検査資格受けるため 藤田容疑者」毎日新聞2006年5月3日
4月28日

ヒューザー側が姉歯に発注

神奈川県藤沢市のマンション「グランドステージ(GS)藤沢」の構造設計は、実際にはヒューザー(東京都大田区、破産手続き中)が実体のない関連会社を経由し、元建築士姉歯秀次容疑者に発注した疑いのあることが、分かった。GS藤沢をめぐっては、ヒューザーの小嶋進社長が偽装を認識しながら住民に引き渡した疑いがあり、警視庁などの合同捜査本部が詐欺容疑を視野に捜査。同社長が偽装に関与した事実がないか解明を進めている。

「事件全体でみれば、姉歯容疑者は立場の弱い下請け側とされ、「個人の暴走」とは考え難い。偽装が続いた背景には、建築主などからのコスト削減圧力や、利害一致のもたれ合いも取りざたされている」(「【耐震偽装逮捕】不正の全容にメスを」高知新聞2006年4月27日)。

「ヒューザー側が「姉歯」に発注=GS藤沢構造計算、関連会社経由−捜査本部」時事通信2006年4月29日

ヒューザー管財人、「住民は自ら訴訟を」と助言

耐震強度偽装事件で、マンション販売会社「ヒューザー」(東京都大田区、破産手続き中)の破産管財人瀬戸英雄弁護士は、都内で会見した(2006年5月26日)。「購入した住民の被害は甚大だが、管財人としてできることには限界がある」と述べ、住民が自治体などを相手に自ら訴訟を起こした方が、賠償額が多くなる可能性があると指摘した。「ほかにも債権者はおり、住民だけを優先することはできない。被害回復には提訴が有効だと思う」と話す。

この日東京地裁で第1回口頭弁論が開かれた14自治体相手の訴訟については、「自治体は偽装を長期間見過ごすなど機能まひを起こしており、責任を問われるのは当然」と述べた(「「住民は自ら訴訟を」と助言=ヒューザー管財人、日本ERIも提訴」時事通信2006年5月26日)。

ヒューザー破産管財人、イーホームズを再提訴

ヒューザーの破産管財人は、民間検査機関「イーホームズ」を相手に起こした5億円の損害賠償訴訟を取り下げ、1億円の賠償を求め、改めて提訴した(2006年5月29日)。提訴時の請求理由を変更したことに伴う措置で、30日に東京地裁で開かれる予定だった第1回口頭弁論は取りやめになった(「ヒューザー管財人、イーホームズ社を再提訴」時事通信2006年5月29日)。

ヒューザー破産管財人は、管財人として、自治体と同様に偽装を見逃した民間検査機関「日本ERI」(東京都港区)を相手に、1億円の損害賠償を求める訴訟を同地裁に起こしている(2006年5月25日)。

国交省、偽装見逃しで検査機関を処分

耐震データ偽造事件で、国土交通省は偽装を見逃した民間確認検査機関4社に対する処分を実施した(2006年5月29日)。検査員が本来行うべきチェックを怠り、建築確認時に元建築士の姉歯秀次被告が改竄した構造計算書の多くを見過ごしたとする。イーホームズの国指定を取り消し、日本ERIを3カ月の業務停止にした。

件数が少なかった東日本住宅評価センターとビューローベリタスジャパンには業務改善計画の提出を命じた(「<耐震偽造>イーホームズなど4民間機関を処分 国交省」毎日新聞2006年5月29日)。他に2機関も姉歯被告の改ざんを各1件ずつ見逃したが、「偽造の手口が巧妙だった」として処分はせず、改善措置の報告を求めた。

イーホームズは、姉歯被告が改ざんした構造計算書98件のうち最多の37件を見逃した。国交省はこのうち26件を「設計の構造部分を見ていないなど重大な過失があった。最初に偽造を通報したことを考慮しても、取り消しは免れない」と判断した(長谷川豊「耐震偽造 イーホームズなど4民間機関を処分 国交省」毎日新聞2006年5月30日)。指定取り消しは、1999年に確認業務を民間に開放して以来初めて(「イー社の指定を取り消し 耐震偽装見過ごしで」共同通信2006年5月29日)。

日本ERIは、姉歯被告の15件の偽造構造計算書を見逃し、うち4件を「過失があった」とされた。国交省は6月13日から、500平方メートル以上の建物の確認検査業務停止を命じた。同社は2002年にも、資格を持っていない社員が建築確認を行っていたとして業務停止1カ月の処分を受けている。


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