マレーシアの教育制度(2)
 

写真は雄弁である。無関心な人々に対し一瞬で現実の重さを気付かせてくれる。私は59日の「The Star」に掲載された一枚の写真にショックを受けた。それは優秀な成績を収めながら、ブミプトラ政策による大学入学定員枠に漏れ、教師から説明を聞く女学生の「悲しい表情」である。女学生は教師に何を求め、それに対し教師はどのように説得したのだろう。出来ようはずは無い、これは政治問題なのだ。(注:右写真はグリーンレーンで通学バスを待つ女子高生で本編とは関係ない。)

大学の定員枠(Quota-system)はブミプトラ55%、華人35%、インド人10%に定められている。非ブミプトラ(特に華人)学生は優秀な成績を収めても進学できない学生が大勢いる。特に人気学部は極めて狭き門である。それを尻目に平凡な成績のブミプトラ・クラスメートはいとも簡単に志望校に進学する。最近、この話題が連日新聞一面で大々的に取り上げられている。ブミプトラ学生が満たせない大学定員枠を、非ブミプトラに開放するかどうかという事である。

57日、マハティール首相が以下の声明を発表した。「ブミプトラ定員枠の空きを非ブミプトラの優秀な学生に開放すべきだ。我々は頭脳流出(非ブミプトラ学生の海外留学)をこれ以上見過ごせない。ブミプトラには特別な配慮をしてきた。落ちこぼれるマレー人学生に特別カリキュラムを準備した。それですら彼らは進学に関心を示さないじゃないか。」 

59日、教育相があわてて以下コメントした。「ブミプトラ定員枠が空いているという情報は間違えである。定員枠はすでに一杯であり、一万人を超えるブミプトラ学生が入学できないでいる。」 これには皆驚いた。国家元首の声明と完全に食い違っている。教育相の発言が事実だとすると、マハティール首相にガセネタを掴ませた役人は切腹モノである。

510日、MCA総裁リン運輸相が以下コメントした。「優秀な成績を収めた非ブミプトラ学生を救済すべきであり、議会は審議に入る事にする。親御さんたちは結論が出る来週まで待って欲しい。」 同時に前日の教育相の定員枠満杯説に対する反論が相次いで上がった。「あの統計はでたらめだ!」

2020年に先進国の仲間入りをするという国家目標達成のため、マレーシア政府はK(知識集約)エコノミーへの転換を推進している。工業立国こそがマレーシアの生きる道であり、教育、人材開発は重要課題である。30年続いているブミプトラ政策だが、マレー人の地位向上の兆しは見えない。そしてアンフェアな人種差別を受けた華人の若者。彼等に愛国心や民族融和の精神が育つのだろうか。来週の政府発表は華人学生に希望を与えるのか、あるいは再び絶望感をもたらすのだろうか。

2001511日)

マレーシアの教育制度 その1

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