しょうもない雑文っす。どうしようもないっす。
でもデジタル・ライフのクリスマス雑文祭(参加者リスト)に参加したっす。これがその雑文っす。
■2001/12/03 (月) 100.彼女の手を握りながら 目を覚ますと、一時間十分寝過ごしていたあの日。
覚悟を決めて昨夜は九時に寝たのに何て事だ、と自分に腹を立てながら、速攻で髭を剃り、顔を洗い、昨夜のうちにさんざん悩んで選んでおいたシャツとセーターとダッフルコートを着込んで、髪をセットすると、飯を食う暇もなく僕は、ポケットに忍ばせてある大切なものを握りしめ、駅への道を走った。
めずらしく空は晴れ渡り、ここ数日の雪空が嘘のようだった。
たぶんいつものように彼女は待ち合わせ時間きっかりに待ち合わせ場所に現れるはずであり、この大事な日に遅刻が許されるはずもなく、僕は、定刻通りの電車の運行時間ももどかしく感じながら、電車の中で腕時計をひっきりなしに眺めていた。
らっきーなことに、彼女が気恥ずかしそうに手を振って現れたのは、待ち合わせ場所の大きなツリーの前に時間ぎりぎりで僕が到着できてから1分後だった。まちました? と微笑む彼女に、息を整えながら首を横に振り、待ったよとつい茶目っ気を出してしまう僕。
くらくらするほどに緊張しているのが自分でもなんとなくわかるのだが、その一方で極力冷静に段取りを確認する自分もいた。
らんぷが灯る頃合いまで二人が出会った想い出の場所であるディズニーランドの中を駆け回り、朝一番で予約したパレードが見える絶好のロケーションのレストランでちょっと早い夕食をとった頃、パレードの開始を告げる歓声の中、僕は、彼女の瞳を見つめながら、ゆっくりと呪文を口にした。
もっと近くで、君と暮らしていきたいんだけど、僕とずっと一緒にいてくれませんか。
と、ポケットの中からリボンで飾られた水色の箱を取り出して、僕は、大阪に住んでいたあの日に遠い国にいた彼女からの手紙を受け取ってから、ずっと自分の中で計画していた一大プロジェクトのクライマックスとなる科白を、ちょっとつっかえながらも言うことが出来た嬉しさと、彼女の答を聞くことへの期待の入り交じった不安感とで、心が引き裂かれそうに感じながら、彼女の答えを待った。
にこっとえくぼを浮かべてくれた彼女は、それでも何故だか泣きそうな目で、つややかな唇を開き、小さく確かに答えてくれた。
はい、と。贈った指輪は、今は彼女のドレッサーの引き出しの中で、たまの出番を待ちわびて眠っている。
りビングに飾られた写真の中の見知らぬ国で井戸を掘る彼女のことや、何度か夢にも見たディズニーランドでの出来事、僕の友人夕焼と彼女の友人和海さんのこと、その他沢山の想い出と彼女が婚約中に話してくれた彼らや妹や母親に対する様々な想いも、あえて繰り返さないまま僕と彼女の中で眠っている。
もうすぐ会えるね、大きくなったらパパとママと一緒にディズニーランドに行こうねと、眠そうにゆっくり澄ました顔でお腹の子に話しかける彼女の手を握りしめる僕。
のん気そうに小さくあくびをしたみづきは、そんな昔のことを僕が懐かしく思いながら今の彼女を見つめているのも全部飲み込んでいるかのように僕の手を握り返し、安心しきって、ふわふわとした雰囲気に包まれながら眠りに就くのだった。