しょうもな文

しょうもない雑文っす。どうしようもないっす。
でも第五回雑文祭に参加したっす。これがその雑文っす。
第五回雑文祭

 
■2000/10/23 (月)秋の夜長に

 秋の夜は長いとは言ふが厳密に言へば春の夜と同じ位の長さである筈だ。思ふに最も夜が長い冬は寒すぎて、皆早く寝て仕舞ふのでその長さをあまり感じないであらうし、春は冬の次に来るものであるので、つい冬と比較して仕舞ひ、その長さよりも徐々に短くなつていく方に意識を奪はれて仕舞ふのであらう。対して秋は短い夏の夜と比して徐々に長くなつて行く上に長かつた夏の宵の名残で起きてゐる者が大半である為、殊更に夜が長く感じるのではないか。
 げえむ等の為に夜更かしをすると言ふのもつまりはさう言う事である。夏に始めたRPGも終盤に差し掛かつてゐた。仕事をしてゐると一日に少しづつしか時間が割けぬ。とは言へこの部屋は両隣が空部屋であるので夜は静かで頗る捗る。進み具合は良い。まだ宵の口と言つてもおかしくない時間であつた。
 と、はたはたと玄関を敲く音がする。夜と言ふのに誰であらう。今丁度良い処であるのにと思ひ乍ら立って行って戸を開ける。
 「失礼します。NH協会の集金ですが」
 「私は視ておりません」
 「嗚呼TV付いてゐるぢやないですか」
 「あれはげえむです」
 「それでも払つて頂かないと…」
 「視てゐないので」
 ばたんと戸を閉めた。一月前であつたら五輪中継を視てゐる事を確認され気の弱い私は払つてしまつてゐたであらう。さう考へると少々苛々して来る。と、またばたばたと玄関を敲く音がする。
 「読日新聞ですが、三ヶ月如何ですか、いや一ヶ月でも…」
 「もう取つてゐるので」
 「ぢやあ解約して、こつちの方がお得ですよ、なんせ…」
 「いや私は産毎新聞の右翼的なところが気に入つてゐるのです」
 「ぢやあ解約して、こつちの方が右翼的ですよ、なんせ…」
 「いや私は産毎新聞の系列のてれび局が気に入つてゐるのです」
 「ぢやあ解約して、こつちの系列のてれび局の方が面白いですよ、なんせ…」
 「いや私は」
 「兎も角解約して…」
 「五月蝿い、取らないもんは取らない」
 斯様に諄いと堪忍袋の緒も切れる。力任せにばたんと戸を閉めた。今はげえむの最中である。中に餡が入つてゐるもさもさした菓子である。それはもなかだ。と、またどんどんと玄関を敲く音がする。今度は誰だ。
 「失礼します。私は世界教学心霊教会埼玉県本部西武教会の者ですが、貴男は神を信じますか」
 「五月蝿いな、私は仏教徒です」
 「嗚呼奇遇ですね、私共の神と言ふのは観音様なのです。観音様を崇め…」
 「一寸待て、観音様は仏様だ。神様ぢやないぞ」
 「はい、その通りですが神と仏は同じなのです…」
 それは違うと反論しかけたがそれだけはどうしても言えなかつた。話を長くすると相手の思ふ壺である。これ以上げえむの邪魔はされたくなかつた。と相手はくどくどくどくどとこちらを苛々させやうとするかの如く捲し立てて来る。言ひたい事を我慢して理屈に合はない言葉を長々と聞いてゐては苛々がつのる一方である。切れた堪忍袋の緒が蘇生する暇もないほどだ
 「仏教徒ですから」
 またもや力任せにばたんと戸を閉めた。これでは戸が壊れてしまふ。今はげえむの最高潮である。「星日月ほいほいほい」と鳴く鳥である。それは三光鳥だ。と、またどかどかと玄関を敲く音がする。今夜は招かれざる客が多い。
 「わたくし館混市自由改新党幹事長籾山政治後援会事務所の…」
 今度は政治屋か。
 「市政通信と政見演説会のチラシをお持ち致しました」
 成る程市民感覚を肌で感じる政治家とな。感じる幹事長、いや、幹事長も感じちやうだな。これはすぐ帰るであらう。
 「失礼しました」
 すぐ帰つたが今度は相手が力任せにばたんと戸を閉めた。戸は既に壊れ掛けてゐる。今はげえむの最終局面である。神社で小銭を探すあれだ。それは賽銭の工面だ。と、また今度はどすんどすんと玄関に物がぶつかる音がする。遂に戸が完全に壊れた。音は空き部屋の方に向かつてゐる。今度は何だ。
 「秋の夜長だけに空部屋に夜逃げです」
 夜はまだ続く


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