しょうもない雑文っす。どうしようもないっす。
でも今更第2回雑文祭(こちら参照)に捧げます。
■2002/01/16 (水) 102.寒い寒い寒い夜 その晩は近来まれに見る寒さだった。そのころ僕はある寒い地方に住んでいたのだが、炬燵もなくボロアパートで小さなストーブを頼りに冬を過ごしていたのだ。
それでもその日は特に酷かった。昼から、窓の外は猛吹雪であり、天気が悪いために日が暮れように見えた4時頃には、隣の家の玄関先の灯りさえ、ところどころが濃い白に固まって見えるものの全体的には薄い白に覆われているような、丁度単純な模様の白いレースのカーテンのような一面の白い闇の向こう側に、薄ぼんやりと拡がる光球にしか見えないほどだった。
僕は、布団の中で寒さに震えていた。灯油が切れたことに気付いたのは7時を回ったころのことだった。ストーブの灯油切れのランプが付き、無情なビービービーという警戒音が響いた。僕の住んでいる田舎町では、歩いていける範囲内に灯油を売っている店は1軒もない。配達してくれる店も、1軒を除いて7時には閉店する。当然のことに、僕は残る1軒に電話をした。24時間営業しているそのガソリンスタンドは、無情にも忙しいのか、なかなか電話に出なかった。
「プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。…ガチャ。はい?凍結石油西武蔵店ですが?」
「あのう、もしもし?灯油の配達をお願いしたいのですが」
「はい。ご住所とお名前をどうぞ」
「(助かった!)はい。○○町△丁目何の何、ろうです」
「では、明日午後3時ころ、伺います」
「(えええええっ!?)あの、今から来ていただくことは出来ませんか?」
「今、配達の者が出払っているんですよ。明日も午前中は予約で一杯でね。ほら、こんな天気ですからね」
「…じゃあ明日午後お願いします」というやりとりがあり、結局その晩はストーブが使えなかった。
布団に潜り込み兎に角眠ってしまおうと試みた。明日の午後まで寝ておれば、寒さを忘れられると考えたのだ。甘かった。
寒さは部屋の中にまで侵入し、布団の中も例外ではなかった。
駄目だ。凍える。
僕は決断した。友人の所に行こう。
外を歩く寒さの方が、ここで一晩寝るよりも我慢できそうだった。しかし、いきなり訪ねて友人がいなければ元も子もない。早速友人に電話をした。「プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。(出ないな…)プルルルル。プルルルル。…ガチャ。Aです」
「ああ、A?オレ、オレ、ろうだけど」
「ん?どうした?」
「(助かった!)今から、そっち行っていいか?」
「悪い。今彼女来てんだ。じゃあな」
無慈悲だ。
次の友人に電話をした。「プルルルル。プルルルル。…ガチャ。Bです。ただいま留守にしており…」ガチャン!
何人かの泊めてくれそうな友人たちに電話したものの、皆留守か、彼女が泊まりに来ているなどで断られた。こうなると、自分の日頃のあまりの人望のなさに寒い思いが増してくる。
更に別の友人に電話をした。意地の悪いこいつには頼みたくなかったのだが、背に腹は代えられない。「プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。プルルルル。…ガチャ。Cです」
「ああ、C?オレ、オレ、ろうだけど」
「ん?どうした?」
「(助かった!)今から、そっち行っていいか?」
「何でだ?」
「いや、(かくかくしかじか)寒いんでそっち行っていいか?」
「いいけど、条件がある。俺今すごい退屈していたんだが、何かジョークを言って俺を笑わせろ」
「い、今?」
「今」
「うーん。布団がふっとんだ」
「いつの洒落だ?」
「うーん。炬燵に入ったら怒ったつ」
「苦しい」
「うーん。ストーブがすっ飛ぶ」
「面白くない」
「うーん。灯油とお湯」
「面白くない」
「うーん。懐炉あったかいろ」
「面白くない。どうでもいいけど暖かいものばかりだな」
「寒くてたまらないんだ。うーん。配達が靴を履いたつもり」
「長い」
「うーん。ランプがスランプ」
「どんなランプだ?」
「うーん。電話に出んわ」
「オマエは戦時中の人間か」
「うーん。うどんを食うどん」
「苦し過ぎる」
「うーん。」
「かえって寒くなった。やっぱオマエ来るな。じゃあな」(ガチャン)自分の駄洒落で寒さも倍増。もの言えば唇寒しとはこのことか。あ、も一つ思いついた。
作務衣は寒い。
とにかく寒くてたまらなかった。