しょうもな文

しょうもない雑文っす。どうしようもないっす。

■2001/04/09 (月) 68.マニアの受難

 物事に過度に興味を示したり、収集癖があったり、一つの事に熱中している人を、世間一般の普通人はオタクだのマニアだのと呼ぶ。オタクの語源は、お互いを「お宅」と呼び合う(君とか貴方と呼べない)社交性のなさにあるらしいので、いわば今で言う引きこもりのような人を指すのが本来の使い方なのだろうが、この辺は煩雑になるので中森明夫氏に任せよう。今日のお題はマニアである。
 では、マニアの語源は何かというと、マニー即ち躁病である。躁病とは精神病の一種であり、鬱病と違い日々騒がしくはしゃいでいる状態が続く、まあ世間一般に言われている感覚に従えば、いわゆるキチガイのことである。これは医学的用語としてだけではなく、英語のCar maniaのことを日本語ではカーキチと呼んだり、Fishing maniaが釣りキチ三平、その他きちがいだがしょうがないだのと、マニアに対応する日本語としては、一般的に本来キチガイの略語であるところの「キチ」が使用されていた。
 しかし、ここ十数年の間にこのような日本語の環境は大きく変化した。いわゆる放送禁止用語の登場である。このため名作「巨人の星」では「うちの父ちゃんは日本一の………だ〜!」となってしまうし、カムイ外伝では台詞のない吹き出しがいくつも現れるといった喜劇を通り越した悲劇が起こっている。このような状況下、マニアという単語についてもまた同様の現象が起こっているのである。「キチ」という単語の消滅である。
 昔の「キチ」という単語には、愛すべき者とでも表現すべき一種のニュアンスが込められていたように思う。上記「釣りキチ三平」が自称「釣りキチ」であったのはその典型である。現在、「キチ」という言葉に、そのようなほのぼのとしたニュアンスはない。というよりそんな単語は存在していない。代わってmaniaの訳語として使われているのが「バカ」だ。「釣りバカ日誌」のように使われる。しかし本来の意味を比べると、キチガイは精神状態が正常でなくなることのことであり、趣味嗜好のためにちょっと正常でない判断をする人物にも使用できるが、バカでは知能の働きがにぶいことであり、意味がだいぶ異なる。「釣りバカ日誌」の主人公、浜ちゃんは、こと釣りにかけては決してバカではなく、単にキチだと思うのだが、そんな感覚はおかしいのだろうか。それとも世間一般の言語感覚ではキチよりバカの方がましなのか?
 いずれにしてもキチの方が一所懸命で烈しい様子を表現しているように感じる。昔の番組でもそのようである。
 キチキチマシン猛烈という。


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