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12月12日(水)
〜思い出の地・キャンベラへ〜

●1、ワンダー大陸上空にて
 日付が変わって12月12日の朝は、飛行機の中で迎えた。オーストラリア時間午前6時頃には既に空も明るくなり、窓から機外を見るとそこには既に「ワンダー大陸」オーストラリアの上空。オーストラリア大陸は古期造山帯に属するため起伏はそれほど激しくなく、果てしなく広がる大地には屈曲しながら流れる河川や農地が見て取れる。二毛作、三毛作のためか、直前で区切られた畑がチョコレートクッキーのように縞模様が出来ているのが面白い。更に、シドニー北郊のゆるやかな山脈には、先行河川(山脈と垂直にぶつかってこれを乗り越えて流れている河川)が横谷を形成していた。

 

上空から見た畑(左)と山脈を横断する先行河川(右)

 8年ぶりに訪れる大陸ゆえ、しばらくは飽きることなく窓から外を眺めていたが、ふと窓の左上方に目を転じると、薄い青色の空に白い物体が。「あれ?」っと思ってよく見ると、白い胴体に赤い尾翼のカンタス航空国内線の飛行機で、上空で見るにしては大きさがやや大きい。その内、相手のカンタス機は更に大きく見えるようになり、遂にはこちらの250メートルくらい上を飛び去って行った。「ニアミスではないか」と思いつつも、こちらの機体も進路を変えたようには感じなかったので不思議に思っていたが、前方のスクリーンに投影された航跡図は(それまではシドニーを一直線に目指していたのに)、なんと不自然な円を描いているではないか!やはり、ニアミスを避けるために緩やかながら回避行動をとっていたらしい・・・。ここで豪州大陸を見ずに事故にでもなったら、背後霊になってパイロットを一生呪うところであった。

●2、シドニー空港到着
 さて、ニアミスを無事乗り切るとカンタス機も高度を下げて降下をはじめ、しばらくすると眼下に海と陸地の調和したシドニー市街が見えて来た。赤いレンガの一戸建ての家が立ち並び、中にはプール付きの豪邸もある。空を反射する海面にはところどころにヨットが係留され、住宅と住宅の間は緑で覆われている・・・。上空から見たシドニーの街並みは、ニューヨークのそれよりも幾分落ちついて見えた。

   

上空から見たシドニー・ボタニー湾(左)と空港に着陸したカンタス機(右)

 午前8時、カンタス機はシドニー・キングスフォード=スミス国際空港に着陸。国際線ターミナルに向けてタキシングする機体からは右手前方の国内線ターミナルが見え、豪州二大航空会社のアンセット航空機が駐機している。ボーディングブリッジを歩いて8時間ぶりに機外に出ると外気温は思ったより快適で、バンコクに着いたときのムッとする熱さと匂いは無い。オリンピックを期に整備された新ターミナルの廊下を歩き入国審査に向かうと、たまたま私が並んだ列の審査官は頭にターバンを巻いたインド人だった。白豪主義から多文化主義に転換したとはいえオーストラリアはアメリカとは比べ物にならないほど白人社会なので、意外な感じがした。入国審査そのものはほとんど質問もされないほど簡単なものだったが、検疫と税関は逆に厳重で、食料品の持ちこみを一切禁止しているため、手荷物は全てエックス線検査機にかけられた。

シドニー空港ターミナルビル

 この時間帯は各国からの便が到着するのか、平日にも関わらず朝の到着ロビーはかなり混雑し、日本人よりもむしろ韓国人観光客の出迎えが目立つ。人込みの中をかきわけて予約してあったレンタカー会社のカウンターに行き、鍵を受け取った後、軽食をとるべくマクドナルドへ(無論、その前に現金を豪ドルに換えたが)。豪州マクドナルドの品揃えは米国よりも日本やアジアのそれに近く、ドリンクもSサイズを注文すると日本と同じSサイズが出てきた(アメリカではSサイズで注文しても日本のMサイズが出てくる)。

●3、進化したキャンベラへの道路
 豪州最大の都市・シドニー(人口約400万人)から人口40万人の首都・キャンベラまでは約300キロ離れており、その為通常の観光旅行やビジネスでは飛行機で移動することが多い(他に高速バスもある。鉄道は1日1本のみ)。しかし、今回の旅行ではシドニー〜キャンベラ間を自動車を運転して、オーストラリア大陸の雄大さを味わっていくことにしていたので、レンタカーでの陸路の移動を選択した。

トヨタ・アヴァロン(シドニー空港にて撮影)

 ここで豪州の自動車事情についてまとめると、オーストラリアの自動車業界は基本的に日本資本と米国資本でシェアを分け合っており、現地生産している数車種が大半を占めている。実際、車道で出くわす車は、(1)GM系のホールデン社の「コモドール(HOLDEN Commodore)」、(2)豪州フォード独自車種の「ファルコン(FORD Falcon)」、(3)トヨタの「カムリ」と「アヴァロン」(「アヴァロン」は現地生産をしているかどうか不明だが)、(4)三菱自動車の「マグナ(MITSUBISHI Magna)」(日本で言う「ディアマンテ」)の4車種が多数派で、あとはたまに輸入車を見かける程度。うち「コモドール」系列と「ファルコン」系列が豪州特有の自家用車で、4リットル近いエンジンを積み、後輪駆動で車体も大きいが装備品はあまりない(後席の窓はいまだに手動だし、後席中央のアームレストも無い)のを特徴としている(それでも前席は自動窓だったが、8年前に走っていた2モデル前の「ファルコン」は日本の商用車に近いものがあった。無論、上級グレードになると日本車並みの装備になる)。高級グレードの「フェアレーン(FORD Fairlane)」や「ステイツマン(HOLDEN Statesman)」はいずれも「ファルコン」「コモドール」のホイールベースを延長し装備を追加したもので、特に前者は首都キャンベラではよく官用車に使われている。もっとも、これらの自動車はいずれも日本には輸出されていないので、東京では全くみかけない(在日豪州大使館の大使専用車に「フェアレーン」が使われているが)。また、日本ほど新車購入のスピードが速く無いので、日本やアメリカではとうの昔に消えた古い車が走っているのも特徴の一つであろう。

  FORD HOLDEN
高 級
グレード

Fairlane/LTD

Statesman/Caprice
上 級
グレード

Fairmont

Calais
基本版
Falcon

Commodore

▲豪州二大車種とその系列

 今回、レンタカーで借りた車両は、そのフォード「ファルコン」であった。
 午前9時半、車で空港を後にし、南西自動車道South West MotorwayM5号線に入る。この高速道路はそのままメルボルンまで通じているヒューム街道(Hume Highway、国道31号線)に繋がる大幹線道路で、8年前はシドニー近郊がまだ未完だったが、その後オリンピックを機会に工事を進め、最後の区間は地下方式にしてこの12月に完成したばかり。途中、3ドル程度の通行料金を支払う料金所が1ヶ所だけあるが、それ以降は特別料金不要で、片側2車線の立派な道路を利用できる。国土や交通量が違うとはいえ、日本の高速道路の高コスト体質が改めて感じられた。

  

▲12月に完成したばかりの南西自動車道(左)とヒューム街道との接続点(右)
(いずれもシドニー郊外で撮影)

 防音壁に囲まれていた道路も郊外のリバープールを過ぎるあたりから緑が増え始め、南西のベットタウン・キャンペルタウンを通るころには左右は雄大な牧場と乾いたユーカリの森が広がるように。いくつか山を越えるところはあってもそれほど急峻でもなく、平地には見渡す限りの牧場で、モノも人もまばら。正に、「土地が有り余っている」様子だ。こういうところに長く住むと、やはり気持ちの持ち方も雄大になるのではあるまいか。この辺りから道路名もヒューム街道Hume Highway)に変わり、速度制限が110キロになった。交通量もそれほど多くなく、首都まで約3時間の快適なドライブを楽しんだ。

 

▲ミッタゴン付近のユーカリの森(左)と道路の案内標識(右)

 午前11時30分、ゴールバーン市を過ぎたところで国道23号線「フェデラル・ハイウェイ」Federal Highway)を左折。かつてこの幹線道路もジョージ湖(Lage George)とキャンベラ近郊の2ヶ所で片側1車線・対面通行になっていたが、今ではそれらも解消され、シドニーからキャンベラまでずっと片側2車線で繋がっている。8年間という時間の長さ、そしてシドニー・オリンピックがもたらした変化を早くも実感させられた。そのジョージ湖は川が全く流入しない孤立した湖で、今でも地図上には広大な水面が記録されているが、ここのところは雨不足で湖水が全て蒸発し、だだっ広い野原になっていた。

●4、思い出の地・キャンベラ到着
 午後1時、車は遂にオーストラリア首都特別地域ACT, Australian Capital Territory。シドニはニュー・サウス・ウェールズ州に属する)、即ち首都キャンベラに突入。速度制限も110キロから70キロとなり、道が大きく左にカーブすると、そこはもう首都キャンベラを南北に貫くノースボーン通り(Northbourn Avenue)。片側3車線にユーカリを植栽した中央分離帯をたっぷり配し、街路樹そして歩道の幅にも余裕がある。正に緑に囲まれた大通りで、そこを10分ほど走ればもう市中心部(City Centre)に辿りつけた。

 

▲キャンベラ概観(左、ブラック山上から撮影)とコモンウェルス通り(右)
(中央がグリフィン湖、左が市中心部、右が国会議事堂。右写真は正面が国会議事堂)

 先に宿泊先に行きたかったのでこの時は市中心部は通過し、そのまま国道23号線を南下すると、道路名はコモンウェルス通りCommonwealth Avenue)となり、市を南北に分断する人造湖バーレー・グリフィン湖Lake Burley Griffin)をまたぐ。右手にハイアット・ホテル・キャンベラ、更には英国やニュージーランドの高等弁務官事務所(大使館のこと。「英連邦」加盟諸国相互間の外交使節団は「大使」「大使館」とは呼ばず「高等弁務官」「高等弁務官事務所」と称する)が見えるが、何といっても目につくのは、正面に見える雄大な国会議事堂(Parliament House)である。山を1つくりぬいて1988年に完成したこの議事堂は首都キャンベラのシンボルであり、中央には4本の足を持つ巨大な国旗掲揚ポールが聳え立つ。8年前に見た光景そのままであり、それだけに、この国会議事堂を目にしてはじめて「ようやくキャンベラに到着できた」と思えた。

▲国会議事堂(エンズリー山上から撮影)
(手前が旧議事堂、手前右が科学技術館、右方向に市中心部)

 国道23号線はこの国会議事堂の周りを円形に回りこむ周回道路を経由して南東方向に向かっており、それを5分ほど走ったところに、今回投宿するホテル「キングストン・テラス」はあった。ここは国会議事堂にも比較的近いキングストン(Kingston)という町(suberb)にあり、「ホテル」といっても長期滞在を念頭に置いたウィークリーマンションのようなところである。今回は、キャンベラに連続9日間宿泊する計画だったのでここを選んだ訳だが、室内にはキッチンと調理道具、冷蔵庫、皿洗い機、更には電気洗濯機と乾燥機もあり、普通に生活が出来る。

「キングストン・テラス」Kingston Terrace)(長期宿泊)
16 Eyer Street, Kingston ACT 2604
[email protected]

●5、昼食とコアラ探訪
 午後3時頃、「キングストン・テラス」にチェックインし荷物を置いたあと、さっそく遅い昼食をとるべく市中心部に出掛けた。
 当初の計画では、昼食はフードコート形式のレストラン群があるコンベンションセンターThe Convention Centre)に行くつもりであった。ここには「フィッシュ・アンド・チップス」を売る馴染みの海鮮料理やレバノン料理店があったためだが、実際に出向いてみるとホールは閉鎖され、壁には落書きが・・・。建物の状況からして最近閉鎖されたもののようだが、やはり8年も経つと色々と変わるものだ。
 気を取り直して、食事は市中心部でとることに。駐車場を出て色々と見てまわると、角の目立つところに御目当てのレバノン料理(ケバブ専門店)「アリ・ババ」Ali Baba)を発見。「アリ・ババ」はシドニーやキャンベラ、メルボルンで21店舗をチェーン展開する店で、何故豪州人の間でこれだけレバノン料理が食されているのかわからないが、とにかく人気店である。私はこの日、羊肉のケバブセット(Lamb Kebab meal)を食べ、久しぶりの味に大満足した。

「アリ・ババ」Ali Baba)シビック店(レバノン料理)
Corner Bunda St & Garema Place, 
Canberra City  2601

▲ティドビンビラに住む野生カンガルーの群

 さて、お腹も満たされたところで、郊外のティドビンビラ自然保護区Tidbinbilla Nature Reserve)に向かった。ここはキャンベラ西部の大自然の中にある自然保護区で、「自然保護区」といっても元からそこにあった自然の森を便宜的に保護区に指定したようなもの。かつては入場無料だったが最近有料化され、1日券(自動車1両分)8ドル、通年券13ドル50セント(1豪ドル=約66円)となっている。園内は「コアラの森」「カンガルーの囲い」といった仕切られた区画もあるが、基本的には動物は全て野生のまま=放し飼いで、園内を自動車で走っていると、時々左右に野生のカンガルーの群やエミューを見かける(保護区に着いたのは午後5時とやや遅めだったが、真夏ゆえ太陽はまだ出ていたし、この時間帯のほうが野生動物に遭遇する確率が高い)。実際、私が訪れた時もカンガルーとは容易に遭遇し、久しぶりにあの特徴的な「ピョン、ピョン、ピョン」というジャンプを生で見ることが出来た(生で見るとやっぱり感動モノ!)。

  

▲ティドビンビラに住む野生カンガルー

時々、上空にはキバタン(英語名「コカテゥー(Kockatoo)」。真っ白な体に黄色い羽を頭に持つオウム)が「ギャー・ギャー」という鳴き声を出しながら飛んで行く。「コアラの森」では、係員(レンジャー)がコアラがしがみついている木の凡その位置を示したボードがあり、30分程歩くとこれまた野生のコアラに2頭も出くわすことができた(余談ながら、あのコアラの毛の色はユーカリの木と同じで保護色になっている)。

 

▲「コアラの森」入口付近(左)とそこに住む野生コアラ(右)

●6、ナン無きインドカレー
 午後7時、コアラを2頭発見したことに満足してティドビンビラを出発し、コッターダム経由で市街地に戻った。
 夕食をホテル近くの商店街(Kingston shops)でとるべくショップスに向かうと、一番ホテルに近い手前側にインド料理店「タンドール」The Tandoor House)を発見。最近インドカレーを食べていなかったので、そこでビーフカレーとナン、ライスを注文して持ち帰った。
 5分ほど待って商品を受け取り、お金を払ってホテルに帰って中を確かめたら・・・なんと、ナンが無い!!お金はナンの分まで払っているし、その時に取りに戻ることも全く不可能ではなかったが、結局ナンを欠いたまま、ライスとカレーで普通にカレーライスを食べることになってしまった。

ザ・タンドール・ハウスThe Tandoor House)(インド料理)
39 Kennedy Street, Kingston ACT 2604 
phone:02-6295-7318
Licensed, BYO welcome

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