酸化還元半反応へ戻る
ある化合物が参加されたか、還元されたかを決めるには、酸化数の概念を使えば理解し易い。
例えば、次の反応式(1)の様に反応式が明記され、各炭素原子の酸化数が計算出来る場合は、左辺の各炭素原子の酸化数の合計と右辺の酸化数の各炭素原子の酸化数の合計を比べ、その増減から酸化・還元を判断する事ができる。
CH3CH=CH2 + H2 →(触媒)→ CH3CH2CH3 ・・・・(1)
しかし、有機化学の場合には、酸化・還元に対応する試薬を示さず、反応式(2)の様に原料(反応試剤ともいう)と生成物しか示さない場合が有る。
CH3CH=CH2)→ CH3CH2CH3 ・・・・(2)
この式(2)は完全な式ではないので、ここでは半(ハーフ)反応式と定義する。この半反応式に対して、次の手順で物質のバランスと電荷のバランスを取るという方法を適用すると、酸化数の和を直接計算せずに酸化反応か還元反応かを 決める事ができる。
a.原料と生成物を記した半反応式を書く。
b.左右の原子数を合わせ、各原子についてバランスを取る。酸素原子と水素原子の数を合わせるために、(i)反応が酸性溶液中で行われる場合にはH+とH2Oを加えてバランスを取り、(ii)反応が塩基性溶液中で行われる場合はOH-とH2Oを加えてバランスを取る。中性溶液中で行われる場合は(i)、(ii)のどちらでもよい。(物質バランスと定義する)
c.最後に、左右に電子(e-)を加えて電気的バランスを取る。(電気的バランスと定義する。)
a,b,cの手順でバランスを取った半反応式を作成した時、右辺に電子が見出される場合には酸化反応であり、左辺に電子が見出される場合には還元反応であり、左右どちらの辺にも電子が見出されない場合には酸化でも還元でもない反応と結論される。
a.半反応式: CH3CH=CH2 → CH3CH2CH3
b.物質バランス: CH3CH=CH2 + 2H+ → CH3CH2CH3
c.電気的バランス: CH3CH=CH2 + 2H+ + 2e- → CH3CH2CH3
電子が左辺に見出されるのでこの物質は還元されたと結論される。
[京都府立医科大学97より一部]