平衡状態


バスがあります。バス停AからB、C、Dを通って、バス停Eまで走ります。

バス停A → バス停B → バス停C → バス停D → バス停E

バス停Aを出発した時点で、お客さんは15人乗っていました。

最後にバス停Eに着まで、どの区間でも、ずーっと15人のお客さんが乗っていたとしましょう。

この場合、最後に乗っている15人は、最初に乗っていた15人と、同じ人でしょうか?

・・・・

分かりませんね。そうかもしれない、けれど全員違う可能性すらある。

例えば、バス停Bで3人のお客さんが下りても、3人のお客さんが乗ってこれば、バス停B→C間でも15人のお客さんが乗っている事にもなるからね。

このバスの場合、「お客さんが15人乗っている」という意味では「見かけ上の変化は無い」ですが、変化していない訳ではないんです。下りる数と乗る数が同じ、つまり「変化のバランスが取れているだけ」なんですね。

この様に、個々の出来事(この場合、お客個人)は変化していても、全体の変化のバランスが取れているから、全体として(この場合、乗客数)変化していないことになっている事を「平衡状態(へいこうじょうたい)」と言います。

貴方の体重を、一週間毎日測って見てください。

仮に毎日、同じ体重だったとしましょう。

では貴方の身体は、この一週間、何も変化していないでしょうか?

そんな訳ないですよね。

ヒトは毎日食事をします。水も飲みます。少なくとも呼吸は絶対します。 だから必ず、身体には新しい原子、分子が入ってきています。

一方でオシッコやウンコとして、または呼気、汗として、原子、分子を放出しています。

出る分の質量と、入る分の質量が釣り合っているから、体重自身は変化していないです。しかし変化自身が無い訳ではありません。

これも「平衡状態」ですね。

魚は水の中に棲んでいますが、酸素を吸って呼吸して生きていますよね。ですから水の中には酸素が溶けている訳ですよね。(基本的には酸素は水に溶けない気体と思って良いのですが・・・)

じゃあ例えば、コップの中に100粒の酸素分子が溶けているとしましょうよ。(あくまでも”例え”ですよ) 一時間後にそのビーカーを見ても、やはり100粒溶けていたとしましょうね。 そうすると、その100粒は、最初の100粒と同じ100粒とは限りません。 普段はまともに考えると、恐らく違う100粒です。

いく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」(鴨長明:方丈記)

国語の時間に出てくる言葉ですね。無常感を表す言葉として有名ですね。

同じように、空気中を漂っている酸素分子の中には、たまたまビーカーの水にぶつかる奴も居ます。その中には偶然水の中に入っていって溶け込む奴も居ます。

ですから、ビーカーの中の酸素分子は、常に増える可能性があります。 一方で逆も言える訳です。

水の中に溶けている酸素分子の中には、たまたま水面を通りかかる 奴も居ます。そうすれば当然、空気中に出ていく奴も居ます。 ですから、ビーカーの中の酸素分子は、常に減る可能性があります。 もちろん元々水の中に溶けている酸素分子が多ければ、出ていく酸素分子も多くなるはずですね。 逆に元が少なければ、出ていく分子も少なくなるはずでしょ? となると、中くらいで、「出ていく分子の数」と「入ってくる分子の数」がつりあうはずでしょ?

で、さっきのビーカーの話に戻りましょう。 今もさっきも、100粒の分子が溶けているという事は、ちょうど100粒でつりあっている訳です。 ですから、今ある100粒は、さっきの100粒とは恐らく違うはずですね。 でも、100粒入っている事実は変わらないはずですね。 このように、「変化していない訳ではないけど、トータルで考えると変化していない様に見える」事を「平衡(へいこう)状態」と言います。


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