製鉄

御承知の通り、鉄は鉄鉱石として、地面から掘り出されます。(関連地理

鉄鉱石というのは基本的には酸化鉄ですね。酸化鉄は要するに「鉄サビ」ですから、そのままでは車を作ったり、橋をかけたりするのには使えませんね。

ですから、還元(酸素を取り除く事)して、鉄にする必要があります。この作業が「精錬」「製鉄」ですね。

ここではその仕組を、考えてみましょう。

先に簡単に述べましたように、還元にはコークス(炭素)を燃やして作る一酸化炭素の還元力を利用します。

2C+O22CO

3CO+Fe232Fe+3CO2

炭素を加えるのは、高温空気でCO(一酸化炭素)を生成して、その還元力を利用するためです。(COは還元剤として有名。また、通常は炭素を燃やしても一酸化炭素ではなく、二酸化炭素にまでなるが、高温の場合、一酸化炭素が割と安定なので、一酸化炭素にもなります)

この一酸化炭素が、酸化鉄を還元します。

ですから「還元剤」があれば良いので、一酸化炭素でなくても、他の還元剤を加えれば構いません。

出題例では、91年に防衛医科大学がアルミニウムを還元剤として利用する問題を出題しています。これでも構いません。

ただ、現実にはそのような方法は使われません。だって、アルミニウムの方が鉄より高価ですから、高く付いてしまうからです。そのような非現実的な方法は、一部の特異な大学以外には出ないでしょう。

石灰石CaCO3は酸化するとCaOとCO2となります。

鉄鉱石にはSiO2(石コロの主成分ですね)が含まれていますので、これを取り除くために、石灰石を加えています。なぜならSiO2は酸性なので、塩基性であるCaOと反応させ、SiO2を取り除くために、石灰石を加えるのです。SiO2はスラグとして取り出され、建築材料として使われます。

スラグ

主成分はCaSiO3、Al2(SiO3)3で、銑鉄より軽いため、銑鉄のうえに浮かぶように溜まる。 スラグは建築材料として用いられるが、もっと重要な意味がある。 溶鉱炉中は高温なので、FeはO2と触れると、すぐ酸化してしまう。 しかし底に溜まる銑鉄の上を、スラグが覆っているので、銑鉄が吹き込まれる熱風にさらされる事が無く、酸化する事もありません。これがもう一つの、スラグの役目です。


鉄を鉱業的に製造する時に必要な原料は、鉄鉱石、コークス、及び石灰石である。 溶鉱炉に原料を入れ、下部より空気に酸素を混ぜた熱風を吹き込むと、鉄鉱石中の鉄の酸化物が還元されて鉄が得られる。原料の鉄鉱石には赤鉄鉱(主成分:Fe23)、磁鉄鉱(主成分:Fe34)などがある。一方、黄鉄鉱はFeSを多く含むので製品の品質が劣り、原料には適さない。鉄鉱石中の主な不純物として含まれるケイ砂(SiO2)は、石灰石と反応してケイ酸カルシウム(例えばCaSiO3)になって除かれる。溶鉱炉から得られた鉄は、炭素の量を約3.5%以上含み、銑鉄と呼ばれている。これに空気や酸素を吹き込んで燃焼させ、炭素の量を1.7%以下にすると鋼鉄ができる。鉄は濃硫酸を貯蔵するタンクにも用いいられる。これは鉄の表面に侵されにくい薄い膜ができて内部を保護しているからである。これを不動態という。

[日本大学問題文より(赤部は出題時に空欄)]


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