打ち消し

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打ち消しとは

打ち消しとは、不健全な、破壊的な、あるいは脅威的な思考や行動を、反対の行動をとることによって打ち消したり取り除こうとしたりする防衛機制のことです。

たとえば、誰かに暴力を振るおうと考えた後、その相手に対して過度に優しくしたり、融通を利かせたりします。

精神分析の創始者ジークムント・フロイトがその生涯において提唱したいくつかの防衛機制の一つであり、その多くは、後に娘のアンナ・フロイトによってさらに発展させたものです。

ドイツ語で「Ungeschehenmachen」という言葉は、この防衛機制を表すために最初に使われました。

直訳すると「起こらないようにする(Undoing)」という意味ですが、これは本質的に「打ち消し」の核心をついています。

打ち消しは、逆境や災難を避けるため、あるいは消えたように見せかけるために、何らかの方法で過去を変更しようとする現象を指します。

防衛機制としての打ち消し

防衛機制としての「打ち消し」は、本人が心理的に防御したい苦痛な衝動と反対の意味を持つことをすることで達成されます。

たとえば、自己主張した後で謝ったり、誰かに攻撃的な思いを抱いた後でその人に親切にしたりすることです。打ち消しを用いることで、ある出来事の結果だけでなく、その出来事そのものを、まるでそれが存在しなかったかのように、象徴的に元に戻そうとするのです。

この点で、打ち消しは魔術的思考と結びついています。

しかし、「やり直し」が心の中である程度「可能」であれば、「やり直し」をさせられた苦痛な衝動と直接対決することを妨げ、防衛的な機能を果たすことができるのです。

打ち消しの例

打ち消しの例として前のものを部分的に否定するような行為やコミュニケーションがあります。

・親しい友人同士が激しい口論をしたが、次に会ったときその口論がなかったかのように振舞う。
・友人を仕事に推薦するよう頼まれたとき、ある男が軽蔑的な発言をして、その友人がその職に就くのを妨げた。

フロイトは「取り消し」を使って、ある強迫行為を説明しました。たとえば、若者が性的な思考や感情という罪を取り消すために、アルファベットを逆に暗唱するといった具合です。

ある人は、お店でわざと人を押しのけて通り過ぎましたが、その人が体の弱い人だと知って自分の行為に罪悪感を抱くかもしれません。

そのときは謝ったり、手伝ったりして、自分の行為を取り消そうとするかもしれません。

ある女の子が、別れた元カレに楽しいバレンタインカードを送りました。

カードを送った女の子は、相手の気持ちを傷つけたことに罪悪感を覚えています。

メッセージは、「私は、本当はそんなに悪い人じゃない」というものです。

そんなカードを受け取った男の子は、元カノがサディスティックに自分を傷つけようとしているのだと思ったそうです。

しかし、フロイトに言わせれば、彼女の無意識の目的は、自分がそんなに悪い人間ではないと確信させることだったのでしょう。

上記以外にも以下のような例があります。

・シェークスピアの「マクベス」に登場するマクベス夫人は、殺人を犯した後で強迫的に手を洗う
・妻に不親切な態度をとった男が、妻に花を買う(ただし、謝罪はしない)
・行列の中で他の人の前に割り込んできた人が、その人のためにドアを開けてあげる
・騒がしかったティーンエイジャーが、頼まれもしないのに部屋を片付けてしまう

打ち消しの意味

私たちは、自分の価値観から外れたことをした(あるいは考えた)とき、恥を感じ、それ故に間違ったことをしたことを正さなければならないと思うのです。

打ち消しは謝罪の一形態です。

以前の行動を取り消すことで、その人は自分が間違っていたことを暗黙のうちに認めているのです。

特に、相手が「取り消す」行動をとったときに、あなたが相手を許すことを示すことで、相手があなたにした過ちを取り消す手助けをしましょう。

また、自分の不安を解消するためだけでなく、他人との関係を修復するためにできることを提案し、間違ったことを取り消す手助けをすることもできます。

説得において、人にされた過ちは、その人が見返りを要求する機会です。間違ったことをした人は、その間違いに気づけば、それを取り消すチャンスに飛びつくでしょう。