ここはかつての植民地政府高官公邸が建ち並んでおり、後にケダ国王やタイの富豪が住居を構えた。なんとあのラッフルズ卿の住居（Runnymede）もあった。いずれの邸宅も海に面し、広大な庭にテニスコートやプールがあった。華人の間ではAng Mo Lor(European Road)ともAng Mor Lau(European Bangalows)とも呼ばれていた。20世紀になると邸宅はヨーロピアンから、ゴム農園や錫鉱山で成功した成金華人の手に渡った。それはもう贅沢な暮し振りであり、さながらペナンのビバリーヒルズ(Millionaire's Row)の様相を呈していた。

しかし裕福な一族も1930年の世界恐慌で衰退し、第二次世界大戦で邸宅も日本軍に接収された。戦後には主が戻った邸宅だが、多くは維持できず企業や州政府の手に渡った。メンテナンスが行き届いてる邸宅もあれば、廃墟になり売りに出ているものもある。



「Ang Mo Lor の主な邸宅」

次は「TheNortham」正面、欧州の古城を思わせる邸宅がある。プランテーションで成功を収めた華人Lim一族が住んだWoodvilleである。1925年に建設されたこの邸宅は、「Stark&Mcnail」社のCharls Millerが設計した。主は当時ビーチストリートで華麗な姿を誇っていた香港上海銀行（今ではモダンなビルに改築）を手本に、設計を依頼したと言う。

アールデコ（Art Deco）調のケダハウスはパラディオ様式の邸宅が立並ぶNortham Road では異彩を放つ。ケダ州王族の別邸として20世紀前半に建てられた。当時Alor Setarからペナン島の日帰りは困難であった為、所用でペナン島に来た王族はこの別邸に1泊して帰ったそうだ。ペナン大橋が完成した現在はほとんど利用していないそうだ。

Northam Road で堂々としたたたずまいを見せるこの邸宅は貿易会社を営む華人により1919年に建設された。設計は「Stark&Mcnail」社のJames Stark。完璧な左右対称構造、そしてコラム、ペディメントなどのモティーフはパラディオ様式を忠実に再現されている。建物背部には劇場もあるという。現在は「Ban Hin Lee Bank」が所有し、ジョージタウンで最もメンテナンスの行き届いている邸宅である。

海鮮レストラン「Ocean Green」入り口にある、極めてユニークな造形を持つ邸宅。2002年に修復されたが、残念な事に崩れた漆喰細工の上に派手なペイントを施すだけのお粗末な改修工事であった。現在ディスコティック「C-Front」として営業している。

プロテスタント墓地近くにあるこの邸宅は、錫鉱山で富を築いたLeong Feeの息子によって建てられた。ケンブリッジ在学中にイタリア美術に魅せられた彼は、「Stark&Mcnail」社のCharls Millerに邸宅の設計を依頼した。窓にはステンドグラスを配し、内装はイタリアのデザイナーが手がけた。他の邸宅とは趣の異なる仕上がりである。ここは最近改修工事が完成し、レストラン「Thirty Two」として営業が開始された。

（2004年1月19日）

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