植物の品種改良



目次

実は、食用、園芸用を問わず、現在栽培されている植物の大部分は、何らかの形で品種改良されています。野菜であれば味をよくするため、或いは害虫の被害を少なくするため。観賞用の植物であれば、美しい色、新しい色を発現させるためなど、その目的は様々。そして、その方法もまた様々なのです。今回は、この品種改良について考えていこうと思います。


交配による品種改良

読んで字のごとく、ある植物の雌しべに、他の植物の花粉を人工的に受粉させるなどして、新しい品種を作るのが交配です。
しかし、この方法には限界があります。
まず、人間でも動物でも、生まれてくる赤ちゃんのどの部分が、お父さん、お母さん、どっちに似るのか、全く見当がつきませんよね。植物でも同じで、他の植物の花粉を受粉させたからといって、必ずしも理想どおりの形質が発現するとは限らないのです。
また、人間と猫の間に子供はできないのと同じで、全く違う種類の植物同士を交配することもできません。
そこで、これらの問題を解決すべく生み出されたのが、遺伝子組換えの技術なのです。


遺伝子組換えによる品種改良

遺伝子組換えとは、ある植物に人工的に他の植物の遺伝子を組み込む方法。これにより、理想どおりの形質を発現させやすくなり、また全く違った種類の植物の持つ形質を他の植物に取り込むこともできるようになりました。
以下、その方法を説明いたします。

アグロバクテリウム法
アグロバクテリウムとは、植物の体内に侵入し、感染症を起こさせる微生物のことです。この「体内に侵入する」性質を利用して、特定の植物に組み込ませたい遺伝子を組み込ませるのがこの方法です。

1) アグロバクテリウムの遺伝子(図中の青い部分)の一部を酵素で切り取り、その部分に目的とする遺伝子を(図中の赤い部分)を組み込む。
2) 新しい遺伝子を組み込まれたアグロバクテリウムを、目的とする植物に接触させる。
3) アグロバクテリウムが植物の体内に侵入し、遺伝子が組み込まれる。

エレクトロポレーション法

1) 植物から、「プロトプラスト」と呼ばれる細胞壁を取り除いた細胞を分離する。
2) このプロトプラストと、組み込みたい遺伝子を同じ液体の中に入れ、電気ショックを与える。
3) 電気ショックにより、プロトプラストの膜に小さな穴ができ、そこから遺伝子がプロトプラスト内に侵入する。
4) こうしてできた細胞を培養することにより、新しい遺伝子をもった植物を育てる。

パーティクルガン法

1) 金などの微粒子(パーティクル)に、組み込みたい遺伝子をまぶす。
2) 遺伝子をまぶした微粒子を、強い圧力を用いて植物内に打ち込む。


遺伝子組換えは安全か

この問いに対する答えは、実は現在のところ明確になっていません。
まず、現在食用にされている野菜について考えてみましょう。現代人に好まれるのは、苦味や渋みが少なく、また料理しやすく食べやすい野菜であり、こうした野菜を作るために、長年にわたって何度も品種間の交配が行われてきました。
しかし、人間にとって美味しい野菜というのは、害虫にとっても美味しい野菜なのです。元来野菜自体が害虫から自らを守るために持っていた苦味、渋み成分を、人間の手で交配を重ねて取り除いてしまったわけですから、これは自業自得なのです。
そこで、人間が考えたのは、まず農薬を使って虫を退治すること。しかし、農薬自体が人間の身体に有害なのは言うまでもありません。
ということで人間は、味は美味しいままで、虫をよせつけない機能を持った遺伝子、あるいは農薬の成分を分解する機能を持った遺伝子を野菜に組み込む技術を考えつきました。こうしてできたのが「遺伝子組換え食品」と呼ばれるものです。
農薬まみれの野菜と、遺伝子を組換えられた無農薬野菜、どっちが安全なのでしょう…。その答えは今のところ未知ですが、遺伝子組換え食品が恐れられているのは、これらの食品を1-2回食べただけでは全く影響が無くても、長い目で見た際に人間にどのような影響を及ぼすのか予想がつかない点なのです。農薬が長年にわたって使用されてきたのに対し、遺伝子組み替えの技術は開発されて日も浅いため、これらの食品を数十年間食べつづけたら人間はどうなるのか、現在のところは知る人ぞ知る…といったところです。

ところで、皆さんは、もし遺伝子組換えによって真っ赤な水仙や真っ青なチューリップをつくることが可能になったとしたら、自分で育ててみたいと思いますか?私はどうも抵抗があります。


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