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五人の男女が集まった。

目指すは「十階」と呼ばれる奈落の底、
この世で最も地獄に近い場所・・
彼らはその闇の中の闇を経験している数少ない冒険者達であった。

「これが地図だ」

頭の中には地下一層目から約九層目までの地図が焼きつけられている。
もちろん魔物たちが何かの仕掛けを施していたり、荒っぽい魔導士が
強力な呪文で石壁を吹き飛ばしているかもしれないが・・

ヴァーンガルツはテーブルの半分もある羊皮紙に書き込まれた十階の地図を
無造作に広げた。何ケ所かに矢印が書き込んであり、随分と離れた場所に
跳んでいる。

「ここで飛ばされる」

「だが、跳ばなきゃ十階は進めん・・だろ?」

「そのとおり」

十階には他の階とは違った罠が仕掛けられていた。
一歩踏み出せばどこに飛ばされるか判らぬ不可思議な仕掛けだ。
ある者は石の中へ、またある者は迷宮の遥か上空へ・・いずれにしろ
死が待っていた。中には運の良い者もおり、地下迷宮の入り口へ飛ばされ、
そして地図に書き加えられる。
生き残る事のできる一歩がひとつ、またひとつ・・

「間違いないのか?」

「多分な・・最後の部屋はおそらくこの次だ」

ヴァーンガルツはひとつの矢印を指差した。
その矢印の先には何もない。
戻ってきた者がいないという証しでもある。

「跳ばしの罠はどれも同じ配置になっている・・戻った連中に尋ねて
 みたが、やはり罠の位置は変わっていない。
 奴の部屋はこの先、そしてムラマサはおそらく奴の部屋にある・・」

レイナ アッシュの眼が輝いた。

「ワードナの部屋には無い。
 それは私が保証しよう」

「なぜ知っている?」

ド ウル ワトーが訝し気に詰め寄った。

「あの刀に漂う妖気は我が師の術でも防ぎきれる物ではなかった・・
 東洋の僧に頼み、封印した後に別の部屋に隠してある。
 ・・おそらくこの部屋だ」

レイナは壁に囲まれた空間を指差した。
扉はどこかに隠されているのだろうか・・
その険しい様子にド ウル ワトーは思わず頷いた。
普段の彼女とはまるで異なった表情である。
人を超えた魔性・・

「あの刀を見つけたとして・・どうするつもりだ?」

彼女に誤魔化しは効かない。

「見つけてみなくては分からん。
 持ち帰るかどうかもな・・俺はただ伝説の武器ってやつを
 この眼で拝んでみたいだけだ」

「呆れた!」

レイナから殺気が消えた。
鼻を一つ鳴らすといつもの嘲笑が甦った。。

「あんたはいつまで経っても子供ね、ヴァーニィ」

彼女はリィンの肩を抱き寄せ、耳元で囁いた。

「こんな馬鹿の相手してるんじゃ、命が幾つあっても足りないよ」

「もう二、三、なくしてるわ。。
 でも平気、私には子猫の魂が宿っているの」

男たちの背中に笑いが浴びせられる。
それでもヴァーンガルツはいつになく真面目に言い放った。

「抜けられちゃあ困るが・・それが理由で潜れないなら仕方ない。
 今回は諦めるさ。
 ・・あんたはどうだいヅェート、
 報酬は約束するが・・見てみたいとは思わないか?」

部屋の片隅で静かに聞き入っていたヅェート ラゥイルは、閉じていた
その眼を開けた。

「武器にも報酬にも興味は無い、、
 最後の部屋に辿り着ければよい」

その眼はまるで切っ先であった。
ヴァーンガルツは彼の視線を追った。

「奴の部屋は・・この矢印の先だな?」

黒装束の男は静かに頷き、そしてまた眼を閉じた。


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