国際サバイバル道場
新世紀は帰属超える「個」の時代
-ボーダレス人間の時代到来-
前世紀は、日本にとってはもちろん、世界も大きな変化を経験した。 新しい世紀は技術革新や社会、政治の激動がさらに輪をかける。 カギになるのは社会や経済を作りあげる人間だ。組織、距離、情報の限界を超えた歴史上初めての自由人が経済を担う「素子」になる。......
新世紀に注目すべきは、日本といわずどの国、どの民族が高度成長を遂げるか、支配的な地位を占めるかではない。情報革命の深化により、国や組織への帰属から解放された個人が生まれ、距離の制約を解かれた地球規模の自由な活動が始まることだ。
- 西岡幸一 (日経論説副主幹) 日経新聞2001年1月1日9項の未来序曲より-
いよいよボーダレス人間の時代が来ました。これは組織にも国にも地域にも縛られない自由な「個人」の人間の時代であり、そして地球規模で世の中を見ることのできる人間、そしてどんなところでも暮らすことのできる順応性を備えた国際派人間の時代ということもできるでしょう。
新卒者が企業や組織に就職してもいつその組織がつぶれるか、他の会社に吸収されるのかわからない時代になってきたのです。これはまたは公務員といえど民営化や、縮小などの波にあおられ、いつリストラにあうかわからないのです。
2002年には地球の裏にあるブラジルで、吉川栄治作の宮本武蔵ポルトガル語訳がベストセラーになりました。サムライ精神がブレイクして、ブラジルからブラジル版サムライたちが日本に殴りこみに来るようになりました。
日本では、宮本武蔵に続いて新撰組もブームになっていますが、新撰組は百姓がサラリーマンになるひとつのチャンスとして、命をかけての脱皮を描いています。マンガ「サラリーマン金太郎」もそうです。
しかし、宮本武蔵は、百姓から仕官(殿様に仕えるサムライになること)をしようと戦(いくさ)に参加し、破れて落ち武者になり、散々な経験をして誰にも仕えず自分の武士としての技と道を求めた修行者となったのです。そして強い相手を求め道場破りをやったりする一方、生きるためには百姓もしたりしています。
いざとなれば百姓もできる宮本武蔵だったから、仕官(就職する)する必要もなく、殿様や役人に媚をうる必要もなかったのです。これがカッコイイと思います。
なにかの職をもっていれば、またはなにかの芸をもっていればどこでも生きていけるのです。戦国時代に落ち武者たちは傘貼りをしたり、用心棒をしたりいろいろなサバイバルスタイルがあったようです。しかし、宮本武蔵ができた農業は、一番人間としての尊厳を守り経済的に自立できる職業なのかもしれません。
スエズ運河建設の大事業を成し遂げたフランス人レセップスは、理想を追い求める熱血漢で若いときにエジプトに外交官として派遣されましたが、彼の得意な乗馬の腕をエジプトの総督官に見込まれて手に負えない息子に乗馬を教えてくれと頼まれました。その子供に乗馬を教えながらレセップスとその子供の間にすばらしい師弟関係ができ、彼はこの子供に、当時不可能な夢の計画とされていたスエズ運河構想がどんなに世界のためになるのかを熱っぽく語っていました。
エジプト赴任の仕事が終わり、彼は外交官をリストラされてから田舎で農場を管理していました。レセップスが50歳を過ぎて、彼が乗馬を教えた子供はエジプトの総督となりスエズ運河を建設しようと考え、レセップスを探させました。レセップスは依頼を受けて駆けつけ、期待を裏切ることなく事業を遂行させました。 夢見る人間が、当時は技術者たちが不可能だといっていた世界最大の土木建設事業を完成させたのです。彼は60代で世界的なヒーローとなり、エンジニアでもなかったのに当時の土木建設業界の最高権威にまでなりました。そして20代の花嫁を迎え、パナマ運河建設に70歳で取り組み、12人の子供をもうけました。
今リストラの経験をした人は、仕官をやめて宮本武蔵のように独立したサムライを目指す時なのかもしれません。また、大学や高校を出て社会人になろうとする人たちも企業や組織に入ることは大事なことですが、それが必ずしも保障された生き方ではないということを頭におき、いつ自分が予期しないときに組織がつぶれたり、またはリストラにあったりした時に自分はなにを武器にサバイバルできるのかということを常に考えていかなければならないと思います。
国際化する日本とグローバル化する世界で生きていく「インターナショナルなサムライの時代」がきたのです。
<国際派人間入門>
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