わたしは常々、「アメリカ人の英語ってすごくねちっこく聞こえるよなー。あれは小さい頃から
鍛えないと、なかなかできるものではない。」と思っている。
この「ねちっこい」(「ねばっこい」と言ってもいい)という言葉の聞こえは悪いけれど、
別に悪い意味ではなく、あとに引くような感じの音のことを
言ってるのだが(分かりますか?)、そう聞こえる原因は、「アー」という発音にあると思う。
car, girl, work,
nurse
などの赤字の部分に発音。
「アー」と日本語で表記するとひとつになってしまうけれど、2種類ある。しかし、その違いはここでは重要
ではないので、詳しい説明はしない。しかし、いずれにしても、アメリカ英語では、これを
舌を丸めながら言いますよね。あれがねちっこく聞こえる原因だと思う。
さて、マレーシア英語では、この「アー」がすごく短く発音される。ほとんど「アッ」という感じで
ある。ゆえにねちっこさはなく、ドライな感じに聞こえる。
例えば、「car park(駐車場)」は、おおげさに言うと「カッパッ」という感じである。これは一度分かればなんてことないの
だが、このルールを知らない時は、何を言ってるのかさっぱり分からないことがあった。
あるとき、わたしはタクシーに乗った。運転手と世間話をしていたとき、
「この辺、歩かないほうがいいよ、危ないから。この前、お客さんがこの辺で強盗にお金をとられたんだって
。」
と言った。そして、次のように言った。
「He believes it was a god who robbed him.」
『強盗をしたのは神様だと思ってる』??試練をお与えになったとか(んなバカな)??
訳がわからなかったので、わたしは
「God?」
と聞き返したら、
「Yes, god.」
と運転手は言った。わたしは頭の中がクエスチョンマークでいっぱいのまま、タクシーを降りた。
その夜、ダンナに「こんなこと言ってたんだよー、変だよねー。」と話したら、彼はすぐに、
「あ、それ、『guard(ガード。ガードマンのこと。)』って言ったんだよ。」
と教えてくれた。
そう、「ガード」が「ガッド」って聞こえちゃうくらい、短いんです。
マレーシアではどこに行ってもたいてい英語が通じるから、全体的な英語力(というか、英語での
コミュニケーション能力)は高いのだけど、もちろん「どの程度英語が話せるか」ということは、
個人でかなり差がある。もうネイティブ並みの人から、普通に英語で話して困らないという程度、
あと、英語力は高くないが、適当に単語をつなげて驚くほど上手にコミュニケーションを図る人など。
で、これから述べるのは、
主にこの「適当に単語をつなげて驚くほど上手にコミュニケーションを図る人」が使う文法である。
非常に簡単なことで、already+動詞の原形で過去形としてしまう。例えば、
“I already go there."
と言えば、つまりは
“I went there."
ということなのである。
これは、マレー語では「sudah+動詞の原形」で過去形になること、中国語でも「動詞の原形+○○」
で過去形になることから来ているのだと思う。(この例に限らず、ここで話されているほかの言語の
文法を、英語に応用しているという例はいくつか見られる。)
これはalready+動詞の原形でも使うし、動詞の原形+alreadyの順でも使う。レストランで、もう注文した
のに、別のウェイターが注文をとりに来たときなど、簡単に、
“Order already .(もう注文したよ。)"
と言う人も多い。
また、ふつうに文を現在形で全部言ったあとで、alreadyを最後にくっつけて過去形とする人もいる。
さて、まだわたしが塾講師で、中1の英語の授業で、過去形を教えていた時のこと。
一通り過去形の説明を終えてから、わたしは言った。
「“I play tennis." これを過去形にすると?」
当然わたしは、「I played tennis.」という答えを期待していた。
すると、Nくんがすかさず言った。
「I play tennis already あ〜〜。」
みんな大爆笑。彼はもちろん冗談で言ったのだが、ほとんど人生をマレーシアですごしているというFくん
いわく、
「そういうふうに言わないと通じないよ。よく行くコンビニのお姉ちゃん、
『Eat already あ〜〜?』って聞いてくるけど、『ate』っていったら、
通じなかった!」
そういうこと、あるんです。これが有名な(?)、「マレーシアにおける英語教師の苦悩」。