始まりは何時でも終わりを感じさせるけど
色褪せない愛だって何処かにあると信じてる

過ぎ去りし日々はやがて二人に永遠の意味を刻むだろう









【Tears I Cried】




悟浄はいつものように名前など知らぬ女性のベッドで目を覚ました。西の窓から見える太陽が悟浄に夕方と教えてくれた。珍しくないことだ。夜行性の悟浄にとって夕方に起きるのは早起きな方。

ナイトテーブルからタバコのカートンをライターと一緒にとった。
「・・・っち・・・空かよ・・・」
どうやら最後の一本を今朝吸ったらしい。
重い腰を起こし、昨日一緒に寝た見知らぬ女性を一目見て彼女の部屋を出た。どうせ名前も知らなければまた会うことも無い。







何も考えずただたんに町を歩いていた。切れたタバコを買いに行くだけに町をふらふら一人でするのは慣れている。

もう3年以上は一人で生きている。母が死に、兄も出て行き、自分一人で生きて行くしかない毎日。はっきり言って、もう疲れた。ギャンブルで金を稼ぎ、それで食べて、体を売って女の家に泊まる。ギャンブル運だっていつまで続くかわからない。いつか自分よりも強いやつだ出てきて金を全部持って行くかもしれない。



・・・そんな崖に生きている自分が嫌いだ。







「おじさん、ハイライト」
いつもタバコを買う店にやってきた。
ここはタバコの他に食料品も置いてある。よくここで買い物する。
タバコを買って、さぁ、店を出ようとした。その時。



「ちょっと。そこの栄養不足の未成年。」
どこからか女性の声がした。
「・・・俺?」
自分とおじさんしかいない店で、『未成年』と言ったら悟浄だけ。声の方角に顔を向けた。
「そう、あんただよ。なにタバコなんか買ってんのよ?」
振り向いて見たら、悟浄に話しかけている女性は白衣を着ていた。
「・・・べつにいいじゃん。俺の身体だし。俺の勝手にしても文句はねーだろ。」
「文句あるから言ってるんじゃん。ほら、タバコを渡しなさい。」
細い長い指を悟浄に向けた。手のひらを上にして。
「ヤダ。俺が買ったんだから。」
「そんなモノ買うな。」
「他人にどうこうしろって言われたくないね。とくに、それだけの酒を買っているアル中女に。」
「あたしは未成年じゃないもん。あんたは見るからに未成年だから止めてるの。」
「ご名答。俺は15歳です。おネーさんは見るからに20歳前後?」
「20」
悟浄好みの二十歳前後。あまり知らない真面目タイプ。顔も良くは無いが、悪くも無い。印象が薄い顔。
「ふ〜ん。」
と、言い残して悟浄は店を出た。
「コラ!まだ話しは終わってなのに!」
後ろから聞こえる女性の声。





へんに話を打ち切った悟浄はとにかくあーゆー女は苦手だった。(以上を含めて)なにが正しいのか教えようとする女。自分の周りにあまりいないタイプだから苦手なのかもしれない。周りにいる女はみんな遊び人だから。






**********************************************************************

今夜もいつものバーでひと稼ぎしに行く。
「よう!今日こそはお前に勝ってやるぞ、ガキ!」
いつものメンバーがそろっていたテーブル。
「どうかな?俺には幸運の女神が付いてるからな」
声をかけた男の隣に座り、ビールを頼む。
「へっ、その減らず口、今夜叩きってやる」
カードを配る男が悟浄を脅すように言う。
「〜〜怖いねぇ・・・」






「ねぇ・・・あたしも入れて。」





悟浄は自分の頭の上から話している女性を見上げた。
「・・・さっきの・・・」
「あら?栄養不足の未成年くんじゃん。・・・やっぱりアルコール飲んでる。さっきのタバコまで。」
悟浄の隣に椅子を引いて、配られたカードを拾う。
「あんたこそさっき買ってた酒はどうなったんだ?」
自分のカードを見ながら聞く悟浄。
「家に持って帰った。」
「あそっ。・・・見ない顔だけど、どっからきたの?」
「西。」
「なんでまたこんなとこに?」
「医者を探しに。」
「医者?自分も医者じゃないの?」
「医者だよ。でもやっぱり自分のことは自分で見切れないじゃん。」
「そう言うもん?」
「そう言うもん。」


「ショーダウン」


「どうだ?!フルハウスだ!」
「4カードだ!」
今度こそ勝つ!と思っていた男たちに悟浄は冷たく、
「・・・ストレート・フラッシュ。」
「「「!!!!!」」」
また負けた。
「で?おネーさんは?」
「あたしもストレート・フラッシュ。」
カードをテーブルにおいた。
「あら、これはスペードのストレート・フラッシュだから、『ロイヤル・ストレート・フラッシュ』って言うのかな?」
医者はにっこり笑った。
「・・・」
「す、すげー!!!!!」
「この悟浄に勝った!!」
「ねーちゃん、いい腕だねぇ・・・」
「って事は、あたしがこのお金貰っていいのよね?」
賭け金を全部貰って行く。
「・・・信じらんねー・・・すっげーじゃん、おねーさんは。」
悟浄は珍しく負けた自分にも驚いているらしい。
「上には、上がいるのよ。わかったら帰りなさい。あんたみたいなガキは家に帰って親の手伝いでもするのよ。」
お金を持って、医者はテーブルを離れ、バーを出た。
「おい、もう行くのかよ?」
他の男達が止めようとしたが、応じなかった。
「・・・俺も今日はこれまでにしとく。なんかノリが一気になくなったわ。」
悟浄もテーブルを離れ、医者の後をおった。







「なんで付いてくるの?」
スタスタ悟浄を見ないように早足で歩く医者。
「家がないから。」
そんな医者の後ろをぴったりくっついて歩く悟浄。
「家出?」
「まぁそんなとこ。家がない家出。」
「・・・なんであたしについてくるの?」
「名前は?」
「質問で返すな。」
「名前教えて。俺、悟浄。」
「悟浄くん、キミは帰る場所が無いならそこら辺の女捕まえて泊めさせてもらいなさい。どうせいつもそうしてるんでしょう?」
「わかる?そうだよ。だからこうやっておねーさんの後を付いて来てるんじゃん。」
「・・・」
飽きれてた。
「名前なに?」
「・・・。」
「?へぇ・・・いい名前。」
「あたしは男にこまっていないから泊めないわよ。」
「そう?結構上手いって評判なんだけど。」
「それは、それは。でもあたしはあんた見たいな命を粗末にするヤツが嫌いなの。」




「・・・じゃぁ俺、患者になる。」




「・・・は?」
ついに足を止めて、悟浄を見てしまう。
「俺のこと『栄養不足』って呼んだだろ?じゃぁ俺に栄養与えて。患者になるから。命は大切に。」
「うちは入院室がないので。ってか、宿を借りてるから無理です。」
「一緒に寝ていいけど。」
「患者と寝る医者がどこにいる。」
「ここ。」
「・・・あのなぁ・・・」
本当に困った。
「医者として患者を路地に放り出すわけにもいかねーだろ。大体『命を粗末にするやつが嫌い』って自分で言ってるくせに。」
勝ち誇った悟浄の笑み。同じ身長のの瞳を真っ直ぐ見た。
「・・・はぁ・・・変な気起こすなよ。腐っててもあんたは患者で、あたしは医者だから。わかった?」
「わーってるって。・・・んじゃ、帰りましょうか、センセ」
ニコニコしながら今夜泊まる宿を見つけた悟浄。・・・今夜だけではない。明日もある。
「・・・こっち。」
そんな悟浄を宿まで導く医者の。









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