彼
思いもしなかったのだ。こんなにもアヴドゥルのことを知っていたなんて。
もしかしたら、無意識のうちに考えないようにしていたのかもしれない。意識して見て、考えてしまったら、これ以上好きになってしまうから。本当はこれ以上なんて、もうないのに。
もう、どれくらい好きなのか、わからないくらい好きになっている。
困ったことに、それが現実だ。
「……」
格好悪い。そうポルナレフは思う。
―――あ、なんか腹立ってきたな―――
相変わらず規則正しい呼吸を繰り返しているアヴドゥルの顔を少し、睨み付ける。悔しいのだ。自分ばかりが振り回されているようで。
ベッドのスプリングをあまり軋ませないようにそっと手をつく。そして、アヴドゥルの頬に唇を寄せた。眼を覚まさせないように、軽い、ほんの触れる程度のもの。
「……っ!?」
突然、手を掴まれて驚く。慌てて身を引こうとするが、そうする前に思い切り引っ張られ、アヴドゥルの上に倒れ込んでしまった。
「…って、何すんだよ!」
抗議の言葉を口にするポルナレフの顔は、自分のしたことがバレているのではないかという焦りから、真っ赤だ。身を起こそうとしても、アヴドゥルに手を強く掴まれていて、逃げられない。
「随分と嬉しいことをしてくれるな」
真っ赤なポルナレフを見て、おかしそうに笑いながら言う。
「……どこから起きてたんだよ」