ECHO
そんなこと、考えもしなかったのだ。
だって、そんなこと初めから考えている馬鹿はいない。だから、そんなこと、考えもしなかった、ましてや思いもしなかったのだ。だから、心底ショックだった。
「……」
視線はいつの間にか窓の外の星を見ていた。真っ黒、というよりはどこか濃い藍色を思わせる、その夜の帳に包まれた空には、一面に散らされたような光の破片たちが瞬いている。大きなもの、色のついたもの、その見える様は様々だ。視線はいつの間にかそれらを捕らえて、放せなくなっていた。
言葉が、蘇る。
―――砂漠で迷ったら星を見ろ、と言われている―――
あれはいつの夜だったか。
彼がまだ、目の前にいて笑って話していてくれた頃の言葉。説教じみた言葉のように聞こえて、聞き流してしまおうかとも思ったけれど、妙に耳に残った言葉。他にもたくさん話したはずなのに、覚えていない。この言葉だって、曖昧だ。
どうして、覚えていないのだ。
―――己の位置を把握できるからな―――
ここは砂漠じゃない。
砂漠での言葉を教えてもらっても、役になんか立つわけがない。
―――星が導いてくれる、というわけだ―――
違う。自分の位置がわかったから、自分の足で歩いていくだけだ。
ここは砂漠じゃない。
ここは砂漠じゃない。
ここは砂漠じゃない。
それじゃあ、どうして。