痛い背中
「……」
眼を奪われる、ということはこういうことだろう。何度見ても慣れないのは、そのあまりにも綺麗すぎる色彩のためか。アヴドゥルはドアを閉めるのも忘れて見入ってしまった。まだ、温まり始めたばかりだったバスルーム内の空気が外気でたちまち冷えてゆく。
「寒いだろ、閉めろよ」
シャワーを浴びながら、背を向けたままポルナレフが言う。言われて初めて気がついて、アヴドゥルはドアを閉めた。
出しっ放しのシャワーの音だけが響く。
言葉を口にすることができず、アヴドゥルはポルナレフに触れようと手をのばす。
「…身体、洗ってやる」
と、くるりと振り向かれ、自分の心音が高く鳴るのをアヴドゥルは感じた。
水の滴る表情。シャワーの温度が高いのだろうか。顔が上気しているように見える。ひどく艶っぽいその様に、アヴドゥルは言葉ばかりでなく息をも呑み込む。
「……」 ふと、ポルナレフが見つめてきていることに気づいた。視線がぶつかって、心音がまた高く鳴る。濡れた薄い蒼の双眸に見つめられると、戸惑いにも似た緊張を覚える。
「どうした?」 じっと見つめてきている様子に、そう問う。
「…やっぱ、別人みたいに見えるな」
その言葉が自分のことを示しているのだと気づくのに、アヴドゥルは少しの時間を費やした。何度となく見せている姿に、彼がそういう感想を持っているのだと気づかされて、多少なりとも驚く。驚いて、少し笑みを浮かべてしまった。見慣れないのはお互い様なのだ。
促されてアヴドゥルはバスタブの縁に中を向いて座らされる。
いつもと違うポルナレフの行動パターンにすっかり混乱していた。なんでこんなことになったのか、まったくわからない。嬉しいのだ
が、素直に喜べなくて。