ヴィース教会 ハンザマンのおかみさん
 

 1484年から85年にかけて、ゲッティンゲンでは再び戦争がおこりました。当時、ブタウンシュヴァイクのヴィルヘルム公爵とヒルデハイム司教は、市民により多くの税金支払うよう要求しました。そこで、ゲッティンゲン、ハノーファー、ヒルデハイムそしてブラウンシュヴァイクの市民は、抵抗したのです。

 戦争がおこると、あちこちで治安が悪くなるものです。混乱に乗じて、自分の財産をふやすため、他人に危害を加える者があらわれました。ヴィルヘルム公爵配下のウスラーの役所で働いていたゲッティンゲンの人もそんな輩で、とんでもない悪いことを思いつきました。その悪事とは、ショーニンゲンの村を襲い、略奪の限りを尽くしだ後、村を焼き払うというものでした。さらにドランスフェルトの村をも襲い、80人の男をつかまえて、ゲッティンゲンに連行しました。何故そんなことをしたかというと、80人分の身の代金をとるためでした。ところで、このつかまえられた人たちは、みんなドランスフェルトに住んでいたわけではありませんでした。ドランスフェルトの市場に来ていた周辺の村の農民が混じっていました。

 拉致された人の中に、ニーダーシェーデン出身の農夫がいました。釈放されたいため、農夫はウスラーの役所に勤めるゲッティンゲンの人に親しげに近づき、こんな話をしました。シェーデンには、貴重な財産をオーバーシェーデンからニーダーシェーデンの教会に移し、この上強固な建物を造り、攻撃に備えているのだ、と。悪行の限りを尽くしたゲッティンゲンの人の欲望はつきることはありません。早速、そのゲッティンゲンの人たちは、お宝のあるシェーデンの教会を襲うことを企んだのです。

 しかし、シェーデンの農民たちの築いた教会の守りは堅く、ゲッティンゲンの悪党どもの思い通りにはなりませんでした。そこで、悪党どもは町から大砲や梯子をもってきて、シェーデンの教会への攻撃を再開しました。農民たちは、頑張って抵抗を続けていましたが、大砲で攻撃されたので、絶望的になっていました。その時、背後からゲッティンゲンの傭兵隊長に向けて投げた石が、致命傷を与えました。それにもかかわらず、包囲された教会側の状況は悪くなる一方でした。

 男たちが教会で財産を守っている間、女、子供たちや家畜は近くの森にいました。そこからは村の戦局の様子が見えました。女たちは村の方を見て、シェーデンに勝ち目がないことを悟りました。このままでは夫たちは殺されてしまいます。妻たちは泣きはじめました。しかしそうしていても事態は悪くなるだけでした。オーバーシェーデンに住むハンゼマンのおかみさんが言いました。

「泣いたり悩んでいるだけではだめよ。そんなことをしてたって、夫たちは助からないわ。ミュンデンに行って、助けを呼んできましょう。誰か私と一緒に行く人はいない?」

 6人以上の女性がミュンデンに向いました。そして無事に着くことができ、ミュンデンの市議会に、何とか危機に瀕しているシェーデンの男たちを助けてくれないかとたのみました。しかし、ミュンデンの人たちは、助けに行くことができませんでした。こんな治安の悪い時代でしたから、この地を治めている公爵が、シェーデンの男たちが町を留守にすることは大変危険と考え、許可しなかったからです。

 助けをえられず、シェーデンの女たちは悲しみにくれ、意気消沈して帰路につきました。ヴェッラ橋を渡り、もうすぐブリューマーベルクの丘にさしかかるというところで、トランペット吹きと兵隊と女の従軍商人に会いました。彼らはかつてブラウンシュバイクのの軍隊で働いていましたが、今は兵隊として雇ってくれる新しい主人を探しているところでした。道端に座り、火をおこし、話していた3人からハンザマンのおかみさんが聞いたには、別に何の目的もなくそうしているとのことでした。
「もしよかったら、シェーデンの教会を守っている男たちを助けてやってはくれないか」
とハンザマンのおかみさんは相談しました。ハンザマンのおかみさんは、シェーデンの絶望的な状況を話し、そこに男たちはいるので、3人に森を通って、シェーデンに行ってもらうことになりました。オーバーシェーデンを目前にして、ハンザマンのおかみさんは、トランペット吹きにブラウンシュバイクの軍隊でいつも演奏していたように、トランペットを吹いてもらうよう言いました。女たちにはエプロンとスカーフを軍隊の旗のように結びつけ、それを振り、加えて、声の出る限り叫ぶよう言いました。

 トランペット吹きと他の2人の協力者は、すでにこの大冒険に加わる心の準備はできていました。いよいよシェーデンに入り、まず、ブラウンシュヴァイク軍が攻撃を開始するかのように、トランペットは鳴り響きました。エプロンとスカーフの旗が振られ、まるで槍を刺す時のように大声で叫びました。

 ゲッティンゲンの悪党は、トランペットを聞き、旗を見ておどろきました。ブラウンシュヴァイクのヴィルヘルム公爵が襲いかかろうとしていると思ったのです。大砲やはしごなどもってきた戦争の機械をを全部置いたまま、急いでゲッティンゲンに逃げ帰りました。
こうしてシェーデンの男達は助けられたのです。

 ヴィルヘルム公爵は、しばらくの後、このハンゼマンのおかみさんの勇敢な行為と女たちのことを聞き、こう言ったそうです。100人のおどおどした男性の重装兵よりも10人の勇気あるこのような女性たちの方がよいと。
 


 
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