注意欠陥症とは、脳の想像的部分が活発で常に新しい情報や経験を求めるために、同じターゲットに注意力を維持することができない症状を持つ人間です。これには、非常に活発で落ち着きのないといわれる多動性型 ADHDと、それほど活発でも落ち着きがないわけでもない 非多動性型のADDがあります。ADHDとは、「Attention Deficit Hyperactivity Disorder」の略で、日本語では「注意欠陥多動性障害」です。それからいうとADDは、「Attention Deficit Disorder」の略で「注意欠陥障害」ということになります。そしてこの2者とも、対照的な面はありながらも同じように注意力が散漫しやすいため、それが勉強や仕事などに影響してくる結果があり、また物忘れや、慌てて事故を起こしやすい傾向をもっています。想像力がたくましく、蓄積する情報量も多いために周りの人間たちとずれが生じたり、考え方が噛みあわなかったりすることは珍しくありません。
しかし、坂本龍馬、レオナルド・ダ・ビンチ、トーマス・エジソン、アーネスト・ヘミングウェイやケネディ大統領などの社会的指導者や学者たちの子供のころのエピソードから判明した共通する精神的な傾向としても知られ、今ではアイシュタインなどの多くの著名な科学者、政治家、実業家にも見られる症状として知られるようになったため、これは「障害」ではなく、創造性と行動力をもった個性の強い人間が持つ性質として位置づけられるべきで、「症候群」といった表現が適切かもしれません。
研究され始めたのが比較的新しいためADHD/ADDの原因はまだ不明ですが、注意力・衝動性・多動性を自分でコントロールできない脳神経学的な疾患と言われています。症状は3歳以前から見られることもあり、学校に入ってから気がつくケースも多いようですが、一般には同年代の集団に入った時に他の子供たちと同じような行動や学習ぶりが見られず、小学校で授業内容について行けなくなったり、他の子供より大幅な遅れが見えたりして学習障害(LD)があると判断された時に見つけられることも多いようです。今までは反抗症状として片付けられ、躾(しつけ)問題とされることが多いようです。
じっとしていなさいといわれても言われたとおりにできない子供がそうで、個人的な差や強度の違いはありますが、人の話を聞きながら自分の頭の中の想像は別なほうに飛んでいってしまう傾向があります。そのために先生の言ったことを半分も聞いていなかったり、指導されたことを知らずに別な行動をとったりします。
ADHD児の特徴としては、1.集中力が持続できず、注意が散漫になる。 2.絶えず落ち着かず動き回る。 3.衝動的で興奮しやすい。等があり、アメリカでも推定200万人以上、日本でもかなりの該当者がいると考えられています。
単調な作業を長時間できない・忘れっぽい・些細なミスをする・考えずに行動する・落ち着きがない、多弁で時間や物の管理ができないなどが主な特徴で、アメリカ精神医学会のDSMや世界保健機構のICDによる基準を参考に医師が診断します。しかし「だれでも努力すればできそうなこと」ができない障害なので、「なまけている、不まじめ」などと叱責されたり、軽蔑されたりすることが多く、本人は自信や希望を失い、自暴自棄になったり、うつ傾向になったりします。
大人になっても見られるADHDと遺伝性
ADHDは、以前は子どもの疾患と考えられていましたが大人になってもADHDで苦しんでいる人はいます。遺伝学的研究では、ADHDは遺伝される可能性があるとされ、そのため医者が子供にADHD診断を行う時には親も一緒に診断し、家族歴と合わせて分析する必要もあります。
成人のADHD診断基準: 次のうち少なくとも15項目において該当する場合。
1.力が出し切れない、目的に到達していないと感じる(過去の成果にかかわらず)
2.計画、準備が困難である
3.物事をだらだらと先送りする・仕事に取りかかるのが困難である
4.たくさんの計画を同時進行させ、完成できない
5.タイミングや場所や状況を考えず、頭に浮かんだことをパッと言う
6.常に強い刺激を追い求める
7.退屈さに耐えられない
8.すぐ気が散る、集中できない、読書や会話中に心がさまよう、時に過集中である
9.しばしば創造的、直感的かつ知能が高い
10.決められたやり方や「適切な」手順に従うのが苦手である
11.短気で、ストレスや欲求不満に耐えられない
12.衝動性
13.必要もないのに際限なく心配する傾向
14.不安感
15.気分が変わりやすい
16.気ぜわしい
17.耽溺の傾向
18.慢性的な自尊心の低さ
19.不正確な自己認識
20.ADD、躁鬱、鬱、薬物中毒(アル中も含む)又は衝動や気分が抑制困難の家族歴
天才や英雄に多く見られる症候群
ADHDの特徴を理解し、それによるハンディキャップ(日常生活での支障)を軽減することでADHD的症状は、ひとつの個性になることがあります。さらにADHDを単なる障害としてとらえず、才能として活用することも可能なのです。つまり見方を変えれば、「ひとつのことに集中できない」ことは「多くのことに興味を持てる、同時にいくつもの仕事をこなせる」ということであり、衝動的とは実行力と行動力があると言えるのです。大切なことは周囲の理解ある言葉かけによる本人の自信喪失の防止です。支援の第一歩は思いやりのある言葉がけ、そのためにはADHDの正しい情報が不可欠です。発明王と言われたエジソンはこのADHDの代表的例として有名ですが、そのほか多くの科学者、政治家、実業家に見られる症状なので、これを生かすように工夫するのが社会に貢献できる人間を育てる重要な教育となるのではないのでしょうか。