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ヒューザー、宅建業法違反(重要事項説明義務違反)

偽装マンションを販売したヒューザーは、構造計算書の偽造を確認検査機関イーホームズが指摘した10月25日以降、2物件3戸の売買契約を結んだ他、3物件19戸を引き渡していた(「22戸を販売、引き渡し ヒューザー」共同通信2005年12月21日)。小嶋社長も2006年1月16日に「間違いない」と事実関係を認めた(「偽装把握後も販売継続 ヒューザー小嶋社長認める」共同通信2006年1月16日)。偽造を知りながら説明しなかったヒューザーの行為は宅建業法違反の疑いがある(「<耐震偽造>ヒューザーを聴取 東京都」毎日新聞2005年12月15日)。

ヒューザーは2005年10月末、マンション「グランドステージ藤沢」(神奈川県藤沢市)をめぐり、耐震強度に問題がある恐れを察知しながら、入居者に伝えずに部屋を引き渡していた。グランドステージ藤沢はイーホームズが2005年6月に建築確認し、9月に完成した。最弱部分の耐震強度が基準の15%しかない。姉歯物件の中でも最低クラスである。グランドステージ藤沢が購入者に引き渡されたのは2005年10月28日以降である。

ヒューザーによる新たな引渡し

北側一雄国土交通相の答弁により、偽装認識後のヒューザーによる新たな引渡が判明した。衆院国土交通委(2005年12月21日)で長妻昭議員(民主)の質問に回答したものである(「偽造指摘後、3戸販売=ヒューザー、宅建業法違反の疑いも−衆院委で国交相」時事通信2005年12月21日)。

引き渡しが新たに分かったのはコンアルマーディオ横浜鶴見(横浜市鶴見区)とグランドステージ茅場町(東京都中央区)の各1戸。一方、売買契約はグランドステージ藤沢の1戸と、グランドステージ船橋海神(千葉県船橋市)の2戸で結ばれていた(「<耐震偽造>ヒューザー、認知後さらに5戸契約や引き渡し」毎日新聞2005年12月21日)。

ヒューザーは同社物件の偽装の可能性を知った買主が2005年11月28日に契約解除を求めたが、応じなかった(「ヒューザー側欠席」読売新聞夕刊2006年2月17日)。

イーホームズとヒューザーの協議

イーホームズの藤田東吾社長らによると、10月25日、同社がヒューザー役員らを集めた場で、姉歯秀次元建築士がグランドステージ北千住の偽装を認めた。他のヒューザー物件にも偽装の可能性があることも伝えた(「偽装知りながら引き渡す?ヒューザー専務らを都が聴取」読売新聞2005年12月15日)。

イーホームズが作成した議事録によると、一回目の会議は10月25日午後2時からイーホームズ本社5階で開催した。イーホームズ幹部、ヒューザーの設計担当曽我常務、スペースワン井上社長、姉歯元建築士らが出席した。会議では先ず、イーホームズ側が、未完成の、グランドステージ北千住、グランドステージ町田、グランドステージ竹ノ塚、セントレジアス船橋などに改竄があることを報告した。

これに対し、曽我常務は「解体・再建築・分譲者への補償など、会社が飛んでしまう」と発言した。この時点で問題の重大性を認識していたことをうかがわせている。その一方で、常務は国交省などへの報告について、「行政に報告されても、その後の入居者への対応はいかがするか」と、躊躇する姿勢を見せた。

姉歯元建築士は、偽装物件について「震度4〜5弱は、このあいだの地震でも実際もっているので、もつ。震度5はもつ。6以上はどうなるかはわからない」と発言した(「公表3週間前協議の議事録…ヒューザー側、重大性認識」読売新聞2005年1月1日)。

第二回協議

二回目の会合は10月27日午前11時からヒューザーの社長室で開かれ、同社の小島進社長、イーホームズの藤田東吾社長の両トップも出席した。この中で小島社長は、偽装が判明したものの、完成が今年2月に迫っていた「セントレジアス船橋」について、「曲げてでも、検済(完了検査の検査済み証)をおろしてもらう。できない場合は告訴する」と、イーホームズ側に強く要求した。藤田社長らが公表の意向を示すと、ヒューザーの小嶋進社長は「何の意味があるのか。公表すれば徹底的にたたく」と圧力をかけた。

小島社長は、「その後(検済後)発覚した事にしてもらいたい。天災地震にて倒壊したときに、調査し発覚したことにしたい。3年間見過ごしてきたのだから公表を遅らせる事が出来るはず」と、問題表面化を先延ばしする強い意向を示した。「せめて引き渡し、(代金の)回収後に公表してくれ」とも発言したとされる(「崩れた「3世代の家」」朝日新聞2005年12月22日)。この席で小嶋社長は、「船橋」への検済と公表の延期を何度も藤田社長側に迫ったとされる(「耐震偽装 「公表は検済後に」 イー社が会合メモ 小嶋発言を記録」産経新聞2006年1月15日)。

イーホームズ幹部によると、ヒューザー側は協議の席上、「(イーホームズは)3年間も偽装を見過ごしてきた」と発言した。これを根拠に同幹部は、ヒューザー側が完成済み物件の問題点についても把握していた可能性を指摘する(「イーホームズ幹部を参考人聴取、ヒューザーとの協議で」読売新聞2006年1月11日)。

スペースワンの井上正一代表はヒューザーの小嶋進社長が「公表を待つように」と要求したと述べた(衆院国交委参考人質疑2006年1月19日)。「『曲げてでも建築確認を下ろしてもらう』と(指定確認検査機関の)イーホームズに強く求めていた」と話す(「姉歯発注は小嶋社長の指示 衆院で設計業者証言」共同通信2006年1月19日)。

姉歯建築士がイーホームズに直接返答

姉歯秀次元建築士の偽装を把握したイーホームズが、対応を協議するため建築主のヒューザーに連絡したところ、姉歯元建築士から直接返答された。関係者の証言で判明した(2006年1月14日)。協議前にヒューザー側と姉歯元建築士が連絡を取り合っていたことを示すもので、両者の密接な関係が改めて浮かんだ(「姉歯氏がイー社に返答=ヒューザー担当者への伝言に−耐震強度偽装公表前」時事通信2006年1月15日)。

ヒューザー、姉歯元建築士からデータ入手

イーホームズから最初に偽装を知らされた2005年10月25日の夜、ヒューザーの役員は姉歯秀次元建築士の事務所に乗り込み、本人にパソコンを操作させて偽装されたマンションの名前などを聞き出した。ヒューザーはこの時点で事態の重大性に気づいた可能性があるが、翌26日以降もマンションの売買契約を締結していた(「ヒューザー、偽装把握の夜 姉歯氏からデータ入手」朝日新聞2006年1月16日)。

千葉のマンション構造書、ヒューザーが契約前に入手

ヒューザーは、国土交通省が問題を公表する約3週間前、強度偽装された分譲マンションの構造計算書を、姉歯秀次元建築士から入手していた。構造計算書はグランドステージ船橋海神(千葉県船橋市)などのもので、CD-R(書き込み可能CD)の形で受け取った。

ヒューザーの小島進社長が読売新聞に対して明らかにした。ヒューザーはCD-R入手時点でGS船橋海神の問題点を認識していたと見られるが、その3日後、同マンション一戸分の売買契約を締結していた。

小島社長によると、2005年10月25日、ヒューザーとイーホームズなどが、未完成物件など5件の耐震強度偽装について協議した直後、姉歯元建築士がヒューザー本社を訪れ、小島社長本人に対し、構造計算に際して「(建物にかかる地震の力を)低減した」と説明した。さらに姉歯元建築士は、小島社長の退席後、ヒューザー幹部に対し、「過去にも責任の持てないものがある」などと述べ、5件以外にも問題があることを明かしたという。

これを受けて翌26日、ヒューザー役員が姉歯元建築士から、イーホームズ以外の確認機関が建築確認をした「GS船橋海神」など2件の構造計算書などが記録されたCD-Rの提供を受けた。ヒューザー側はこのCD-Rを別の設計事務所に渡し、分析などを依頼したという。この3日後の29日、「GS船橋海神」1戸の契約が締結された(「千葉のマンション構造書、ヒューザーが契約前に入手」読売新聞2006年1月17日)。

行政の対応

東京都は宅地建物取引業法に基づき、ヒューザーの幹部らから事情を聴いた(2005年12月15日)。違反行為が確認されれば行政処分を検討する(「都がヒューザー幹部を聴取 偽装認識し、引き渡しか」共同通信2005年12月15日)。ヒューザーは12月20日、偽装を知りながら引き渡したことはないなどとする回答書を提出した(「ヒューザー偽装指摘後も3戸販売…19戸引き渡し」夕刊フジ2005年12月21日)。

東京都はヒューザーが、耐震強度の偽装の可能性を知りながら分譲マンションを引き渡していたとして、同社を宅地建物取引業法違反で処分する方針を決めた(2006年2月7日)。2月17日に同社の小嶋進社長から弁明を聞くための聴聞を行い、宅建業の免許取り消しなどの処分を検討する。聴聞は同社の他、同社物件の販売代理をしていた「ジャスティホーム」(大田区)も対象となり、公開で実施される(「東京都、ヒューザーを宅建業法違反で処分の方針」読売新聞2006年2月7日)。

国土交通省の対応

国土交通省は、取り扱っているマンションについて、耐震強度の偽装を知っていたり、偽装の可能性があると知っていたりした場合は、「同法違反になる可能性もある」とする(「偽装把握後も売約」朝日新聞夕刊2005年12月21日)。

北側一雄国土交通相は「道義的な問題もさることながら、宅地建物取引業法に抵触する可能性がある。東京都と連携し、しっかり解明する必要がある」と指摘し、警察の捜査とは別に行政としても調査に取り組む考えを示した(「国交相「宅建業法抵触も」 ヒューザー物件」共同通信2005年12月22日)。

ヒューザーを宅建業法違反で立件の方針

警視庁と千葉、神奈川両県警の合同捜査本部は、姉歯元建築士が関与した物件を何の説明もなく入居者に引き渡した行為は、顧客への重要事項の説明を義務付けた宅地建物取引業法(宅建業法)違反の疑いがあるとの見方を強めている(「偽装問題伝えず引き渡し ヒューザー、宅建業法違反で捜査」共同通信2005年12月16日)。

合同捜査本部は12月31日に宅地建物取引業法違反容疑でマンション業者ヒューザーと同社関係者を立件する方向で検討を始めた(「ヒューザーの立件検討=偽装認識しマンション契約か−宅建業法違反容疑・捜査本部」時事通信2005年1月1日)。

ヒューザーと姉歯元建築士の関係

耐震強度偽装事件で、姉歯秀次元建築士が構造計算書を改ざんした物件のうち、木村建設も総合経営研究所(総研)も関与していない物件が11件以上ある。うち6件は、ヒューザーが建築主で、スペースワン建築研究所か森田設計事務所が設計を元請けしていた。これら分譲マンション建設ではヒューザーが総研の位置に立っていたと考えられる。

ヒューザー、スペースワン、森田設計の三者と姉歯元建築士との接点は明確にはなっていない。森田設計の森田信秀社長は読売新聞の取材に、「ヒューザーの人から姉歯さんを紹介された」と話したが、問題発覚直後に遺体で発見された。

スペースワン側も姉歯元建築士に下請け発注した経緯を一切、説明していない(「耐震偽装に別ルート?「木村・総研」以外11件」読売新聞2005年12月21日)。参考人招致においてスペースワンの井上正一代表は以下の発言をした(2006年1月16日)。「姉歯という固有名詞は出ていないが、ヒューザーの小嶋進社長から優秀な設計士が木村建設にいるので使うように言われた」(「姉歯発注は小嶋社長の指示 衆院で設計業者証言」共同通信2006年1月19日)。

木村建設が姉歯建築士をヒューザーに紹介

姉歯秀次元一級建築士が最初に偽装したと証言したマンション「グランドステージ池上」(東京都大田区)をめぐり、建築主のヒューザーに姉歯元建築士を紹介したのは木村建設の篠塚明元東京支店長であったことが、木村建設元幹部の話で判明した(2005年12月24日)。 元幹部は姉歯元建築士について以下のように話す。「融通が利いて、仕事が早い。かといって高額な構造計算料を求めてくるわけでもない。使い勝手の良い建築士という評価だった」(「ヒューザーに「姉歯」紹介 木村建設の元東京支店長」共同通信2005年12月24日)。

イーホームズの藤田社長は元請設計事務所社長が以下のように話したと語る。「ヒューザーの物件については構造設計に姉歯元建築士を使うよう指定された。当初は木村建設からだったが、後にヒューザーから直接指定されるようになった」(「ヒューザーが姉歯氏指定 自民ヒアリングで藤田社長」共同通信2006年1月6日)。「構造設計に姉歯元建築士を使うようヒューザーから指定された」(「“姉歯使え”指令」報知新聞2006年1月7日)。

ヒューザーは取材に対し、元請設計事務所に姉歯建築士を紹介したことを認めた上で「木村建設から『経済設計の姉歯氏を使うように』と言われたため」とする(「「木村施工時は姉歯を」=元請け事務所に要請−木村の意向とヒューザー・耐震偽装」時事通信2006年1月7日)。

ヒューザー役員、元請設計会社に姉歯推奨

ヒューザーの役員は2002年、都内での分譲マンション建築に際し、別の構造設計事務所を使おうとしていた元請設計会社に対し、姉歯秀次元建築士に構造計算を行わせるよう指示していた。ヒューザー役員はその後も再三に渡り、この元請設計会社に姉歯事務所を使うよう指示しており、ヒューザーと姉歯元建築士の密接な関係が浮かび上がった。

元請設計会社は2002年、都内分譲マンションの設計をヒューザーから請け負った。元請け設計会社は当初、以前から関係のある構造設計事務所に構造計算を委託する予定としていた。ところがヒューザー役員は、その構造設計事務所について「過剰設計だ」と批判した。「経済設計ができる設計士を使うべきだ」と、姉歯元建築士を指名した。

元請設計会社はその後、このマンションを施工した木村建設の篠塚明・元東京支店長を通じ、姉歯元建築士と引き合わされた。元請設計会社はイーホームズが建築確認を出した後、姉歯元建築士による構造設計を不審に思った。そこで「ちょっと柱が小さいんじゃないか。大丈夫か」と指摘した。しかし、ヒューザー役員は「検査機関がOKを出しているんだから、建築基準法をクリアしているわけで、大丈夫だ」と答えたという。この物件は後に、国土交通省によって偽装物件と認定された。

この後、元請け設計会社は2003年にも、都内分譲マンションの設計をヒューザーから受注した。同じヒューザー役員から「姉歯を使うように」と指示を受けた。この物件についても元請け設計会社側は、「柱が少ない」と指摘した。しかしヒューザー役員は「こういうのを『経済設計』と言うんだ」と押し通した。この物件も後に、偽装が確認された。

さらに2004年に2件、元請け設計会社が受注した都内分譲マンションの設計でも、ヒューザー役員は姉歯元建築士を指名した。最後に受注した物件の施工業者は、木村建設でなかったが、ヒューザー役員は「姉歯を使え」と指示した。ヒューザーと姉歯元建築士が直接の関係を強めていたことがうかがえる(「ヒューザー役員、元請けに「姉歯使え」と再三指示」読売新聞2006年1月16日)。

日本住宅建設産業協会とヒューザーらの関係

耐震強度偽装物件の建築主であるヒューザーの小嶋進社長と東日本住宅の桃野直樹社長は共に社団法人日本住宅建設産業協会の理事である。

日本住宅建設産業協会加盟の会社経営者約20人が伊藤公介議員を囲む「住宅政策研究会」を設け、度々勉強会を開いていた。政治献金も毎年行っていた(「ヒューザーら加盟の協会メンバー伊藤元長官に毎年献金」読売新聞2006年1月16日)。

研究会にはヒューザーの小嶋社長も参加していた。協会理事長などの役員である住宅会社社長も研究会メンバーに名前を連ねていたことが関係者の証言で判明している(「元国土庁長官伊藤公介氏を支援 耐震偽装 建築主会社が組織的に」しんぶん赤旗2006年1月3日)。

社団法人日本住宅建設産業協会はヒューザーのマンション「グランドステージ住吉」(東京都江東区)に優秀事業賞を与えていた。グランドステージ住吉は震度五の地震による倒壊の危険性が指摘された偽装物件である。受賞物件に問題が指摘されたことについて、同協会は「現在詳しく調べており、今後、賞の取り消しも含め検討していく」とする(「問題物件に優秀事業賞 「広いマンション」に評価」共同通信2005年11月22日)。

小嶋社長、日本住宅建設産業協会に依頼と説明

小嶋社長は偽装問題発覚後、日本住宅建設産業協会に働きかけ、国土交通省に電話してもらったと説明する(住民説明会での説明)。「国交省からの天下り団体である社団法人日本住宅建設産業協会の理事長から国交省審議官に電話を入れてもらった」(衆院国土交通委証人喚問2006年1月17日)。

日本住宅建設産業協会の理事長は神山和郎・日神不動産会長である。神山理事長は産経新聞の取材に、偽装事件に絡み国交省を訪問したことを認めた。目的は「協会としての善後策を話すため」と説明する。神山理事長は、小嶋氏が「購入したホテルを担保に五十億円の公的資金を得られる」と話していたことを明らかにした。その際、「本当に可能なのか」と確認したという(「耐震偽装 日住協理事長、小嶋発言を否定 「働きかけない」」産経新聞2006年1月23日)。

土地代が割高

強度不足の多数のマンションを分譲したヒューザーは物件の土地代を過剰に高く設定していた。消費税は建物代だけにかかるため、相対的に建物代を低くすることで販売価格を抑えるのが目的だったとみられる。格安物件を標榜した同社の巧妙な手法が浮かんだ格好だ。

国交省などによると、例えば五千万円の物件で区分所有の土地代を三千万円、建物代を二千万円とした場合、5%の消費税は建物代にかかる百万円で、総額は五千百万円になる仕組みである。ヒューザーは販売の際に土地代を高く、建物代を低く設定し、総額を抑えて顧客にアピールしていたとみられる。2005年時点の路線価などと比べて、土地代が約四倍になっていたケースもあったという。

一方、市街地建築課では「販売当時の実勢価格を調べて厳密に比較したわけではない。法的に問題があるかどうかも不明」と語る(「耐震偽装 ヒューザー 土地代過剰に高く 消費税かかる建物代低く」産経新聞2006年1月12日)。偽装マンション住民への国交省の支援策は、路線価を基にした土地価格で自治体がマンションを購入する仕組みのため、入居者が期待する価格との間に開きが出て、交渉に影響することも考えられる(「ヒューザー分譲10棟、土地代が割高 建て替えに支障も」朝日新聞2006年1月11日)。

ヒューザー、現金決済で値引き要求

ヒューザーは木村建設等に対し、現金払いを条件に、建築費の大幅な値引きを要求していた。関係者によると、マンションやホテル建設では、建築費が億単位になることがほとんどのため、決済手段は手形が通例で、現金払いは極めて異例。

しかし、ヒューザー「今は建設会社も不況で現金を欲しがっている。現金決済にすれば建築費の値引きを要求できる」と、現金決済の形で施工を発注した。着工時に2割、上棟段階で3割、残りの5割を引き渡し時に現金で支払う契約にしていたという(「<耐震偽造>ヒューザー、現金決済で施工会社に値引き要求」毎日新聞2006年1月15日)。

自民党政治家との癒着

耐震強度偽装事件の背景には政官を巻き込む構造的癒着が存在する。姉歯・ヒューザー・総研等の一グループの問題ではない。政界や官界との癒着の構図を置き去りにしてはならない。腐敗の構図を正さずして、住民救済も制度構築もない。真の改革はあり得ない。政治家の役目は国民の生命財産の安全を保障することにある。悪徳不動産業者や官僚、政治家に利益をもたらすことではない。

耐震強度偽装事件の対応はインターネットが先導し、マスメディアが後追いする。自民党及び国交省は渋々究明に乗り出すという様子である。耐震強度偽装事件の背景には容易ならざるものがあるように思われる。自由民主党は「疑惑隠しに加担している」と思われても仕方ない状況である。疑惑解明に何故積極的に当たらないのか。耐震強度偽装事件に腐敗、汚職、政府関与が存在するのか。犯罪幇助と同じである。自民党に圧倒的なパワーを持たせてしまった現在、 真相の解明は無力で闇の中にある。

耐震強度偽装組織と自民党の一部には何らかのつながりがあるのではないかと疑われる。以下の理由があげられる。
証人喚問(2005年12月14日)において自民党議員は長い質問で証人に話をさせようとしなかった。
与党側がヒューザー社長の証人喚問見送りを主張した。
強制捜査の開始が事件発覚から時間が経た後であり、証拠隠滅の余裕を与えている。 イーホームズの審査担当者が天下りである。
ヒューザー、日本ERI、イーホームズ経営者が政治献金をしていた。

自民党は党大会で採択する大会アピール案には耐震強度偽装問題に積極的に対処する方針を示した(「消費税含む税制改正議論 自民党大会のアピール案」共同通信2006年1月10日)。耐震強度偽装問題の解明に後ろ向きとのイメージを払拭したいのだろう。国民の関心が下がるのを待つための時間稼ぎと読むのが正しいだろう。

自民党伊藤公介議員、ヒューザーを国土交通省に仲介

元国土庁長官の伊藤公介衆院議員(自民党、東京23区:町田市・多摩市)は偽装マンションの建築主を、問題公表前に国土交通省幹部に引き合わせていた(2005年11月15日)。引き合わせたのは「ヒューザー」(千代田区)の小嶋進社長、東日本住宅(新宿区)の桃野直樹社長である。多くの居住者の安全を脅かす問題の公表前に、政治家が業者と共に監督官庁に介入した疑いが出てきた。

ヒューザーの小嶋社長は伊藤議員から「これから行くが、小嶋社長も時間があれば来れますか」と誘われたと証人喚問(2006年1月17日)で証言する(「焦点採録」朝日新聞2006年1月18日)。

伊藤議員は自民党住宅調査会長を辞任する方向とされる(「「自民は業界寄り」批判」読売新聞2005年11月29日)。伊藤議員は2005年12月19日までに党住宅調査会長の辞表を党執行部に提出し、受理された(「伊藤元国土庁長官、党住宅土地調査会長を辞任」読売新聞2005年12月19日)。伊藤議員の事務所では「諸般の事情で党にすべてを委ねている」とする。辞任を促されたとみられる(「伊藤公介氏、自民住宅土地調査会長を辞任」朝日新聞2005年12月20日)。

伊藤公介議員に批判続出

伊藤元長官の行為には批判が噴出した。鶴見区のマンション「コンアルマーディオ横浜鶴見」住民「ニュースを聞いて耳を疑った。そんな人は(議員を)辞めてもらいたい」(「耐震偽造 政治家介入「裏で何を」 住民がヒューザー批判」毎日新聞2005年11月26日)。

自民党の武部勤幹事長「事実なら不用意極まりない」(「ヒューザー社長 公表2日前、伊藤元長官が国交省幹部に紹介」産経新聞2005年11月27日)。

民主党の鳩山由紀夫幹事長「国交省への仲介はあっせん利得と言われても仕方ない行為。既得権益に守られた甘えの構造は徹底追及する」(「民主 審査マニュアル整備を要求」西日本新聞2005年12月7日)。

伊藤元国土庁長官、ヒューザー社長とゼネコンへ

耐震強度偽装事件で、国土交通省が問題を公表する一週間前の2005年11月10日、伊藤公介・元国土庁長官が、ヒューザーの小島進社長らと共にゼネコン「大成建設」(新宿区)を訪れ、偽装マンションの免震化について相談していた。

大成建設によると、訪問の一週間ほど前、伊藤元長官の秘書から「集合住宅の免震化についてのレクチャーを受けたい」と同社側に連絡があり、伊藤元長官、秘書、小島社長、設計会社「スペースワン建築研究所」(港区)の従業員の計四人が大成建設本社を訪れた。

面会では、対応した大成建設の総務担当者と技術担当者に対し、ヒューザーが建築主でスペースワン建築研究所が設計し、姉歯秀次・元一級建築士が構造計算した、千葉県船橋市の分譲マンション「セントレジアス船橋」(工事停止中)について、「免震化できないか」と相談があったという。技術担当者は「かなり難しい」と判断し、ヒューザー側にその結果を伝えたという(「伊藤元国土庁長官、ヒューザー社長とゼネコンへ」読売新聞2005年12月22日)。

耐震偽装建築主会社が組織的に伊藤公介議員を支援

耐震偽装で問題となっているマンション建築主の「ヒューザー」や「東日本住宅」の社長らが、伊藤公介元国土庁長官・自民党衆院議員を政治資金などで支援するグループを組織していたことが元従業員らの証言により判明した。伊藤議員は、耐震偽装マンションの建築主だったこれら社長と問題発覚のかなり前から、資金提供の便宜を受ける深い関係だったことになる。

この支援グループは、住宅関連産業の社長らが、住宅産業の研究会として立ち上げたもの。メンバーは二十人強で、いずれも社団法人「日本住宅建設産業協会」に加盟している。 研究会のまとめ役は東日本住宅の桃野直樹社長である。同社長やヒューザーの小嶋進社長は耐震偽装問題が表面化する直前、伊藤議員の口利きで、国土交通省幹部と会ったことがこれまでに明らかになった。

東日本住宅の元社員によると、研究会の主な目的は「伊藤氏を囲んだ情報交換」とする。しかし実態は「研究会といっても、事実上は伊藤元長官を支援する団体だった」と言う。伊藤議員は1996年11月から97年9月まで国土庁長官を務めたが、研究会はその後に活動した。毎年11月ごろ、伊藤氏を囲む懇親会を開催した。ゴルフをともにする会社社長もいたという。

2000年11月に東京・信濃町で開かれた「懇親会」には伊藤元長官のほか、同氏秘書も参加した。桃野社長は、事前に同社社員に「伊藤氏に渡すから、自分名義の銀行口座から三百万円下ろしてきてくれ」と指示した。社員は三百万円弱を引き出し、桃野社長に渡したと証言する。献金は各社が毎月一万五千円程度を桃野社長の口座に振り込み積み立てていたものとする(「元国土庁長官伊藤公介氏を支援 耐震偽装 建築主会社が組織的に」しんぶん赤旗2006年1月3日)。

伊藤公介議員のパーティー発起人に小嶋社長

ヒューザーの小嶋進社長は伊藤公介元国土庁長官の政治資金パーティーの発起人である。このパーティーは2006年12月12日に開催する予定であったが、延期された(「伊藤氏がパーティー延期 耐震強度偽造問題に絡み」共同通信2005年12月2日)。

2005年9月の衆院選では小嶋社長がヒューザー従業員に伊藤陣営に行くように呼びかけた。従業員は葉書の宛名書きを手伝っている(「ヒューザー物件の管理業務、伊藤公介議員の家族受注」朝日新聞2006年1月16日)。

伊藤公介議員三男の企業、ヒューザー側と直接取引

元国土庁長官の伊藤公介衆院議員の三男(26)が経営する会社はヒューザー関連会社と直接取引きしていた。伊藤議員とヒューザーの親密な関係が鮮明になった。伊藤元長官の三男が社長の会社は2004年8月に設立された「株式会社フューチャービジネスネットワーク」(中央区銀座)である。

登記簿によると、伊藤元長官の妻や公設第一秘書を務める二男(伊藤竜太郎)が取締役に就任している。政策担当秘書が監査役を務める。伊藤議員の公設秘書として名前が出ている人物には橋本泰信、杉本聖仁がいる。「きっこのブログ」では杉本聖仁を政策担当秘書とする(「とっとこハムスケ絶体絶命!」きっこのブログ2006年1月16日)。

公設秘書の兼職は国会議員秘書給与法で原則禁止され、例外的に兼職する場合は届出が必要となる。しかし伊藤公介議員の公設第一秘書と政策秘書はフューチャービジネスネットワークの役員を兼務していたのに、提出期限までに届け出ていなかった(「公設秘書は原則専従…兼職190件、衆院に届け出」読売新聞2006年2月27日)。

フューチャービジネスネットワークは2005年11月中旬、ヒューザーが建築・販売した「グランドステージ大井町」(品川区)の管理業務を請け負った。契約内容は建物内の給排水設備や消防設備の点検等で、料金は年間51万円という(「ヒューザー物件の管理業務、伊藤公介議員の家族受注」朝日新聞2006年1月16日)。この契約はフューチャービジネスネットワークと「グランドサービス」(世田谷区)の間で締結された。グランドサービスはヒューザーのマンションの管理業務を担当する関連会社である。

グランドサービスも伊藤議員も当初、「フューチャービジネスネットワークはグランドステージ大井町の管理組合と契約した」と説明していた。フューチャービジネスネットワークは「管理組合から過去に1件、排水ポンプの点検業務を2万3100円で受けたが、それ以外にはない」と答える。

伊藤元長官の三男は毎日新聞の取材には「小嶋さんから仕事をいただいたことは一切ない」などとヒューザー側との関係を否定していた(「<耐震偽造>ヒューザー物件、元国土庁長官の三男が管理」毎日新聞2006年1月16日)。

しかし、住民総会で管理組合が結成されたのは2005年11月下旬であった。グランドサービスは毎日新聞に対し、フューチャービジネスネットワークとの直接取引を認めた。「組合結成前は当社が組合の代行として、フューチャービジネスネットワークと契約した」と釈明する(「<耐震偽造>ヒューザー側と直接取引 伊藤元長官三男の会社」毎日新聞2006年2月23日)。

伊藤議員親族企業がヒューザーマンションの管理業務を受託したことは民主党の長妻昭衆院議員の調べで判明した(「伊藤氏関連会社が受注 ヒューザー物件の設備点検」共同通信2006年1月16日)。契約内容には報道により、相違がある。
給湯関係の設備巡回点検業務を管理組合と2万3100円で契約した(「<耐震偽造>ヒューザー物件、元国土庁長官の三男が管理」毎日新聞2006年1月16日)。
給水ポンプと貯水ポンプの清掃業務を2万2000円(税抜き)で契約した(「ヒューザー物件の管理業務、伊藤元長官の家族が受注」読売新聞2006年1月16日)。

ヒューザー小嶋進社長、安倍晋三官房長官秘書に相談

ヒューザーの小嶋進社長は伊藤公介代議士の他にも多くの政治家に働きかけや相談をしていた。衆院国土交通委の証人喚問(2006年1月16日)においてヒューザーと政界との関わりの一端が明らかになった。小嶋社長は伊藤信太郎外務政務官、阿南元代議士、石原慎太郎都知事、安部普三官房長官等の名前を出した。

ヒューザーの小嶋進社長は、問題発覚後の国土交通省への働き掛けについて証言した。「安倍晋三官房長官の秘書に議員会館で相談したことがある。飯塚さんというお名前だったと思う」(「安倍長官秘書に相談 問題発覚でヒューザー社長」共同通信2006年1月17日)。安倍官房長官側への働きかけは、2005年11月20日、「グランドステージ川崎大師」(川崎)への説明会で録音したテープを基に、馬淵澄夫委員(民主)が質問した。

小嶋氏は一人で安倍事務所を尋ね、応対した秘書に約30分に渡り事情を説明した。秘書は「それなら事務次官候補がいいでしょう」と言ったという(中村智志「「安倍官房長官に働きかけた」どちらが真実?小嶋発言の波紋」週刊朝日2006年2月3日号134頁)。

安倍晋三官房長官は1月17日午後の記者会見で、小嶋社長が安倍氏の政策秘書飯塚洋氏に相談したと証言したことについて、議員会館で面会した事実を認めた(「小嶋社長と秘書の面会認める=国交省への働き掛けは否定−安倍長官」時事通信2006年1月17日)。「小嶋氏が十一月十七日に飛び込みで事務所を訪れただけで、秘書は国土交通省への働きかけは一切していない」と釈明した(「小嶋氏と無関係 安倍長官再強調 耐震偽装」産経新聞2006年1月18日)。小嶋社長の依頼後に国交省が公的資金を投入したことを考えると、安倍氏の関与が疑われるのは当然である。

議員会館の事務所には誰でも入れるものではない。訪問者は先ず一階の受付で自分の名前や訪問先、用件を書いて提出する必要がある。受付の係官が、当該事務所に内線電話で連絡して、承諾を得なければ入館できない。小嶋社長がアポも取らず、「飛び込み」のような形で秘書と面会できなならば、安倍事務所と小嶋社長は親しい間柄となる。この点をマスコミは議員会館の入館制度を知っている筈のマスメディアが報道しないのは、その姿勢が疑われる。

グランドステージ川崎大師説明会テープ内容

「安倍長官の後援会『安晋会』に入っていて、後援会長から政策秘書の飯塚さんを紹介され、次の(国土交通省の)事務次官になる予定の方に電話を入れていただいた」「必ず対応させる、と報告ももらった」「安倍晋三議員を通じて、この問題は国の責任だと国交省の役人に言ってもらった」(「耐震偽造 「安倍氏秘書に相談」 証人喚問で小嶋社長」毎日新聞1月18日)。

国としてきちんと対応する旨の言質を得ている(「安倍長官の秘書通じ働きかけ依頼」読売新聞2006年1月18日)。偽装公表の翌18日の閣議後会見で安倍氏が「国交省で遺漏なき対応を図る」と述べた点について、要望を受けた対応であると住民に示唆した(「核心の証言拒む」朝日新聞2006年1月18日)。

「市議会議員から国会議員に至るまで、石原慎太郎に至るまで」様々な有力者に頼み「デベロッパーは悪くない」と国交省に言ってもらった、と説明する(「耐震偽装喚問 安倍長官秘書に相談 小嶋社長、政界との関連明かす」産経新聞2006年1月18日)。

杉山敏隆・安晋会代表幹事とヒューザーの接点

小嶋社長は安倍晋三官房長官の後援会「安晋会」に加入しており、後援会長から政策秘書を紹介されたとする。安晋会の「安」は安倍の安、「晋」は晋三の晋である。耐震強度偽装事件で安晋会とは「安普請の会」のようでブラックユーモアである。

安晋会が2004年に開いた忘年会では安倍長官とヒューザーの専務が同席した。これは衆院予算委員会において、安倍長官が明らかにした(2006年1月26日)。民主党の馬淵澄夫議員に対する答弁である(「忘年会でヒューザー専務と同席=自民・安倍氏、事件への関与は全面否定」時事通信2006年1月26日)。

安晋会の代表幹事は杉山敏隆・ゴールネット社長である(山岡俊介「慧光塾“教祖”長男結婚式に著名タレント、安倍代議士後援会代表も出席」ストレイ・ドッグ」2005年7月21日)。2005年初めに配布された杉山氏の名刺には「衆議院議員安倍安倍晋三後援会 安晋会 代表幹事 杉山敏隆」とある。名刺の事務所は「ゴールネット(株)内」とある(山岡俊介「安晋会の事務所は、代表幹事の会社内?」2006年1月23日)。

その略歴は以下の通り。1945年1月1日生まれ。67年慶應義塾大学卒業後、本田技研工業株式会社に入社、68年より三共開発株式会社。71年12月、26歳で三和総業株式会社を設立、代表取締役就任。79年6月、日本都市建設株式会社設立、代表取締役就任。91年12月UDI経営者連合設立、会長就任。2000年1月、ゴールネット株式会社(東京都中央区銀座)を設立、代表取締役社長に就任した。

安倍官房長官は杉山氏が設立したUDI経営者連合の顧問をしていた。1997年6月には安倍氏を講師として招かれ、「現在の政局と今後の日本の方向」というタイトルで講演した(山岡俊介「ヒューザー・小嶋社長証人喚問、ライブドア疑惑のどちらでも名前が出る安倍晋三官房長官の不徳」ストレイ・ドッグ2006年1月18日)。

ゴールネット株式会社は会社概要の主要取引先に「(株)ヒューザー」を挙げる。ゴールネット株式会社はWebサイト制作を行っており、株式会社ヒューザーのWebサイトも制作した。ゴールネット株式会社のWebサイト「制作実績1」ではヒューザーのWebサイトが紹介されていた。現在は削除されているが、Googleのキャッシュには残っている(2006年1月19日)。ライブドアグループに買収された株式会社ダイナシティや江東区東陽一丁目でマンション建設反対運動に直面している前田興産株式会社のWebサイトも制作している。

会社概要 http://www.sns-pro.net/company.html
制作実績1 http://www.web-consul.jp/works/index.html

「この団体は安倍の私的な団体と説明しているが、そのわりには会費が年間4万円と高すぎる。理事には財界の大物がズラリと並び、典型的な裏献金団体ではないかと噂されている」(「耐震偽装事件の責任はだれがとるのか?」ダカーポ2006年4月5日号113頁)。

「実は安倍の秘密後援会であり、政治資金規正法違反の疑いがあるんじゃないか」(「ライブドア他、事件の舞台裏を全暴露!」ダカーポ2006年4月5日号119頁)。

民主党のコメント

前原誠司代表「安倍氏は官房長官なので、予算委員会などの場で徹底して事実関係の確認を行いたい」(「安倍長官秘書の招致要求=民主・前原代表」時事通信2006年1月18日)。
野田佳彦国対委員長「自民党の総裁候補と目される人であり、進んで説明責任を果たす必要がある」(「民主、攻勢へ森派照準 耐震偽装・小嶋氏証人喚問」西日本新聞2006年1月18日)。
鳩山由紀夫幹事長「政官業の癒着の姿が浮かび上がってきた」(「朝日新聞2006年1月18日」)。

自民党幹部「『ポスト小泉』一番手の安倍氏にけちがつき、党の上げ潮ムードにも水を差された」(「順風自民に逆風」読売新聞2006年1月19日)。

阿南一成元議員がアルゼ社長辞任

パチスロ機器メーカー「アルゼ」(東京都江東区)の阿南一成社長が代表取締役社長を辞任した(2006年1月18日)。証人喚問では、阿南氏は自民党参院議員時代に、小嶋氏から会費を受け取り相談に乗っていたと指摘された。

阿南一成社長は元警察官僚。滋賀県警本部長、中国管区警察局長を歴任した。1998年7月から参議院議員を一期勤め、2004年8月アルゼに入社し顧問、9月にアルゼ社長に就任した。社長を辞任しなければならないほどの相談とは何だろうか。日本の「闇の世界の構造」の一端を見事に示している。

アルゼは社長辞任の理由を「議員時代のこととはいえ、小嶋社長により、その関係を疑わせるような形で名前が挙がったことについてコンプライアンス(法令順守)の上で問題があるため」とする(「阿南元議員が社長辞任 ヒューザーとの関係理由」共同通信2006年1月18日)。

阿南元議員は2006年1月19日、アルゼを通じ、小嶋社長から耐震強度偽装問題で相談を受けたことはないとするコメントを出した(「阿南元議員が関与否定 小嶋社長との面識は認める」共同通信2006年1月19日)。

阿南一成元議員、ヒューザーのマンションに居住

阿南元議員は、ヒューザーの販売したマンション「グランドステージ戸越公園弐番館」に居住している。報道機関向けの文書で明らかにした。阿南元議員は文書で、「政治家になる2年位前に、ヒューザーからマンションを購入した際に、(小嶋社長と)面識が出来た」と説明する。グランドステージ戸越公園弐番館は、国交省が認定した偽装物件には含まれていない(「ヒューザー販売のマンションに居住…阿南元参院議員」読売新聞2006年1月19日)。

グランドステージ戸越公園弐番館は、品川区内の私鉄駅から徒歩約5分で、JR駅にも近い住宅街にある5階建て高級マンションの最上階である。ヒューザーの前身のハウジングセンターが1997年に新築分譲した(「ヒューザーのマンションに入居=証人喚問で名が出た阿南元議員−耐震強度問題なし」時事通信2006年1月19日)。

偽装関連企業から自民党議員に政治献金

耐震強度偽装問題関与企業及び経営者が自民党政治家に政治献金をしていたことが判明した。献金を受けた自民党国会議員が続々判明している。自民党関係者は以下のように語る。「直接献金を受けた伊藤元長官のほかにも、派閥経由で小嶋社長のカネを受け取った政治家がいる、とのウワサがある」(日下部聡「小嶋をかばう自公の姑息」サンデー毎日2006年1月8-15日号32頁)。

自民党の政治資金団体「国民政治協会(国政協)」は1998年から2004年までの7年間に志多組から計1050万円の献金を受けていた。志多組は、偽装事件で告発対象となった東京都稲城市のマンション「グランドステージ稲城」を施工した。志多組の志多孝彦会長は国政協の宮崎県支部長を務めている(「自民に1050万円献金捜索受けた宮崎市の志多組」中日新聞2005年12月24日)。

自民党森派の政治団体「清和政策研究会」(清和研)はヒューザーに政治資金パーティー券を2003年は100万円分、2004年は100万円分、2005年5月は50万円分販売した。清和研はパーティー券を東日本住宅には2004年に60万円分販売した。

清和研は日本ERIの鈴木崇英社長からは100万円の政治献金を受けていた。鈴木社長が2002年5月まで社長を務めた設計会社「UG都市建築」(東京都港区)も2001-03年、清和研のパーティー券を計300万円分購入していた(「ヒューザーなど3社と1人、自民・森派などに892万」読売新聞2005年12月22日)。

森派の伊藤公介・元国土庁長官は、ヒューザーにパーティー券を100万円分販売していた(2004年)。東日本住宅には60万円分販売していた。ヒューザーの小島社長から32万円、東日本住宅の桃野社長から116万円の献金を受けている。

小林興起・前衆院議員はヒューザーから60万円の政治献金を受けていた(2004年)。東日本住宅からは12万円の献金を受けていた。

園田博之・元官房副長官は木村建設にパーティー券を2002年に100万円分、2003年に100万円分、2004年に100万円分販売していた。

伊藤公介衆院議員(自民党)の秘書を務めた吉原修都議は、イーホームズの藤田東吾社長から300万円以上の政治献金を受けていた(「国土庁長官元秘書に献金 イ社の社長から300万以上」共同通信2005年11月27日)。

ヒューザー、森派パーティー券を取引先に購入要請

小嶋社長は、自民党森派の政治資金パーティー券代金を取引先業者に売り、集金していたと話す(衆院国土交通委証人喚問2006年1月17日)。長妻昭議員(民主党)入手資料によると、偽装物件に関与した元請設計事務所は2004年4月、パーティー券3口分6万円をヒューザーの銀行口座に振り込んだ(「元請けに購入要請」朝日新聞2006年1月18日)。

スペースワンの井上正一社長も、自民党森派の政治団体「清和政策研究会(清和研)」のパーティー券を購入し、代金をヒューザーの指定口座に入金したことを認める。19日の衆院国土交通委員会参考人質疑で答えた(2006年1月19日)。

このような購入の仕方では政治資金収支報告書にはヒューザーの名前しか出なくなる。長妻昭議員(民主党)は以下の問題点を指摘する。「実際にパーティー券を購入した企業の名前が隠れる恐れがある」(「森派パーティー券「まとめて購入」」読売新聞2006年1月18日)。

森派は偽装問題発覚後、関係する企業や個人からの献金返還を表明した。しかし、小嶋、井上両社長とも「返還は受けていない」とする(「ヒューザー指定口座に入金=森派のパーティー券代金−元請け社長が証言」時事通信2006年1月19日)。

民間検査支持の上野公成元官房副長官、日本ERIから献金受領

旧建設省出身で森派の上野公成元官房副長官(前参院議員)は、日本ERIの鈴木崇英社長から。2004年7月の参院選前に計400万円を受けていた。元政策秘書が会計責任者を務める「住宅計画懇話会」と「公成会」にそれぞれ3月と4月に100万円ずつ。5月14日にも、資金管理団体「上成会」と自民党の「群馬県参院選挙区第2支部」にそれぞれ100万円ずつを献金した(「耐震偽装関連3社から献金652万円 上野元副長官らに」朝日新聞2005年12月22日)。

上野公成元官房副長官は1998年の参院委員会で、建築確認業務を民間開放する建築基準法改正を支持する質問をしていた。偽装の背景に指摘される民間検査をめぐり、開放を支持した政治家が、新規参入の民間から献金を受けていた構図が判明した(「耐震偽装 ERI400万献金の上野元官房副長官 7年前、民間検査支持」産経新聞2005年12月28日)。

上野議員は参院国土・環境委員会で民間開放を支持する質問を行っている。建設省(当時)幹部への質問では、建築基準法改正について「新しい行革、あるいは規制緩和という点からも、非常に評価されていいんじゃないか」と発言した(1998年5月28日)。検査業務の民間開放については以下のように支持した。「民間でやれば、今までよりサービスがいいというか、早くするとか、いろいろ民間の努力のしようというのもあるわけであります」(1998年6月2日)。

土本武司・白鴎大法科大学院教授は以下のように話す。「構図に限って見れば、贈収賄のにおいは十分にある種類のものだ。仮に『民間が検査業務を行えるよう発言してほしい』という働きかけがあったとして、その対価としての献金であるのならば、違法性を帯びる話になる」(「贈収賄のにおい」産経新聞2005年12月28日)。

武部勤自民党幹事長の暴言

構造計算書偽装事件に関連して自民党の武部勤幹事長は北海道釧路市での講演で以下の発言をした(2005年11月26日)。「悪者探しに終始すると、マンション業界つぶれますよ、ばたばたと。不動産業界も参ってきますよ。景気がこれでおかしくなるほどの大きな問題です」と発言した(「悪者探しは景気悪化招く 耐震偽造問題で武部氏」共同通信2005年11月26日)。

「だから、責任追及や、実態調査・公表は抑制すべき」との主張と理解せざるを得ない発言である。国民の安全を犠牲にしても業界の利益を優先する姿勢を露骨に表明する。国民よりも献金してくれる企業の方が大切であることを露骨に表現した発言である。消費者である国民の信頼回復なくして、景気を心配するのは本末転倒である。悪徳業者を守るために消費者が犠牲になることは自然の法則にも社会の原則にも反する。

武部発言に対しては「業界寄りだ」との批判が噴出した(「「自民は業界寄り」批判」読売新聞2005年11月29日)。「どこかの幹事長のように「悪者探しに終始すると業界がつぶれる」なんて発想は、とんでもない」(「正平調」神戸新聞2005年12月21日)。

自民党の武部勤幹事長は狂牛病(牛海綿状脳症BSE)問題でも失言の前科がある。記者会見(2005年3月4日)では以下の失言をした。「消費者にも、全頭検査をしていても(全国)700〜800校の小中学校で給食に牛肉を使わないのは非常識という認識を持ってもらうことも必要だ」「常識を逸脱した消費者の対応も改めていかなければならない」(「「消費者も非常識」、武部幹事長が発言 BSE問題」朝日新聞2005年3月5日)。

民主党の前原誠司代表は千葉市内での講演で武部発言を強く批判した(2005年11月27日)。「徹底的に調査することが政治の責任だ。誰を目線に(置いて)政治を考えているのか」(「自民幹事長を批判=耐震強度偽装問題で前原氏」時事通信2005年11月27日)。

「逆ではないか。まさに人の命が軽んじられてこういう問題が起きている。いったい誰を見て政治を考えているのか。安心、安全を図ることが本来の政治の責務であるにもかかわらず、それができていないのがいまの自民党だ」(「「誰を見ているのか」 前原代表が武部発言批判」共同通信2005年11月27日)。

自民党の追及姿勢に批判殺到

衆院が行った耐震データ偽造問題をめぐる証人喚問(2005年12月14日)では、質問者の発言時間が多過ぎた。時間稼ぎととられてもおかしくないような質問内容であった。長々と質問しているため、発言の最後には何が質問したかったのか分からなくなることも多かった。

証人喚問は事実を解明する場である。従って証人が経験した事実を引き出すことが目的である。しかし、事実を聞かず、証人の気持ち(反省の弁)を引き出す質問が多過ぎた。聞いたところで何の解決にもならないことを聞き、相手を糾弾することに時間を費やしていた。

「質問した議員側の切り込み不足は否めない。質問するより自らの考えを延々と述べる姿もあった」(「耐震偽装喚問 国会はなお解明努力を」信濃毎日新聞2005年12月15日)。議員は講演や選挙などで一方的に話すことに慣れすぎて、相手を詰めていくことには不慣れなのだろうか。

特に自民党の渡辺具能議員は40分の持ち時間中、30分以上を自分の発言に費やした。何を質問しているのか、姉歯証人より何を引き出したいのか、さっぱり伝わってこなかった。テレビ中継が行われ、視聴率も高いと思ってか、自分を売り出したいという感じで、自分に酔っていたのだろう。このような議員を代表として出した自民党には幻滅する。何か癒着があって、明るみに出たら困るものが存在するのだろうか。

「久しぶりの証人喚問で、各党の「追及力」も注目されたが、自民党は余りにお粗末だった。まさか、業界批判を遠慮しているのではあるまいが、材料も乏しく、演説のような話をだらだらと続けられては時間の無駄だ。その分、質問時間を野党に配分した方がましだった」(「偽造証人喚問 「ぐるみ」の疑惑は強まった」毎日新聞2005年12月15日)。

「なにをどう勘違いしたのか、持論をとうとうと語る議員がいた。いま聞きたいのは、議員の得意げな意見ではなく、各証人の証言である。本気で真相に迫ろうとしているのかすら疑わしくなってしまった」(「正平調」神戸新聞2005年12月15日)。

「持ち時間が最も多い自民党議員のトップバッターは自らの意見をひけらかせるだけで質問の体をなしていなかった。後に続いた同党議員も腰が引けた印象だった」(「一斉捜索 「闇の解明」待ったなし」中国新聞2005年12月21日)。

自民党本部には「姉歯秀次元1級建築士らに対する追及が甘い」などの抗議が殺到している。14〜15日で数百件に上る(「耐震偽造:証人喚問「追及が甘い」 自民党に抗議殺到」毎日新聞2005年12月15日)。「姉歯氏にもっとしゃべらせるべきだ」「なぜこの議員(渡辺具能議員)を質問者に選んだのか」との抗議を受けた。一方、民主党には激励や情報提供の電子メールが相次いだ。

自民党の武部勤幹事長はニッポン放送のラジオ番組に出演し、自民党の証人喚問について陳謝した(2005年12月16日)。「自民党の質問は酷かった」と問われ、「まったく同感。ほんとに申し訳なかった」と答えた。「喚問なんだから、相手から引き出さなくちゃいけない」と追及の甘さを認めた(吉沢龍彦「自民の質問ひどすぎた」朝日新聞2005年12月17日)。もっとも業界寄りの失言をした武部幹事長には批判されたくないであろう。

小嶋進ヒューザー社長の証人喚問

衆院国土交通委員会(林幹雄委員長)は2006年1月17日に小嶋進ヒューザー社長を証人喚問する(「ヒューザーの小島社長、証人喚問は17日に」読売新聞2006年1月10日)。理事懇談会(2006年1月10日)にて決定した。2006年1月12日に議決する(「小嶋ヒューザー社長、17日に証人喚問=伊藤元長官の招致は再協議−衆院委」時事通信2006年1月10日)。

小嶋社長が国会で証言するのは、昨年11月29日の参考人質疑以来である。証人喚問は13時45分からで、冒頭の15分間は林幹雄委員長が代表して質問する。その後、与野党が1時間ずつ午後4時まで質疑を重ねる予定である。小嶋社長は12時20分過ぎ、衆院に到着した(「小嶋社長を喚問=販売時の偽装認識焦点−元長官との関係追及・衆院国交委」時事通信2006年1月17日)。

証人喚問では、小嶋社長らヒューザー側と姉歯秀次元建築士との関係や、マンションの強度不足を知った後に契約や引き渡しをしたことがあるかどうかが焦点となる(「小嶋社長を17日午後喚問 衆院国交委が決定」共同通信2006年1月10日)。「偽装を知りながらマンションを販売した疑惑や、自民党の伊藤公介元国土庁長官とともに国土交通省を訪ねた経緯の解明が焦点となる」(「小嶋社長、17日に喚問=認識後の販売疑惑など追及−耐震強度偽装・衆院国交委」時事通信2006年1月16日)。

参考人招致とは異なり、事実をありのままに証言しないと罪になる重要な証言の場である。ヒューザー小嶋社長と政界の癒着も指摘されており、どこまで深く追及できるか注目される。姉歯元建築士らの喚問のように、無能な議員の独り善がりな演説で時間を費やすことは許されない。民主党の長妻昭議員は「事件への政治家の関与を明らかにする」と意気込む(2006年1月17日)。

自民党、証人喚問見送りを主張

自民党は当初、ヒューザー・小嶋進社長の証人喚問の見送りを主張した(「小嶋社長の喚問先送り」朝日新聞夕刊2005年12月21日)。「二回目の喚問は野党が強く要請したものだが、実施の方針を決めるまでの与党側の煮え切らない動きはどうしたことか」(「耐震偽装解明/国会の調査権を生かして」神戸新聞2005年12月24日)。

民主党の前原代表は記者団に対し、与党の姿勢を批判した(2005年12月20日)。「ヒューザーの小島進社長の証人喚問には逃げ腰で、(小島社長を国土交通省の担当者に引き合わせた)自民党の伊藤公介・元国土庁長官の参考人招致も逃げている。自分の党の議員を守るのではなく責務を果たしてもらいたい」(「与野党、耐震偽装捜索に絡み批判の応酬」読売新聞2005年12月20日)。

証人喚問実施日である1月17日は阪神大震災から11年の日である。宮崎勤被告の最高裁判決(幼女連続誘拐殺人事件)の日でもある。国民の関心を耐震強度偽装事件から逸らしたい、という狙いが隠されているようにも感じられる。

自民党からの質問者(衛藤征士郎、早川忠孝)は二人とも森派である。諸悪の根源である伊藤公介元国土庁長官も森派である。伊藤公介元国土庁長官への追及を避けたいとの狙いが透けて見える。「参考人招致や証人喚問は政争の場であってはならない」との主張があるが、伊藤公介議員の疑惑追及封じのための詭弁である。政官業の癒着の構図があるか否かは、国会にて明らかにしていかねばならない大きな問題である。この解明なくして抜本的解決はない。

小嶋社長、証言拒否

小嶋社長は偽装をめぐる認識や販売時期の関係など基本的な事実関係について証言拒否(答弁拒否)を繰り返した。一貫して「刑事訴追の恐れもあるので答えられない」と発言した。その結果、審議は度々中断した。小嶋社長は森田社長の死を悼む意味で、ダークスーツに黒のネクタイ、数珠を持って臨んだという。終始神妙な顔つきで、これまでテレビのインタビューなどに答えた際のような雄弁さはなかった(「小島社長、核心で答弁拒否繰り返す…衆院委証人喚問」読売新聞2006年1月17日)。

証言拒否と補佐人の鶴見俊男弁護士との打合せによる時間稼ぎである。国会の証人喚問をあからさまに冒涜する行為である。証言拒否で逃げ切れば、お礼に誰かが庇ってくれる密約でも存在するのだろうか。質問に立った長妻昭委員(民主)は「こんな態度では、証人喚問の意味を揺るがす事態になりかねない」と怒りをあらわにした(「「訴追の恐れ」理由に「証言控える」27回…小島社長」読売新聞2006年1月18日)。

被害者住民は失望

「議院証言法で認められているとはいえ、マンション購入者らには容認し難い姿勢だろう」(「耐震偽装問題/国会の威信かけて解明を」神戸新聞2006年1月19日)。

グランドステージ茅場町の管理組合理事長は不信感を表明する。「小嶋社長には瑕疵担保責任を果たす考えも能力もないとはっきりした」(「「証言控える」…30回」朝日新聞2006年1月18日)。

証言拒否に理由なし

「冒頭で「取引に違法性はない」と見えを切ったのならば、証言を拒否する理由はないのではないか。こんな証言拒否を見ると、偽装を知りながらマンションを売ったのではないかとますます思わざるを得なかった」(「かえって疑惑が深まった」朝日新聞2006年1月18日)。

「小嶋氏は証人喚問の冒頭で「取引に違法性はない」と言いきった。それなら、証言を拒否したり、覚えてないとはぐらかしたりせずに、持論を堂々と述べるのが筋というものだ」(「【小嶋社長喚問】証言拒否連発では真相解明は困難だ」南日本新聞 2006年1月19日)。

「刑事訴追の恐れを理由に挙げた小嶋社長は、喚問出席を求めた張本人でもあった。メディアで再三「違法性があったという認識はない」と発言した持論をもっと堂々と展開するべきだった」(石川達也「大弦小弦」沖縄タイムス2006年1月19日)。

証言拒否は違法を認めたも同じ

「証人喚問は不透明な結果に終わったが、見えてきたこともある。あれだけ証言を拒否するのは、彼に後ろ暗い点が多々あるからだと考えるのが常識だろう」(「一日一言」四国新聞2006年1月18日)。

「偽装を知りつつ物件を売り抜けた疑惑をはじめとして、身辺が刑事訴追の恐れだらけであることを認めた以上、叩けばほこりの出る体でございます、と語ったも同然だろう」(「編集手帳」読売新聞2006年1月19日)。

「<訴追の恐れ>を言うことは自分の落ち度への不安の表明か」(「よみうり寸評」読売新聞夕刊2006年1月18日)。

藤田東吾社長、小嶋社長が偽証と非難

イーホームズの藤田東吾社長は東京都新宿区の本社で記者会見し、小嶋社長を強く非難した。衆院国土交通委員会証人喚問において、小嶋社長は「天災地震が起きてから調査、発覚したことにしたい」との発言を否定した(2006年1月17日)。これに対し、「明らかに偽証だ」と指摘した(「<耐震偽造>小嶋証言「明らかに偽証」 イーホームズ社長」毎日新聞2006年1月17日)。

「ほとんど重要な質問に答えていなかった。恥を知らないというか、品格というものを知らない人。自分で判断して答えられることをいちいち弁護士の人に相談して答えるという態度を見て、代表者である会社の経営者として、品格・品位を持っていない」。

藤田社長は他人事のように小嶋社長の態度を批判するが、そもそもイーホームズがしっかりとチェックしていれば、このようなことにはならなかった筈である。その点ではヒューザーと同罪である。

四ヶ所猛らの参考人招致

衆院国土交通委員会は2006年1月19日に耐震強度偽装問題に関する参考人質疑を実施する(「耐震強度偽装、参考人質疑は19日 衆院国土交通委」朝日新聞2006年01月12日)。参考人は総合経営研究所・四ヶ所猛氏、平成設計・山口時也代表取締役、徳永豊建築士、スペースワン建築研究所・井上正一社長である。招致は、野党側が求め与党側が受け入れた(「耐震計算偽造:四ケ所氏ら4人を参考人招致−−衆院国交委、19日に」毎日新聞2006年1月13日)。

当初、自民党は参考人招致に反対していた。自民党は四ヶ所氏に耐震偽装問題対策検討ワーキングチームの会合に出席を求め、参加の上での会合を行っている。何故、自民党の会合には呼びながら、国会の参考人招致には応じないのか、合理性が皆無である。

自民党は伊藤公介元国土庁長官の喚問を拒否

野党側は自民党の伊藤公介元国土庁長官の参考人招致も強く要求した。しかし自民党は応じなかった。自民党は「(小島社長の)喚問の内容をみて決めたい」と主張した。証人喚問の結果を見て再協議することになった。1月12日も自民党は「17日午後に行われる(開発会社「ヒューザー」の小島進社長の)証人喚問後に決めたい」とするにとどまった(「総研の四ヶ所氏ら4人、19日に参考人招致」読売新聞2006年1月12日)。

自民党は伊藤公介元国土庁長官の参考人招致に何故抵抗するのだろうか。何故、伊藤氏だけは別立てなのか。他の議員への波及を恐れているのか。自民党は、拒否すればするほど、疑惑が深まることが分からないのだろうか。民間人は証人喚問を行い、政治家は特別扱いというのは普通に考えて納得いくものではない。公明党幹部も「民間人を委員会に呼んで、議員はダメという理屈は通らない」と語る(「あす小嶋社長喚問」朝日新聞2006年1月16日)。

野党側は与野党の国対委員長会談(2006年1月17日)においても伊藤公介元国土庁長官の証人喚問か参考人招致を要求した。民主党の野田佳彦国対委員長は「小嶋社長の証人喚問などを踏まえ、前向きな対応が必要だ」と主張したが、与党側は回答しなかった(「伊藤元長官の喚問要求 野党、国対委員長会談で」共同通信2006年1月17日)。自民党は疑惑だらけの伊藤公介の証人喚問にも、疑惑まみれの安倍晋三の秘書の飯塚洋の参考人招致にも、異常なまでの徹底拒否を続けている。

「渦中にある販売会社社長の意向に沿った働き掛けをした、という疑惑は軽いものではあるまい。国民の政治全体に対する信頼を左右する事柄ではないか。しかも、これまで記者会見などで行った釈明には、疑問や不十分な点も残っている」(「伊藤元長官/証人喚問をなぜ受けない」神戸新聞2006年2月15日)。

野党の対決姿勢

民主党の前原代表は小泉純一郎首相の構造改革路線を批判する。「民間に任せてほったらかしにした結果、子ども、建物、食べ物、乗り物の安全が日本から失われてしまった」「何でも『小さな政府がよい』というだけで、公が担うべき安心、安全(対策)が極めて雑になっている」(「「安全」重視で対決姿勢 民主、政府責任を追及」共同通信2006年1月6日)。

「民主党は、ライブドア事件、耐震強度偽装事件、米国産牛肉の特定危険部位混入問題を「政権追及三点セット」として、国会論戦の序盤戦を押し気味に進めている」(「堀江氏支援 武部・竹中氏を標的 民主攻勢「ライブドア3兄弟」」産経新聞2006年1月27日)。

民主党、真相解明へブログ開設

民主党は、耐震強度偽装問題の真相究明に向け、インターネット上に国民から広く情報や意見を募るブログ(日記風サイト)を開設した(2006年1月12日)。衆院国土交通委員会での証人喚問(2006年1月17日)や通常国会(2006年1月20日召集)を前に、民主党の責任追及への取り組みなども紹介し、国民の「安全」確保を重視する党の姿勢をアピールする。通常国会では国民の「安全」に焦点をあて、政府、与党を追及する構えである(「改革総決算、「安全」追及 秋にらみ通常国会攻防」共同通信2006年1月15日)。

野田佳彦国対委員長は記者会見(2006年1月12日)で「国民参加型の情報収集、発信による疑惑解明の成功事例をつくりたい」と強調した。同時に「小泉構造改革も偽装が多いので、通常国会で明らかにしていきたい」との決意を示した(「真相解明へブログ開設 民主、耐震強度偽装で」共同通信2006年1月12日)。

耐震強度偽装問題徹底究明サイト

ライブドア家宅捜索と耐震強度偽装

耐震偽装では生活の安全、ライブドアの会計偽装では株価が揺れている。何れも経済取引でもっとも重要な基盤である信用を裏切る詐欺行為である。ライブドアとヒューザーの関連性を指摘する見解がある。

安倍晋三官房長官の私的後援会組織「安晋会」の理事に、自殺と発表されたエイチ・エス証券の野口英昭副社長が就いていた。ヒューザーの小嶋進社長と野口元副社長も接点があったとされる。

「ヒューザーとライブドアの人脈は重なっており、しかも、その人脈はダーティーな人脈にさらに繋がって行く」(山岡俊介「ヒューザー・小嶋社長証人喚問、ライブドア疑惑のどちらでも名前が出る安倍晋三官房長官の不徳」ストレイ・ドッグ2006年1月18日)。

同志社大の浜矩子教授は耐震強度偽装事件とライブドア事件の共通性を指摘する。「2つの問題は、規制緩和、小さな政府の流れの中で相前後して出てきた。重なる部分がある」(「ライブドアと耐震偽装 「報道と読者」委員会」共同通信2006年2月18日)。

ライブドア強制捜査

東京地検は2006年1月16日夕方にライブドアを証券取引法違反容疑で家宅捜索した。ヒューザー小嶋進社長の証人喚問前日の強制捜査である。しかも、異例の夕方からの強制捜査である。家宅捜査は通常、方針決定の翌日に行われる。しかも株価操作のための風雪の流布程度の罪状ならば、証券取引等監視委員会が動くのが本筋である。

ホリエモンは小嶋進と政治家のスケープゴートにされた。裏があるとしか思えない。ヒューザーの証人喚問隠しである。証人喚問関連の報道時間を少なくするための、稚拙な揉み消し工作だろうか。捜査をする立場にある人や組織が、不信感を抱かれないようなやり方を採ることは最低限のことである。

ボルテージのピークを証人喚問と同時刻に持ってくるために、わざと株取引が終了した時間から強制捜査を開始し、翌日は朝から、株価暴落を含めた「イッツ ショータイム」を狙ったのだろうか。あまりにも計算され過ぎていて恐ろしい。実際、ライブドアショックで日本の株価は急落した。世界中の株式市場に影響を与え、世界同時株安の様相を見せた。

ライブドア強制捜査が報道されるまでは、耐震強度偽装事件は、新事実が明らかになり、証人喚問に向けて報道量が増加していた。伊藤介伊藤公介議員三男の経営する会社がヒューザーのマンション管理業務を受託したことや、ヒューザーがイーホームズから強度偽装を指摘された直後に姉歯元建築士からデータを入手していたことが明らかになった。

ところが、家宅捜索により、報道はライブドア一色である。本来ならば1月17日の朝刊の見出しは「本日、ヒューザーの小嶋社長の証人喚問」の筈であった。しかし見出しは「ライブドア捜索」であった。ヒューザー証人喚問のニュースが霞んでしまった。

背景に何か強い力を感じずにはいられない。法務省は昔から、政治的な動きをする、ということで評判が悪かった。検察ファッショという言葉まである。法務省の政治体質というか捜査を私物化する体質は現在も変わっていない。

長い目で見たら、偽装マンション問題を報道することの方が、我々の生活にとって遥かに大切である。ライブドア問題より、耐震強度偽装事件の方が、比べ物にならないくらい、はるかに悪質な事件である。人の生死に直接的に関わる問題である。偽装事件はライブドアにかき消されてしまってはいけない問題である。決して風化させてはならない。

フライング報道

ライブドアの家宅捜索はフライングで報道された。NHKと日本経済新聞は家宅捜索が行われる2時間前に報道している。家宅捜索は通常、証拠隠滅の怖れがあるために、必ず極秘で行なわれる。何故、NHKや日本経済新聞に情報が流れたのだろうか。家宅捜索の話題を盛り上げるために意図的にメディアにリークされた可能性も否定できない。

東京地検特捜部が実際に家宅捜索を開始したのは18時半過ぎである(「ライブドアに強制捜査との報道、ライブドアは「捜査が入った事実はない」」ITmediaニュース2006年1月16日)。しかしNHKは16日午後4時のニュースで報道した(「ライブドアを家宅捜索=NHK報じる」ラジオNIKKEI 2006年1月16日)。「東京地検が強制捜査に乗り出しました」と報道した。午後7時のニュースで「その段階では任意の捜査であり、本格的な捜索は午後6時半ごろからでした」と説明した。

日本経済新聞もインターネットのサイト「NIKKEI NET」で午後4時18-27分、「家宅捜索した」と流した。午後6時5分、「家宅捜索する見通し」と差し替え、「その時点で家宅捜索の事実はありませんでした」という「お断り」を掲載した。日経新聞社長室は「準備していた原稿を手違いで早く送ってしまった。改めて令状をとったことを確認して訂正した」と説明する(「NHKと日経、ライブドア捜索着手前に「強制捜査」報道」朝日新聞2006年1月16日)。

NHKの第一報に対し、即座にライブドアは「本社の六本木ヒルズ38Fおよび堀江の自宅に捜査が入った、という事実はない。誤報だ」とコメントした(「ライブドア、証券取引法違反により捜索を受けたとの報道を否定」RBB TODAY 2006年1月16日)。

NHK従軍慰安婦問題特番への政治介入疑惑

NHKは安倍晋三議員が番組内容に介入した疑いがもたれている。NHKが放送した旧日本軍の従軍慰安婦問題を扱った特番が内容を修正されて放送された。放送直前に自民党の安倍晋三幹事長代理(当時)らがNHK幹部に政治的圧力をかけたとされる。番組担当者は「放送内容に政治介入があった」と訴える。

番組の修正がなされたことは事実である。番組の修正が誰の意向により、いかなる経緯を経て行われたかは不明瞭である。これが解明されない限り、安倍晋三発言がNHKの番組に対して何らかの影響を及ぼしたという疑惑は濃厚である。

耐震強度偽装事件の証人喚問では小嶋社長が被害者住民に「安倍晋三議員を通じて、この問題は国の責任だと国交省の役人に言ってもらった」と説明したことが明らかになった。耐震強度偽装事件と安倍晋三議員、ライブドア家宅捜索をフライング報道したNHKに接点は存在するのだろうか。

当時のチーフプロデューサー・永田浩三氏は以下の証言をした(2006年3月22日)。朝日新聞の記事等で番組編集への政治家の関与が指摘された後の2005年1月、NHK幹部らが対応を話し合った際、放送前に安倍晋三議員に会った経緯について、「呼びつけられたのではなく、こちらから出向いたことにしよう」とのやり取りがあったとする。これは松尾武元放送総局長と国会対策担当であった野島直樹・元総合企画室担当局長との間で決まり、永田氏はその場にいた上司から直接聞いた。「NHKは真実は何か、世間に説明すべきだ」と主張する(「NHK番組改編・安倍氏に説明」朝日新聞2006年3月23日)。


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