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平成17年(ワ)第3018

売買代金返還請求事件

 

陳述書

 

平成17510

 

原告本人            

 

 

 

 

東京地方裁判所民事部第七部 御中

 


 

目次

 

被告準備書面への反論... 3

「1請求の原因に対する認否等」Aについて... 3

同Bについて... 4

同Cについて... 5

同Dについて... 6

同Eについて... 7

同Fについて... 8

「2被告の主張等」@について... 9

同Aについて... 9

原告の主張... 14

日照・採光、景観・眺望、通風... 15

不利益事実不告知... 16

不利益事実不告知の影響... 17

東急リバブルによる利益の提示... 18

重要事項説明... 22

不利益事実告知義務... 24

隣地建替え計画... 25

被告窓口井田... 25

建設時の経緯... 26

計画の具体性... 27

主張の矛盾... 29

不誠実な対応... 32

たらい回し... 33

無礼な態度... 37

誠意のない謝罪... 39

回答拒否... 40

示談の提示... 40

不誠実な応訴態度... 42

被告の体質... 42

建設トラブル... 44

被告行為の犯罪性... 47

結語... 47

 

被告準備書面への反論

被告(東急不動産株式会社)準備書面には誤字があり、内容も不実なことだらけで驚いている。被告には再調査をお願いしたい。被告は20041212日の協議の席上、アルス(本件マンション)担当者が途中で交代したと説明しており、前任担当者との間で十分な引継ぎ・情報共有がなされていないように見受けられる。被告住宅事業本部第四事業部の野間秀一課長・関口、被告窓口井田が全てを知っている。

 

「1請求の原因に対する認否等」Aについて

被告主張「原告主張の建物が、同主張の頃建築工事に着工されたことは認めるが現状ストップしている」について

工事停止は、被告が原告に北側建物建替えについて何ら説明せずに販売したことをW氏が知り、かつ、それについて被告は独自の論理で正当化するのみで謝罪をしないどころか何ら誠意ある対応をしなかったためである。

尚、被告の対応に問題があったことは、被告自身が書面で認めている。即ち、1216日付けの手紙で下記のように自社の対応を問題と認め、表面的には謝罪した。

「原告様からのご指摘がありましたご返事が遅れた点、これまでの弊社並びに東急リバブル担当の対応が不十分であった点、また、弊社と東急リバブルとの連絡が不十分であった点については深くお詫び申し上げます。今後このような事がないよう善処させていただきます。」

工事がストップしている理由は上述の通りであるため、工事はいつでも再開できる状態にある。従って工事が停止しているから不利益事実が生じていないとの主張は成立しない。

工事が上述の理由で停止していることは、2005113日に被告の野間秀一、関口、井田、大島聡仁がW氏宅を訪問した際にW氏から説明されており、被告も了知している筈のものである。その際にW氏は被告に対し、「原告に訂正文を出して謝ってくれ、それまで工事はストップする」と発言している。

 

被告主張「壁工事などは未だ未施工」について

「未だ未施工」と「未」を重ねたことによる文意は理解できない。二重打ち消しを素直に解釈すると打ち消しの否定で肯定となり、意味が通じない。ここでは単純に壁工事が未施工と解釈する。

北側建物は20038月以降、鉄筋の骨組みが出来上がっている状態である。この時点で工事用の幕が建設中の建物全体に覆われたことにより、日照・眺望が遮られ、真っ暗な状態となった。その後、W氏の厚意と配慮により、幕が外された。被告にW氏の万分の一でも厚意と配慮があれば、本件が訴訟にまで至ることはなかったと思われる。

また、現在未施工であるとの主張は、施工されれば日照・採光の妨げられることを否定するものではない。

 

被告主張「些か理解し難い」について

「些か」とは「数量・程度の少ないさま。ほんの少し。わずか」の意である。もし「全く理解できない」「少しも理解できない」と主張したいのであれば「些かも」とすべきである。

 

被告主張「採光は原告主張のとおり2方面から得る設計になっており」について

被告は全ての部屋が2方面の採光・通風を享受できると主張したいようであるが、北側しか採光部のない部屋の存在を無視している。北側しか採光部のない部屋では、その日照が遮られれば真っ暗になるのは自明である。

図面集の間取り図記載のとおり、本件マンション301号室は2LDKであり、一部屋だけのワンルームマンションではない。洋室は全て北側に面している。二面採光の一面にある二部屋が暗くなったと言っている。西側の部屋を言っているのではない。

被告は「西側があるから北側が潰れても我慢しろ。北側の部屋は諦めて西側に部屋だけで日光を浴びろ」と主張したいようであるが、一面の日照が奪われることを不利益と認めない被告の暴論は成り立たない。被告は二面採光・通風を売りにして販売している(後述)。二面採光で販売したのであるから、一面が潰れてももう一つがあるからいいという主張は通らない。商品価値はなくなる。被告は自社の主張を正当化するために無理な論理を展開している。

 

同Bについて

被告主張「中田は、物置ではなくて、作業所兼物置と説明していたはず」について

中田は物置、資材置き場と説明した。作業所とは説明していない。そもそも中田の説明は口頭でなされたものであるが、口頭で「作業所兼物置」と漢字を並べ立てた言葉を使うことは一般的にも考えにくい。

アルスの二階居室購入者も東急リバブル・宮崎英隆から物置、資材置き場とのみ説明を受け、作業所であるとの説明は受けていない(後述)。

 

被告主張「眺望などは当時本件建物から見える景色(遊歩道の緑)を説明しただけ」について

マンション販売時に建物から遊歩道の緑が見えると説明することは、アルスの利益となる事実を説明したことである。

 

被告主張「「2面採光で心地よい空間を演出します。」との記載も無い」について

被告は勝手に「Buon Appetito!」(甲6)を引用して記載がないと結論付けているが、そもそも引用する資料が異なっており、記載がないのは当然である。

図面集は「上質な暮らしを深める邸宅」と題して「独立性の高い立地を活かした全戸に開放感ある角住戸を実現。風通しや陽射しに配慮した2面採光で、心地よい空間を演出します」と記述する。

この文言については原告作成被告宛ての文書(2004112日)にて引用した上で「東急不動産はこの広告の部分が数ヶ月で失われることを知っていて故意に契約者に告げず、高い価格でマンションを売った。わずか数ヶ月で3階建ての隣の壁で一面が真っ暗になってしまった。詐欺にも等しい不法行為に当たる」と記述した。

被告が原告からの手紙を真面目に読んでいるならばよくわかっているべき文言である。そもそも図面集自体、被告が作成したものであり、原告の指摘を受けるまでもなく、熟知しているべきものである。被告が自社物件の売り文句に対し、いかに無責任であるかをうかがわせる記述である。

 

被告主張「通風・採光について格段良さを謳ってはいない」との主張は成り立たない。

図面集の記述に加え、チラシ「マンション選びのポイント」には「緑道に隣接するため、眺望・採光が良好!」「全戸角住戸!2面以上の開口・採光を確保!」と記述している。

一方、アルスには日照・眺望・通風以外には目立った利点はない(後述)。即ち、アルスは日照・眺望・通風を強力なセールスポイントとしたマンションであり、それらが失われれば社会経済的にもさして価値のない建物になる。

 

同Cについて

被告主張「本件北側建物も建築着工時期について知らなかった」について

W氏は「アルスの建設後、すぐに建てる」と説明している。(後述)

20041212日、東急リバブル渋谷センター(渋谷東急プラザ6階)にて原告と被告は協議した。被告は東京都都市整備局に呼び出されたため、原告と話し合いの場を持った。これは原告が同局住宅政策推進部不動産業課に面談に行き、被告の詐欺的商法及び不誠実な対応を訴えたためである。行政の指導が入らなければ、原告からの回答すらまともに返さないのが被告の対応であった。

協議の場において、被告の野間課長は原告に対して「井田から聞いて全部知っていますよ。会社の判断で告げないことに決めました。言いたくても言えなかったのですよ。Wさんとの約束を破ったことは悪いと思っています。近日中に謝りに行きます」と話した。

 

被告主張「本件建物の採光・日照が喪失することなどを承知していない」について

被告は北側隣地に三階建ての建物が建てられることを知っていた。

隣地に三階建ての建物が建てられれば、アルスの三階以下の日照・採光が喪失することは当然のことである。隣に壁ができれば、日がささなくなることは小学生でも分かる自明な理屈である。

W氏が三階建てに建替えられることを購入者に説明・警告することを被告に依頼したことも、そのためである(本依頼は被告により反故にされた)。

 

被告主張「「日照が喪失」との主張は理解し難い」について

日照が享受できなくなると主張している。

 

被告主張「被告が原告に対して、「不利益となる事実を故意に告げなかった」との主張は争う」について

被告は隣地に建替え計画があることを知りながら、原告には告げなかった。知っていたにも関わらず伝えなかったのであるから、故意である。不利益事実を告知すれば本件建物が売れなくなる、ないし、販売価格を下げざるを得ないために、意図的にその事実を告げず、よって購入者に損失を与えたことは明白である。

被告はW氏と工事承諾などの交換条件で、本マンションの二階及び三階の購入者に隣地建物建替えについて告げる約束をしたが、不利益事実を告知すると本件建物が売れなくなることを恐れて、W氏との約束を反故にして、二階購入者及び原告には三階建ての建物が建つ旨を告げなかった。

 

同Dについて

被告主張「原告が訴外W氏からその主張の頃事情を聞いたこと、同W氏の話に関しては何れも不知」について

原告がW氏から事情を聞いたのは、東急リバブル住宅営業本部営業第五部・今井由理子及び宮崎英隆が9月に原告宅を訪問した際に今井よりW氏に確認することを求められてのことである。

原告宅において今井は「誰一人としてW氏の話を聞いていない。誰も知りません。W氏が誰に言ったのか調べてください」と言った。原告は被告の依頼を受けて、W氏より再三再四に渡り経緯を聞いた。原告は被告と販売代理の関係にある東急リバブルから依頼されたため、W氏に事情を確認した。しかしながら実は被告は被告窓口担当である井田より全てを聞いて初めから知っていた(20041212日の発言)。

加えて原告はW氏と被告の説明が大きく食い違っているため、被告からもW氏に直接確認するように再三依頼し、W氏の連絡先までも提示した。しかし被告がW氏に確認することはなかった。その後も被告は原告の問い合わせ要求に対し、被告の主張を繰り返すのみで、W氏への調査・確認は何らなされていない。

どうして被告がW氏に確認しないのか、不思議であったが、その理由は後日解明する。被告は初めから全てを知っており、確認すると嘘が発覚してしまうためである。20041212日の協議の席上、被告は「被告窓口担当である井田より全てを聞いて初めから知っていた」と回答した。

被告及び東急リバブルは初めから知っていたのならば、原告に調べさせる必要はなかった。原告に調べさせる必要はないのに、知らないと嘘をついて原告に調べさせたのである。

原告による再三再四の確認で事実が明らかになるにつれて被告の表現がコロコロ変わることには驚いた。東急不動産は大企業だから信用があるなどとはとんでもない。一生に一度の高価な買い物で嘘をつかれて騙されたという不安・不信と会社ぐるみで知識のない消費者を嘘で誤魔化す不誠実な対応に悔しさで腸がちぎれる思いをした。

 

被告主張「最も、被告は、同W氏から本件マンション建築前において2回程度本件北側建物の建築について事情を聞いており、その趣旨を本件契約における重要事項説明において、原告にも伝えていた」について

「最も」は「尤も」の誤記であるように思われる。そのように理解しなければ文意が通らない。

W氏が被告担当者の関口氏と会ったのは一、二回程度であるが、被告の窓口である井田とは何度も会っており、建替えの説明も二階と三階の購入者への説明の依頼も何度もしている。井田からも「何階建てにするのか」という確認が何度もなされた。

 

被告主張「被告が訴外W氏に対して本件マンションの窓の仕様を説明したことはないし、本件マンションを案内したこともない(訴外康和地所の担当者井田がかかることをしたかどうかは不明)」について

井田は康和地所の従業員とされるが、マンション建設地が康和地所から被告に譲渡された後は被告の窓口として行動している(後述)。従って井田の行為は被告の行為であって、都合の悪い場面では「康和地所の担当者井田」として有耶無耶にすることは卑怯卑劣極まりない。

また、本件は井田の独断でなされたものでもない。施工会社である株式会社ピーエス三菱(旧三菱建設)の山下工事所長に案内されて、本件マンションの八階から二階まで全階の窓を確認している。

二階、三階の窓だけ透しガラスから曇りガラスに変更されたことは、大分後になって変わったことであるとの説明もW氏は受けている。

 

同Eについて

被告主張「被告作成の重要事項の説明が「一般的」な内容の記述であることを争い(と言うか原告の主張が不明)、不利益事実告知義務を免除との主張は争う」について

被告作成の重要事項の説明はW氏所有建物の建替えに言及したものではない。隣接する敷地の全てにおいて起こりうることを文字通り一般的に述べたにとどまる。ここには被告がW氏から受けた説明や依頼は何一つ反映されていない。詐欺にも等しい明らかな不利益事実告知義務違反である。

被告回答文書(20041216日)においても「将来建つ可能性があるものとして(W様に限らず)、重要事項説明書にある「周辺環境について」との項目に記載をさせて頂きました」として、重要事項の説明が隣地建替えに特化したものでないことを自認している。

また、2004919日に東急リバブル・今井由理子、宮崎英隆が原告宅に訪問した際も、原告側の「重要事項での周辺環境は隣地の建替えのことを記述しているのですか」との質問に対し、今井は「いいえ、一般的なものです」と回答した。契約時にも重要事項説明の周辺環境についての記述が隣地建物を指すとの説明はなされなかった。

被告準備書面を読む限り、被告は当初よりW氏の説明を把握していた上で購入者には説明しなかったことになるが、それは今井、宮崎の説明とは矛盾する。当初、被告はW氏の話を誰も知らない、誰も知らないというスタンスで原告に接していた。知っていたにもかかわらず、最初の問い合わせでは「知らない」と白を切り、原告側に無意味な調査を要求するのは不誠実極まりない対応である。

加えて、重要事項説明の説明者は宅地建物取引主任者(東京第145705号)の宮崎英隆であるが、宮崎自身、原告から問い合わせを受けた際は、隣地建替えの件を全く知らないと回答していた(後述)。

協議の場(2004919日)でも今井、宮崎ともにW氏の「アルスが建ってからすぐ建てる」との発言を否定していた。今井は「W氏の話を誰も聞いていない。東急不動産にも問い合わせたが、誰一人としてW氏の話を聞いていない」と回答した。その上で今井は東急不動産担当者の名前(住宅事業本部第四事業部・松岡リーダー、野間課長、関口)を挙げ、「W氏はこの中の誰に告げたのですか。誰に説明したのか不明なので、W氏が一体誰に言ったのか調べてください」と原告に依頼までしている。

従って被告は隣地建替え計画を知らないで重要事項を作成したことになる。作成者が知らない以上、記載できるはずはない。重要事項説明はW氏の建替えのことは少しも考慮に入れずに書かれたことになる。よって重要事項説明は隣地建替えについて説明したものではなく、一般的に書かれたものである。契約時においてもその後も重要事項は当たり前のことが書かれている一般的なものとして取り扱われた。

 

被告主張「因みに、本件の争点と関係するが、被告は、消費者契約法所定の事業者であるが、同法が被告に一般的に「不利益事実告知義務」を負わせているわけではあるまい」について

反論については後述。一方でこのような主張をしていること自体、被告が不利益事実の不告知を認めているようなものである。

 

同Fについて

被告主張「被告は、原告に対し、本件建物にかかる「日照・眺望・通風・景観等の住環境に対する重要事項」に関して、「利益」を告げた事実はない」について

パンフレット等で二面採光・通風を謳っている。販売担当者中田愛子(東急リバブル住宅営業本部営業第五部)の説明においても、この点がメリットとして強調された。

景観についても北側に江東区立洲崎緑道公園の並木道が望めることを強調していた。パンフレットも背景色を緑としており、緑道との関連を強調している。

また、被告の主張するとおり、「日照・眺望・通風・景観等の住環境に対する重要事項」に関して、「利益」を告げた事実はないならば、アルスは日照・眺望・通風・景観等をセールスポイントとするマンションであり、それ以外には個性のない物件であるのだから(後述)、何のメリットも残らない物件となってしまう。マンションは、何ら利益となる事実を告げずに販売して売れるものではない。加えて、自ら販売した物件にはメリットがないと被告の自己否定を聞くのは悲しいものがある。

 

被告主張「被告は、原告から同主張の内容証明郵便を受領した事実を認めるが、その法的効力を争う」について

被告の販売は消費者契約法4条(不利益事実不告知)に該当し、原告による取消の意思表示がなされたのであるから、その法的効力が発生する。

 

「2被告の主張等」@について

被告に対して主張したいことはたくさんある。

・強引な販売方法

・契約後のトラブルにおける顧客対応の悪さ。

・不誠実、嘘で固めた回答、居留守、たらい回し、時間稼ぎ

契約締結時の経緯については後述する。

 

同Aについて

被告主張「被告は、原告に対し、本件契約締結時において、本件建物の北側隣地の建築計画(本件北側建物)について調査し」について

被告がW氏から説明を受けたこと以外に調査をしているのならば、その内容を具体的に明らかにされたい。20041212日の協議においてアルスの担当者を自称する大島はW氏とは会ったこともないと発言している。

調査内容は準備書面記載のW氏との面談(2002117日)に留まると解して良いのか明確にされたい。本面談は僅か数分間の立ち話でなされたものである(後述)。

 

被告主張「訴外井田氏は同W氏と平成148月前後から同所有の敷地に関して、共同開発などを含めて接触を持っていた」について

康和地所がW氏に最初に求めたことはW氏所有の土地の売却である。売却が断られると次に等価交換方式による土地の譲渡を求めてきた。共同開発の話はなされていない。

康和地所は「Wさんは土地を売らないでしょうね」と言ってきたので、「売らない」と答えた。

W氏は等価交換の提案も断った。等価交換方式とは隣地を売却し、マンションの一室を隣地の地価分割り引いた価格で購入できるというものである。

等価交換方式で建てられた物件については、書籍で「買ってはいけない原則や教訓」として「等価交換ものは避ける」と記載されている(根来冬二、買ってから泣かないマンション選び、築地書館、2000年、39頁)。購入者には好印象を与えない方式にもかかわらず、隣地土地を何が何でも取得しようとした康和地所の焦りが感じられる。

康和地所「等価交換方式によれば二千万円でマンションの一室が買えます」

W氏「土地を譲った上に、何で二千万円も出さなければならないのか」

このやり取りの後、すぐに被告とピーエス三菱になり、挨拶に来た。

尚、東急リバブル回答文書(宮崎英隆作成、2004924日)は「東急不動産からW様へ土地の有効活用の方法として等価交換方式で「一緒に建てましょう」と言いました。その際にW様から等価交換ではなく、単独で「将来的に建替えたい」という希望はお伺いしました」と記述する。

事実は被告からW氏へ「一緒に建てましょう」との提案がなされており、宮崎の記述は誤りである。但し、ここでは等価交換の提案主体が東急不動産となっている点で、康和地所とする被告準備書面とも矛盾する。

 

被告主張「本件マンション竣工後地盤の様子を見てから建築すること」について

被告はW氏の発言を歪曲している。実際のやり取りは下記の通りである。

W氏の建替え計画を知った被告より、W氏に対して「一緒に建てましょう」との提案がなされた。これは同時期に建てましょう、との意味である。これに対してW氏は「地盤が緩むといけないので、アルスが建ったらすぐ建てる。アルスが建ってからだから、どうせ一年後になる」と断った。

上述の通り、地盤はあくまでマンションと同時期には建てないことの理由として持ち出されたものであり、被告が主張する「様子を見てから建築する」というような計画の不確定さを印象付けるものではない。被告としては「建築時期、建築内容等具体的な事実が決まっていない」とする主張に正当性を持たせたいがために、W氏の発言を歪曲したものと考えられる。

 

被告主張「建築内容は3階建」について

W氏が被告に対し、三階建てにすると説明した後も、井田からは何度も「何階建てか」と確認されたため、W氏は「三階より上は絶対に建てない」と約束した。以下のやり取りもなされた。

「何で三階なのですか。五階くらいにして上を貸せばいいのに」

「階段をつけなければならないし、そのためのスペースも必要になる」

 

作業所兼住居について

被告はW氏の説明を矮小化している。実際は、W氏は作業所兼住居に建替えるとの説明に続けて、「作業所なので騒音が発生する」と述べ、二階と三階の購入者に予めこのことを説明するように依頼し、承諾を得た。

これは被告自身、原告宛被告回答文書にて認めていることである。

被告回答文書(大島聡仁作成、20041015日)

アルスが建ってからすぐに建てる旨、3階以上は建てない旨、住まいと仕事場が一緒になるから騒音がある旨の内容は伺っておりました」と認めている。

ここでは「3階以上は建てない」と書かれてあるが、これは四階以上の誤りである。正確な語義上は三階以上では二階までとなってしまい、話が通らなくなる。

被告回答文書(社印付、200519日)

平成1411月時点でW様が康和地所井田氏を経由して、下記のご意向をお持ちであることは伺っておりました。

・アルスが建ってからすぐに建てたい。

・3階建てを建てたい。

・住まいと仕事場が一緒であるから騒音がある。

 

被告主張「建築(建替え)は間違いなくするがその資金調達はまだこれからであること、特に融資を受けていた永代信用金庫がダメ(倒産)になったことから、新たな融資先を捜していること、紹介して欲しいこと」について

被告準備書面によると、W氏の上記発言は建替えの説明の中でなされたように理解できるが、実態は全く異なる。

「紹介して欲しい」との発言は北側建物建替えの説明時ではなく、被告側からの「一緒に建てましょう」との提案の際になされた。本提案に対しては、W氏は「地盤が緩むといけないので、マンションが建ったらすぐ建てる」と回答して一度断っているが、被告は執拗に提案してきた。

それを断るための口実としてW氏は「金融機関を紹介してほしい」と言ったにとどまり、それはあくまで「同時期に建てるならば」との前提がついた話の中でのものに過ぎない。井田には何度もアルスの建設後に建替えをすることを伝えてあり、上記発言から、建築費用がないために当分隣地を建替えることはないと解釈する余地はない。

被告はW氏には融資してもらえる金融機関がなく、建築資金調達が困難であるため、建替え計画は不確定であったと主張したいようである。原告宛文書にも何度も記述されているし、被告が国土交通省関東地方整備局建政部建設産業課に提出した本件に関する報告書にも記載されている。

しかし、これは虚偽であり、W氏を資力のない人間と貶め、侮辱するものであるため、当然のことながらW氏の反発を受けることになった。2005113日に野間、関口、井田、大島がW氏宅を訪問した際に謝罪している。加えて218日に林、野間が訪問した際は、資金調達困難との記載は誤りとして被告が国土交通省関東地方整備局建政部建設産業課に提出した報告書を訂正するとW氏に約束している(後述)。

 

被告主張「特に融資を受けていた永代信用金庫がダメ(倒産)になったことから、新たな融資先を捜していること」について

W氏は永代信用金庫の破綻については述べたが、「新たな融資先を探している」とは述べていない。永代信用金庫の破綻も井田との雑談で述べたものであり、建替えとは何ら関係のない話である。

元々、作業所はアルスの建設後に建設する予定であり、すぐに融資を受けなければならない必要は皆無である。そして金融機関は破綻してもしばらくすれば受け皿金融機関に継承されるものである。

また、ここは融資先ではなくて、融資元と考えなければ、意味が通らない。

 

被告主張「建築(建替え)工事をすることは入居者に伝えておいて欲しい」について

被告はW氏の依頼を矮小化している。W氏の依頼は三階建てが立つこと、住居兼作業所にするので騒音が発生することを伝えるように依頼した。依頼に対して被告は了解している。

井田は「責任を持って行います。引継ぎはしっかり行います」と回答している。

依頼に対する被告の同意を受けて、W氏は被告に対して工事承諾書を提出した。提出に当たり、建替え予定を購入希望者に伝達することを条件として同意の印鑑を押したと主張する。W氏は原告に「マンション購入者に説明することを条件として判を押した」と語った。

工事承諾後もW氏は建替えの話を何度もした。被告は原告宛文書で「その後、W様より具体的なお話をうかがっておりません」(20041015日付回答、大島聡仁作成)と一度聞いただけのように主張するが、一二月にも話しており、その後も繰り返し説明・依頼している。

被告がW氏からの依頼を反故にした件については、1212日に原告が被告と協議した席上で、野間課長から「Wさんに対しては謝罪しなければならないと思っている」との発言がなされた。

 

被告主張「訴外康和地所は、訴外W氏に対して、敷地境界をフェンスではなくて、ブロックまたはコンクリートにすること、本件マンションの北側の2階、3階の開口部を片ガラスにすることで検討することを説明していた」について

被告の主張は誤りである。第一に、この説明は康和地所ではなく、被告に譲渡され、マンションの建設が進んだ時点でなされた。W氏が康和地所から上記の説明を受けたことはない。

第二に一方的な説明であったように主張するが、実際はW氏とのやり取りの中で決まったものである。

当初の予定では敷地境界はフェンスであった。被告担当井田から「塀はフェンスでどうでしょう」と相談をした。これに対してW氏は「仕事場と一緒だから騒音がある。また、子供がいるのでフェンスだと壊すといけないからコンクリートにしてください」と回答した。井田は「助かります」と回答した。

このやり取りは本件マンションの建築途中の、基礎工事が終わって建ち上がった頃で、建築に着工した200211月からはかなり後であり、年月が違う。

窓についても訴状記載の通り、W氏が建築中のマンションから窓の位置を確認した後、「三階までを曇りガラスにしました。玄関右側六畳の部屋には窓が三つあります。一つだけ開きますが、後の二つは羽目殺しにしておきましたよ」との説明を受けた。

アルスでは二階と三階だけが曇りガラスで、四階以上が透明なガラスになっている。これは被告が隣地に三階建てが建てられること、四階以上は建てられないことを認識していたことを裏付ける。

後に井田はW氏に対して「東急不動産が建築途中で変更したのは、塀と窓だけです」と説明している。

被告側からW氏に対しては、「窓に目隠しを付けませんか。費用はうちで持ちます」との提案もなされた。これに対し、W氏は「マンションの側は押入れと台所と階段にする。階段には簡単な明かりとりをつける。窓と窓がぶつかる様なことはしない。必要ならば自分でやるから、いい」と答えた。

第三に被告とW氏との間の敷地境界に関するやり取りではフェンスとコンクリートのみで、ブロックの話はでなかった。

 

被告主張「被告は、訴外W氏と平成14117日頃面談」について

その頃に被告担当者関口、被告窓口井田、施工会社ピーエス三菱担当者がW氏を訪問して立ち話をした。この立ち話はW氏所有作業所前の路上で行われた。W氏は原告に対し、「作業所には入れていない」と語る(200559日)。

W氏と被告の話は工事を行う挨拶および「井田が東急不動産の窓口になるので、東急不動産に言いたいことは井田に言ってください」との連絡が主で、W氏所有作業所前の路上で僅か数分間の立ち話であった。関口は「後で寄ります。じゃ」と出て行ったが、来なかった。

W氏と関口の「面談」が立ち話程度に過ぎないことは東急リバブル今井由理子も認めている。2004919日に東急リバブル・今井由理子、宮崎英隆が原告宅に訪問した際に、今井は「東急不動産の担当者は関口だが、Wさんは関口とは立ち話程度しかしていない」と発言している。

 

被告主張「重要事項の説明のため本件北側建物建築(建替え)工事について、工事図面等を求めたところ、同氏から、まだ図面はないとのことのほか、融資をしてくれる金融機関がまだみつかっていないことなどの話を聞かされた」について

被告がW氏に図面の提示を求めたことはあるが、「重要事項の説明のため」との説明は何らなされていない。この日は僅か数分の立ち話で、「重要事項の説明のため」の調査・確認というような重大なことは全く話されていない。

その後もW氏は説明することを何度も依頼し、承諾を得ていたが、被告側から「図面がなければ説明できない」「金融機関が見つからなければ説明できない」というような条件をつけられたことは一度たりともなかった。

図面や金融機関は、売れるはずのない問題物件を売りつけるために、都合の悪い事実を故意に隠蔽して販売する詐欺的手法を正当化するために後からつけたものに過ぎない。

 

被告主張「融資をしてくれる金融機関がまだみつかっていない」について

W氏はこのような発言をしていない。関口による「一緒の時期に建てましょう」との依頼に対し、断るために「(今すぐ建てるならば)銀行を紹介してくれ」と言っただけである。W氏としてはアルスの建設後に建替える予定であるから、金融機関を探す必要性はそもそもない。

 

原告の主張

【契約取消】原告は20036月に新築分譲マンション「アルス」301号室を被告東急不動産株式会社(販売代理:東急リバブル株式会社)から購入したが、消費者契約法4条の規定に基づき、売買契約を取り消す。

被告は原告に301号室を販売するに際し、日照・眺望・通風・景観等の住環境に関する重要事項について、利益となる事実は告げたが、不利益となる事実は全く告げなかった。不利益な事実とは本マンション完成後すぐに北側隣地に三階建ての作業所が建築され、301号室の住環境が悪化することである。

被告は、W氏が本マンション完成後すぐ三階建ての建物を建築すること、従って301号室の日照・採光は喪失し、騒音が発生することを承知していた。それにもかかわらず、セールス当初から重要事項の説明、売買契約の締結までの間、北側隣地に近日中に三階建て建物が建設されるという買主にとっての不利益事実は全く説明しなかった。マンションを販売する際に、消費者に不利益となる事実を故意に告げなかった。

被告が不利益な事実を故意に告げなかったことにより、購入者は、そのような不利益事実が存在しないとの誤認をし、それによって不動産売買契約を締結したことが明らかであるから、売買契約を取り消すことができる。

都合の悪い事実を隠蔽することで、本来なら売れるはずもない物件を販売する手法は、被告のような悪徳不動産業者にとってはこの上なく都合のいいものだが、消費者にとっても不動産取引市場の健全な発展にとっても好ましくないものである。購入者への背信となるだけでなく、透明性が原則の経済社会の信頼性をも揺るがしかねない反社会的行為である。公正で健全な取引を妨げる重大なルール違反である。「宅地建物取引業者は、取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行なわなければならない」(宅地建物取引業法31条)にも反することは明らかである。

 

日照・採光、景観・眺望、通風

【総論】不動産の購入は環境の購入と言われるくらい、生活と周辺環境には密接な関係がある。住居において日照・眺望・通風は資産価値を決める重要な要素である。購入者にとって日照・眺望・通風が重大な関心事であることは誠意ある不動産業者ならば熟知していることである。マンション購入についての書籍でも「部屋の大きさや配置以上によく見てほしいのが、この採光と通風です」と記述している(木原和代、女性が安心してマンションを買える本、コモンズ、2000年、77頁)。

事務所用の建物においては日照・眺望・通風は、それほど重視されないが、アルスは事務所としての利用が禁止されており、居住用であると定められている。管理規約12条に「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」と規定しており、これは重要事項説明の場でも説明された。購入者が居住することを前提として購入したことは、売主にとって明白である。

日照・通風・景観等により形成される自然的環境は人間が健康で快適な生活を維持、確保するための前提条件である。人が生存し幸福を追求するためには、一定の条件の備わった良い環境を享受し、又は利用することが必要不可欠である。住居・宅地の機能上、良好な日照・眺望を享受しうること、圧迫を受けないことは最低限の要素である。「良好な景観は、生活に快適さと潤いをもたらすものである」(東京都景観条例前文)。

 

【各論】特に日当たりは不動産購入に際して消費者がまず考慮するもので、日照のないマンションは牢獄に等しく、住むに適さず、資産価値も皆無である。日当たりのない家に住む悔しさは海よりも深く、山よりも高い。日本人は農耕民族であり、太陽神信仰を抱いていた伝統もあり、日当たりの重要性は、外国とは比較にならない。日照が喪失したことにより、病気になることもある。起床後に清々しい朝の光を体いっぱい浴びれば、体内時計がリセットされ、脳もスッキリと目覚めることができる。

実際、新築マンション「東急ドエル・アルス南砂サルーテ」(東京都江東区)において、マンション購入後に隣地にマンションが建設され、日照時間が0時間となった住戸(計八戸)では住むに値しないため、いずれも所有者自身では住まず、部屋を賃貸マンションとして貸し出した(「街が変わる 江東マンションラッシュ」毎日新聞2002516日)。本件においても販売主の被告東急不動産は、隣接地の再開発計画により日照がなくなることを説明せずに販売したとして購入者とトラブルになっている。

マンションにおいては通風も重要である。高温多湿の日本において、密封性の高いマンションでは換気が大切になる。通風が確保されなければ、湿気はいつまでも抜けず、洗濯物も乾きにくくなる。カビやダニが繁殖しやすくなり、アレルギーの原因となる。

景観・眺望が、これを享受する個人にとって一定の財産的価値を有することは、土地の価格の決定要因たる「環境条件」の中に「眺望、景観等の自然的環境の良否」が掲げられていることからも明らかである。窓の外の風景は毎日見て暮らすものであり、住人の心理状態への影響は甚大である。

 

不利益事実不告知

【本件マンション】本件マンションは東京都江東区に建てられたマンションである。八階建てで総戸数は27戸である。一階はエントランス及び駐車場で住戸はない。二階から七階までが各階に四戸あり、八階のみ三戸となっている。

301号室は本件マンションの北西に位置し、他の北西の角部屋(ex. 201号室、401号室)と同様の間取りを持つ。図面集ではDタイプと称されている。Dタイプは2LDKで洋室1(六畳)と洋室2(四畳半)は北側に面し、リビングは西向きとなっている。建替えにより特に大きな影響を受けるのは、住人の居室となっている洋室1及び洋室2の二部屋である。この二部屋は、これまで良好な日照・眺望・通風を享受していた。

 

【セールスポイント】アルスはパンフレット等で謳っている通り、日照・眺望・通風を強力なセールスポイントとしたマンションであり、これが本マンションの価値を形成している。アルスは小型のマンションで、全戸が角部屋となっているため、どの戸も二方向の日照・通風を享受することができる。それらが失われれば社会経済的にもさして価値のない建物になる。

実際、被告らの作成した販売資料では以下のように日照・通風のよさを強調している。

       パンフレット「Buon Appetito!」、「豊富な緑にたたえられた「洲崎川緑道公園」に面する3方を道路や公園に囲まれた開放感のある立地です」「2方向からの通風・採光に配慮した、2面バルコニーやワイドスパンタイプも多数採用しています」

       図面集、「二面採光で心地よい空間を演出します」

       チラシ「マンション選びのポイント」、「緑道に隣接するため、眺望・採光が良好!」「全戸角住戸!2面以上の開口・採光を確保!」

眺望については中層マンションであるため、高層マンションほど重視されていない。しかしDタイプの部屋(北西の角部屋)では北側に区立洲崎川緑道公園を望めるため、意味があった。実際、販売担当者である東急リバブル・中田愛子は、301号室の窓から区立洲崎川緑道公園を望めると眺望の良さを強調していた。「この窓を開ければ何ですか」との質問に対し、販売担当者は「遊歩道の緑ですよ」と回答した。

本マンションは日照・眺望・通風以外には目立った利点はない。もっと安い価格帯のマンションですら基本装備されているインターネット回線さえ付けられていない。

最寄り駅は東西線木場駅及び東陽町駅で、それぞれから徒歩六分の距離にある。パンフレットでは「2駅利用のポジショニング」とアピールしているが、裏を返せば、両駅の中間点にあり、どちらの駅からも最も遠いところに位置することを意味する。しかも木場駅も東陽町駅も同じ東西線しか通っていない駅であり、両駅を選択できる位置にいるメリットはあまりない。

以上より、本マンションの特徴及び被告らの販売方法から見て、本マンションから日照・眺望・通風が失われるならば、その資産価値の下落は一般の居住用マンション以上のものになるものと判断する。

 

不利益事実不告知の影響

被告は不利益事実を知っていながら故意に隠蔽し、購入後一年足らずで住むに適さない屑同然の物件を販売した。販売資料において二面採光・通風を謳っているが、北側隣地の建替えにより、201号室及び301号室に関してはこの前提が崩壊することになる。

被告が不利益事実(隣地建物が三階建ての作業所に建替えられること)を告知せずに販売したことにより、原告は僅かな月日で住居環境が害された物件を購入したことになり、大きな不利益を受けた。納得した上で購入したか否かという満足度に大きな違いを与えることも明らかである。

夢のマイホームが一転、闇のマイホームとなってしまった。一生に何度も買えるものではない、35年間も続く長いローンを組み、やっと手に入れた高価な買い物で騙されたことになる。35年といえば孔子が而立してから5年もあるほどの長い期間である。部屋だけでなく、心まで深夜の如く真っ暗となった。

建物の資産価値も低下し、その点でも多大な損害を被る。資産価値が大きく下落することにより、購入者の一生の資産計画まで大きく狂わせることになる。文字通り人生の歯車が狂ってしまう。

具体的に喪失する不利益は日照・採光、景観・眺望、通風、静穏、プライバシーである。これらは一般のマンション購入者ならば購入に際して考慮すべき重大な事実である。端的に言うと、売主にとっては一番販売しにくい物件と言うことができる。

それまでの静かで緑豊かな住環境、日照・眺望・通風ともに遮るもののなかった状態から、壁に圧迫され、陽はささず、作業所の騒音に悩まされる状態に転落する。パンフレットに記載された「閑静な住環境」とは雲泥の差である。

 

【日照・採光】隣地作業所の建設により、301号室は日中であるのに深夜の如く、全く日照があたらなくなるという日照零時間の状態になる。日が当たらず、空も見えず、光の届かない、暗い生活になってしまう。

洋室1は窓が北側にしかないので、朝から電気をつけなければ生活できなくなる。電気代も余計にかかる。僅かな月日で取得した部屋が真っ暗になることを知っていたならば、購入しなかったことは言うまでもない。

本件マンション西側については狭い一方通行の道路を挟み、向かい側に五階建てと六階建ての建物が本件マンション建設以前より、建築されている。従って西側は引渡し当初より日照・眺望共に大して期待できるものではなかった。これは現地調査でも確認済みである。「西側があるから北側が潰れても我慢しろ」という類のふざけた論理が成立する余地はない。

加えて、隣地建物は敷地いっぱいに建てられるため、ベランダ北側も隣地の壁で覆われ、日照・眺望が妨げられ、西向きの部屋の日照・眺望も影響を受ける。

 

【景観・眺望】隣地建替え以前は、窓を開ければ桜並木の遊歩道が見えた。緑豊かな区立洲崎川緑道公園への眺望は大きな価値を有していた。

しかし隣地建替え後は約50センチ先が隣地の壁で覆われる状態になる。従って窓の外は独房のように隣地建物の壁により圧迫・威圧され、窓の存在が無意味になる。開放感はなくなり、狭苦しい印象を与えてしまう。

 

【通風】約50センチ先が隣地建物の壁で覆われるため、通風も当然のことながら悪くなる。窓の外は壁に覆われ、圧迫感に取って代わられる。窓の存在が無意味になるほど通風も悪くなる。北側隣地が工務店作業所に建替えられることにより、騒音も発生する。

 

【プライバシー】隣地作業所の窓の設置状態によっては、三〇一号室の部屋を覗かれることにより、居住者のプライバシーが侵害される危険性もある。その結果、居住者は常に見られているとの意識に苛まれ、心理的悪影響を被る。

プライバシー侵害に対しては、窓は曇りガラスであるので開けなければよい、さらにはカーテン、ブラインド、障子等を付設すればよいとの反論が考えられる。しかしそれは二十四時間、閉めておけという言い分であり、悪徳不動産業者ならば好んで使用したがるかもしれないが、明らかに不当である。

W氏は原告に対し、「窓をぶつけるようなことはしない」と語ってくれているが、それはW氏の好意であって、居住者にとってリスクとなり得る不利益事実であることには些かも変わりがない。

 

東急リバブルによる利益の提示

【東急リバブルとの経緯】原告は契約締結に至るまでに少なくとも2003621日、22日、23日、26日に東急リバブルの事務所である東急門前仲町マンションギャラリー(東京都江東区)を訪問し、中田愛子及び宮崎英隆より本件マンションの説明を受けた。

上記期間中、中田からは電話でも説明を受けている。

尚、東急門前仲町マンションギャラリーは閉鎖・撤去されており、現在はなくなっている。

上記期間中に、原告が東急門前仲町マンションギャラリーにおいて又は電話で中田愛子及び宮崎英隆から受けた説明は下記の通りである。

 

【日照・眺望・通風】本件マンション301号室が快適な日照・眺望・通風を享受できること。

被告記載のパンフレット等で説明されている通りである。

       パンフレット「Buon Appetito!」、「豊富な緑にたたえられた「洲崎川緑道公園」に面する3方を道路や公園に囲まれた開放感のある立地です」「2方向からの通風・採光に配慮した、2面バルコニーやワイドスパンタイプも多数採用しています」

       図面集、「独立性の高い立地を活かした全戸に開放感ある角住戸を実現。風通しや陽射しに配慮した2面採光で、心地よい空間を演出します」

       チラシ「マンション選びのポイント」、「緑道に隣接するため、眺望・採光が良好!」「全戸角住戸!2面以上の開口・採光を確保!」

原告は上述の日時に上記資料を東急リバブル住宅営業本部営業第五部・中田愛子から受け取り、上記資料記載の内容について口頭でも説明を受けた。ここでは「現在はこの通りですが、これらはすぐに失われる」というような説明・警告は一切されなかった。

それどころか中田愛子は、2004823日にW氏から経緯を聞いた原告が電話で事実確認を求めたところ、「聞いていない」と回答している。20048月時点で知らないならば、販売時においても説明することはできないはずである。

尚、「Buon Appetito!」という言葉はパンフレットのみならず、図面集で使われている。パンフレットではイタリア語で「たっぷり召し上がれ」の意味と説明している。尤も実際はBuon appetitoAは小文字で表記するのが普通である。フランス語のBon AppetitならばAは大文字であるが、イタリア語は異なる。

被告はパンフレット等でブォンアッペティートという言葉を用いることで、顧客に「たっぷり召し上がれ」と言いたいようである。しかしセールスポイントが僅かの月日で皆無になってしまう物件では召し上がりようがない。綺麗な言葉で飾るだけの、実態を何ら伴わないパンフレットには消費者としては腹立たしい限りである。

 

【隣地建物】隣地建物が倉庫であること。

販売時に原告は中田愛子に対し、本件隣地建物について「これは何ですか」と問い合わせをした。これに対し、中田は倉庫、資材置き場と説明した。隣地建物が作業音の発生する作業所であるとの説明は全くなされていない。

周辺環境の説明は東急リバブルから配布された現地案内図(本マンション建設地を中心とした江東区木場・東陽の地図)を見ながらなされた。その地図上には北側隣地は「ソーコ」と記述されていた。中田からは「この地図には倉庫とあるが、実際は作業所として使われている」という訂正説明はなされていない。

物を保管する場所である倉庫・資材置き場と作業を行い、作業音の発生が予定されている作業所とは本質的に異なる。

二階購入者は20036月に購入したが、購入時に北側建物について受けた説明は物置及び資材置き場としてのみで、作業所との説明は受けなかった。販売担当者は宮崎英隆である。宮崎は説明にあたり、建設中の居室の窓から撮影した写真を提示し、隣地建物(二階建て)が居室の日照・眺望を妨げないことを示した。二階購入者はこの説明を受けて、購入を決意した。

200412月、二階購入者は被告が不利益事実(隣地建替え)を説明せずに販売したことを知り、宮崎に対し、証拠保全のために上記写真の提示を求めたが、「保管義務がないために破棄した」と回答された。

 

【静穏な住環境】パンフレットに「閑静な住環境」と謳っている通り、静穏な住環境を享受できること。

原告は本件マンション購入を検討していた時期に、一般のマンション購入者と同じく複数の物件を比較していた。アルスと同じく江東区東陽一丁目にある株式会社ダイナシティのマンション「デュオ・スカーラ東陽町」もその一つであり、このマンションについては中田にも検討していることを伝えていた。

このマンションは26戸で本マンションと同規模のものである。原告が購入を検討した部屋も2LDK301号室と同じであった。マンションLANが完備されており、インターネットに接続し放題という点が本マンションよりも魅力的な点であった。

また、アルスの説明でも紹介された24時間営業のスーパー「セイフー東陽店」がアルス以上に近くにある点も魅力であった。アルスは徒歩三分程度だが、デュオ・スカーラ東陽町は僅か一ブロック先である。

中田は、アルスはデュオ・スカーラ東陽町よりも「奥まっていて静かです」と静穏な住環境を優位点としてアピールした。後者が比較的交通量が多い道路(大門通り)に面しているのに対し、前者は一方通行の狭い道路なので静かであると説明した。原告はこの説明を強く歓迎したが、隣地建物が作業所に建替えられるならば、むしろ騒音が大きくなる。このような不利な事柄は一切口にしなかった。

尚、本件マンションでは閑静な住環境を単なる無責任な宣伝文句にとどめないために、自らをも律している。即ち、管理規約12条に「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」と規定しており、事業所・事務所としての使用を禁止している。

 

【信用の強調】原告がダイナシティのマンションも検討していると話すと、中田は「うちの方が信用のある会社ですよ」と会社の信用度をアピールした。根拠は何ら述べず、不安だけを増幅させる発言である。同業他社の悪口と受け取られかねないような発言でもある。この点は他社の営業の方には全く見られないものである。実際、ダイナシティ担当者は「いろいろなところを見て、勉強してから決めてください」とまで言った。

しかも信用を強調しておきながら、後で分かることだが、被告の対応は不誠実この上ないものであり、消費者の信頼には全く値しない。原告にとって被告への信頼は地に落ちるどころか、海溝の底まで潜っている。

数をこなしているから良い会社とは言えない。企業が大きくなればなるほど、企業内の官僚化が進むと言われる。大会社ほど大きな暗部を抱えていると言ってもいい。大企業の腐敗、堕落には目を覆うばかりである。看板だけは輝かしいが、内部は真っ黒である。

実際、ダイナシティ担当者は「この土地には元々遊郭があったために土地の値段が少し安い」というような不利な事実も説明してくれた。それに対して、被告の営業は同じ土地にもかかわらず、そのような話は一切しなかった。

また、中田は「今月(20036月)中に契約すれば値引きする」と発言して契約締結を急がせた。

 

【被告の矛盾】被告は隣地建物の建築計画を説明せずに販売したことにより居住者が被る甚大な損害・被害そのものを全否定したいようである。しかし被告は別の場所では矛盾した行動をとっている。

被告が北側建物の建替えの説明を行わずにマンションを販売し、その結果、購入者が日照・採光・眺望・通風・静穏な住環境を享受できない無価値な物件を購入させられたことについては、二階購入者も同種の被害を受けており、被告と示談交渉を行っている。

示談交渉の協議の場において被告担当者である林正裕は北側建物建築による、物件減価分を賠償する案を打診した(200524日、江東区役所)。現在、示談交渉は被告の要求により、中断している。

本件についても、本訴が提起された2005218日に被告の担当者である林正裕及び野間秀一はW氏宅を訪問し、林正裕がW氏に「二階の人とは示談になる。原告さんにも示談にしたいとW氏から言ってくれませんか」と依頼している。

被告は北側建物の建築を説明せずに販売したことにより居住者が被る甚大な損害・被害そのものを全否定したいようであるが、損害がないのならば示談交渉に応じる必要も物件減価分を賠償する案を打診する必要もない。被告の主張は自己矛盾に陥っている。

 

【青田売り】アルスの販売は建築完成前から行う、青田売り(籾売り)であった。そのため、原告が契約時に現物を確認することはできなかった。この点は前述のデュオ・スカーラ東陽町と異なる点で、こちらは完成後に実物を見せながら販売した。

青田売りは早く販売できるため、金策に追われる業者にとっては好都合な販売方法である。売上金を早く回収できるということは、それだけ早く負債の返済や次の開発の運転資金に回すことができる。

しかし消費者にとっては実物を確認する前に契約しなければならないため、著しく不利になる。しかもモデルルームの建設費、維持管理費も物件価格に上乗せされるため、もっと安い価格で購入できるはずのものを高く買わされることになる。「仮に3000万円の住宅を依頼したとすると、そのうち150万円くらいはモデルルームやモデルハウスの建設費と維持費のために負担させられている」(高橋達夫、悪徳不動産業者撃退マニュアル、泰光堂、2000年、176頁)。

そのため、最近では完成後に販売する業者が増えている。現物ならば、天井をはじめ、窓外の景色、太陽の日照の具合、防音、部屋の明るさ、壁面の仕上がり、コンセントの数と位置、テレビアンテナの差し込み口の数、ガス栓の配置、インターネット配線のつなぎ口の数など、生活に本当に大切な隠れた部分を確認できる。実際に目で見ることができるため、モデルルームと図面、パンフレットから完成後の姿を想像しなければならない物件よりも安心できる。

 

重要事項説明

【重要事項説明】重要事項説明は200362618時半以降に東急門前仲町マンションギャラリーにて実施された。この日は他に契約手続きの説明、住宅ローン申し込み、契約書の捺印・交付も行われた。

原告が重要事項説明「ご購入のしおり」を見たのはこの時が最初であり、それ以前は販売資料を下に説明を受けていた。契約書上の日付は630日となっているが、この日には何も行われていない。

 

【一般的な記述】重要事項では「周辺環境について」と題して、一般的な事柄が記述されているのみで、隣地建替えについては全く触れられていない。住むための本当の情報は重要事項には書かれていなかった。

周辺環境につきましては、建築物の建築、建替え、増改築などにより、将来変わる場合があること。また、本件建物の隣接地は第三者の所有地となっており、将来の土地利用または建築計画に関して売主の権限の及ぶ範囲でなく、一般的には……法令等による制限の範囲に該当する建築物であれば、建造が許可されるため、将来本物件の日照・眺望・通風・景観等の住環境に変化が生じ、現在と異なる近隣および周辺環境による場合があること

ここにはW氏から受けた説明や依頼は何一つ反映されていない。隣接する敷地の全てにおいて起こりうることを一般的に述べたにとどまる。これは文字通り一般的な記述に過ぎず、これをもって買主に不利益な事実を告知したことにはならず、売主の不利益事実告知義務を免除することにはならない。

隣地建物について一部が越境しているとの説明は受けた。重要事項説明では説明されなかったが、越境部分は屋根の庇であった。

宮崎英隆は「現在建てられている物を壊せとは言えませんので、越境部分は現状維持となります。もし建替えがある場合は撤去します」と説明した。しかし「W氏から建替えの説明を受けている」「W氏がアルスの施工後に建替えを行う予定である」との説明は全くなされなかった。

隣地の些細な越境という相対的には重要性の低い問題を意味ありげに強調することで、隣地建替えの可能性という、より重要な問題を考えさせないようにする。不利益事実をカムフラージュするための悪徳不動産業者のトリックである。

 

【悪意】アルス購入時に原告に対して重要事項の説明を行ったのは東急リバブル住宅営業本部営業第五部・宮崎英隆である。宮崎は宅地建物取引主任者(東京第145705号)であり、その職務上、購入時に事実を説明しなかったことは明らかに重要事項説明義務違反である。

その後、原告がW氏より聞いた話を電話で問い合わせたところ(2004823日)、知っているにもかかわらず、「知らない。聞いていない」と嘘をつき、白々しくも逆に原告に対し「何階が建てられるのですか」と質問した。20041212日の協議では宮崎は原告に対して「販売時には知っていた。聞かれたら答えるつもりであった」と回答している。

事実は、被告は初めから全てを知っていた。隣地に三階建ての建物が建てられることを知っていたが、黙って売った。重要事項では建替えの可能性について言及しているが、それは後で不利益事実不告知が発覚した際の言い訳として書かれたものと考えられる。不利益事実不告知(説明義務違反)が既に重要事項説明作成前より計画的に企画されていたと言える。

重要事項説明は一般的な記述としてしか書かれておらず、説明時も原告が一般的な記述であると思うように説明した。北側隣地の建替えを含意していると原告の注意を喚起することは一切なかった。被告は大会社であるという信用を強調して原告が危険性を考えない方向に持っていくように勧誘をした。この結果、原告は、不利益事実は存在しないと誤認した。

 

【脱法】重要事項説明は消費者保護を目的とし、売買契約の締結前に説明と書面の交付を義務づけたものである。法律には精神がある。しかし残念なことに、法律の趣旨が業界の隅々まで浸透しているとはいえない。悪徳不動産業者は法の規制を形骸化させ、買主を保護するのではなく、問題物件を売りつけた自社の責任を回避するために悪用する。確信犯であろうと偽りであろうと、そこに形式と手続きさえ揃っていれば、正当とする。

消費者としては重要事項説明書の内容をしっかりと理解しておくことが期待されている。しかし実際は本契約の場ではじめて出されるケースが多く、その場で理解して同意することが要求される。一般消費者にとっては普段接することのない難解な説明書を読むのに精一杯で、どこが重要なのか分からないことが多い。初めての契約の場で細かいことまで神経が回らない。

悪徳不動産業者は、それを最大限に悪用し、「契約当日に、丸つけて、読み上げて、有無を言わせずハンコ押させて、ハイおしまい」で済ましてしまう。ヤバイことや問題になることは重要事項説明書の備考欄などに小さく書き、契約当日まで一切情報を出さない。そして契約の場では早口で簡単に読み上げ、後で問題となったら「ちゃんと説明しましたよ」と言い逃れの材料にする。重要事項説明書という書面が残っているため、ほとんどの消費者は泣き寝入りしてしまう。

原告の場合も同じで、重要事項説明書「ご購入のしおり」が交付されたのは契約締結の日であった。しかも住宅ローンの手続きなど色々なことを延々と説明された後だったため、原告はかなり疲れて集中力が落ちていた状態であった。

この手法は書籍でも悪質な販売手法として紹介されている。「確信犯的なケースだと、差し出す前にぎっちり色々なことを説明して、買主を疲弊させてから説明に入る業者もいます」(三住友郎、家の価値を半減させるコワーい土地の話、宝島社、2004年、24頁)。

被告及び東急リバブルが重要事項説明を消費者保護ではなく、業者の保身、逃げ道を保証するための方便としてしか考えていないことは後に原告に出された手紙を読めば一目瞭然である。手紙では必ず「ご契約時にお渡しした「ご購入のしおり」で周辺環境についてご説明をさせていただいております」(東急リバブル回答文書、宮崎英隆作成、2004826日など)と重要事項説明を根拠として責任逃れをしている。

 

不利益事実告知義務

【不利益事実告知義務】消費者契約法42項は、不利益事実を告知されなかった消費者に取消権を保障している。この結果、事業者には反射的に不利益事実告知義務が発生する。

「消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。」

都合の悪い事実を隠して販売することは、欠陥商品を売りつける業者が常にすることであるが、常識的な商道徳からも許容されないことは明らかである。

被告は建替えが不確定であったと主張するが、実態は異なる(後述)。そもそも消費者からすれば確定的であろうとなかろうと、隣地の建替えは購入判断に影響を与える重要極まりない情報であり、知っているならば説明すべき事柄と期待するのが自然である。確定的であるか否かという売主の勝手な判断とは別に、購入者側にはリスクになり得る情報は伝えて当然である。

仮に売り手が一方的に確定的でない情報と判断して伏せることが許されるならば、都合の悪い事実は全てそのように判断して隠すことが許されてしまう。どのような問題が生じようと「あの時は不確定だった」と言い張ることで逃れることができてしまう(「東急不動産側が、マンション購入者に「不利益事実」を伝えなかった呆れた言い分」情報紙「ストレイ・ドッグ」(山岡俊介取材メモ) 2005.02.21)。

消費者契約法上も「重要事項又は当該重要事項に関連する事項」としており、確定的な事実と限定しているわけではない。W氏が「アルスの建設後すぐに三階建に建替える。作業所になるので騒音が発生する」と発言したことは事実であり、これはアルスの購入を検討する消費者にとっては重要な事実である。

 

隣地建替え計画

【交換条件】W氏は被告窓口担当井田を通じて被告からもたらされた幾多の要望を承知する交換条件として「マンション二階及び三階の購入者に建替えについて告げてください」とお願いした。被告は了解して購入者に告げることを約束した。

具体的には被告の野間課長が被告窓口担当井田からW氏の交換条件を聞き、了解して二階及び三階の購入者に告げることを約束した。W氏は被告を信頼し、井田に協力して工事完成までの近隣トラブルの面倒を見た。

しかし、後日、野間課長はW氏の話を購入者に説明しないことに決めた。ところがこのことをW氏には黙っていた。つまり、W氏と取り交わした約束を一方的に反故にした。

一方、W氏は被告との約束を守り、三階より上の建物は建てなかった。被告窓口担当井田は「Wさんは約束を守ってくれました」と発言している。

 

被告窓口井田

被告は井田を康和地所担当者とするが、本件マンション敷地が被告に譲渡された後は、井田は被告の窓口として行動している。従ってW氏と井田とのやり取りは被告とのやり取りである。

アルスの建設工事開始に先行した200211月、井田、被告担当者関口、施工会社ピーエス三菱担当者がW氏宅に工事の挨拶に来た際、関口が「井田が東急不動産の窓口になるので、東急不動産に言いたいことは井田に言ってください」と説明している。

被告は「被告は、訴外W氏と平成14117日頃面談し、訴外康和地所から事業引継ぎの挨拶をし」と書くが、その後も井田氏は被告の窓口として、W氏と折衝を行っている。

また、アルス居住者は東陽一丁目町会に加入することになっているが、アルス居住者が町会に入る手続きをしたのも井田であり、連絡先も井田になっている。

被告は2005113日に本件トラブルに関連してW氏宅を訪問して謝罪したが、この時の訪問者には被告従業員の関口、野間秀一、大島聡仁とともに井田も存在した。この事実は井田が被告にとって単に康和地所の担当者以上のものであることを示す。実際、訪問した際に井田はW氏に対して「東急不動産の窓口です」と発言している。

 

【地域・住民軽視の姿勢】そもそも近隣住民との窓口という重要な仕事を他社の人間にまかせっきりしていた点にも、被告の地域・住民軽視の姿勢が看取できる。しかも、都合が悪くなると「康和地所の担当者井田」として逃げようとするのであるから、悪徳不動産業者にとって都合の良いことこの上ない。

現在、「康和地所の担当者井田」は、康和地所に電話をしたW氏の話によると、既に康和地所にはいないとのことである(200411月頃)。書籍によると、下記のような人間が不動産業界にいるとのことである。

「営業マンの中には一匹狼的な営業マンもいます。完全歩合給で数社と契約し、たくさんの名刺を使い分けて営業するブローカー的存在です。彼らは不動産営業のプロで、名刺の会社に電話してもいつも留守です」(高橋達夫、悪徳不動産業者撃退マニュアル、泰光堂、2000年、99頁)。

 

建設時の経緯

【事業主との交流】W氏と被告の関口が会ったのは二回程度しかないが、W氏と事業主との間には深い関係があり、数回会って軽くお願いしたという程度の軽い関係ではない。

W氏は被告窓口井田、ピーエス三菱・山下工事所長、北・現場監督とはよく会っていた。また、W氏は工務店経営者であるが、双方の作業員同士で酒を飲むこともあった。マンション建設現場でバーベキュー(焼肉)パーティが行われた時には家族で招待された。また、工事完成後、北海道に帰る現場監督の送別会(焼肉屋)にも「お世話になりました」と招待され、ご馳走になっている。

 

【家屋調査】マンション建設工事に先行し、W氏には隣地建物についての家屋調査の申し出もなされた。これはマンション建設工事によってシャッターが開かなくなるなどの被害が発生しないように予め近隣建物を調査するものである。

これに対し、W氏は隣地建物の建替えを説明し、「すぐに壊すので、やらなくいい」と断った。このため、家屋調査は実施されず、事業主は調査費用を浮かせることができた。康和地所所有時も建設地が被告に譲渡された後も家屋調査はなされていない。

 

【地番の整理】W氏は本件マンション建設に当たり、地番の整理にも協力している。マンションと隣地の地番が一緒になっていたため、被告から「Wさんの地番を変えてください。手続きはうちでやります」と依頼され、W氏は委任状と印鑑証明を被告窓口井田に渡した。

「あれだけ協力したのだから、こちらの依頼も当然行っているものと思って疑わなかった」とは被告に裏切られたことを知った後でのW氏の言葉である。

 

【建設反対運動】W氏はマンション建設中、近隣住民からの苦情を井田に伝え、「反対運動を起こさないように」と助言までした。

江東区内では、短期集中的に次々とマンション建設が計画されており、無秩序な開発に対しては、周辺住民から強力な反対運動が生じている。アルスの一ブロック先にある都営住宅跡地でも藤和不動産による九階建てマンション建設が周辺住民の猛烈な反対運動で頓挫している(「藤和不動産、基礎工事ミス(?)でマンション建設撤退」情報紙「ストレイ・ドッグ」(山岡俊介取材メモ) 2005.02.12)。

同じことはアルスの建設に際して起きてもおかしくはなかった。実際、建設工事により近隣住民が被った迷惑には大きなものがある。家も揺れるような大きな振動、激しい騒音、道路のひび割れに悩まされた。窓ガラスはビリビリと音を立てて震え、天井の梁から雨のように埃がこぼれ落ちた。

しかし、W氏は近隣住民からの苦情を井田に伝え、問題を深刻にさせないために努力した。W氏は東急不動産が購入者に建替えを説明するとの約束を履行してくれることを期待したために、このような行動をとったわけだが、その期待は被告により完全に裏切られることになる。

 

計画の具体性

被告は隣地建替え計画が確定的でなかったため、説明できなかったと主張する。被告はW氏から建替えの話を聞いたことは認めているが、確定的でないと判断して説明しなかったと主張し、一切の非を認めない。

それどころか、手紙を出しても半月以上返事放置され、催促してやっと回答する状態である。しかも隣地が建替えられても他の部屋からの採光は妨げられないから構わないなどと被害者感情を逆なでするような回答をよこしてくる。

しかし、真相は下記の通り不確定ではなく、W氏は後でトラブルになるのを嫌い、必ずマンション購入者には告知しておいてくれと被告に強く依頼し、その承諾を得ていた。

 

【資金調達困難】被告は隣地建替え計画が確定的でなかったとする理由として、W氏が建築費用捻出困難であったと主張する。これは金科玉条の如く主張している。建替えの希望は持っていたが、資金面の裏付けはなく、願望に過ぎなかったと言いたいようである。

W氏が建築費用を有していなかったと判断した理由として、W氏が自らそのような発言をしたと被告は主張する。理由としてあげるのはそれのみで、被告はW氏の資金状態の調査すらしていない。

被告はW氏が「建築費用捻出困難」と発言したと主張する。しかしW氏はこれを否定し、「そんなことをいつ誰に言ったのか聞いてくれ」「まるで資力のない人のように貶めるのは名誉毀損だ」と怒っている。

W氏は「銀行を紹介してくれればすぐ建てる」と発言した。しかしこれは、被告から「一緒に建てましょう」という誘われたことに対する回答の中でなされたものである。W氏には被告と同時期に建てるつもりはなかったが、被告の誘いがしつこいので断るために「今、建てるならば銀行を紹介してくれ」と言ったに過ぎない。

被告担当者の井田には何度もアルスの建設後に建替えをすることを伝えてあり、上記発言から、建築費用がないために当分隣地を建替えることはないと解釈する余地はない。

 

【開始日が未定】被告は隣地の建替え計画の開始日が未定であったと主張する。しかしW氏は「建設後、すぐに建てる」と説明している。アルスの建設後に建てることにしたのは地盤が緩むのを避けるためで、この理由も被告側に説明している。

そして当時はアルスもいつ竣工するか不明であり、何月何日に建替えると発言することは不可能であった。日時を示すことはできないが、すぐに建てるということである。

マンション購入者が本件建物の引渡しを受け、引越しをし、住み始めてから遠い年月ではなく、僅かな月日であることは容易に想像がつくことである。

 

【口頭のみの話】被告は隣地の建替えは口頭のみの話であり、図面がないと主張する。確かにW氏が被告担当者井田に説明し、購入希望者に説明・警告することを依頼した件は口頭でなされたものだが、その時点で被告は了解している。

口頭だけでは不十分と考えるならば、書類を要求するなりすべきである。それにもかかわらず、被告は了解しただけであった。その後の担当者がW氏に確認を求めたこともない。

200211月に一度だけ被告担当者関口より「図面がありますか」と聞かれたことはある。これは関口、井田、ピーエス三菱担当者が建設工事の挨拶のために訪問した際になされたもので、僅か数分の立ち話であった。これは図面の有無を聞かれたものであって、提出を求められたものではない。ましてや重要事項説明の条件として確認されたものではない。

関口の問いに対し、「図面はまだ先なので書いていません。家族で考えたものならばあるが、ちゃんとしたものはない」と答えた。これに対し、関口は「図面がなければ購入者に説明することはできない」「購入者に説明するために図面を提示してください」とは言わなかったし、その後も提出を求めたことはない。

その後もW氏は井田に「二階と三階に住む人に伝えてくれ」とは何度も言っている。

 

【被告の謝罪】被告は原告に対しては不利益事実不告知を正当化するが、W氏に対しては謝罪している。この点において被告の原告に対する主張は矛盾である。

2005113日、215日、同18日に被告は謝罪のためW氏を訪問した。被告がW氏と交換条件で取り交わした約束をW氏に無断で破ったこと、W氏の建築費用捻出困難を不利益事実不告知の理由としたことについて謝罪した。

113日に野間秀一課長、関口、大島聡仁、井田がW氏宅を訪問し、W氏に謝罪した。

215日には大島がW氏宅を訪問し、W氏に謝罪した。

218日には林正裕リーダー、野間がW氏宅を訪問し、W氏に謝罪した。

被告が原告に不利益事実(W氏の話)を告げなかった理由として再三使用していた「W氏は建築費用捻出困難、資金調達が出来ない」について「調べたわけではなく、全くの憶測であった」と謝罪した。W氏が建築費用捻出困難であるとの被告の主張は単なる憶測であり、しかも間違った憶測であることをW氏の前では自認した。

被告は本件トラブルについて国土交通省関東地方整備局に提出した報告書でも不告知の理由としてW氏の「資金調達困難」を挙げていたため、報告書を訂正して再提出することを約束した。

 

主張の矛盾

被告・東急リバブル共に主張に一貫性がなく、都合が悪くなると主張を改める。都合の良い情報ばかりを強調し、歪曲さえいとわない。一方で自社の弱点、都合の悪い事実はごまかし、隠蔽する。

毎回見解が異なるのは背信的であり、信用に値しない。どうして最初から本当のことを言わないのだろうか。会社で怒られるからか。言いくるめられるとでも思っていたのか。正確な情報が明らかにされないと、事実の解明にはつながらない。

反論は非条理極まりない上、論点のすり替え、事実の無視・不知とする等々「詭弁の体系」ともいうべき三百代言となっている。反論出来なくなると論点をはぐらかす。論破されると、またはぐらかす。嘘が発覚しても何の反省もせずに威張り腐る。高飛車な説明には怒りを感じる。悪徳不動産業者は、とことん嘘つきでないと勤まらないもののようである。

 

【隣地建替え計画】東急リバブルが隣地建替えの計画を知っていたかということについての、東急リバブルの説明は矛盾している。当初は全く聞いていないと否定しておきながら、後になって知っていたと回答する。

当初、東急リバブルの中田愛子及び宮崎英隆は隣地建替えの話を全く聞いていないと否定していた。宮崎は白々しくも逆に原告に対し「何階が建てられるのですか」と質問したほどである。

東急リバブル回答文書(宮崎英隆作成)でも、東急リバブルとしては知らないため、東急不動産に確認するというスタンスであった。事業主から確認した内容を回答している。もし宮崎本人が隣地建替えのことを知っていたならば自分の知っていることを回答すれば済む。被告に確認するならば、宮崎本人は隣地建替えを知らないことが前提になる。

東急リバブル回答文書では下記の通り、被告に確認した内容を回答する形式を採る。

       東急リバブル回答文書(宮崎英隆作成、2003826日)「アルスの販売時に所有者より建替え計画を聞いていたかどうか、ということですが、事業主に確認したところ、アルスの計画説明時において所有者より建替えたい旨の希望は賜りました」と回答している。これは宮崎が被告に問い合わせをして初めて「アルスの計画説明時において所有者より建替えたい旨の希望は賜りました」ことを知ったということを意味する。

       東急リバブル回答文書(宮崎英隆作成、2003913日)「再度、事業主である東急不動産株式会社にW様のおっしゃっている1〜5の内容について確認をさせていただきました」

また、東急リバブル回答文書(宮崎英隆作成、2003913日)では「具体的な階数などについてはお聞きしておりません」と三階建てが建てられることは知らなかったと回答している。

しかし20041212日の協議において、宮崎英隆は建替えについては購入時から知っていたと回答した。説明しなかった理由として、「質問されなかったから」と述べた。

また、宮崎は本件マンション二階購入者への電話(20041227日、2005121日)において下記のように説明している。原告に対してはこの説明は一切なされていない。

200212月から20033月までの間に被告と東急リバブルとの間で担当者が数名ずつ出席して引継ぎ会が行われた。東急リバブルからは宮崎、被告からは関口が出席した。この席上、東急リバブル側から「この建物は何ですか」との質問がなされ、被告側から「これは倉庫で将来建替えの可能性がある」との回答がなされた。

 

【被告回答文書の矛盾】隣地建替え計画の認識については被告回答文書においても矛盾する。

まず、被告回答文書(大島聡仁作成、20041015日)では東急リバブルの回答と異なり、「アルスが建ってからすぐに建てる旨、3階以上は建てない旨、住まいと仕事場が一緒になるから騒音がある旨の内容は伺っておりました」と認めている。

しかし被告回答文書(大島聡仁作成、20041119日)では「建替えたい旨内容を聞いておりました」との記述のみで、具体的な内容はなく、前回よりも大幅に後退している。

被告回答文書(大島聡仁作成、20041130日)においても「建替えたい旨内容を聞いておりました」との記述しかない。

しかし被告回答文書(200418日)では下記のように記述し、内容が戻っている。

平成1411月時点でW様が康和地所井田氏を経由して、下記のご意向をお持ちであることは伺っておりました。
・アルスが建ってからすぐに建てたい。
・3階建てを建てたい。
・住まいと仕事場が一緒であるから騒音がある。

 

【騒音】その二として、隣地建物の騒音に関する説明の矛盾がある。

隣地が作業所に建替えられて騒音が発生することについて、東急リバブル回答文書(宮崎英隆作成、2004913日)は「当時、作業場所として、使用されておりましたので騒音があるとは聞いていました」と最初から織り込み済みであるかのように回答している。

しかし、本件マンションの販売時に中田が原告に説明したのは資材置き場及び物置であって作業所ではない。この点を原告に追及されると九月二四日の回答で「具体的な階数や将来、音がうるさいなどとはお聞きしておりません」と訂正した。

 

W氏への確認】その三として、東急リバブルは自ら知っている情報をわざわざ原告に調査させている。

東急リバブルは「W氏の話を誰も聞いておらず、誰に説明したのか不明なので、その点を確認してほしい」と原告に依頼した。原告は依頼を受けてW氏が説明した相手を確認した。

しかし、一二月一二日の協議で宮崎英隆は最初から聞いていたと開き直っている。最初から知っていたならば調べさせる必要はないはずである。無駄な作業をさせたことになる。数々の企業不祥事で、うんざりするほど見せつけられた事実隠蔽の構図が本件にも見られる。

 

【四階購入者への説明】その四として、二階及び三階購入者への説明と四階購入者への説明の矛盾がある。東急リバブル販売担当者は原告及び二階購入者に対しては、隣地建物は物置及び資材置き場としか説明せず、不利益事実(建替え計画)を説明していない。

しかし四階居室購入者に対しては隣地建物が三階建てに建替えられる予定であることを説明している(販売担当者、東急リバブル住宅営業本部営業第五部・宮本豊)。三階建てが建てられても四階居室の日照は妨げられないため、伝えても物件を販売する上で不利益にはならない。

四階購入者には伝えて二階及び三階購入者には伝えていない事実から、被告が不利益事実を告知することにより販売できなくなることを恐れて意図的にその事実を告げなかったことは明白である。販売担当者が各々異なるため、出来の悪い販売担当者に当たってしまったという可能性も考えられるが、それは被告の責任を何ら否定するものではない。

 

【四階以上の可能性】その五として、隣地に四階以上の建物が建てられる可能性についての説明の矛盾がある。アルスは三階までを曇りガラスとし、四階以上を透明のガラスにしている。これは被告が予め隣地に三階建てが建てられることを知っていたことを裏付ける。

原告は、その旨、被告に対し主張したが、これに対し被告は隣地程度の敷地では四階以上は建てることはできず、建替えられても三階だからと回答する(東急リバブル住宅営業本部第五部・今井由理子発言2004919日、被告住宅事業本部第四事業部・野間秀一発言20041212日)。つまり、三階しか建てられない敷地だから、曇りガラスは三階までで十分とする。

しかし、2005113日、被告はW氏に対して原告及び二階購入者に説明しなかった理由を以下のように述べた(野間秀一発言)。「どうして約束が守れなかったか。以前、東急不動産が建築したマンションが、規模は違うけど、ここと同じように隣が建てるという話を購入者に話して売ったところ、隣の建物の形状が変わってしまい、購入者から訴えられて負けた事があり、だからWさんが三階といっても四階、五階を建てられたら困ると思って言えなかった」。

リアリティのある説明であり、悪徳不動産業者の体質がよく表現されているが、自社の利益しか考えない身勝手な理由である。二階及び三階に説明しない理由にはならず、不利益事実不告知を正当化するものではない。

この発言によれば被告は隣地に四階、五階を建てられる可能性を認識していたことになり、三階までを曇りガラスとしたことについての原告に対する説明とは矛盾する。

一方で被告販売代理の東急リバブルは401号室の購入者には隣地が三階建てに建替えられる予定であることを説明している。これも隣地に四階、五階を建てられる可能性があることと矛盾する。

 

不誠実な対応

【協議義務違反】原告と被告が締結した「不動産売買契約書」28条は「互いに誠意をもって協議し決定します」と定めている。しかし被告及びその代理人である東急リバブルの本件に対する対応には誠意のかけらさえもなく、本条に違反していることは明らかであり、この点においても信頼に値せず、契約取消・解除の十分な理由になる。

被告及び東急リバブルの実態は嘘、嘘、嘘で塗り固められたものであった。正直ではなく、誠実でもない。その説明から真実を見つけ出す方が難儀である。問い合わせても回答を出さず、のらりくらりとはぐらかす。

回答は突っ込まれることを恐れているのか、全て紋切り型である。質問したことに対し、全く何も答えていないものも少なくない。真摯に議論を深めようとする姿勢は見られない。矛盾点を指摘しても理不尽な説明に終始する。木で鼻をくくったような回答、回答ならぬ「怪答」である。表面的な回答でしかなければ質問者のストレスはたまるばかりある。

その場しのぎの口約束、責任のなすりつけ、たらい回し、頻繁な担当窓口の変更、次の担当への引継ぎが全くなされない、日時を守らない、無視、高圧的で侮蔑的な表現、不十分な説明、辻褄が合わない説明、偽りの説明、揚げ足とり、論理のすりかえ、あげくのはては開き直り等、被告の不誠実な対応は枚挙に暇がない。通常では考えられないくらいのレベルである。謝罪もろくにできず、まともに話せる人間は一人もいない。

事実を認識することは現代人として当然のことである。自分が意見を述べる時は、その理由を説明するのが当然である。質問があれば、差し支えない範囲で相手が納得できる返事をするのが当然である。それらが全く出来ない人間は現代人失格である。

 

【不信】不利益事実告知のみならず、トラブル対応が原告の不信を一層高める結果となった。被告従業員らの不誠実な対応からは自分達の会社が起こした事態に痛みを感じていない印象さえ受ける。理解できないのは彼ら悪徳不動産営業が決して自分達自身の醜悪さを自覚しようとしないことである。もし自分が同じような目にあわされたらどれほど辛いか、そう考えてみるだけの想像力がないのだろうか。

被告や東急リバブルの担当者にも親や家族、子どもだっている筈である。その人達に自分お仕事を誇れるのであろうか。今抱えている仕事の内容を家に帰って胸を張って説明できるのだろうか。

特に東急リバブル住宅営業本部営業第五部・宮崎英隆は、不動産ポータルサイトHOME'Sで趣味を「娘と遊ぶこと」と公表していた。しかしその虚偽の説明に対しては、「自分の子供に対しては、自分の利益になるのなら、嘘をついても構わないと教えているのか」と問い詰めたいと思うほどである。同じ被害に遭った二階住人も原告に「宮崎英隆は許せない」と発言している。

 

たらい回し

東急リバブル及び被告による、責任のなすりつけ、たらい回し、頻繁な担当窓口の変更は目に余る。原告が東急リバブル及び被告から、たらい回し、担当者の一方的な変更を受けた経緯は下記の通りである。

2004823日、原告は東急リバブルお客様相談室に電話して事実確認を行う。「担当者からコールバックさせる」との回答。

同日、東急リバブル・中田愛子から連絡を受ける。中田は「知らない。上司から連絡させる」と回答し、電話を切る。

同日、東急リバブル・宮崎英隆から電話。宮崎も「知らない」と回答し、被告に確認すると連絡。回答を文書で原告宅(埼玉県)に送付することで合意した。

913日、宮崎からの回答が遅いため、東急リバブルお客様相談室に電話する。女性が応対し、「わかりませんから、事業主と直接話して下さい」とたらい回しにされる。

919日、原告宅にて原告と東急リバブルの今井由理子・宮崎が協議。今井はアルス販売チームのリーダーであった。その席上で今井は被告の担当者は松岡リーダー、野間課長、関口であると説明する。

930日、原告は宮崎から電話を受ける。宮崎は転勤により、担当者を降りると一方的に通告する。後任の担当者は未定と説明される。

106日、被告住宅事業本部第四事業部大島聡仁より、新たに担当者になった旨のメッセージが原告の留守電に入れられる。

1115日、被告からの回答が遅いので、原告は大島に電話する。電話番号は大島作成の文書にあったダイヤルインの番号にかける。

10時半頃に一回目の電話をする。女性が応対し、「会議中で席を外している」と回答。「いつ戻るか」と尋ねると「いつ戻るか分からない」。他の担当者を要求すると暫く待たされた後、「大島営業以外担当者はいない」と回答。「電話があったことを伝えてください」と言い、切る。

12時頃に二回目の電話をする。女性が応対し「外出中」と回答。「いつ戻るか」と尋ねると「13時過ぎには戻る」と回答。

13時過ぎに三回目の電話をする。男性が対応し、「まだ外出中。帰社時間はわからない」と回答する。

大島とは連絡をとれないため、東急リバブルお客様相談室に電話をする。藤田室長代理が応対する。「東急リバブルと東急不動産は別会社だから無関係。事実を知らないから回答できない」との回答。

1116日、大島に電話をするが、やはり不在と回答される。

東急リバブルお客様相談室に電話をする。藤田室長代理が応対する。昨日と同じく無関係と回答される。それならば東急不動産に問い合わせをするために、被告のコールセンター窓口を尋ねるが、「知らない」との回答。

1121日、被告から回答が届く(作成者大島、作成日付1119日)。文末で「今後のお電話での連絡窓口につきましては東急リバブルお客様相談室迄お願い申し上げます」と一方的に限定される。

1212日、原告と被告及び東急リバブルが協議する。席上で被告の責任者が林正裕であり、その下に担当者として野間課長がいることの説明を受ける。

 

【お客様相談室の対応】東急リバブルお客様相談室への電話では、東急リバブルは契約上の代理人であるにもかかわらず、被告に直接言うようにとたらい回しにされた。東急リバブルお客様相談室からは、何一つ具体的な対応はなされず、原告は非常に不安かつ不愉快な思いをした。そもそも業者間の内輪の問題などは原告には何の関係もないはずである。消費者を無視した組織優先という発想しか見られない。

しかも20041115日に藤田室長代理は原告には「事実関係を知らない」と回答したにもかかわらず、916日頃に国土交通省関東地方整備局建政部建設産業課からの本件に関する照会には東急リバブルを代表して「将来的には建てるが、資金はないと聞いている」旨、回答している。この点から事実関係を知らないことはなく、原告への説明は虚偽だったことになる。

藤田室長代理は2005年1月28日にも東急リバブルを代表して国土交通省関東地方整備局建政部建設産業課に出向いて、本件の事情を釈明している。

1212日の協議においては栗原眞樹・東急リバブル住宅営業本部事業推進部契約管理課課長から「お客様相談室の対応は不適切だった」との発言は原告になされているが、謝罪はなされていない。

 

【頻繁な担当窓口の変更】東急リバブル及び被告による一方的な指定により、担当者は東急リバブル中田愛子、宮崎英隆、今井由理子、東急不動産住宅事業本部第四事業部大島聡仁、東急リバブルお客様相談室、東急不動産住宅事業本部第四事業部林正裕・野間秀一と頻繁に変更された。

東急リバブルに話をすれば事業主は東急不動産だからそちらに話をしろ、東急不動産に話をするとリバブルと一緒に販売しており、そちらを窓口にしろとどちらも責任を認めず、たらい回しにされ、一向に話が進まない。別会社ということで表向きは責任を回避し、影ではグループ会社として甘い顔をしているのではないか、と疑わざるを得ない。欲得で結びついた関係は、それがお互いの利益を生んでいる以上、崩しようがないほど堅固なものである。

特に被告回答文書(20041119日、大島聡仁作成)では「今後のお電話での連絡窓口につきましては東急リバブルお客様相談室迄お願い申し上げます」と一方的に限定している。しかしお客様相談藤田室長代理は原告に対して「東急リバブルは無関係だから対応できない」と回答した。

そのような何ら権限・責任のある対応ができない部署を担当窓口に指定することは、伝達に迂遠なフローを追加し、時間稼ぎになるばかりではなく、大島が誠意を持って対応する意思がないものと判断せざるを得ない。

そもそも大島は、面識もないのに関わらず一方的に担当とされたが、真面目に対応する意思が感じられないどころか悪意さえ感じる。大島は書面での回答は催促されるまで放置し、直接の電話には出ず、無関係の部署を窓口とすることで、時間稼ぎにより時効期間がひたすら過ぎ去るのを待っているのではないかという疑念も浮かぶ。

窓口をお客様相談室に限定した件については、原告の抗議を受けた後、被告回答文書(20041216日)にて「第四に弊社担当窓口の件ですが、平日については打ち合わせ等業務が多く席を外す場合もございます。ご伝言頂ければ折り返しお電話させて頂きたいと思います」と変更された。

 

【引継ぎ】東急リバブル・被告共に担当者を一方的に指定・変更する上、新旧担当者間の引継ぎが何らなされていない。そのため前任者との約束が全て反故にされている。新たに担当になるならば、引継ぎくらいはきちんと行うべきである。

その一として、東急リバブル宮崎英隆との間には回答は原告の実家宛に郵送するよう約束していたにもかかわらず、新たな担当者と自称する被告住宅事業本部第四事業部大島は全く無関係な別の場所に回答を送付し、その結果、原告が回答を受領するのを遅らせる結果となった。卑劣な時間稼ぎである。

また、大島には手紙で連絡先の電話番号を記載したにもかかわらず、全く別の電話番号にかけてきた(20041119日)。指摘しても自己の誤りを認めず、「次からは気をつける」と言うのみで謝罪の言葉すらなかった。

その二として、原告は宮崎英隆と今井に対し、W氏に事実関係を直接確認することを依頼し、了承を受けた(2004919日)。その後も宮崎英隆には電話で依頼し、宮崎英隆は了承している(930日)。しかし大島は何ら履行しないどころか履行していないことの理由も説明しなかった。

その三として、原告は大島に連絡を取るために電話をしたが、大島からの被告回答文書に記載された番号にかけたにもかかわらず、一度もつながったことはない。電話をかけても決まって留守である。いつも打ち合わせか外出と回答され、戻る時間を確認しても「いつ戻るか分からない」と応えるのみで、取り次ぐ意思さえ示さない。

大島以外の担当者を尋ねても「大島以外はいない」と回答したが、そもそも原告は東急リバブル・今井より被告の体制は松岡リーダー、野間課長、関口と説明を受けている。また、1212日の協議では林リーダーが責任者でその下に野間課長がいるとの回答を受けた。そもそも大島自身、マンション建設時の担当者ではなく、W氏と会ったこともないと認めており、担当者として失格である。

抗議をしても「外出や打ち合わせ等業務が多く席を外す場合もございます」と開き直り、東急リバブルお客様相談室に電話をかけろと一方的に指定する(被告回答文書)。つまり自分では対応する意思はないということである。

 

【行政指導による豹変】被告は原告に対しては不誠実な対応を貫くが、行政指導が入ると手のひらを返したように態度を豹変する。原告と被告の協議は二回なされたが、何れも行政指導が入った後である。行政指導が入らなければ協議にすら応じないのが被告の体質である。

原告は200497日に国土交通省関東地方整備局建政部建設産業課に電話で相談し、本件経緯を報告し、善処を要望した。この監督官庁への働きかけは直ちに効果を発揮し、五日後の13日に東急リバブル住宅営業本部営業第五部・宮崎英隆が原告宅を訪問することを約束した。訪問は919日になされ、東急リバブル・今井由理子、宮崎の訪問を受けた。この協議の冒頭で今井は「国土交通省からの指導により、説明するように言われて来た」と発言している。

その後は書面を中心にやり取りがなされたが、被告の一方的な指定により、担当者が被告住宅営業本部大島聡仁に変更されてからは書面の回答は遅れがちで、ようやく届いた回答も質問にほとんど答えていないものであった。そのため、原告は東京都都市整備局住宅政策推進部不動産業課を訪問し、被告の不誠実な対応を訴えた。東京都都市整備局の指導を受けて被告は東急リバブルお客様相談室・藤田室長代理を責任者として協議を求めてきた。

これが1212日の協議である。被告側出席者は被告住宅事業本部第四事業部グループリーダー・林正裕、第四事業部課長・野間秀一、大島聡仁、東急リバブル住宅営業本部事業推進部契約管理課・栗原眞樹課長、宮崎英隆である。責任者であるはずの藤田室長代理は欠席した。

協議の席上、林は都庁の指導を受けたために協議となったことを認めた。むしろ行政にうるさく言われているために、やむなく会ったという感じで特別な進展はなかった。最後には林が「後は弁護士でも都庁にでも、どこでも好きなところに行ってください」と言いつのり、一方的に協議を切り上げた。

顧客の理解と納得を得るためには緻密で慎重な協議が欠かせないはずである。しかし被告の不誠実な態度からは、話し合いは形式的に開催すればよいのであって中身はなくてもよい、と考えていることが明白である。

 

【国土交通省への報告書】被告担当者の無責任さは国土交通省への対応にも現れている。本件に関する国土交通省関東地方整備局建政部建設産業課の調査・行政指導に対して、被告と東急リバブルは連名で報告書を提出した。

この報告書には、W氏の「資金調達困難」を理由として建替えを購入者に説明しなかったと書かれてあり、虚偽であるだけでなく、W氏を資力のない人間のように貶め、侮辱するものであった。そのため、当然のことながらW氏の強い抗議を受け、被告はW氏に謝罪し、訂正を約束した。

この報告書について、大島はW氏に対して「井口法律事務所の井口寛二弁護士が書いた」と回答した(2005215日)。一方、林はW氏に対して「何が書いてあるか分からない。弁護士と大島が勝手に書いた」と回答した(218日)。

林は原告に対してはアルスの責任者であると説明している(20041212日)。これが事実であるとすると責任者が全く目を通さないで報告書が国土交通省に提出されたことになる。被告の無責任さを物語る事実である。

 

無礼な態度

被告は客を客とは思わない無礼な態度で対応している。相手の誇りを泥靴で踏みにじるやり口である。無礼な態度に対しては、厳しく対処する必要があると感じざるを得ない。

第一義的には担当者を自称する大島聡仁個人の資質によるものであるが、被告の監督責任も当然に問われる。担当者として適格性に問題はなかったのか、被告は従業員の適性判断や指導を軽く見ていると疑われても仕方ないだろう。

会社の善し悪しは営業の善し悪しで分かるものである。営業の教育ができているかどうかで、会社の質は分かる。営業態度も含めて社員教育に問題がある会社なら、物件の品質も期待することができない。

しかし被告の場合は狡猾なことに販売代理を東急リバブルに丸投げしており、契約時には消費者の前に現れてこない。原告としても大島のような無礼かつ無反省な人間が販売時に出てくれば購入をためらったであろうことは、地球が自転することと同じくらい確実である。

 

【追伸の使用】被告回答文書(20041015日、大島聡仁作成)は内容もさることながら、形式上も無礼極まりないことに文中に追伸を用いている。

追伸は正式な文面や目上の人に対して使用してはならないものである。これはマナーの初歩であり、誰もが知っているビジネスパーソンの常識である。常識であるにもかかわらず、あえて無礼な表現を使用するということは、相手に敬意を払う意識が皆無であると結論できる。

このような表現は読む者をして怒らせるために書いたとしか思えない。相手を怒らせるために、しかも極めて陰惨な怒気を誘発させるために、わざわざ書いたようなものである。人間の精神的な価値が破壊されたことによる痛みは容易には治癒されないことを認識すべきである。

仮に大島が無知から無礼な表現を使用したと、善意に偏った解釈をしたとしても、それは大島が社会人失格であることを示すものに過ぎない。そして、そのような本来ならば窓際に追いやるべき、又はリストラされるべき、礼儀知らずの人間を担当者として回答文を書かせること自体が被告の不誠実な対応を示すものである。

 

【回答の遅延】被告は原告からの質問に対し、全くといっていいほど回答しておらず、毎回同内容の回答しか出さない。こちらの手紙を読まなくてもかける程度の回答に半月以上かけて一言のお詫びもない。

大島は一一月五日に原告からの手紙を受け取っておきながら半月程度放置し、手紙の到着や回答予定の連絡すら伝達しなかった。原告が電話で確認及び催促をしたが、「不在」を理由に取り次ぎを拒否され、連絡できなかった。十分な時間があるのに、回答を遅らせるのは、単なる嫌がらせか、職務怠慢のどちらかと受け取られても仕方のない行為である。

被告の回答は1121日になって漸く原告の下に届く(作成者大島、作成日付1119日)。しかし内容は三行半的な簡素なもので、こちらの契約解除申し入れ及び質問には何ら回答していないものであった。内容には新味がなく、誠実さを欠いた回答との印象を与える。しかもこちらが催促するまで半月以上放置したにもかかわらず、その回答の手紙には回答遅延に対する一言のお詫びもなかった。

回答遅延に対して大島は、原告に対し電話で、法律上の問題など難しい問題があるため、回答に時間がかかるのは当然と言い張ったが、実際の回答を見る限り、半月の期間かけて慎重に検討したものとは思えない。以前の主張の鸚鵡返しに過ぎず、こちらの文書を読まなかったとしても書けるものであった。

 

【損害の全否定】被告回答文書(大島聡仁作成、20041130日)は、原告からの契約解除を断る理由として、「LD側からの採光を妨げるものではありません」と回答している。購入者が被る甚大な損害自体を全否定しようとするものであるが、一面だけは採光できるから我慢しろ、などという暴論は悪徳不動産業者の本音をうかがうことはできても到底受け入れられるものではない。住む人の立場にたった配慮は皆無である。詭弁、まやかし、すり替えの回答である。歪んだレンズには歪んだ像しか映らないようである。

その後、被告は北側隣地の建設により西側の採光が妨げられないとの意味と説明したが、原告はそのような主張をしたことは一度もなく、相手を余りにもばかにした説明である。大島が原告の文書を真面目に読んでいない証左である。

 

誠意のない謝罪

東急リバブル及び被告の不誠実な対応は自ら認めるほどだが、何ら反省していない。

被告は、被告回答文書(20041216日)にて下記のように自社の対応を問題と認め、表面的には謝罪した。既に原告は何度も被告の不誠実な対応を非難しており、今さらの感が強いものである。

原告様からのご指摘がありましたご返事が遅れた点、これまでの弊社並びに東急リバブル担当の対応が不十分であった点、また、弊社と東急リバブルとの連絡が不十分であった点については深くお詫び申し上げます。今後このような事がないよう善処させていただきます。

「原告様からのご指摘がありました」と前置きしている点からは、不誠実な対応をとっても、消費者側から指摘がなければ何ら反省しない傲慢な態度を読み取ることができる。「不十分」という言葉を繰り返しているが、どのように不十分だったかなどの説明は一切ない。失敗を失敗として認めなければ、改善も進歩もない。

本来、お詫びとは虚心坦懐、心から相手に詫びる気持ちで書かなければ意味がない。しかし、被告の手紙は「お前がうるさく指摘するから仕方なく、形だけは詫びてやる」との本音が透けて見える。このようなものはお詫びではなく、ある意味、喧嘩状である。

しかも善処すると書いてあるが、対応を改めた様子は何ら見られない。表面的な謝罪により、事態が肯定的な方向に進むと楽観するならば、あまりにも安易な認識である。

実際、20041221日に回答の不備について再質問事項をメールしたが、一週間以上放置された。1227日に東急リバブルお客様相談室に同内容の問い合わせをして初めて、翌日28日に110日までに回答する旨の返信があった。しつこく催促しなければ回答しない体質は何ら変わっていない。しかも一二月二八日のメールで「回答は差し控えさせていただきます」と今後の問い合わせに対する回答拒否を一方的に宣言された。

失態の教訓を何ら生かそうとはしておらず、本当に反省したのか、疑わざるを得ない。悪徳不動産業者は反省して改心したり、行動パターンやものの考え方を変えたりすることはないようである。

 

回答拒否

被告は一方的に回答を拒否した。当初、原告は東急リバブル・宮崎英隆と書面で問い合わせをしていたが、一方的に担当者を被告・大島聡仁に変更されてしまう。しかし大島宛に書面を出しても返信がなく、電話をしてもいつも不在で連絡することができない状態であった。

そのため、原告は被告Webサイト問い合わせフォームより、問い合わせを行った(20041122日)。大島に直接手紙を出した場合とは異なり、インターネット経由では対応がなされたため、以後は電子メールで問い合わせする形にした。被告が原告に回答する際の差出人メールアドレスはである。

しかし20041221日の問い合わせに対しては、一週間経ても回答がなく、1227日に状況確認の問い合わせを改めてしたところ、翌28日に被告メールアドレス[email protected]から下記の返信がある。

12/21 原告様よりEメールにてお問合せいただいた件につきましては、現在弊社顧問弁護士と打ち合わせ中ですので、平成17110日迄にご返答させていただきます。

尚、今後この件については弊社顧問弁護士またはアルス担当者(林、野間、大島)に窓口を一本化して対応させていただき、Jyutaku Postからの回答は差し控えさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

ここでは窓口を一本化するとの名目により、今後の回答を拒否することを一方的に通告してきた。しかも一本化するといいつつ、「弊社顧問弁護士またはアルス担当者(林、野間、大島)」として一本化していない。連絡先も書いていない。これでは原告はどこに問い合わせすればよいかわからない。この後も被告から窓口及び連絡先の説明は一切なされていない。

しかも、そもそもメールで問い合わせすることになった経緯は、大島に直接手紙を出しても半月以上放置された挙句、まともな回答が返ってこないためである。過去の経緯を鑑みれば、大島に直接問い合わせしても、また放置されることは確実である。要するに被告は一方的に一切の回答を拒否したものと判断せざるを得ない。

 

示談の提示

被告の矛盾した対応の最たるものとして、示談の提示がある。被告は原告本人への対応と別の人に対する対応が全く異なり、原告を無視乃至軽視している。

被告は原告に対しては、一貫して協議による解決を拒否している。

渋谷における協議(20041212月)において被告責任者の林リーダーは原告に対し、自社には全く非がないとして、「後は弁護士でも都庁にでも、どこでも好きなところに行ってください」と主張している。

その後、原告から交渉権限を委任された弁護士が電話した際も、担当者は「裁判所でお話します」と回答し、話し合いを拒否した(2005124日)。

しかし、その一方で、W氏に対しては繰り返し、原告との紛争の解決策として物件減価分の賠償による示談を考えている旨、発言している。少なくとも20052月に二回は話している。一回目は2月上旬に被告従業員大島から電話でなされた。二回目は林リーダーと野間課長がW氏宅を訪問した際に口頭でなされ、「原告さんにも示談にしたいとWさんから言ってくれませんか」と依頼までしている。

同旨の発言は、アルス二階購入者と被告との示談交渉の席上でもなされている。この交渉は200524日、江東区役所において二階購入者の委任を受けた代理人T元江東区議と被告・林、大島との間でなされた。原告とT氏は委任関係になく、二階購入者とのトラブルについて協議されたものであるが、何故か被告は原告のことにも言及している。

損害賠償及び示談については、本人や弁護士への対応では全く出てこなかったものである。早期にこのような話があれば、原告としては現在とは異なる対応をとることができたかもしればいが、そのような話は一切なかった。他の人に対しては、本人へ言ったこととは全く別の説明をすることは全く理解できない。

本人への対応とW氏への説明が矛盾する点については、被告が方針変更をしたと考える余地も皆無ではない。もっとも短期間の間に方針変更することは考えにくいし、逆に短期間のうちにコロコロ方針が変更するような会社は信用できない。

そもそも、このような内容を先に他人に話すこと自体が無礼千万である。原告の問題については原告の委任者である弁護士に最初に伝えるのが筋である。原告との委任関係のない人に話をしたところで、何の解決にもならないどころか、無視された相手の反発を買うだけである。被告は原告本人や弁護士は話すに値しない相手として扱ったことになる。

被告には相手に配する気配りや配慮が皆無である。相手を無視した一方的な進め方にも被告の不誠実さが現れている。話す順序を間違えれば、それだけでまとまる話もまとまらなくなる。「それをやらなかったら、どうなるのか。それをやるためには、どういう段取りが必要なのか」という検討が完全に欠落している。

土壌汚染を隠してマンション「OAPレジデンスタワー」を販売した三菱地所、三菱マテリアルは購入者に対し、迅速に和解に取り組んだ(「三菱地所など75億円補償=住民側と和解で合意−土壌汚染隠し事件・大阪」時事通信200558日、「汚染隠し75億超で和解 三菱地所など支払い」共同通信200558日)。同じ悪徳不動産業者であっても、発覚後の対応には二流と三流の違いがあるようである。

 

【個人情報保護】消費者とのトラブルを都合よく歪曲して本人以外に伝える被告には個人情報を保護する姿勢は全くないと言える。個人情報の漏洩が企業を揺るがす重大な問題となっているにもかかわらず、意識の低さには呆れるばかりである。

個人情報保護は情報が漏らされたと感じる側の身になって考える問題である。個人情報が知らないうちに外に漏れたのでは、消費者は裏切られた気分になるし、企業への信頼も当然のように揺らぐ。

個人情報をどれだけ機密度を高めて管理するかは企業イメージにも大きな影響を与えている。実際、個人情報取扱事業者を対象とした調査では、不動産業は個人情報保護対策が最も遅れている業種となっている(アビームコンサルティング「個人情報保護法に関する企業の対策状況分析レポート」2005年、7頁)。

 

不誠実な応訴態度

本訴訟においても被告は相変わらず不誠実な対応に終始している。

本訴訟は2005218日に提起されたが、被告の答弁書は、それからほぼ一ヶ月後の311日付けで出された。「請求の原因に対する答弁」では、「原告の請求を棄却する、訴訟費用は、原告の負担とするとの判決を求める」と真っ向から対立する主張をしながら、「請求の原因に対する認否」では「追って主張する」とするのみで具体的な主張を何ら明らかにしていない。ここでは不動産売買契約の成立さえ認めていない。

「請求の原因に対する認否」(請求の趣旨に対する答弁)は原告の訴状の中の「請求の原因」の内容をよく読み、事項毎に認めるか認めないかを答え、認めない場合はその論拠を挙げるものである。弁護士を三人も付していながら、不誠実極まりない応訴態度である。

また、本訴訟の第一回口頭弁論は32313時半から東京地方裁判所5518号法廷で行われたが、被告は欠席した。不誠実かつ卑劣な時間稼ぎであり、徹底した相手方当事者無視で、悪質かつ姑息な対応である。原告のみならず、裁判所も侮った行為で、極めて悪質である。

 

被告の体質

【体質】被告は自社の利益のみを追求する不誠実極まりない体質の会社である。顧客が損をしても会社が儲かればいいとする。被告の「売ったら売りっぱなし、後は野となれ山となれ」という誠意のない対応については別件のトラブルにおいても強く批判されている。特にアルスのある江東区では、本件の他にも東急ドエル・アルス南砂サルーテ、プライヴブルー東京と集中的にトラブルを抱えている。

トラブルをデベロッパーがどのように対応したか、それによって業者の善し悪しが見えてくる。企業の体質そのものが問われる問題である。被告は不誠実極まりない体質の会社であると結論付けることができる。「身から出た錆」という言葉があるが、錆がでる前に企業の体質を改善することが本来のあり方である。

消費者の怒りは不正に対して向けられるだけではない。不正を生む体質にメスを入れようとしない経営姿勢に対しては、より一層厳しい批判が向けられることを覚悟しておかねばならない。雪印食品や日本ハムの牛肉偽装問題に対しては、偽装そのもの以上にその後の対応の不手際が槍玉にあがったことを忘れてはならない。

JR西日本の福知山線脱線事故及びその後の不誠実な対応に関連して、下記の新聞記事がある。「国交省の監督姿勢は、企業の「性善説」に拠って立ってきた。まさか重大ミスを隠し立てすることはないだろう、まさかウソはつかないだろうと。だがこの一年間、運輸業界ではその「まさか」が続けざまに明るみに出た」(「崩れた「企業性善説」」読売新聞2005511日)。同じことは本件における東急不動産についても当てはまる。

 

【東急ドエル・アルス南砂サルーテ紛争】東急不動産が販売したマンション(東京都江東区)が引渡し後、僅か4ヶ月で隣地の再開発により日照が零時間となったため、購入者と東急不動産の間で説明責任をめぐってトラブルになったものである。

被害者団体である南砂環境対策協議会は、協議にすら応じない不誠実な対応を非難している(Webサイト「東急不動産&トピー工業に騙された!!『我ら!!日照ゼロ時間マンション購入者』」)。

「TVの取材が入った時には『住民からの要望があればいつでも話し合いをもちたい』と答えるが、その後も無視を続ける姿勢は一切変わらず。」

「東急不動産は、毎日新聞からの取材に対して、またも事実とは異なる受け答えを!!この期に及んでも、なんで、すぐにばれる嘘ばっかりつくんだろうか。」

また、住民の一人は毎日新聞の取材に対し、「誠意ある対応をしてもらえなかったのが残念」と回答する(「街が変わる 江東マンションラッシュ」毎日新聞2002516日)。

このトラブルは各誌で報道された(「日照権をめぐるトラブル 事前説明のないマンション建設」日本消費経済新聞200073日、「入居後に環境激変で住民訴訟 どこまで許される営業トーク」週間ダイヤモンド20001014日号)。

 

【東急リバブル迷惑隣人説明義務違反事件】被告の子会社であり、本件においても販売代理を務めた東急リバブルについても説明義務違反を問われたトラブルがある。

隣人が大の子ども嫌いでトラブルを引き起こすことを知らされずに住宅を購入させられたとして、中古住宅の購入者が、売主と売買を仲介した東急リバブルに、購入費など約2800万円の損害賠償を求めた事案である。

判決は「重大な不利益をもたらすおそれがある事項を十分に説明しなかった」「東急リバブルの担当者は契約の際、隣人の苦情のせいで別の購入希望者との売買が流れたことを説明しなかった」「子供に対して苦情を言ったり洗濯物に水を掛けたりするなどの隣人の特異な行動を説明せず、男性に隣人との問題はないと誤信させた」と認定した。

「重要な事項について、故意に事実を告げ」なかったとして、買い手に対する説明義務違反にあたると結論づけた(宅建業法47条)。そして不動産価値の減価分(2割)である456万円を損害として認めた(大阪高裁判平成16122日)。

 

【多摩川園ラケットクラブ閉鎖強行】東急不動産は、テニスクラブ「多摩川園ラケットクラブ」(東京都大田区田園調布)を経営していたが、19991227日に2000331日でのクラブ閉鎖と会員契約解除を一方的に通知した。理由は赤字運営とする。

最初の通知は19991226日にメンバー会役員会に対してなされた。メンバー会役員たちは驚愕し、閉鎖決定の撤回を求めて激しく抗議した。しかし東急不動産との話し合いは平行線のまま、約一時間で決裂した。その翌日、東急不動産は閉鎖通知を会員1300人に発送した。会員らは「一方的通告」と猛反発し、「閉鎖反対委員会」を結成、会員の半数近くが加入した(1300人中約600)

会員の半数近くが反対委員会に加入する騒ぎになるとは、明らかに東急不動産の段取りが悪いと言える。実際、毎月会員に送られてくる「多摩川園ラケットクラブだより・12月号」には家族会員登録の勧めが記載されており、クラブ側は直前まで会員募集の活動を行っていた(「さまよえるテニス難民」T.Tennis 200011月号)。

200021日、会員は東京地裁にテニスクラブ運営継続と会員地位確認の仮処分申請を行った(「閉鎖通告に怒りの仮処分申請 田園調布のテニスクラブ 「合意違反」と748人、中には石原知事も」朝日新聞200022日東京本社第1426面第2社会面)。その後、2000315日、東急不動産は、「多摩川園ラケットクラブ」を山梨県河口湖町の不動産会社に92億円で3月中に売却すると発表した(朝日新聞2000316日東京第1437面第3社会面)。

訴訟中は「会社側からは、いろいろな妨害がありましたし、あの手この手で、早く皆さん退会しなさい、しないと入会金が返らなくなりますよと言わんばかりのこともありました」と原告の一人は語る(テニスシンポジウム「「テニス難民」を考える。」200072日)。

 

建設トラブル

被告はマンション建設にあたり、地域社会からの建設反対運動にも直面している。この反対運動への対応においても、被告の不誠実さは強く批判されている。これは東急不動産という会社が周囲の住環境に対し、いかなる姿勢で事業を行う企業か、端的に示している。近隣への配慮があまりにもなさ過ぎる。地域住民の意思を置き去りにして進められる開発には疑問を抱かざるを得ない。

 

【鷺沼ヴァンガートンヒルズ住民紛争】東急不動産らによる巨大マンション建設計画(川崎市宮前区鷺沼4丁目)に対する、地域住民らによる反対運動が生じたトラブルである。

反対運動主体である「鷺沼地域の住環境を守る会」は東急不動産の矛盾した説明を非難する(Webサイト「鷺沼ヴァンガートンヒルズ住民紛争ホームページ」)。

「公開空地は、企業採算を目的としたもの、新築マンションの商品価値を高めるためのものである」と東急不動産・鎌野部長は明言しました。

「公開空地は地域環境のために設けます。これは地域環境の向上につながります。」と条例準備書と見解書に大いばりで明記してあったのは、一体、何だったんでしょうか。これは住民および行政を欺く、明らかな虚偽記述です。こんな姿勢の企業が大手を振って“企業活動”を続けていることに大いなる疑問をいだきます。

このトラブルでは地域住民が被告らに対して、景観権ないし景観利益を侵害する建築物であること等を理由とし、高さ15mを超える建物の建築禁止を求めて東京地裁に提訴した(2003422日、平成15()8805)。訴訟は被告側の事業中止により、取下げとなっている。

 

【プライヴブルー東京】東急不動産の事業強行に対し、江東区が事業者名を公表して、購入検討者に警告した事例である。

江東区は東急不動産が計画している豊洲四丁目のマンション計画「プライヴブルー東京」について、当該マンションに入居される児童等の学校への受け入れが困難であることを公表した(「江東区の協力要請に応じないマンション事業計画に係る公表について」2003123日)。東急不動産の事業強行に対し、江東区は入居する住民に多大な迷惑をかける可能性が高いため、行政としての説明責任を果たす観点から、公表に踏み切った。

江東区では、区内の工場跡地等に短期集中的に次々とマンション建設が計画され、学校等への受け入れなど、行政としての対応も限度を超えている。「ここ数年来のマンション建設急増に伴う人口増加は、学校や保育園の収容対策等に支障をきたす状況を生み出し、区政の新たな課題となっています」(室橋昭「さらに夢のある江東区を目指して」こうとう区報14422005411日)。

そのため、区住宅建設条例では学校受け入れが困難な地域では条件が整うまでの間の建設の中止・延期や、大企業が工場を撤退させた跡地につくる大規模開発地域では学校用地を提供することなどを求めている。

区は被告に対しても事業の中止又は延期の協力を依頼したが、被告は区の要請に何ら応じず、自社が定めた当初の予定通り20053月入居を前提に事業を強行する。江東区は「建設するな」ではなく、学校が足りないのを放置していたわけでもなく、急いで小学校を建てるから、それまで待って欲しいと譲歩したが、それをも無視する。

他のマンションデベロッパーが、江東区の要請を受けて、区の住環境保全のための協議に応じている。実際、プライヴブルー東京の隣に建てられた東京フロントコートは譲歩してほぼ一年入居を遅らせた。しかし東急不動産はそのような姿勢を示すことなく拒絶を続ける。

役所がここまですることはめったにない。地域住民による強力な建設反対運動が起きているところでも、行政の対応は及び腰であることが悲しい現実であるのに、行政にここまで書かせるのは被告の対応が余程悪かったことをうかがわせる。

尚、アルスの販売担当者で原告に重要事項を説明した東急リバブル住宅営業本部営業第五部・宮崎英隆はこのプライヴブルー東京の販売担当者でもある。宮崎はその後、グランディスタ青葉台の販売担当者となった。

 

【(仮称)平塚袖ヶ浜計画】被告らが神奈川県平塚市にある旧杏雲堂平塚病院(現ふれあい平塚ホスピタル)の敷地内に予定されているマンション建設計画に対し、地元住民による反対運動が展開されている。

問題のマンション「(仮称)平塚袖ヶ浜計画」は、ふれあい平塚ホスピタルの敷地内に3棟(333戸)が建設され、このうち東側道路に面するA棟の一部は、地上16階建て高さ49.13メートルとなる予定。

建設計画地周辺は平塚を代表する街並みが形成されている。計画地の東側道路は、平塚駅から海岸へと伸びる海へのシンボル軸(湘南なぎさプロムナード)で、「湘南ひらつか都市景観基本計画」に基づき景観モデル地区に位置づけられている。南口の顔となるメインストリートである。戦災復興で道路幅が広く、閑静な住宅街が広がる地域である。統一感があり、目に優しくてホッとする町並みである。ゆとりを感じさせる街である。

超高層の建築物は駅南口エリアにはほとんどない。そのため「広々とした空や松林といった市民の貴重な財産である住環境が失われる」と周辺住民は反発する。巨大マンション建設により、日影の問題も深刻になる。道路を挟んで東側の湘南高浜台ハイツの1号と5号棟、さらに計画地の北側と西側も日影になる。また、病院跡地ということで医療廃棄物による土壌汚染も地域住民は懸念する。

現在、袖ヶ浜自治会及び湘南なぎさプロムナードの環境を守る会を中心に反対運動が展開されているが、被告は第一回住民向け説明会(平塚商工会議所大ホール2005128日)に一人も出席者を出さないほどの不誠実な対応ぶりである。

平塚市は「周辺と調和するような建物にしてほしい」とマンション業者に要請しているが、「聞き入れてもらえるかどうか」は不明。市都市政策課でも「周辺の街並みに合ったふさわしいところまで下げてほしい、とお願いしている」「この地域は周りに高い建物がないので、突出するだろう。市の重要な景観地区なので、粘り強くお願いしていく」(「杏雲堂病院跡 高層マンション建設」湘南新聞200525日号)。

平塚市議会では3月定例会において、平成17年請願第4号「「(仮称)平塚袖ヶ浜計画」についての請願」及び平成17年請願第5号「「(仮称)平塚袖ヶ浜計画」に伴い損なわれる地域の景観の保存、生活環境の保持を求める請願」が趣旨採択された。請願は景観や松の緑を保ち、当地域の街並みに合った高さへの変更を求めるものである。

 

被告行為の犯罪性

被告の商法は犯罪にも該当する悪質なものである。大切な顧客である消費者をカモにする被告の商法は、商道徳上、許されるものではない。その悪質な手口には、深い憤りを感じる。具体的には詐欺罪(刑法246条)及び説明義務違反(宅地建物取引業法80条)に該当する。

都合の悪い事実を隠して問題物件を販売し、発覚しなければ「後は野となれ、山となれ」で、発覚したならば、その時点で損害だけ払えば済まされることになれば詐欺をした方が得ということになる。その結果、世の中に被告が行ったような詐欺的商法が蔓延することになる。万引きして見つかったならば金を払えばいいという訳にはいかない。被告の行為は法律を無視した犯罪であると主張する。

 

【詐欺罪】嘘をついて不動産を売ってはならないのみならず、不利なことを知っていた場合はその事実を隠してもいけない。どちらも買主にとっては詐欺である。詐欺は積極的に事実と異なることは信じ込ませる場合だけでなく、何も言わないことにより当該事実が存在しないと誤信させる不作為の場合にも成立する。知っていたのに告げなかったということは故意である。過失ではなく悪質な詐欺行為だから、どのような弁解も謝罪も通らない。

「詐欺罪のごとく他人の財産権の侵害を本質とする犯罪が処罰されるのは、単に被害者の財産権の保護にあるのではなく、かかる違法な手段による行為は社会の秩序を乱す危険があるからである」(最高裁判決S25.7.4

「商品の効能などにつき、真実に反する誇大な事実を告知して相手を誤信させ、金員の交付を受けたときは、たとえ価格相当の商品を提供したとしても、真実を告知したならば相手方は金員を交付しなかったであろうような場合には、詐欺罪が成立する」(最高裁判決S35.9.28

 

結語

以上述べた通り、被告が本件マンションに関する不利益事実を十分に知っていたにもかかわらず、告知すれば売れなくなるために故意に告げなかったことは明白である。被告が「事実を告げると売れなくなる」「本当のことを言ったら価値が下がる」との論理から告知しなかったことは明らかである。

速やかに原告の請求を認容する判決をされたい。原告としても本訴訟において、早期の紛争解決と不動産市場の健全化を実現するために、最大限の努力を行うつもりである。

原告は、国土交通省関東地方整備局建政部建設産業課に対し、被告及び東急リバブルの本件違法販売について情報提供を行った。その際に本件訴訟の判決によっては被告及び東急リバブルの処分を検討することになるので、判決が出たら連絡するように国土交通省担当者から依頼されている(200529日)。本件訴訟の帰趨が不動産取引市場の健全化にも影響を与えうるものであることを踏まえた上での審理をお願いしたい。

 

 

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