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訴状

 

原告 X

被告 東急不動産株式会社

代表者代表取締役 植木正威

 

売買代金返還請求事件

訴訟物の価額 金28700000

貼用印紙額 金107000

 

平成17218

 

東京地方裁判所 御中

 

請求の趣旨

1.被告は原告に対し、原告が被告に対し、別紙物件目録(二)記載の建物から退去して同目録(一)記載の土地の持分167008分の5702および同目録(二)記載の建物を引き渡すのと引換えに、金28700000円および平成1571日から支払済みに至るまで年5パーセントの割合による金員を支払え

2.訴訟費用は被告の負担とする

との判決および仮執行の宣言を求める。

 

請求の原因

一.本件不動産売買契約の成立と引渡

原告(買主)と被告(売主)(代理人訴外東急リバブル株式会社)は、平成15630日、別紙物件目録記載の土地・建物(マンション「アルス」301号室)について売買契約を締結した。

売買代金は金28700000円、引渡予定時期は平成159月とされた。

原告は、平成15929日本件建物の引渡を受け、以降同建物に居住している。

 

一.不利益事実の不告知と本件売買契約の取消

1、不利益事実の現出

原告は、前出のとおり、平成15929日本件建物の引渡を受け、以降同建物に居住したが、居住後一年も経たない平成168月、北側隣地に3階建の住居兼作業所が建築され、原告が取得し居住している301号室は、隣地建物の壁で採光が奪われ、日中でも、深夜のように一面が真っ暗になってしまった。そのほか眺望・通風・景観等も失われたことはいうまでもない。

僅かな年月で、取得した部屋が真暗といった感じになることが分かっていれば、原告において本件不動産を買う意思は全くなかった。

2、不利益事実の不告知

(1)原告は平成156月、当時、門前仲町にあった訴外東急リバブルの事務所に行き、「アルス」の説明を受けた(担当者中田愛子)。

同月22日、モデルルーム見学。北側隣地に物置き状の建造物があったが、それは隣地所有者の物置であるとの説明だった(隣地建物建築後の平成168月下旬、同建物の所有者であるW氏の話で、同工務店の作業場であったことが判明)。

同月30日、前述のとおり、原告は本件不動産売買契約を締結した(於、門前仲町所在の東急リバブル事務所)。重要事項の説明は、「販売代理」の東急リバブル(株)住宅営業本部営業第五部アルス担当の宮崎英隆が行った。

この当初の前記説明から重要事項の説明・本件不動産売買契約の締結に至る間、北側隣地に近日中に3階建の建物が建設されるという買主原告にとっての不利益事実は、売主側からは全く告げられていなかった。

広告パンフレットには、「独立性の高い立地を活かした全戸に開放感のある角住戸を実現。さらに風通しや日差しに配慮した2面採光で心地よい空間を演出します」とあり、販売担当者のNは、「アルス」301号室の窓から洲崎緑道公園を望めると眺望の良さを強調し、見学会のとき、「この窓を開ければ見えるのは何ですか」との原告の質問に、「遊歩道の緑ですよ」と回答した。

(2)しかし、被告は、実は、「アルス」北側の隣地所有者Wが、同マンション完成後すぐ3階建の建物(住居兼作業所)を建築すること、従って、「アルス」301号室の採光・日照が喪失することを承知しており、それにもかかわらず、本件不動産売買契約の締結について加入をするに際し、当該消費者である原告に対し、同原告に不利益となる事実を故意に告げなかった。

第一。被告の原告不利益実の承知

被告が、この原告にとっての不利益事実を知っていたことは、原告が平成16831日頃、同年914日頃、同月22日、同年1124日頃等再三再四にわたり隣地所有者Wに経緯を聞き、被告側からの原告宛て文書を示したりして、事情を確認した内容から明らかである。

W氏の話は、次のとおりである。

「アルス」の建築施工前の平成1411月、W氏は東急不動産の窓口担当の井田氏(アルス建設地の被告への売主康和地所の担当者)、ピーエス三菱の工事所長、現場監督K氏に対し、@自分の方の建物は、「アルス」の建築工事が完了したらすぐ建築する、Aその建物は3階建、4階以上の建物は絶対に建てない、B住居と仕事場が一緒になるので騒音がある等と述べ、後で何かあると嫌だから、2階と3階に住む人(買う人)に必ず言っておいて下さいと念押しした。

井田氏は、「引き継ぎは、私が責任を持っていたします」と述べた。

その後、東急不動産からW氏に、「一緒に建てましょう」との誘いがあったが、Wは、「単独で建てる。3階建てだから、その上にアルスの部屋を作ってもいいですよ。土台が緩むといけないからアルスが建ってからすぐ建てる」と答えた。

また、「窓」について、東急不動産から「何階建ですか」と聞いてきたので、W氏は「3階建です。屋上はなし。それ以上のものは絶対に建てません」と述べた。後日、東急不動産から3階までは曇りガラス、4階以上は透しガラス、6畳の部屋に窓が三つあるが、内二つははめ殺し(開かない窓)にしておいたとの報告がW氏にあった。

W氏は、「アルス」の2、3階の窓と自分の新築する建物の窓がぶつかると困るので、「アルス」の2階と3階を見せてもらい、窓の位置を確認した。

「塀」については、井田氏は、「フェンスでどうでしょう」と言ってきたが、W氏は、「仕事場と一緒だから騒音がある。また、子供がいるので、フェンスだと壊すといけないから、コンクリートにして下さい」と述べた。

原告は、隣地建物によって採光が奪われてから、被告側と、或いは文書で、或いは面接して、この不利益事実の不告知の問題について、真相を明らかにし、善処方を求めるため、折衝を重ねてきたが、被告側は、当初「アルスの計画説明時において所有者より建替えたい旨の希望は賜りましたが、当時、建替費用の捻出が困難であるとの理由から、建替え時期、建築概要(構造・階数など)については未定であると伺っております」(平成16.8.26東急リバブル宮崎英隆作成名義の文書)、前述のW氏の話は「まったく聞いていない。誰も知らない」(平成16.9.19東急リバブル今井由理子発言)と否定したが、平成161015日付文書(被告・大島聡仁作成名義)に至って、漸く、「W様が井田氏へお話した内容について改めて確認させて頂きました所、本マンションが建ってからすぐ建てる旨、3階以上は建てない旨、住まいと仕事場が一緒になるから騒音がある旨の内容は伺っておりました」と前記W氏の話の概要を認めるにおよんだ。

第二。不利益事実の不告知。

被告が隣地所有者の建物建築のことを原告に告げていないことは被告も認めるところである。

その不告知の理由は、前記大島聡仁作成名義の平成161015日付原告宛文書によれば、「W様宅建替えについては、建替え時期・建築概要(構造・階数など)について詳細が未定であった為、具体的な建替計画が決定していない建物の建築計画を予想してご説明できません。したがって、ご契約時にお渡しした「ご購入のしおり、23ページ(6)周辺環境についての項目」で周辺環境についてのご説明をさせていただきました」というものであり、上記の「ご購入のしおり」23頁の「(6)周辺環境について」は、「@周辺環境につきましては、建築物の建築、建替え、増改築などにより、将来変わる場合があること。また、本件建物の隣接地は第三者の所有地となっており、将来の土地利用または建築計画に関して売主の権限の及ぶ範囲でなく、一般的には……法令等による制限の範囲に該当する建築物であれば、建造が許可されるため、将来本物件の日照・眺望・通風・景観等の住環境に変化が生じ、現在と異なる近隣および周辺環境による場合があること」を指す。

この「ご購入のしおり」(<重要事項説明書>)は、それらが自ら述べるとおり、まさしく「一般的」な内容の記述であり、これをもって売主(業者)の不利益事実告知義務を免除することはできない。

被告の原告に対する回答は、その後、表現に微妙な変化が見られるものの、基調は変わっていない。

3、不利益事実不告知を理由とする本件不動産売買契約の取消

原告の不利益事実の現出、同不利益事実の不告知として前述したところからすると、被告(事業者)は、原告(消費者)との本件不動産売買契約の締結について勧誘するに際し、日照・眺望・通風・景観等の住環境に関する重要事項について、原告に対し、原告の利益を告げるとともに、原告の不利益となる事実(「アルス」完成後すぐに北側隣地に3階建の建物が建築され、前記住環境が極端に悪化すること)を故意に告げなかった者であり、その不告知によって、原告は、そのような不利益事実が存在しないとの誤認をし、それによって前記売買契約締結の意思表示をしたことが明らかであるから、本件不動産売買契約を取り消すことが出来る(消費者契約法4条)。

原告は、平成16126日、同月7日被告到達の内容証明郵便物で、被告に対し、本件不動産売買契約を取消すとの意思表示を行った。

 

三.本訴請求

こうして本件不動産売買契約は取消されたのであるから、原・被告は契約当事者として互いに原状回復義務を負う。

原告は被告に対し、本件土地・建物の返還義務を負い、被告は原告に対し、本件売買代金28700000円およびそれに対する売買契約成立の翌日である平成1571日以降支払済に至るまで民法所定年5パーセントの割合による利息の返還義務がある。

よって、原告は請求の趣旨記載の判決を求めるため本訴を提起する。

 

証拠方法

 

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