認知的不協和

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認知的不協和とは

認知的不協和とは自分が認知していることの中で考えと行動が一致しないことです。

例えば、タバコは体に悪いと分かっているけど吸い続けるなど。

人は認知的不協和を感じると不快感を覚えます。

そこで人は認知的不協和を解消するために考えや行動を変化させようとします。

このことを認知的不協和理論と言い、1957年にレオン・フェスティンガーによって提唱された概念です。

よくある認知的不協和の例

認知的不協和は私たちの日常生活の中でしばしば経験します。

認知的不協和の例としては、以下のようなものがあります。

喫煙

アメリカ心理学会の報告で、フェスティンガーは認知的不協和理論を、日常生活で起こる例を挙げて説明しました。

その1つが、喫煙者に生じる認知的不協和です。

フェスティンガーは、喫煙が健康に有害であることを知っている喫煙者は、不協和を経験すると説明しました。

なぜなら喫煙が健康に良くないと分かっていながら、タバコを吸っているからです。

喫煙者の中には、認知的不協和を解消するために禁煙する人もいるでしょう。

しかし、多くの人は禁煙が難しいので考えを変えます。

喫煙がストレスを軽減し体重増加を防ぐと考えるなど、喫煙のプラス効果を探し始めます。

イソップ物語の『オオカミとブドウ』


認知的不協和の一例として、イソップ物語の『オオカミとブドウ』があります。

あらすじは次の通りです。

ある日、空腹のオオカミがブドウがなっている木を見つけました。

オオカミはブドウを手に入れるためにブドウに向かってジャンプしましたが、届きませんでした。

ブドウを食べたくても食べられなかったオオカミは「あのブドウは酸っぱいに違いない」と思って立ち去ったという話になります。

肉のパラドックス

認知的不協和の例として、肉食が挙げられます。

肉を食べることと動物を大切にすることは一致しないので、認知的不協和が生じます。

しかし、肉食をやめることは難しい。

そこで肉を食べる人は、認知的不協和を解消のために、次のように考えます。

皿に盛られた肉は「牛」ではなく「ビーフ」と呼ぶことで、動物を殺して得られた肉であることの認識を切り離そうとします。

肉を食べることは健康維持に必要と自分に言い聞かせて、肉食への罪悪感を軽減します。

その他の認知的不協和の例

  • ウソを付くことは良くないと思っているけどウソを付く。
  • 自分ではやらないのに運動の大切さを語る。

認知的不協和が起こっている人のサイン

認知的不協和が起こっている人のサインには、次のようなものがあります。

  • 何かをしたり決断をする前に不安を感じる。
  • 自分が行った決定や行動を正当化、合理化しようとする。
  • やってしまったことを恥ずかしいと感じたり、隠そうとする。
  • 過去に行ったことについて、罪悪感や後悔を感じる。
  • 自分の考えに反する新しい話題についての会話は避ける、無視する。
  • 自分が望んでいないことであっても圧力をかけられてする。

認知的不協和の原因

人に認知的不協和を引き起こす条件として、次のようなものがあります。

他者からの圧力

必要に迫られ、自分の考えに反する行動を取ってしまうことがあります。

学校や職場、社会的な場面でよく起こることです。

例えば、出世したいから本当は嫌いな上司にゴマをするなどです。

もう一つのケースは、身近な人からの同調圧力です。

例えば、節約を心がけているのだけど、みんなに合わせるために最新のスマホを買ったり流行の服を買うなどです。

意思決定

同じくらい魅力的な2つの選択肢に直面したときに認知的不協和が生じます。

例えば、実家から近いけど給料が安い会社と実家から遠いけど給料が高い会社の両方から内定を得た場合など。

すでに選択したことについては、その選択が間違っていなかったことを補強する情報を探そうとします。

後悔

後悔している場合に、認知的不協和が起こります。

例えば、難関資格を取るために何年も費やしているのに合格できなかった場合は「努力をしたこと自体が価値があったのだ」と自分を納得させようとします。

文化の違い

ある文化において人が持っている認知は、他の文化では異なる場合があります。

例えば、自分の地域では手で食べるのが当たり前だと知っているジャワ人は、ヨーロッパの食事マナーでは当たり前でないことに違和感を覚えます。

意見の一般性

一般的に考えられることと事実が異なる場合に認知的不協和が生じることがあります。

例えば、世間では同じ政党の候補者を必ず応援すると思われている政党Xの議員が、実は自分の政党のライバルである政党Zの候補者を選んでいた、というような場合です。

過去の経験との矛盾

ある事実が自分の過去の経験と矛盾している場合に認知的不協和が発生します。

例えば、A村に行けばBに会えると知っている人が、いざ行ってみるとBはいなかった場合です。

認知的不協和を解消する方法

都合が悪い情報には耳を貸さない

認知的不協和は、自分の考えに反する情報を否定することで軽減されます。

例えば、タバコをやめられない喫煙者は「タバコは肺がんを併発するリスクを高める」という研究情報を目にしても「その研究は必ずしも真実ではない」と考えます。

行動を正当化する

認知的不協和を経験すると、人はあることを行う際に自分を正当化し、納得させることがあります。

例えば、ある部下が上司に同行して飲み屋でお酒を飲むことを強要されたとします。

その部下はお酒は体に悪いと思っていても、お酒を注文し「出世のため」「上司に気に入られるため」と正当化するかもしれません。

自分の考えを変える

自分の考えを変えることで認知的不協和を解消することができます。

例えば「男は汗水たらして働くべきだ」と考えているのに専業主夫をしている人は、「今の時代は専業主夫も1つのライフスタイルとしてありだ」と考えを変えます。

関連心理学用語

確証バイアス

確証バイアスとは、自分に都合の良い情報を求め、自分に都合よく情報を解釈する傾向のこと。

防衛機制

防衛機制とは不安な気持ちから自分を守るために無意識に行われる心理的なメカニズムのこと。