<0001> どこまでも続く青い空。誰もいない砂浜。 <0002> 6月の沖縄は、\n既に真夏を思わせる日射しが照りつけていた。 <0003> 軽い音と共に、鼻をつく火薬の匂い。\n僅かな反動が手首から肩へと響く。 <0004> 伸ばした右手と、支えるように添えた左手。\n少しだけ膝を折り、重心を自然に保つ。 <0005> そして、10m先の目標物に向かって… <0006> 1発ずつ正確に撃ちこむ。 <0007> しっかりと命中するが、左右に揺れるだけの <0008> まと <0009> 的。\n中身の入ったジュースの缶。 <0010> 決して倒れようとはせず、\n僅か350gの重さですら数mm動く程度だった。 <0011> でも僕は気にせずに撃ち続ける。\n倒れるまで、尚も命中させ続ける。 <0012> タンッ、ッタンッ、タンッ <0013> 明 人「ふう、5発当ててやっとか…」 <0014> 何度も連続で命中させた的。 <0015> 僅かに凹みを見せ、ようやく倒れたジュースの缶。 <0016> その凹みの圧力に押されて、\nプルタブの隙間からは中身が漏れ出していた。 <0017> 僕は、その” <0018> もと <0019> 元” <0020> まと <0021> 的だったものにゆっくりと手を伸ばす。 <0022> そして… <0023> 開きかけだったプルタブを引いた。 <0024> 明 人「ごくごくごく…」 <0025> 少し気の抜けた炭酸と、ぬるく甘い味が口に広がる。 <0026> 見上げた空には、6月とは思えない南国の太陽。\n湿った海風を受けた肌には、止めどもなく汗が流れていた。 <0027> 明 人「ふう、暑…」 <0028> 愚痴ともつかぬ独り言を呟きながら、\n僕は、ぬるくなったジュースを一気に飲み干す。 <0029> 明 人「…また新しいの用意するか…」 <0030> 左手に持った、少し凹み空になってしまった缶。 <0031> この缶では既に”的”としての機能を失っていた。 <0032> そして新たな的を用意すると、\n再び10mの距離をおき構える。 <0033> 手に持った <0034> ※ <0035> ベレッタM92F <0036> ベレッタM92F。\n黒マットの手触りと重量感が、妙に手に馴染む。 <0037> 精巧に仕上げられたその作りは、\nアメリカから直輸入し、更に自分なりに手を加えた物だった。 <0038> 擬似的に排莢も行い、音も火薬の匂いも、そのもの。 <0039> …しかし… <0040> 本物ではない。 <0041> 缶ジュースを凹ませる弾を発射することが出来ても、\n銃口に塗装された <0042> ※ <0043> オレンジのマーキング <0044> オレンジのマーキングを消したとしても… <0045> あくまでも擬似的なモノ。 <0046> いくら良く出来た作りでも、決して本物には成り得えない。 <0047> 明 人「もう、ここに来て一週間か…」 <0048> ”ここ”とは沖縄を指す。 <0049> 日本であって日本でない場所。\n北緯26度12分51秒・東経127度40分28秒の地。 <0050> もちろん地理的な理由だけではない。 <0051> 極東最大の米軍基地を持ち、\n歴史的に見ても、横須賀や厚木にはない特殊な場所だった。 <0052> …ここに来れば本物が撃てるかも… <0053> そんな淡い期待を込めてこの地を訪れた。\n気ままな一人旅を続けた末にやってきた場所だった。 <0054> しかし、その期待は早々に裏切られた。 <0055> \nどうやら無理らしい。日本の現実は違うらしい。 <0056> 怪しげな路地裏での、100ドル札10枚のような売買は、\n映画や小説の中だけの世界らしい。 <0057> 噂に聞いたガンスミスもマーケットもジャミロクワイも、\n現実の世界では、ずっと遠い場所に居るらしい。 <0058> …この僕には届かない場所にいるらしい… <0059> なので、さっさと諦めた僕は、\nこの小さな島でテント生活を始めた。今日で2日目。 <0060> 明 人「だけど、それも言い訳なのかもな…」 <0061> これも今だからわかる。\nそれほど銃が撃ちたかった訳でも、欲しかった訳でもない。 <0062> 本当に銃が撃ちたければ <0063> ※ <0064> グァムやハワイ <0065> グァムやハワイに行った方が早い。\nそれくらいは僕にだってわかる。 <0066> 明 人「でも、それでは意味がない、何も変われない…」 <0067> 大野明人(おおのあきと)。 <0068> \nこれが僕の名前。 <0069> 住所は神奈川県。17才男性、職業は無職。 <0070> 明 人「いや、無職というと聞こえが悪い…」 <0071> 正しくは”元”高校生。\n現在は、休学中という表現が合っている。 <0072> ちょうど1年前、\n僕は通っていた学校を中退した。 <0073> 理由は特に無い。 <0074> 只、何気なく過ぎる毎日を、\n先の見えた未来ってのを、ひどく退屈に思えただけだった。 <0075> そう感じる自分自身を哀しく思ったのか… <0076> それとも、見えない力で流されていると感じた、\n”何か”に少しでも抵抗したかっただけなのか… <0077> その厳密な理由は、今でも分からない。 <0078> 只、親には復学することを条件に、\n1年間の気ままな一人旅を許してもらった。 <0079> そしてここが、1年も日本中を旅した末の、\nなんとなく寄った最後の場所だった。 <0080> 擬似的に排莢もし、火薬の匂いもする、しかし本物ではない。 <0081> そんな、よく出来た”まやかし”の武器に、\n何故か僕は自分の姿に重ねてしまう。 <0082> 1年間も好きに旅をすれば、何かが変わると思った。\n変われるだろうと思った。 <0083> …しかし、現実には何も変わらなかった。 <0084> 結局は、モデルガンを撃っていた場所が、\n自分の部屋から、この場所になっただけのことだった… <0085>  「...Huh, it wasn't the real one...」\n (…なんだ、モデルガンか…) <0086> 明 人「えっ…」 <0087> 振り返った先には、堤防にしゃがんでこちらを見る女の子。 <0088> てっきり誰も居ないと思っていたのに… <0089> …いつから見られていたのだろうか? <0090> 女の子(しずか)「 You doing pretty nice. 」\n (上手いもんじゃない) <0091> 明 人「え、ありが…サ、サンクス…」 <0092> 思わず、気恥ずかしさを隠すように、\nたどたどしい英語で返事をする。 <0093> 眩しい夏空を背に、風になびく彼女の金髪。 <0094> \nまっすぐにこちらを見る目。 <0095> その青い瞳が…とても印象的だった。 <0096> 明 人「そ、そのう…h.hello..How do you do..」 <0097> 女の子(しずか)「 What? Should I use Japanese to communicate with you?」\n (あれ? もしかして日本語の方が良かった?) <0098> 明 人「え、ええ、まあ…」 <0099> 女の子(しずか)「 Hmm, I thought you're local people…because you armed.」\n(ふーん、ガンなんて撃ってるから、\n てっきりカデナの人かと思ったんだけど…) <0100> 少しだけ不思議そうに呟く彼女。 <0101> それなりに英語は得意だったので、\n大体の意味は僕にも理解できた。 <0102> 女の子(しずか)「よいしょっと」 <0103> 女の子(しずか)「で、貴方、ここで何をやってたの?」 <0104> 明 人「いや、別になにも…」 <0105> 答えながら、手にしたベレッタをポケットへと納める。 <0106> 上手く言えないが誰も居ないと思っていただけに、\nとても気恥ずかしいように感じていた。 <0107> 女の子(しずか)「ここって今は関係者以外立ち入り禁止よ」 <0108> 明 人「…立ち入り禁止? そうなの?」 <0109> 女の子(しずか)「そうなのって、ホントに知らなかったの?」 <0110> 女の子(しずか)「心当たりあるでしょ、誰かに聞かされた筈よ」 <0111> …心当たり?\n言われてみれば確かにあったような… <0112> 本島から、ここまで乗せてきてくれた\n漁船のおじさんがそんなことを言ってたように思う。 <0113> よくは分からないが、週末には\n島の東側には行くなと言われていたな… <0114> 明 人「…悪い、忘れていたみたいだ」 <0115> 女の子(しずか)「ホントに? 理由はそれだけ?」 <0116> 明 人「え? ああ…嘘じゃないよ」 <0117> 少しだけ予想と違った彼女の反応に驚いてしまう。 <0118> てっきり、怒るのか注意するのかと思ったのに、\nそれ以上に他に理由がないかが気になっているようだった。 <0119> 女の子(しずか)「そう。とりあえず信じてあげるわ」 <0120> 女の子(しずか)「もしかしたら <0121> ※ <0122> カデナ <0123> カデナの人かと思ったけど、\n それも違うみたいだし…」 <0124> 女の子(しずか)「となると、偶然やってきた旅行者ってとこかしら?」 <0125> 明 人「うん…まあ、そんなとこだと思う」 <0126> 正確には旅行や旅というよりは、放浪が正しい。\nしかし、初対面の人に説明するほどではなかった。 <0127> そして、曖昧な返事をしながらも、\n僕は目の前の彼女を見続けていた。 <0128> …先ほど彼女は、関係者以外立ち入り禁止だと告げた。 <0129> その上で、この場所へとやって来た彼女。 <0130> ということは、この彼女こそは、\nその関係者ということなのだろうか… <0131> 日本語は上手いけど、その髪の色と青い目が、\n見慣れたものとは違うことを物語っていた。 <0132> きっと嘉手納基地に住むアメリカ人か、その家族だと思う… <0133> 女の子(しずか)「日本人よ、こう見えてもね」 <0134> 明 人「えっ…」 <0135> 女の子(しずか)「ついでに言うとカデナの人間でもないわ」 <0136> 明 人「あ、ああ、そうなんだ…」 <0137> まるで見透かしたように先に答える彼女。\n僕が質問をするよりも早く、回答されてしまった。 <0138> ならば彼女は、一体なんの為に此処に来たのだろうか?\n水着姿なところを見ると、泳ぎに来ただけかも知れないけど… <0139> しかしそれならば、なにもこんな島まで来なくても、\n本島のビーチで十分にも思える。 <0140> 女の子(しずか)「あ、そうだっ」 <0141> 女の子(しずか)「ねえねえ、それよりも写真、撮ってあげようか?」 <0142> 明 人「…写真? どうしたの急に?」 <0143> 女の子(しずか)「ほら、せっかくだから記念に撮ってあげようと思って」 <0144> 女の子(しずか)「ね、ね、カメラ貸してよぉ〜」 <0145> 突然、明るく話し掛けてきた彼女。\n明るくというより、むしろ甘えてねだる感じにも思える。 <0146> 先ほどとのギャップから、\nそれを不自然と思ってしまうのだが… <0147> ゲームを中断してシステム説明を聞く <0148> 正直に答える <0149> それでは、一旦ここでストーリーを中断して、\n『システムの説明』をさせて頂きます。 <0150> 今作では、ちょっとした語句や、\n固有名詞がたくさん登場してきます。 <0151> その中でも、意味がやや難しい語句や、\n知っていた方がストーリーを理解しやすい語句を… <0152> 百科事典のように、いつでも見れるようにしています。 <0153> これが、今回搭載された、『事典システム』です。 <0154> では、その使い方を説明致します。 <0155> ゲームを進めていると、 <0156> \n <0157> 本文中にこのような『※』印が表示されることがあります。 <0158> これは、『※』印のついた語句が、\n事典に新規登録された事を示しています。 <0159> 事典に新規登録されると、\n画面右下の事典ボタンが緑色に点滅します。 <0160> これで、ボタンを押す事によって、\nその説明を読む事が出来るようになります。 <0161> 事典を開くと、このような事典画面が表示されます。 <0162> 左側が項目の分類、右側が項目の一覧となっています。 <0163> 項目の一番上にカーソルを合わせ、\nクリックすると…。 <0164> このように、別ウインドウが開いて、\nクリックした項目の説明を読む事が出来ます。 <0165> また、これらの項目は、\nいつでも呼び出して再読する事も出来ます。 <0166> 新規登録された時点で、\n左側の項目の、あ〜わ行、英字・数字に分れますので、\n以降はそこから検索する事が可能です。 <0167> 事典システムは、基本的にいつでも使用可能ですので、\n不明に思ったりヒマな時にいつでもチェックして下さいませ。 <0168> ※尚、この事典の内容は… <0169> 必要な物や正しい物もありますが、\n何となくやノリだけで <0170> ※ <0171> 無駄 <0172> 無駄に書かれた雑文も多くあります。 <0173> 本来は知識のない方の為だったのですけど、\n実際には、知っている方向けの気がしないでもありませんが… <0174> どちらかというとストーリー中に見るよりも、\n思い出した頃にヒマつぶしに読む方が楽しいかも知れません。 <0175> また、今回の体験版では省略されていますが、\nオートモードやスキップ、コンフィグ等といった機能も\n標準で装備されておりますので。 <0176> それではストーリーに戻ります。 <0177> 女の子(しずか)「ねえねえ、それよりも写真、撮ってあげようか?」 <0178> 明 人「…写真? どうしたの急に?」 <0179> 女の子(しずか)「ほら、せっかくだから記念に撮ってあげようと思って」 <0180> 女の子(しずか)「ね、ね、カメラ貸してよぉ〜」 <0181> 突然、明るく話し掛けてきた彼女。\n明るくというより、むしろ甘えてねだる感じにも思える。 <0182> 先ほどとのギャップから、\nそれを不自然と思ってしまうのだが… <0183> 僕は正直に答えることにした。 <0184> 明 人「悪い…俺、カメラ持ってないから」 <0185> 女の子(しずか)「それじゃあ、別に携帯のでもいいわよ」 <0186> 明 人「いや、そんな機能も付いてないから」 <0187> 答えながら自分の携帯を見せてみる。\n以前から使っている、少し型遅れのタイプだった。 <0188> 女の子(しずか)「…そう…カメラ持ってない訳ね…」 <0189> 明 人「ああ、別に観光が目的だった訳じゃないから…」 <0190> 女の子(しずか)「じゃ、さよなら」 <0191> 明 人「て、あ、おい、君…」 <0192> 女の子(しずか)「とにかく、さっさとここから去りなさいよー」 <0193> 呼び止めるよりも早く、駆け去ってしまった女の子。 <0194> 明 人「…なんだったんだ、今の子は?」 <0195> 高かった日が、ゆっくりと海へと沈み… <0196> この南国の渚にも、暗い夜の帳が降りていた。 <0197> パチパチパチ… <0198> 明 人「少し焦げちまったな…」 <0199> 出来たての飯盒を手に呟いてみる。 <0200> すっかりと慣れた、このテント生活。\nさすがに1年もこんな暮らしを続けていたら当然だろう。 <0201> 明 人「もう…残り僅かになっちまったな」 <0202> それは、所持金や食料だけのことではなかった。 <0203> 家を出て、気ままに旅をしていたが、\nそのタイムリミットをも指していた。 <0204> 元々、深い理由もなく自分勝手に学校を中退し、\nその足で日本中を気ままに旅してきた。 <0205> といっても特に目的地もない、\nテント一つにヒッチハイクだけの放浪のようなもんだった。 <0206> 明 人「だけど、それももう終わりか…」 <0207> 既にこの後の転入先の学校も決まっていた。\nランク的にも、色んな意味でずっと上の学校らしい。 <0208> それが決まっていたからこそ、\n今回のわがままも親が許してくれたように思う。 <0209> だからそれまでは自由にしていいと言ってくれた。\nその代わり1年を期限に帰って来いと笑って見送ってくれた。 <0210> この約束を無視して旅を続けるほど、\n僕はひどい奴じゃない。そこまでの目的も持っていない。 <0211> タンッ、 <0212> 暗い闇の中、\n再び10m先の缶に向かって引き金をひく。 <0213> 東京に帰れば、すぐに新しい暮らしが始まるだろう。 <0214> 何かを変えたくて、何かに <0215> \ あらが <0216> 抗いたくて、\nこんな場所までやって来た… <0217> なのに、1年も気ままに旅をして、\n今も僕は沖縄の外れでこんなことをしている。 <0218> 結局、部屋でモデルガンを撃っていた頃と、\n何も変わっていないのかも知れない。 <0219> きっと数日後には新しい学校に通い始め… <0220> 来週の今頃には新しい友達が生まれ、\n今までと何ら変わらない暮らしが始まっているのだろう。 <0221> 何も変わらない”流れ”に飲み込まれているのだろう… <0222> マガジンの中にはあと数発…残り僅か。 <0223> 明 人「これを全て撃ち終わったら家に帰ろう…」 <0224> そして…このベレッタも海へ捨てよう。\n別に銃自体に思い入れがあった訳じゃない。 <0225> 只、銃が持つ、非日常の匂いに憧れていただけだった。\n結局、1年も旅をしたのに何も変われなかった。 <0226> …何も変われる要素がなかった…