Edited by Pierre Fujiki








WWDC 2000 スティーブ・ジョブズ基調講演レポート

 

May, 15, 2000

本日よりWWDC 2000が開催、一番最初はもちろんスティーブ・ジョブズ氏の基調講演。一部で噂のあった新型ハードウェアなどの発表は一切無かったが、一方でOS等のソフトウエアに関してはMac OS X関連も含め、かなり盛り沢山な内容であったと感じた。WWDCは開発者のための場所なのだ。主要な話題としては、新バージョンのQuickTime、WebObjectsの新価格、そしてもちろんMac OS Xやそれに対応した新顔も含む有名どころのソフトウエアなどがある。

さて、まず壇上に上がったジョブズ。Macworldのようなスタンディング・オベーションは無い。今回の聴衆はお祭り気分というよりは“お仕事”だからか。さて早速同氏はAppleがどれだけ成長基調であるか?という点を述べはじめる。Appleの他DellやGateway、Compaqといった代表的なPCメーカーと比較して、どれだけ出荷台数があるか?収入はというような点を比較し、Appleが業界で一番伸びているメーカーである事を強調。またその業績の好調さからシェアも確実に伸びているとした。また台数ベースでは昨年出荷したMacが全体で400万台である事を述べたほか、iMacが発表から2年で約340万台の出荷であり、同機への強い対抗馬が無いことを主張している。特にiMacのユーザー層調査結果を披露し、28%が初めてコンピューターを購入した人、17%がWintelからの移行で計45%が新規Macユーザーである事、そして88%がネット利用、そして65%がiMacをネット経由で購入した事などを挙げていた。

続いて、QuickTimeに関する話題が披露された。まずはマーケティング情報から。QuickTimeはいままでに3600万ダウンロードがあり、QuickTimeのユーザーは少なくとも5000万(MacとWindows合計)、またマルチメディアソフトにも多くバンドルされており、QuickTimeをバンドルしたCD-ROMやエンハンスドCDタイトルは1日あたり11点リリースされているなど、Appleが掴みきれないほど多くのユーザーがいるとしている。また、変わったところではスナック菓子にオマケで付いてくるCD-ROMにも含まれ、これだけで配付される数は300万に----つまりQuickTimeユーザーの多さをアピール。また、Apple.comのQuickTime映画予告編がこの分野でトップであり、同技術の品質が映画制作スタジオでも評価されているんだと強調。現在提供している指輪物語の予告編の好調さを挙げていた。

MPEG-1、MPEG-2に完全対応!

その後今年の夏(具体的な時期は不明)に出る次期バージョンのQuickTimeについて。これの主な特徴はMPEG-1やMPEG-2(DVDやデジタルTVで利用されている)に完全対応する事。また、サポートするFlashのバージョンが4になる事。さらにはQDesignのオーディオ用コーデックがG4のべロシティー・エンジンに対応した新バージョンになることや、さらには水平方向だけでなく、垂直方向のパンニングもサポートしたQuickTime パノラマVRといった点が挙げられていた。デモに移り、早速フィル・シラー氏が登場。MPEG-1やMPEG-2のコンテンツを再生してそのパフォーマンスや画質を披露、再生の際にはウィンドウやメニューバーの無い、TVのような全画面でのフルスクリーン表示を行っていた。パノラマVRでは垂直方向へのパンニングが新しく実現されている事を強調、いくつかのVRをデモしていた。ちなみにこれもフルスクリーン。尚、この方法をキュービックパノラマと呼ぶという事だ。

QuickTimeの次に登場したのはWebObjects。この技術がWebアプリケーションを10倍早く開発できる事が強調されたが、一番強調されるポイントは価格変更。何と$50,000だったアクセス無制限版が$699になるという。いままで様々な著名企業3,000社が同サーバーソフトの採用実績があるが、今回の価格変更で非常に多くのユーザーが増えるだろうと述べた。また、現在も大変多くのプラットフォームでWebObjectsが利用可能であるが、WebObjectsは年末までに全体がJava化されたバージョンが出る予定である事にも触れている。WebObjectsの解説にはアビー・テバニアン氏が登場。WebObjectsは単にHTMLベースのWebアプリケーションを開発できるだけでなく、もっとリッチな操作環境を提供するためにJavaベースのクライアントアプリケーションを開発できる事も披露。このJavaアプリケーションはMac OS Xでデモされ、ルック&フィールは完全にAquaになる事が強調されていた。また、クライアントのルック&フィール情報はサーバー側がXMLで情報を提供し、それに基づいてクライアント側で表示されるという仕組みであると言う。またそのWebObjectsとJavaアプリケーションの組み合わせで、QuickTimeムービーを利用する様子などもデモされた。

JAVAクライアント開発のようす

続いては“真打ち”のMac OS Xだ。本日開発者に向けてMac OS X Developper Preview 4が提供される事を発表。これはほとんどすべての開発者にとっては十分にMac OS X用ソフトを開発できる環境である事が語られた。さらに出荷時期。実はMacworld SFの基調講演では今年夏にMac OS Xが提供されるという内容を発表したが、これは発売“では無く”、パブリックベータにするという事がアナウンスされた。その後Mac OS XのMacハードウェアへのプリインストール、及び正式な販売開始は来年の1月からという事になったそうだ。ちなみにApple.comではMac OS X情報を提供するためのセクションが設けられる事になるようだ。

Mac OS Xの今回のDP 4ではまた、いくつもの部分が修正されている事も披露。まず、Aquaの部品が従来のプラチナ・アピアランスと同じサイズになる事。以前はAqua化すると、ひとまわり以上ダイアログなどが大きくなってしまったのだけど、新しいAquaでは同じサイズになるという。またドックのデザインが変更されてアイコンのバック部分が半透明表示になったほか、ドック自体が2つに仕切られ、左がアプリケーション、右が書類アイコンを配置する場所になった。2つの部分の間は他より余分に隙間が開いており、簡単に識別できるようになるという。尚、ドックに登録されるアプリや書類はあくまでもポインター(エイリアス)であり、本体の場所が移動してしまう事は無いという。ドックに登録されたアイコンをドックから外に出すと、煙が出て自動的に消去されるようになった。

Mac OS X

新しいDockはアプリケーションと書類の格納場所を分割。

メニューバーの一番左はQuitやPreference等を納めるアプリケーション専用メニューになるのだが、この部分にアイコンだけでなく、アプリケーション名もボールドで表示されることになるという。さらにDP4にはCarbon版IE 5が搭載されるほかPPPもサポートされ、様々な環境でインターネット接続ができるという。その他、DP4ではようやくOpenGLが搭載。パフォーマンスの最適化はまだ行われていないが、それでもMac OS 9と同等の速度が既に達成されているとした。

続いて発表されたのがMac OS XのJava 2(Java 1.2)完全対応。これにはいくつかの開発者から歓声が上がっていた。WebObjectsの際にも触れたが、Java 2で開発されたソフトは完全にAquaのルック&フィールとなるようだ。この発表の後、Sunが壇上に登場。Mac OS XのJava 2はSunとAppleが互いに協力してインプリメントした高性能なもので、HotSpot等の技術によりかなりの高性能さが実現されるという。また同氏によれば、Javaはサーバー側では既にかなりの成功を収めているほか、PDAや携帯電話をはじめ家電分野でも十分に評価されている。ただしデスクトップ分野ではまだまだだが、このMac OS Xへの搭載によりそうした分野でもメジャープレーヤーになっていくと語った。

Mac OS XにバンドルされるQuickTimeプレーヤーについてもデモ。ユーザーインターフェースが全面的に見直されているほか、従来のプレーヤーで下に画面スペースを取るなどして不評だったチャンネル選択のためのドローワー機能が、全くあたらしい方式に変更されていた。他にもMac OS Xではいくつものアプリケーションやサンプルを紹介。これらは全てCarbonやCocoaで開発されたものだという。

Mac OS Xの仕様変更の紹介が続く。かなり旧来のMac OSユーザーが不安を感じていた Mac OS X Finderのユーザーインターフェースがさらに修正され、以前のFinderに近付いたという事をアピール。例えば、以前のFinderのように(やろうと思えば)いくつものウィンドウを開く事ができるほか、あるウィンドウはアイコン表示、また別のウィンドウはリスト表示というように各ウィンドウで異なった表示方法を選択できるようだ。ちなみに表示の切り替えは以前のMac OS Xではビューボタンのトグルによる切り替えだったが、今回はアイコン表示、リスト表示、カラム表示の3つのボタンが用意され、そこから選ぶように修正されている。ちなみに、以前のFinderではファイルを別のフォルダに移すと自動的に整頓されたが、今回からは“やろうと思えば”グチャグチャに乱れた配置も可能。さらにはエイリアスでなく書類自身をデスクトップ上に置いておく事もできるようになったようだ。尚、ドライブもデスクトップに置く事ができる---としていたが、この際にデモ画面ではエイリアスが置かれていた。ちなみにカラム表示の際にはファイルのプレビューをFinder上で見る事ができる。画像のほかQuickTimeムービー、QuickTime VR、さらにはMP3オーディオのプレビュー再生もデモされた。

QuickTime VRをプレビューしている様子

インターネット関連ではIE 5を実際にMac OS Xで起動、Flashコンテンツをそこで再生するというデモを行ったほか、IE 5のURL部分をドラッグ&ドロップしてURLアイコン化。これがDockに登録できる様子などを見せていた。

次にグラフィックスを----として見覚えのあるQuartzデモ用のPDF表示・合成ソフトを起動してToyStory 2ロゴを作りはじめる。「あれ、また同じようなデモか?」と思ったが、実は伏線があった。ジョブズはもう1つのOpenGLデモアプリを取り出し、PDF合成の結果を3Dオブジェクトにマッピング。しかも、PDFを変更すると、自動的に3Dのマッピング表示が更新されるというデモをして新しいグラフィック能力を見せつけた。

PDF合成のデータをOpenGLの3Dオブジェクトにリアルタイムでマッピング

さて、Mac OS Xの変更点紹介が一息ついたところで、今度はMac OS X対応ソフトの紹介に移る。デモンストレーターはフィル・シラー氏まずはPalm Desktopが実際に起動され、動いている様子がデモされた。同ソフトはCarbonで作られているという事だ。続いてはOpenGLを活用するゲームQuake III Arena。いつもの基調講演では残酷さを出さないために“殺し”は一切無しで動かされるけど、同氏いわく「今日の観客は大丈夫でしょ?」という事でバシバシ血しぶきを飛ばしての豪快なデモで3D能力をアピールした。

Mac OS Xで動作するPalm Desktop

続いて登場したのはAdobeのICarbon版InDesign 1.5。Adobeが壇上に上がりデモを行った。実際にInDesign 1.5の画面が登場すると、そのルック&フィールはしっかりとAquaになっている。他にもInDesign機能の一通りのデモがあったほか、Carbon版のサードパーティープラグインを利用したデモも実行。Carbon版InDesign開発がかなり進んでいる様子が伝わってきた。

Carbon版InDesign 1.5

そして、最後にMac OS X対応として発表されたのが、ハイエンド3Dグラフィックソフト「Maya」の移植版だ。ジョブズ自身、Apple社内ではMaya等のAlias|Wavefront社製ソフトを多く活用しており、同ソフトがようやくMacプラットフォームで活用できる事が喜ばしいとコメント。続いてまだ開発途上のMaya Mac OS X版がデモ。OpenGLによるプレビューやキャラクターアニメーション、オブジェクト変型アニメーションが見せられたほか、ペイントによる3Dマッピング等も少し披露された。Mac OS X版Mayaは来年1月に発売開始の予定であると言う。

Mac OS X版Maya(開発途上版)

Mayaのマッピングペイント機能

最後にジョブズ氏は、このようにしてApple社ではMac OS X開発のために多大な努力をしており、実際にソフトウエア開発の環境は整った---従って、もうこれからはMac OS X開発ができないという一切の言い訳はできないよと締めくくった。また、Macworld San Franciscoで発表したものが多くのフィードバックを元に今回のMac OS X修正に至った。つまり、Appleは常に開発者や顧客からのフィードバックに耳を傾けており、これからもMac OS Xに関する様々な意見を聞かせてほしいと呼びかけていた。■


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