内部告発 | ||||||||||||||||||||||||||||||
2003年3月27日、Mr.Lim(仮称)が私のオフィスを覗き込んで、「ちょっと話せますか?」と問いかけて来た。彼は私が勤める会社のスタッフではなく、出入り電気設備業者のテクニシャンである。通常業者の社内への立ち入りは厳しく制限されているが、設備保守や打合せの為社内の至るところで日常的に目にする。更に彼は非常に人懐っこく、日本人と見ると「おへいよごぜいまっ」と話し掛けてくる陽気な男である。私は彼を招き入れ応接セットで向かい合って座った。すると彼はやにわに書類を差し出した。
Mr.Limは6ヶ月の試用期間を終え、本採用間近で解雇されたのである。雇用主は労働法違反を犯していないが、あっさりと解雇された彼は頭にきた訳である。そしてマレーシア労働者の代表的報復手段である「内部告発」を始めたのである。噂には聞いていたが目の当たりにするのは初めてであった。マレーシアでは有害物質不法投棄、外国人不法就労、脱税行為、等の企業の違法行為が発覚し摘発を受けるのは、このような内部告発によるものがほとんどだそうだ。 マレーシアの会社は労働法に添った独自の就業規則を持っており、従業員を採用する際は雇用契約書(Employment agreement)を締結する。そして多くの会社が3〜6ヶ月の試用期間(Probation period)を設定する。つまりこの期間内に能力や勤務態度に問題があれば、試用期間の延長や定められた通知期間内に本採用しない旨(つまり解雇)を言い渡す事が出来る。日系企業、等の外資系企業の場合よほどの事が無い限り採用するが、ローカル企業はドラスティックに解雇する事もある様だ。 Mr.Limはこれから取引先を数社、そして関係官庁に密告して回ると言う。そして彼のいた電気設備業者が出入り禁止になったのは言うまでも無い。
(2003年 4月2日) |