財布を落とした
 

財布が無いのに気が付いたのは「霧島」で夕食を済ませ、支払いをする時の事だった。呑気な私は会社に置き忘れただろうと思い、友人に立て替えてもらい帰宅した。翌朝出勤してデスクやユニフォームのポケット、そして自動車内をくまなく探したが見当たらない。昨日ホッカ-センターで昼飯を食って以降は使った記憶がない。私はようやく事の重大さに気が付いた。財布には現金約RM200の他にクレジットカード、ATMカード、IDカード、運転免許証、等が入っている。これ以外にRM800相当の未請求の領収書(←内容は秘密)が入っている。

会計監査の真っ最中だが、仕事を中断し手続に奔走する事になった。ローカルスタッフに頼み即刻クレジットカード、ATMカードの停止手続を済ませた。紛失に気付いてから既に10時間経過している。Maybank-2U(右写真)で口座状況を確認すると、普通預金口座の残高は減っていない。クレジットカードは既に停止されている。これから銀行へ出向き再発行手続をしなくてはならない。同時に運転免許証とIDカードの再発行のため警察に出向きポリスレポートを作成しなくてはならない。そんな矢先に近隣日系企業の川本氏(仮称)から電話が入った。

川本氏 「財布落としませんでした?」
claytan 「ええ、今それで大騒ぎしてるとこです。」
川本氏 「ホッカ-センターのおばちゃんが預かってくれてますよ。」
clytan 「ええぇーっ 本当ですかぁ!」
川本氏 「今朝声かけられて、免許書の名前を聞いてピンと来ましたよ。」
claytan 「ありがとうございます。すぐに取りに行きます。」

即座にホッカ-センターに出向くと、顔なじみのおばちゃんが私の顔を見るなり笑顔で財布を差し出した。間抜けな事に昨日昼飯を食った際、テーブルの上に置き忘れたようだ。橋本真也みたいな顔のおばちゃんだが、今日ばかりは女神様のように美しかった。話を聞くと Indian beggar が置き忘れた財布を見つけて届けてくれたそうだ。おばちゃんは「チップをあげたら喜ぶよ」と言うので、外をうろついているその老人を探し出してお礼にRM50渡した。彼はたいそう喜び、握手を求めてきた。その真っ黒な右手は、残飯あさったと見えて飯粒がへばり付いていた・・・・。更に煙草をねだってきたので、吸いかけのダンヒルライトを箱ごと進呈した。

これでめでたくクレジットカード、ATMカード、運転免許証、IDカード、等は手元に戻り、再発行手続や警察に行く必要もなくなった。会社への債権RM800も回収できそうだ。そして何よりも天敵(←誰だ?)から説教されないで済む。ただし一度停止したクレジットカードは既に使用不能であり、再発行まで1週間待たなくてはならなくなった。

ペナンに4年近く住んでいるが、今回の出来事はある意味で衝撃的であった。マレーシア人は躾が出来ておらず、自分勝手でマナーが悪い人間ばかりだと決め付けていた。拾った財布を届け出る人がいようとは夢にも思っていなかった。正直者はいるものだ、まさに「地獄に仏」である。マレーシア人に対する認識を改めねばならない。そしてここで生活し事業を営んでいる事への感謝の念を思い出す事にしよう。マレーシアも捨てたものではない。

その後、ホッカーセンターで昼飯を食う私を目ざとく見つけるそのIndian beggar。毎回私に煙草や昼飯をせがむようになった・・・・。


200279日)

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