駐在員の帰任
     

マレーシア工場立ち上げメンバーのひとり葱氏の帰任が決まった。彼はプロジェクト企画は得意だが現場経験は少なかった。そこでこてこての技術者きたさんと交代することになった。赴任後わずか1年弱であった。総務を担当している私は初めて帰任者を送り出すことになった。とはいえほとんどの手続きはコンサルタントと現地職員がお膳立てしてくれた。

「個人所得税の精算」

まずは出国日を確定するため「片道航空券」を確保する必要がある。出国日が確定したら当該月の給与を日割り計算し、前払いで支給した後に給与振込口座解約する。これで年収が確定したので帰国1週間前頃に、タックスエージェントを通じてIRB(内国歳入庁)で個人所得税の精算手続きをする。この税金を払わないと出国させてもらえない事になる。

駐在員の所得は「現地給与」に「国内給与」及び「賞与」が合算される。その上で所得税(Tax 0n Tax)、住宅費、自動車、携帯電話、等の「現物支給」がみなし所得として加算される。その為に馬鹿にならない金額になる。だから居住者ステータス(183日以上マレーシアに滞在)を確保することが重要である。その為にIRBにパスポートを提出し証明する必要がある。

葱氏の場合あまりにも帰任が早かったので非居住者扱いとなり、人的控除なしの最高税率30%が課せられてしまった。ちなみにIRBは徴収は早いが、払いすぎた税金の還付は1年以上かかることが珍しくない。

「就労許可をキャンセル」

個人所得税の精算が済んだらアロースター(ケダ州の場合)の移民局で就労許可及び数次査証のキャンセル手続きをする。外国人就労許可枠(キーポスト)は会社の資本金に応じ、マレーシア工業開発庁(MIDA)から割り当てられている。葱氏の就労許可枠はきたさんに引き継がれる事になる。手続きが済むとパスポートにキャンセルチョップが押印され、「なぞの封筒」を受け取る。これ以降は帰国日まで出国する事は出来ない。

尚、葱氏は取締役だったので退任にあたり取締役会を開催し、ROC(会社登記局)へ報告しなくてはならない。実はこの取締役会はペーパー(架空)ミーティングであり、すべて秘書役会社が代行してくれる。また銀行などのサイン権者変更及び抹消手続きも必要であり結構手間がかかる。

「ほな さいなら」

葱氏は引越し荷物(単身赴任だったのでダンボール23箱)別送品扱いで出荷した後、社宅をきたさんに引渡してホテル住まいとなった。業務引継ぎも完了し葱氏は暇になった。送別会はジョージタウンに繰り出しメイガーデンで中華三昧。その後はお約束のKara-OKと相成る。そして帰国当日は余裕を持って空港へ行き、涙のお別れである。出国審査で「なぞの封筒」を提出すると無事出国、私の仕事は無事完了である。

一段落したら日本領事館へ行って帰任届を提出し、着任したきたさんの在留届けを提出する。

(1999615)

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