VIPが海難事故? 
 

VIPがお客さんを連れて来馬した。ペナンに住む友人である釣ガイドを訪ね、半分お忍び旅行である。目指すはペナン西方沖5時間の通称「ホワイトロック」と呼ばれる島である。ここではGTと呼ばれる浪人アジが入れ食いだそうで、釣キチにはこたえられない処である。在馬期間中私はホテルの手配、空港への送迎、日本料理屋での刺身の手配に奔走することになった。

213日午後3時にテロバハン港を出発、船中2泊して215日午後3時に帰る予定であった。帰港当日ローカルスタッフを港で待たせ、私はホテルで待機していた。帰港次第携帯に連絡が入るはずである。

ところが午後4時を過ぎても連絡が無い。釣り舟には無線が積んであるが、連絡を入れるも応答なしである。沖の天候は23mの波で、荒れ模様だそうである。休日はランカウイからの釣り舟で賑わうホワイトロックも、平日はほとんど船の姿は無く情報は乏しい。

やがて午後5時になりあわただしい連絡が飛び交った。「なにか事故でも遭ったのか、あるいは海賊に襲われたんじゃないか。」やがて皆一応に蒼ざめた。対応が遅れると助かるものの助からなくなる。「今から船を手配して迎えに行ってはどうか?」「いやいや、下手すると二重遭難になる」「不測の事態に備え、日本領事館に協力要請をしておいたほうが良いんじゃないか。」

一方でそうなった際は現地の責任問題である。「釣船やガイドは信頼できるのか?通信手段は確保したのか?事故の際の対応はできていたのか?安全は保証されなければ止めるべきじゃではなかったのか?一体何をやっていたんだ?」 

全員の頭に責任転嫁と保身が駆け巡った。責任は末端になすりつけられ、尻尾が切られるのが常である。サラリーマン特有の醜いやり取りが始まった。「依頼されてアレンジしたのは現法社長だよな。」「いやいや危機管理は総務担当の仕事だろう。」「そもそも送り出した本社国際部が問題じゃない?」

そして午後540分、私の携帯電話に釣ガイドから連絡が入った。「いやーぁ海がしけて2基あったエンジンの1基が壊れて10時間かかりましたわ。無線も壊れてやっと携帯が通じるとこまで来ましたわ。あと1時間程度で港に着きますんで。」 16Kgの浪人アジを釣果に、VIPがホテルに戻ったのは日も暮れた午後8時過ぎ。私にとってペナンでの一番長い日は終わり、私の首はつながった。

翌日VIPとお客様は上機嫌で帰国した。「やっぱホワイトロックは最高だねぇ。何回来ても良い処だよ。また10月頃くるからさぁ。頼むよ。」 早速私は高性能クルーザー、衛星通信無線、海難救助対策を準備することになる。

 

2001215日)

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