熱帯で凍える毎日

マレーシアでは必要以上に冷房を効かせる所が多い。空港、バス、タクシー、ホテル、レストラン、そしてオフィスで凍えた経験のある人は多いはずである。自動車やビルの窓ガラスが結露している光景もよく見かける。宗教上の理由もあるが、その中にいる人は長袖シャツに上着を着ている。

私のオフィスも寒い。特に私のデスクはエアコンの冷風が直撃し、パソコンを操作する手がかじかんでいる。私は常々「室温は20度以下に下げるな」と口をすっぱくして言い、貼り紙までした。しかし出かけて帰ってくると室温16度に設定されている。

ある日、頭に来た私はリモコンを没収し私のデスクに置いた。すると社員のひとりが直訴してきた。彼女は会社で数少ない華人のひとりで、経理責任者である。職業柄、仕事は正確でほとんどミスを犯さないキカイダーである。HRマネージャーの給与計算の間違えや、製造マネージャーの承認した請求書不備も、全て彼女が修正する。

彼女いわく「私のデスクはエアコンの風が当たらず暑いんです。」 彼女の席に行くと・・・・確かにちと暑い。しかし彼女は長袖シャツにベストを着ており、私は半そでの作業着である。私は彼女の要求を即座に却下した。数日後彼女は「ドンッ」と机を叩き「私はガマン出来ません、会議室で仕事します。」と言ってオフィスを出てしまった。「生意気な奴め!首にしたろうか。」と思ったが、こんな事で辞められても困る。

生理的な環境は個人差があり、許容範囲も違う。日本でもこの種の問題は経験し、感情的にこじれたことが多かった。全員が不快でない環境を作るのは私の責任でもある。そこで打開策を考えることにした。エアコンのダクトにフードを付け、風向きを調整するも効果なし。エアコンを移設やオフィスのレイアウト変更も考えた。そうこうしているうち、とうとう私は風邪を引いてしまった。今回の風邪は格別である。体中の関節が痛み、半頭痛がする。

会社を2日間休んでから、長袖シャツを着て出勤した私は、席を移ることを考え始めた。ふと気が付くと、キカイダーの部下が毎朝入れるコーヒーが、中国茶に変わっている。聞くと「このお茶は体が温まるから・・・。」という事だ。そしてエアコンを見ると室温は20度に設定され、足元には冷風をさえぎるフイルムが貼られている。同僚に聞くと、昨日キカイダーは私の席に冷風が来ないよう、半日かけて作業したそうだ。そして机の上にはのど飴が置かれている。

私はHRマネージャーに長袖作業着を作るよう指示し、もうしばらく同じデスクで寒さと戦う事にした。

(2001516)

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