猫にまつわる悲しい出来事
 

1話 「なんてひどい奴等」

ある朝の事である。南北ハイウェーのスンガイペタニ(南)料金所を出た私は、前を走るProton Sagaの急停車に驚いた。その車は何かを避ける様に迂回した後、走り去っていった。驚いた事に、そこには誰かが捨てたと思われる、よちよち歩きの子猫が3匹いる。「なんて奴だ、よりによって車道の真中に捨て去るとは・・・・。」 後続車のクラクションに急き立てられ、私も迂回した後に徐行してルームミラーで後方を伺った。後続車も皆気が付いて避けて行く。

そこに通勤途中と思われるマレー人の若者数人が通りを横断し始めた。私は内心ほっとしながらしばし後方を見守った。彼らが子猫を拾い上げて安全な場所に移してくれる筈だ。ところが信じられない光景がルームミラーに映った。彼らはまるでサッカーのシュートさながら、排水溝に向けて思いきり子猫を蹴飛ばし歓声を上げている。ある子猫は宙を舞い、ある子猫はアスファルトを滑りながら排水溝に転落した。まるで汚いゴミを片付けるかの様に。子猫たちはその場で絶命したか、重傷を負って苦しんだ事だろう。

ムスリムは犬を不浄な動物として忌み嫌っている。同様に猫も可愛がられている様子は見うけられない。鶏や山羊等の家畜はともかく、ペットを飼っている家庭を見ることは少ない。情操教育には無縁なのか、或いは経済的に余裕が無いからなのか。マレーシアで生まれた犬や猫は不幸である。価値観の違いがあるとはいえ、命を粗末にする彼らの行為は、どこの世界でも誉められるものではない。動物愛護団体が見たら激怒しそうな光景を目の当たりにし、マレー人に嫌悪感を抱きながらその場を立ち去った。(写真はプラウティクス交差点で見かけた猫で本編とは関係無い。)



2話 「すまん俺が気付いていれば」

会社の駐車場に痩せた猫が住み着いたのは1年程前からであった。ガードハウスの老人が餌をやるものだから、すっかり居着いてしまった。やがてどこかで4匹ほど子供を産んで、母子で暮らすようになった。なぜか私の車は子猫達の格好の住み家となり、サスペンションやエンジンルームの隙間によじ登って遊んでいる風景をしばしば目にした。その後、私は車体の下をチェックし子猫を追い払ってから車に乗るのが日課となった。

そんなある日、車から生ごみが腐敗したような悪臭を発するようになった。どこかに残飯の入ったプラスチックバックが引っ掛かってると思い、エンジンやサスペンション廻りを入念に調べるもその形跡はない。気のせいだろうか・・・・? しかし特に停車して車外に出た際に強く臭う事が解った。それもラジエータファンが廻って熱風が車外に噴き出す際にとりわけ強く臭う。エンジンルームに何かがある筈である。

懐中電灯でエンジンルームを照らし細部を調べ始めた私は、ラジエータの隙間のわずかなスペースを見て飛び上がった。子猫が白骨化した状態で死んでいる。恐らくエンジンルームに入り込んだ子猫に気付かず発車させた為、その子は降りるに降りれなくなり、やがてエンジンルームの高熱で息を引き取ったのだろう。「さぞかし熱かったろう、さぞかし苦しかっただろう。すまん俺が気付いてさえいれば死なずにすんだものを。」 駐車場に残った子猫達はやがて成長し、いつの頃からか姿を見かけなくなった。



2002627日)

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