放浪者の読んだ本@

海外へお出かけの際は本をお忘れなく!
本は良いものだ。旅、特に長い旅になると本嫌いの人間でもかならず日本語が恋しくなる時があるものだ。そんな時に読む本は通勤電車の中で読む本よりもずっと印象深く心に残るのではなかろうか?

本の内容よりまず日本語の活字が目にしみる。そんな時こそ 本は究極のドラッグ といえるかもしれない。もちろんそれが良い本、読みたかった本であるに越した事はないのだけれど、そううまいこと外国にあるはずもない。けれどそもそも外国で見つける本はその国を訪れる人が日本から持っていったり、そこに住む人に送られてきたものが多いというのが当然であることを思えば自分と同じような境遇のだれかさんの嗜好が自分に近い可能性もあり、つまるところ結構読める代物に巡り合えたりして楽しいのだ。
あるいは日本にいたら絶対に手を出さないタチの本を最初は仕方なくでも読んでみたら 良かったということもあるだろう。人間自分の好きなことばかりやっていても成長がない。

というわけでぼくが放浪中に出会った本たちをここに紹介しよう。 あくまでぼくが本屋さんでピックアップしたものではなく限られたセレクションのなかから 「まあ、暇だし読んでみようかなあ」 といったものが多いのだけれど海外ではこんな本が 放浪しているのか、といった一つの目安にはなっているはずだ。

最後にもしこれから日本を出る人がいたら良い本を持っていってください。 そして読み終えたらなるべく日本人と交換しましょう。そして帰国する時には一冊も持ち帰 らないと皆が心がければ、次に旅行へ行く時には世界中どこでも良い日本語の本に巡り合える! かもしれません。


 INDEX
山根 真一他  『あの人この人良い話』
宮本 輝    『蛍川』(泥の河収録)
宮本 輝     『命の器』
中村 紘子   『アルゼンチンまでもぐりたい』
津田 良一   『信じられない99の奇跡【アンビリーバブルな実話】』
孔 健     『日本人は永遠に中国人を理解できない』
高野 ひろし  『アンデス遥かなり 外交官22年 高野 ひろし見聞録』
隆 慶一郎   『柳生非情剣』
Garcia Marques ガルシア マルケス 『予告された殺人の記録』 訳:野谷 文昭
村上 春樹   『国境の南、太陽の西』
Paulo Coelho パウロ コエーリョ 『アルケミスト』 訳:山川 鉱矢・亜希子
宮本 輝    『私たちが好きだったこと』
大藪 春彦   『血の挑戦』
遠藤 周作   『深い川』
Jung Chang 『ワイルド スワン』
岡崎 大五   『アジア飯店』


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 【放浪者の読んだ本A】→
『あの人この人良い話』    山根 真一 他

数人の特に芸能関係に強いライターたちの「人」に関する エッセイ集。こういうのを読むと僕はつくづく芸能にうとい なあと感じる。でも名前は知らなくても面白い話は面白いね。

山根 真一
アマゾネス伝説の地 アマゾン中流域のニャムンダー
ムラキタンの秘石はアフリカ西海岸セネガルの首都ダカール
で欧州人が奴隷売買のために造ったガラスの硬貨だった

山川 静夫
東京歌舞伎座が大正10年に火災にあったとき、一番に駆けつけ た六台目尾上菊五郎に野次馬が「音羽屋ー! 音羽屋ー!」

矢野 誠一
長島 伝説 I live in Tokyo.
過去形は I live in Edo.



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『蛍川(泥の河収録)』    宮本 輝

戦後の暗い雰囲気と、そこに生きる子どもの視点が 誰の心にも共感を呼びそうな作品。暗いのは嫌いだけど、 なんとなく許せるのは子どもを使って、詩的に物語を締め くくっているからかなあ。僕が映画監督だったらやっぱり 撮りたいと思うだろうな。でも泥の川のお化け鯉はどこから 探してこようか?やっぱり揚子江かな? そして蛍川の蛍は?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『命の器』    宮本 輝

エッセイの割りにずいぶんと重い題名をつけたなあ。 宮本さんがなんか自信なさそうに感じるのはやっぱ体が弱い からかな? 子どもの頃一年間大阪から富山へ移り住んだこと や、若い頃競馬に熱中したこと、二十五歳で不安神経症にかか ったことなどどれも彼の小説に生かされていて、つまりどの作品 も一種私小説的な感じがするのはそのせいか。
太宰賞、芥川賞と続けてとってるし「味」のある文章だし、好き なんだけど、、、なんと言ったらいいか。ま、これ書いた のはずいぶん昔だし、力入りすぎてたのかもしれない、とか 思いつつ最近の小説やエッセイ読みたいなあ。

メモ
どんな人に出会うかは、その人の命の器次第なのだ。
生老病死たる厳然たる法則
エゴイズムこそ人間を成長させない最大の毒薬
人間としての賢さをたずさえている人は、みな口元がコクゼン としている


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『アルゼンチンまでもぐりたい』    中村 紘子

旦那さんが小説家でもある国際的コンサートピアニスト ひろこちゃんの幅広いお付き合いと、洞察力を活かしたエッセイ。 芸術性も知識もすばらしく豊富で、かといってまったく嫌み なところがないどころか、女性としてのかわいらしさがその 文章からにじみ出ていてとても好感がもてる。一度でよいから こんな素敵な女性とお話してみたいなあ。 タイトルの『アルゼンチン・・・・・』は本文では数行の逸話として書かれているだけで この本の主な内容とは関係ありません、悪しからず。

メモ
タイガースファンは猫派
イスラエルの水は塩湖である死海とヨルダン川で結ばれたガリラヤ湖 から供給されるために塩辛い
十で神童、十五で才子、二十過ぎればただの人
スタインウェイのグランドピアノ
「セビリアの理髪師」、「ウィリアムテル」で有名な作曲家 ジョアッキーノ・ロッシーニは美食家で、現在もロッシーニ風 という名の料理が多数存在する
クイーンエリザベート国際コンクール(世界三大コンクールのひとつで 元「イザイ国際ヴァイオリンコンクール」)
時は流れない、それは積み重なる(ウィスキーCMでのショーン・コネリーの台詞)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『(信じられない99の奇跡) アンビリーバブルな実話』    津田 良一     二見書房

この本を読んで行ってみたい場所
長崎県 中江ノ島 サンジョワン様
ルルドの泉 (フランス)
秋田県 湯沢台 修道院 「聖体奉仕会」 のマリア像
聖マリアフランチェスカの椅子(ナポリ)
ハワイ マウナ ロア山の 女神ペレ

この本を読んで会ってみたいヒーラー(もういない人もいるけど)
高塚 光
エドガー・ケイシー
鈴木 秀子 (シスター、聖心女子大教授)
ラモン・ピーニャ(リスボン)
マリア・エスペランサ・デ・ビアンティーニ(ベネズエラ)
アルフォンシア・コッティーニ(クレバチア イタリア)
ユリ・ゲラー
浜口 熊嶽

メモ
聖アンナ(マリアの母)のベルト
ファチマ第三の予言
脳死…全ての脳の停止
植物人間…脳幹は正常な状態

とにかく奇跡としか言いようのない事件がいっぱいつまってる。 でも信じたい良い話が多い。著者はすごくこの手の話が好きそう だけど、その書き方は客観的で、でも良いものは信じたいという 気持ちが現れていて好感がもてた。ボクもほとんど信じます。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『日本人は永遠に中国人を理解できない』    孔 健

今いる南米のスリナムにもたくさんの華僑、華人がいるし、 以前からこの本のことは知っていて読みたいと思っていた。 ワイルド スワン を読んで文化大革命のことは多少知っている けれど、この本の著者(なんと孔子の直系の子孫だそうだ)の 目は今後のマーケットとしての中国を意識していて、まだ安い 労働力としか見ていない日本のメーカーの中国と、中国人に 対する考え方に警告を発している。結局は同じ人間同士、欲の 発するところは同じなんだよね。お互いの尊敬が大事なんだ なあ、と感じました。孔 健 さんは「仁」ということを最後に 書いて締めくくっている。仁とは礼儀、寛大、信義、勤勉 、親切などのことで、
礼儀正しき者は辱めをうけず、
寛大な者は大衆の支持を得、
信義に厚い者は人民に信頼され、
勤勉な者は目的を達成し、
親切な者は人民の奉仕を受ける
と流石孔子の直系の子孫らしき言葉!大事なことです。

メモ
食客三千…食事を通して付き合いが始まるの意

人を知るに人をしかず

上海人・・・そろばん勘定が得意だが他人への思いやりに欠ける
山東人・・・働き者、独立心が強い、行動的
広東人・・・怠け者 天津人・・・ケチ

向銭看…拝金主義
喜歓 (好き)

入郷随俗(郷に入りては郷に従え)

華僑・・・中国国籍
華人・・・外国籍

華僑、華人全体の80%は広東省、福建省出身




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『アンデス遥かなり (外交官22年 高野 ひろし 見聞録)』      総合行政出版

外交官を勤めたひとでこんなにも南米を愛している人がいるとは 同じ南米を愛するものとしてうれしくなった。 しかもさすがにいろいろなことをご存知で初めて知ることがたくさんあって 驚いた。活字が大きく半端な本と思っていたのに内容はたしかでした。

メモ
コロンビア・エメ…エメラルド。チボル、ムソーの鉱山が有名
ダイヤモンドもエメラルドも同じ白亜期(一億三千五百万年前から七千万年前)の 造山活動によって形成され、エメラルドのほうが希少でモノによっては高価である。

南米三大祭り
リオ(ブラジル)のカーニバル
オルーロ(ボリビア)のカーニバル
クスコ(ペルー)のインティライミ(太陽の祭り)

映画カラコル作戦 (コロンビア)

レーダーサイレンス…メキシコシティの北西1000Kmのドゥランゴ市から車で 2時間。磁場が乱れている。
ナスカの地上絵…人工衛星からしか見えない長さ10Kmの十字形が発見された。

南米インディオの起源3説
@アトランティス大陸が水没したために渡ってきた
A人類の起源そのものがアメリカ大陸である
B氷河期に海水面が現在より100Mも低かった時代はベーリング海峡が平原になって いたので、アジア大陸から歩いて渡ってきた

コーヒーゾーン…南北両回帰線(南緯25度、北緯25度)の間
ブルーマウンテン(ジャマイカ)

猛禽類、雑草、害虫などはどれも人間の一人よがりの言葉にすぎない

南米が原産の植物
唐辛子、南京豆、サツマイモ、トウモロコシ、ジャガイモ、カボチャ、 トマト、インゲン豆、ひょうたん、ヘチマ、パイナップル、バナナ、パパイア、タバコ

ウエボスランチョロス…トルティージャの上に目玉焼きをのせ、トマト、玉ねぎ、唐辛子 を刻んだソースで食べる。

榎本移民…中南米への初めての組織的移民
コロンビアの有名な入植者
農場主 竹島 雄三
建築家 ホルへ 星野



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『柳生非情剣』    隆 慶一郎

《柳生》といえば《十兵衛》というのは五味康祐の時代小説が作り上げた イメージなのだそうだ。この柳生非情剣に登場する十兵衛は徳川秀忠に服して 幕府のために暗殺などを請け負ったとされる江戸柳生の一人としてもっと腹黒 く描かれている。それが読後かえって人間味を感じさせてよかった。
古文書資料に基づき大胆な想像力で六人の柳生家の武士をそれぞれ一章づつに主人公 として描いている。十兵衛よりはむしろ彼を単眼にした(と、この小説では仕立てて いる)義兄弟の左門友矩や柳生新陰流を開いた雪舟斎とその子新二郎厳勝の関係など をこれ以上ないほどドラマティックに書いている。
徳川指南役の江戸柳生と柳生新陰流道統(一人)を受け継ぐ尾張柳生の確執など陰湿 なバックボーンを使いながらも主人公たちにはそれぞれ剣に生命をかける者としての すがすがしさを与えていて痛快だ。
古文書もこうして想像力を働かせて読み解くとさぞ楽しいのだろうと思える。

メモ
慶安御前地試合(柳生連也斎)     柳生の鬼 (柳生十兵衛)
柳枝の剣   (柳生友矩)      跛行の剣 (柳生新二郎)
ぼうふらの剣 (柳生宗冬)      逆風の太刀(柳生五郎右衛門)

初代 柳生新陰流 上泉伊勢守 柳生宗厳(雪舟斎)
第二代      新次郎厳勝

尾張柳生 道統
第三代 兵介(兵庫助利厳、後に如雲斎)
第四代 茂左衛門利方
第五代 兵助厳知(連也斎、浦連也)

江戸柳生 徳川家指南役 
第二代将軍 徳川秀忠 付き 又右衛門宗矩
第三代将軍 徳川家光 付き 左門友矩



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『予告された殺人の記録』    ガルシア マルケス  訳:野谷 文昭

82年ノーベル文学賞を受けたこのコロンビア人作家の作品とは隣国のエクアドルで出会 った。 以前ジャーナリストであった著者らしく実際に起こった過去の殺人事件をもとに 30年ぶりに掘り起こして小説化したもの。《私》という語り部に解説をさせ、登場人物を フルネームで呼びあたかも記者が取材をもとに書いた調書のようだ。 作中殺害されるサンディエゴ ナサールがあたかも無実の罪をきせられていたかのように 思わせる証言をいくつか書いている事から著者自身が新事実を知っているかのような印象 を与える。が、『予告された殺人の記録』はあくまで小説である。

メモ
Garcia Marques:1928〜 (Colombia)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『国境の南、太陽の西』    村上 春樹

サスペンスタッチの作品だったのでスッキリと締めくくられる事を期待しながら かといってどきどきするような仕掛けもなく読み進んでいたらそのまま終わってしまった。 主人公ハジメの家庭崩壊が最終的には回避されることによって、実はだれもが苦しみを抱き 時には自己の本能に従い、時には自分までをもだまして生きているのだということ に気がつかされる。そしてだれもが人を傷つけ、傷つけられ、幸福にしたり、されたりし ているのだ。モチーフに一人っ子を選んだ理由を考えていたが。

メモ
物事というのは一つ一つの具体的なイメージを段階的に積み重ねる事によって前に進んで 行く。

ヒステリア シベリアナ



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『69 (SIXTY NINE)』    村上 龍

彼のことはTVで観て知っていたけれど小説を読んだのは初めてだ。 この小説は彼自身の青春時代の追憶から生まれた作品らしく、主人公 の『ケン』のイメージはタレントとしての村上龍のイメージともぴたり と符号する。『楽しんでいる奴が勝ち』と考えるケンの奔放さが気持ちよく 伝わってくる。1968生まれで今まさに当時のヒッピー文化や音楽に 興味を持つぼくとしても当時の日本の雰囲気を味わえたので楽しく読む事ができた。

作者プロフィール
1952長崎県生まれ
武蔵野美術大学中退
'76 『限りなく透明に近いブルー』で芥川賞受賞
'81 『コインロッカーベイビーズ』野間文芸春秋賞受賞

メモ
メスに好かれる保証がなければ男の子は生きていけないのである。

岩瀬がそんな悲しい事を言うのはギターのAマイナーの響きのせいだと思い、 僕はギターを取り上げてGのコードを弾いた。

初めて象を見た江戸の人々のようにぽかんと口をあけていた。

暗く反省してもだれもついてこない。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『アルケミスト』    パウロ コエーリョ  訳:山川 鉱矢・亜希子

羊飼いの少年サンチャゴが見た夢は人生の啓示だったのか?錬金術師が彼に与えた唯一の アドヴァイスは『夢を諦めない事』だった。サンチャゴが最後に得るのは宝物だけではなく 旅の経験。羊飼いのまま他の世界を知らずに死ぬ人生がよいか、それとも? サンテグジュペリの『星の王子様』にも共通するいわば大人にとっても有意義なメッセージ に溢れたファンタジックな作品。

作者プロフィール
1948年 ブラジルのリオ デ ジャネイロに生まれる。 世界旅行後音楽、ジャーナリズムの世界に入り、'87初の著作“O Diario de um Mago” で世界の注目を集める。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『私たちが好きだったこと』    宮本 輝

主人公、与志が冷やかし半分で応募した公団マンションの抽選に当たった。 友人のロバと暮らそうと計画している時に出会った愛子、曜子と四人で共同生活 をする事になる。与志と愛子、ロバと曜子はそれぞれすぐ恋人同士になる。
四人は単に気が合うというだけでなく、他人を助けようという 気持ちの強い者達の集まりであった。不安神経症を抱える愛子を医者にしようと 他の三人が励まし、借金の肩代わりまでする事に。愛子は私大に受かり入学するが 受講にかかる莫大な費用が他の三人の生活を圧迫している事に耐えられなくなってくる。 そしてそのうちその大学の経営する病院に勤める男と結婚することにする。
愛子の幸せを願う与志は自分の気持ちを殺してしまう。。。 そして四人の二年間に及んだ共同生活は終わった。

ぼくが海外に出てストレートな恋愛しかしなくなってからというものこの手の 日本的な愛情のやり取りがすごく不自然に感じるようになったのだけど、久々に お国柄を思い出させてもらった小説でした。

メモ
作者プロフィール
1947年神戸生まれ。追手門学院大学文学部卒。広告代理店勤務等を経て 77年『泥の川』で太宰治賞を受賞。
翌78年には『蛍川』で芥川賞受賞。 他『道頓堀川』『青が散る』『流転の海』『優駿』等



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『血の挑戦』    大藪 春彦      角川文庫 (451P) 

400ページ以上の厚物なのに主人公北見はじめ登場人物の人となりや 個性を作る考え方の違いがなされていないためどのキャラクターにも少しの魅力 もなく、そのため小説としてもバイオレンスだけが売りの薄ぺらいものになっている。 もうかれこれ20年も前になるが大藪、角川、松田優作 ものとして『蘇る金狼』 や『人間の証明』などの映画を楽しんだので一度くらい大藪の原作を読んでみよう と思ったのだけどあまりにもつまらなくて退屈で暇つぶしにもならなかった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『深い川』    遠藤 周作         講談社(351P)

アンティグアグアテマラの日本人が経営するスペイン語学校アタバルでこの小説を 借りたのだけど読む前に返してしまい、それからずっと読みたいと思っていたら エクアドルの安宿スークレで同宿していたマコチャンから借りてやっと読む事が できた。遠藤周作自体初めてだったのだけど一ページ目から物語に引き込まれて 一晩で読み切ってしまい一辺に遠藤ファンになってしまった。 未だ見ぬインドを疑似体験するほどぼくの心に直接訴える表現方法、登場人物の 思考や感じ方のみならず自然や無機物に対する描写までもが完璧だ。しかも作者 自信がこの小説で表現したいものが明確に見える。 『磯辺の場合』、『木口の場合』など六人の同じインドパックツアーに参加する 登場人物をそれぞれ一章毎にわけて、なぜその旅行に来るに至ったのかがそれぞれの 事情として説明される。人間には生きるにつけ死ぬにつけそれぞれ理由がある。 だけれど最終的に行き着く先は同じ場所なのだろうか? 何年かに一度読み返してみたら 自分の成長がわかるかもしれないと思わせるような小説だ。 実在するクミコハウスの名が登場する。是非行ってみたい。

メモ
初七日、四十九日とは死後7〜49日の間に死者の中有だった魂が一組の男女の間に 転生することに発している。 ヴァルナ ジャーティー = カースト制
ヴァルナ、アウトカースト、不可触民 、ハリジャン(神の子の意)
ナクサール バガヴァティ寺院 のチャームンダー像



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『ワイルド スワン』    Jung Chang  

激動の中国近代史を著者の祖母、母そして著者自身の実体験をもとに書き起こした ノンフィクション大作。噂には聞いていたがまさかエクアドルまで文庫版とはいえ上、 中、下の三冊を持ってくる人がいるとは思いもしなかった。そしてぼく自身エクアドル の安宿スークレで沈没していたからこそそんな大作を読む気になったのだし、もし普通に 旅行している最中だったら「貸して!」なんて言葉はでなかっただろう。 確かにさらっと読み終える事はできなかったけれど、読みはじめてからはそれこそその 書いてある内容に驚きのめり込むように読み切った。そしてこの世で一番ショッキング なことはハリウッド映画のようなフィクションではなく実際にぼくのいる地球の上で起 こっているのかもしれないと知ることになった。 著者の祖母は清朝時代の中国に生まれ、抗日戦争、国内共戦そして文化大革命という困難を 次々と経験する事になる。著者自身は彼女の母や祖母に比べたらまだ恵まれていたようだけど それでもぼくにとっては想像を絶する『毛沢東』全盛時代を生き延びたという経験は その文章にも大きな力となって表れている。ぼくが生まれた時期は文化大革命の真っ只中だ ったことを思うと日本人に生まれて本当によかったと言わざるをえない。 21世紀は中国があらゆる意味で世界情勢の鍵になると思うけれど、ぼく自身中国の歴史、 言語、文化等に大きな関心があり、数年のうちにそこを訪れる予定ではあるけれど四千年 の歴史を僅か一昼夜のうちに破壊し尽くしてしまった文化大革命の傷痕が今から気にかかる。 そして今なお外国人の立ち入れない場所をそこかしこに指定している中国共産党政府の手口 もまた。

メモ
蒋介石 : 国民党リーダー 1949年12月台湾へ逃亡

宣賓(イーピン)の温暖で湿潤な気候は茶の栽培に最適で、今日英国で飲まれている 紅茶の大部分はこの地で栽培されている。

抽選右派(チョウチェンユウパイ)
毛沢東の百花斎放政策の裏で進められた引蛇出洞作戦をきっかけとして摘発するべき 右派分子の数をノルマとして課せられた党員たちが抽選で選んだ人々。

厠所右派(ツースオユウパイ)
集会中にトイレへ立っているあいだに右派分子に祭り上げられてしまう人(厠所右派)

有毒不放(ユートウプーファン)
何も喋らないことでかえって疑いをかけられて右派のレッテルを張られる人々。

自任右派 ツーレンユウパイ
他人に無実の罪を被せるくらいなら自らが右派の汚名をかぶると言った人々。

浮腫
栄養失調で皮下に水の溜まる浮腫になると蛋白質を多量含むクロレラ胞子を尿で 二日ほど培養し魚の卵のようにブヨブヨした緑色になったものを洗浄後米に混ぜて 炊く。

文中
「平和な世の中に犬として生きる方が戦乱の世に人として生きるよりましだ。」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『アジア飯店』    岡崎 大五  

旅を継続するため世界各地で仕事を見つけたりコミュニケーションも上手でバイタリティー に富んだ著者の体験談。『食』をテーマにしたエッセーだけど著者と登場人物たちのやり取り が笑える。ぼくも旅行記を書いてきたけど、この本のようにテーマでくくったらまた楽しそう だと思った。酒、女、タバコ、葉っぱ、宗教、美術、音楽、ダンス、楽器などなど興味深い テーマはいくらでもある。ぼくも南米では多くの美味い食いものにであったけれど撮った写真 はみなピンボケで残念だった。この手の本に多いイラストを使うというのも良い方法だと感 じた。

メモ

アジアの珍味

シシケバブ(羊の串焼き) パキスタン、ラホール
Hot vit Lon ホビロン (ひよこのゆで卵) ヴェトナム、ハノイ
バーミーヤワラー ギトギト油ラーメン タイ、バンコク
フカ鰭スープ タイ、バンコク
オカマ親父の給仕トリオのだすカレーラーメン マレーシア、ペナン
南海の海老せんべい キロ/5ドル インドネシア、ニアス島
スペシャル(牛の臓物スープ) ウ○チの匂い 元気になる? トルコ、イスタンブール
サザエ(イボなし?毒あり!) タイ、チャーン島
アイスクリーム パキスタン、ペシャワール
パーン キンマの葉裏に阿仙薬、消石灰を塗りビンロウ樹の実を包んだもの。 インド、チャタラプール キャビアの軍艦巻 イラン、テヘラン
エマ ダツィ(唐辛子) ブータン、パロ
パクシャ パー(豚) ブータン、パロ
イドゥリ(米の蒸しパン) インド、ゴア、マプサ



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


【放浪者の読んだ本A】→

Hosted by www.Geocities.ws

1